海外ドラマ「アストリッドとラファエル 文書係の事件録」シーズン3(全8話)についてまとめました。
几帳面で論理的なアストリッドと、思いついたら猪突猛進のラファエル。正反対の二人がお互いの足りない部分を補い合い、協力し合うことで事件を解決していくフランス発ミステリーの第3シリーズ。
本国フランスでは平均視聴占拠率27%、シーズン4の制作も決定しました(日本では2023年10月にAXNミステリーで放送予定)。アストリッドとラファエル、それぞれの恋の行方にも注目です。
▼シーズン2はこちら
ネタバレ「アストリッドとラファエル」シーズン2全話あらすじ・感想・登場人物(キャスト)一覧Contents
作品概要
- 放送局:AXNミステリー
- 放送時間:2022年10月2日(日)
- 製作国:フランス(2022年)
- 原題:Astrid et Raphaëlle
- 脚本:アレクサンドル・ド・セガン/ローラン・ブルタンほか
- 監督:エルサ・ベネット/イポリット・ダール/フレデリック・ベアト/クロエ・ミクーほか
あらすじ
有名な天文物理学者が雷に打たれて死んでいるのが発見された。しかし死亡時刻の天気は晴れで落雷はなかった。被害者が国家機密を暴こうとしていたというウワサが流れ、SNSでは国家の陰謀だとして騒然となる。
AXNミステリー公式サイトより
登場人物(キャスト)
※シーズン2までのネタバレを含みます
主要人物
アストリッド・ニールセン(サラ・モーテンセン)
パリ犯罪資料局の文書係。自閉症。優れた洞察力と豊富な知識を生かして、パリ警察の捜査に参加している。警視のラファエルとは相棒であり親友。シーズン3では司法警察員になるため警察学校に通い始めるが、厳しい現実と直面することに。
ラファエル・コスト(ローラ・ドヴェール)
パリ警察の警視。おおらかで少々がさつな性格だが、他人を理解して受け入れる包容力を持つ。アストリッドの才能を見抜いて捜査に引き込んだ張本人。シーズン3では同僚ニコラに対する気持ちに変化が生じ、意識し始める。幽霊などオカルト的なものが苦手。
警察関係者
ニコラ・ペラン(ベノワ・ミシェル)
警部。ラファエルの同期でよき相棒。博識だが大衆文化には疎い。長い間ラファエルに片想いを続けてきたが、見込みがないと踏ん切りをつけ、エマと新しい恋を始めることに。
アルチュール・アンギャン(メレディン・ヤクビ)
警部補。ラファエルとニコラの部下。情報収集が得意。ニコラのラファエルに対する気持ちに気付いている。
カール・バシェール(ジャン・ルイ・ギャルソン)
警視正。ラファエルの上司。いつも勝手なふるまいをするラファエルに手を焼いている。
アンリ・フルニエ(ウスキ・キアル)
監察医。元軍医で、特殊部隊に同行していた。アストリッドを優秀な犯罪学者として認めており、彼女の意見を参考にすることも多い。
アストリッドの関係者
アンギュス・ニールセン(アリオシャ・イトビッチ)
アストリッドの亡父。警察官。幼いアストリッドが犯罪学に興味を示すことに気付き、調書を持ち帰っては犯罪科学について語り合った。友人のガイヤールに頼み込んでアストリッドを犯罪資料局で働かせる。
マチルド・ニールセン(エリザベス・モーテンセン)
アストリッドの母。アストリッドが幼い頃に家を出て音信不通だったが、20年ぶりにアメリカから帰国し再会した。ときどきアストリッドと会っている。
アラン・ガイヤール(ジョフロワ・チボー)
犯罪資料局の元長官。友人だった彼女の亡き父親からアストリッドを託され、後見人となる。シーズン1の最終話で事件に巻き込まれ、命を落とした。
ウィリアム・トマ(ジャン=ベノワ・スーリエ)
アストリッドが通う〈社会力向上クラブ〉のリーダー。アスペルガー症候群。ITと鉄道に詳しく、時に捜査に協力する。過去にアストリッドに助けられたことがあり、恩を感じてる。
テツオ・タナカ(ケンゴ・サイトウ)
アストリッドが幼い頃から通っている食料品店の店主アプ・タナカの甥。水曜は彼が店番をしている。数字が好きで、数学の勉強をするためパリに来た。アストリッドと出会い、互いに好意を抱くようになるが、シャイで不器用なためうまく想いを伝えられない。
アンヌ・ラングレ(ヴァレリー・カプリスキー)
アストリッドが入学した警察学校の教官。ある理由から、アストリッドにことさら厳しく接する。
ラファエルの関係者
テオ・コスト(ティミ・ジョイ・マルボ)
ラファエルの息子。頭脳明晰な少年。普段は父親のもとで暮らしているが、定期的にラファエルの家で過ごしている。毎週月曜はラファエルの家にアストリッドを招き、3人で夕飯を食べるのが恒例になっている。
バンジャマン・コスト
ラファエルの兄。道を誤って薬物やアルコールに依存し、父親から見捨てられて死亡した。ラファエルが警官になるきっかけとなった。
フィリップ・コスト(ミシェル・ボンポワ)
ラファエルの父。警察関係者。バンジャマンの死をきっかけにラファエルとは疎遠になっていたが、シーズン2で和解した。
そのほか
アラン・ラマルク(Stéphane Guillon)
シーズン1の第5話に登場した小説家。本名で純文学を、“エリック・エルネスト”の筆名で推理小説を書いていた。1987年に友人の恋人をレイプして殺害し、35年後にその真相を暴こうとした友人を自殺に見せかけて毒殺した。現在は服役中。
カミーユ・ベレジン(エレア・フォルシェ)
ウィリアムの婚約者。“ベレジン28”を名乗る天才ハッカー。難病を患っている。ときどき捜査に協力している。
各話のあらすじ(ネタバレ有)
アストリッドの捜査への参加は今回が最後だと告げられたラファエル。納得がいかないものの打つ手がなく、「捜査に参加しなくなっても、あなたは私の親友よ」とアストリッドに伝える。
パリ天文台の観測ドームで天体物理学者ミシェル・アルダン教授の遺体が発見される。状況から雷に打たれて死んだと思われたが、死亡時刻の天気は晴れで落雷はなかった。
アルダンの自宅を調べようとしたラファエルとニコラは、覆面姿の女性と遭遇。女性を取り逃がすものの、彼女が盗もうとした赤いノートから、アルダンが非公開の静止衛星を発見していたことが判明する。
さらに生前、アルダンは闇の政府による支配計画“プラン・グローバル”を信じる陰謀論者エレナ・カンベルが監督を務めたドキュメンタリー映画に出演し、「このノートは何人かを失脚させる」と意味深な発言をしていたことがわかる。
エレナの恋人でジャーナリストのオリヴィエ・サンクレールは、教授の死には政府が開発中の秘密兵器が関与している疑いがあるとテレビ番組で公表。ラファエルはエレナとオリヴィエを取り調べるが、警察による口封じだと抗議が殺到する。
そんな中、アルダンの遺体から炭酸ソーダが検出され、彼がソーダ水溶液を浴びた後に感電死したことが判明する。
アストリッドはウィリアムの恋人ベレジンの協力を得て、アルダンが出演した映画の全映像を入手する。そのインタビュー映像を確認すると、アルダンは編集後の発言とは違い、闇の政府の存在を否定していた。
ラファエルはエレナがアルダンと関係を持っていたことに気づき、オリヴィエの自宅に侵入。彼が5年前にパイプカットしている事実を突き止め、エレナのお腹の子供の父親がアルダンだと確信する。
オリヴィエは恋人のエレナが優秀なアルダンになびくのが耐えられず、彼を天文台での取材に呼び出し、炭酸ナトリウムをかけてスタンガンで感電させたのだった。
無事に事件を解決したことで、ラファエルは警視総監を介して首相から称賛されることに。さらに、年内に司法警察員試験に合格することを条件に、特例としてアストリッドの捜査への参加を認められる。
パリ聖十字修道院で、ルイ・デフォルジュ修道士の遺体が発見される。凶器に使われた針が現場で発見されたが、なぜか被害者によって指紋が拭われていた。
ラファエルとアストリッドは捜査に乗り出すが、ルイが身元を偽っていたことがわかり、捜査は難航する。さらに、彼の手足にはキリストが磔刑の際に受けたものとされる聖痕があった。
修道院長のダミアン神父は、以前ルイがアフリカの修道院にいたとき「キリストを見た」と発言し、バチカンから問題視されて修道院を追放された過去があることを打ち明ける。
それがきっかけでルイは原理主義団体イラデイに目をつけられ、嫌がらせや暴行を受けるようになった。聖痕はそのときの傷だった。そして2週間前には何者かが修道院に侵入し、彼の部屋の扉にフクロウの死体を釘で打ちつけて脅迫してきたという。
尋問により、ティボー修練士がイラデイに協力していたことが判明する。彼は尊敬していたルイが女性と一緒にいるところを目撃し、だまされたと思ったと話す。
ルイが会っていたのは、15年前の恋人クレール・モローだった。だがクレールは3日前から失踪中で、彼女と同居中の恋人ヴァンサンは、クレールが元恋人のルイを見て怯えていたと証言する。
ラファエルとアストリッドは、修道院の穀物庫に隠れていたクレールを発見する。クレールによると彼女に暴力をふるったのはルイではなくヴァンサンで、彼から逃げるためにルイを頼ったという。
アストリッドは保管されている資料から、15年前の未解決殺人事件を見つけ出す。被害者のベルナールは、当時看護師だったクレールと同じ病院に勤めていた医師だった。
クレールはベルナールから性的暴行を受けたことや、激怒したルイが仕返ししようとして彼を殺害したことを打ち明ける。自分が犯した罪に苦しんだルイは彼女の前から姿を消し、贖罪のため修道士となったのだった。
修道院から連絡が入り、ラファエルが駆けつけると、殺された医師の弟ジョゼフが修道院にガソリンをまいて火をつけようとしていた。日曜の夜、彼はルイから罪を打ち明けられ、カッとなって殺害したことを明かす。刺されたルイはその場で彼を赦し、逃げるように促したという。ジョゼフはダミアン神父の説得により犯行を思いとどまり、逮捕される。
アストリッドはテツオとの関係に悩み、ラファエルに相談する。恋人になるターニングポイントはキスだと教えるラファエル。アストリッドはテツオに会い、キスはできないから恋人にはなれないと告げる。するとテツオは「なれる。なぜなら他の人にキスしないから」と言い、アストリッドを納得させる。
プレモンヴィルの廃墟で先住民の格好をした若い女性と、白骨化した遺体が発見される。彼女は「彼を殺した」と繰り返し、メイスと呼ばれる武器を手にしていたが、ドラッグの影響で意識を失ってしまう。
アストリッドは2001年にプレモンヴィルで起きた殺人事件の資料を見つけ出す。被害者は、当時その村に来ていたカナダの先住民族アティカメク族の部族長プティケで、同じ部族のドゥグラス・ヌワシシが容疑者として浮上していたが、ドゥグラスは姿を消し、カナダに帰ったと見られていた。
アストリッドとラファエルは、〈社会力向上クラブ〉のメンバーでシャイアン族のマックスに協力を求め、アティカメクのシャーマンだというマスコヴィシに会いに行く。彼の証言で、現場で発見された女性がドゥグラスの娘アビガエルであることや、白骨遺体がドゥグラス本人であることが判明する。
ラファエルはドゥグラスの兄トニーと家族らが住む家を訪ね、父親の無実を信じていたというアビガエルのパソコンを調べる。「名誉回復」というタイトルのフォルダには、肝不全で亡くなった彼女の母リンダのカルテの一部が保存されていた。20年前、リンダは肝臓の移植手術を受ける予定だったが、ドナーだったプティケが殺されたことにより実現せず亡くなったのだ。その事実は、ドゥグラスにプティケを殺す理由がないことを裏付けていた。
当時、プティケはフランスのユフラト社によるダム建設に反対していた。だが彼が亡くなると、後継者のジョン・オタワはダム建設を認めたという。凶器に使われたメイスも、オタワが所有していた物だった。ラファエルたちはオタワから事情を聞くため自宅を訪ねるが、彼もまたメイスで殺害されていた。
昏睡状態だったアビガエルが目を覚まし、オタワとともに20年前の事件を調査していたことを打ち明ける。アビガエルは伯父嫁のアシャから「アドリエル」の名を聞き出し、プレモンヴィルの墓地にあった彼の偽の墓から大金が入った箱を見つけていた。
アドリエルは、トニーの息子ハワードとともにカトリックの寄宿学校に送られた先住民だった。同化政策に苦しみ、非行に走って1996年にケベックで亡くなっていた。ハワードは政府に従ったプティケを恨み、20年前に彼を殺してユフラト社から金を受け取ったことを告白する。
ドゥグラスとオタワの死についても、口封じのために自分が殺したと供述するハワード。だが父トニーが出頭し、オタワを殺したことを自供する。真実に近づいた彼を止め、息子を守るためだった。
アストリッドは警察学校に通い始める。クラスメイトたちはアストリッドが数々の事件を解決に導いた人物だと知り、羨望の眼差しを送る。教官のアンヌ・ラングレは、なぜかアストリッドに厳しい態度で接する。彼女の携帯には、アストリッドの父アンギュスの写真が保存されていた。
アストリッドのもとに、殺人罪で服役中の作家アラン・ラマルクから手紙が届く。その内容は、先ごろ精神科病院で起きた患者の事故死について捜査するよう伝えるものだった。
被害者のクラランス・ルベルは9年前に上司ダヴィッド・ルリヴァージュを殺害するも、精神疾患による錯乱状態だったとして、刑事責任を問われず精神科病院に収容されていた。3日前、ルベルは喉頭浮腫による窒息で死亡したが、なぜかルリヴァージュと同様に左手の親指を骨折していた。
アストリッドとラファエルは殺人と判断し捜査を始めるが、病院の医師フォアマンは「ありえない」と反論する。ルベルが収容されていた部屋は閉鎖区域にあり、常に厳重な警備と監視が行われていた。
刑務所にいるラマルクと面会してヒントを得たアストリッドは、当直の看護師がルベルの部屋ではなく、階下の部屋を監視していたことに気づく。犯人はエレベーターの制御盤に装置を仕掛け、ひとつ下の階に止まるよう細工していたのだ。
ラファエルは犯人が病院内にいると考え、閉鎖区域の患者たちから聞き取りを行う。すると、ルベルに襲われたことがあるリュシーは彼の死を望んでいたと話し、グレゴリーは自分が殺したと言いだす。
リュシーが部屋に隠していた本から、彼女がフォアマン医師と恋愛関係にあることが判明する。だが話を聞く前にフォアマンはグレゴリーに襲われ、意識不明の重体に陥ってしまう。
グレゴリーは自分を監禁していた父親を殺害した過去があり、フォアマンが彼の父親と同じ香水をつけていたことから、トラウマを呼び起こされて暴力的になったのだ。香水はフォアマンを抹殺するために、犯人が仕込んだものだった。
アストリッドはラマルクに呼び出され、一人で刑務所を訪れる。ラマルクは9年前の殺人事件をもとに小説を書いたと明かし、ルベルに殺されたルリヴァージュに愛人がいたことを教える。そしてアストリッドがラファエルに打ち明けられずにいた過去のトラウマを指摘する。
ルリヴァージュの愛人は、同僚のローランス・クトネルだった。彼女はルリヴァージュが殺害された後、彼の後を追って自殺していた。リュシーはクトネルの一人娘だった。
リュシーは両親を殺したルベルに復讐するため、何年も前から計画を立てていた。逮捕後、ひどい錯乱状態に陥った彼女を見て、ラファエルは閉鎖区域に身を置いたことで精神を病んだのではと推測する。
アストリッドは16歳のときに学校を退学になったことや、社会福祉局の判断で精神科病院に入れられたことをラファエルに打ち明ける。
後日、脱獄したラマルクからアストリッド宛に封筒が届く。中には「鍵のない部屋」というタイトルの原稿が同封されていた。
警察学校に通うアストリッドは、授業中にラングレ教官から抑圧的に迫られ、うまく対処することができず自信を失ってしまう。
そんな中、パリ東駅で鉄道の下請け会社の従業員ファビアン・ボワイエが銃殺される事件が発生。唯一の目撃者はファビアンの12歳の息子ジュールだったが、自閉症児である彼は反響言語を繰り返すばかりで何も話そうとしなかった。
防犯カメラの映像から、事件前にジュールが母親と一緒にいたことや、リュックを背負っていたことがわかる。その後、駅で発見されたリュックには、大量の紙幣が詰められていた。
鉄道好きのジュールは、父親に会いに毎週水曜に駅を訪れていた。毎回同じ時間にロッカーにリュックを預け、倉庫や電光掲示板を見に行き、ホームへ行くのがお決まりのコースだったという。ジュールの兄ガブリエルは、その行動を利用して大麻を運ばせていたのだった。
ガブリエルは苦しい家計を助けるため、密かに麻薬を仕入れて大学で売っていたことを明かす。そして家族が苦労しているのは弟のせいだと不満をぶちまける。ラファエルは麻薬捜査班の聴取に応じることを条件に、ガブリエルを自宅に帰す。
アストリッドはジュールが繰り返す「H線、17時23分発ペルサン・ボーモン行き」と「レ・グライユル着17時47分」に犯人の手がかりが隠されているのではと気づく。H線の路線図を調べると、レ・グライユルは駅と駅の間にあるバスの停留所で、2年前までジュールが通っていた自閉症者の支援センターがあった。
支援センターには、昨年てんかん発作で息子を亡くしたイザベル・モーパの写真があり、写真を見たラファエルは彼女がボワイエ家の隣人だと気づく。息子の死で正気を失ったイザベルは、代わりにジュールを手に入れようと、隣人のふりをしてボワイエ家に近づいたのだった。
その頃、イザベルはガブリエルとジュールを誘拐し、空き家に連れ込んでいた。そこには駅で拉致された母親のカミーユも監禁されていた。ラファエルたちは家に踏み込み、イザベルを撃ってカミーユと子供たちを救出する。
事件の日、ファビアンはイザベルを殺して関係を終わらせようと、銃を所持していた。カミーユは夫の浮気を問いただすため、ジュールを連れていつもより1時間早く駅を訪れた。夫婦の口論中にイザベルが現れ、もみ合いの末に銃が暴発し、ファビアンが命を落とすことになったのだ。
アストリッドは試験に合格しないことを確信し、警察学校をやめるとラファエルに伝える。後日、ラングレ教官が犯罪資料局を訪ねてくる。彼女はアストリッドの父アンギュスの恋人だった。そしてアストリッドを合格させたい一心で、あえて厳しく接したと打ち明ける。
写真家のジョナタン・フィシャーが遺体で発見される。心臓に杭が突き刺さった状態で死んでおり、遺体を発見したエージェントのミナは、彼が“怪物”に怯えて家に閉じこもっていた、と証言する。
ジョナタンは4か月前にひき逃げ事故に遭っていたことがわかり、車の所有者であるザカール・ヴォロノフが容疑者として浮上する。ザカールは東欧のマフィア「ヴォリ・ヴェザコン」の元構成員で、ジョナタンに借金返済を迫っていた。
検視により、ジョナタンは死後に逆さ吊りにされ、血を抜き取られていたことがわかる。彼の血液型は世界で50人しかいない「RHナル型」だった。
ジョナタンの足取りを調べた結果、彼は国内の血液銀行やロシアの民間クリニックに自分の血を売りつけようとしていたことが判明。ひき逃げ事故で自分の血液型を知った彼は、血を売って借金返済にあてようと考えたのだ。
アストリッドは犯人が杭を刺したのではなく、被害者が杭に刺さったことに気づく。ジョナタンは屋上から転落して粗大ごみの上に落ち、椅子の脚が胸に刺さったのだ。だが遺体の手首にはケーブルを巻いた痕があり、そのケーブルが故意に切断されていたことから、アストリッドは事故ではなく犯罪だと見抜く。
5歳の少女クロエ・ブラムがジョナタンと同じ「RHナル型」であり、大手術から生還したばかりだという情報が入る。父親を問い詰めたところ、彼はジョナタンに強請られ、血液の提供と引き換えに大金を払っていたことを明かす。
父親にジョナタンを紹介したのは、血液銀行の所長だった。彼女はジョナタンに献血を断られ、話し合うために家を訪ねて遺体を発見したという。遺体を逆さ吊りにして血を抜き取ったことは認めるが、殺害については否定する。
ジョナタンのエージェントだったミナが行方不明になる。彼女はジョナタンと関係を持ち、借金の保証人になっていた。ラファエルとニコラはザカールに拉致されたミナを救出する。ジョナタンを殺した犯人は彼女だった。
ミナはジョナタンに大金を貢いでいたが、彼が自分の血を売るようになるとお払い箱になったという。契約を解除すると言われ、長年がまんしていたものが爆発したと話すミナ。
アストリッドはジョナタンが撮影した大量の「キスシーン」を見て、テツオにキスしたいと思っている自分に気づく。一方、テツオはアストリッドを喜ばせようと、有名な日本人バイオリニストのリハーサルを2人だけで見学できるよう、手配する。
初めてバイオリンの生演奏を聴いたアストリッドは感動し、涙を流す。そしてテツオに「触られるのは苦手だけど、私が自発的に触る場合は大丈夫」と伝え、キスをする。
ニコラとエマの関係が気になるラファエルは、ニコラから「エマと一緒に住みたいが、断られるのが怖い」と相談を持ちかけられ、ショックを受ける。
植物学者のフランソワーズ・マルトリが、植物園の温室の中で死んでいた。毒殺という判断を受け、ラファエルたちは被害者の兄ボリスに会いに行く。
ボリスはフランソワーズが所有する農園“ヴェジネ”で働き、彼女から給料を支払われていた。ボリスによると、フランソワーズは植物神経生物学の専門家で、植物の知能を研究していたという。
フランソワーズの胃の中から、毒性のタンニンを含有するアカシアの葉が見つかる。アカシアの木のそばにボリスの植木鋏が落ちていたことから、ボリスを疑うラファエル。さらに、彼は“ヴェジネ”の秘密の地下室で大量の大麻を栽培していた。
聴取に応じたボリスは、大麻栽培はフランソワーズの案だったと明かす。大麻の買い手は化学療法中の患者や、慢性的な痛みを抱える高齢者たちだった。
地下室からは大麻のほかに、フランソワーズが研究用に育てていた漢方の薬草クソニンジンの苗も見つかっていた。大麻栽培の目的はその研究資金を捻出するためと思われ、ラファエルたちは彼女の研究内容を知ろうとする。
フランソワーズは民間の研究所ソノピに20年間勤務していたが、1年半前に突然退職していた。そしてソノピが製薬部門を担う大手食品会社ネスモンジュは、彼女を提訴していた。
アストリッドが発見した捜査資料から、ソノピの抗マラリア薬にひどい副作用があり、ある団体から告発されていたという事実が浮かび上がる。クソニンジンは抗マラリア薬の主な成分であり、フランソワーズは代替の薬を開発してデータを無料公開しようとしていたのだ。ネスモンジュの訴訟の目的は彼女の研究を妨害することであり、だからこそ彼女は秘密裏に研究を進めていたのだった。
ラファエルたちは、ソノピでフランソワーズとコンビを組んでいた疫学者デルフィーヌを見つけ出すが、彼女は1年半前に自殺未遂を起こして植物状態となっていた。
アストリッドはフランソワーズの死因がアカシアの毒ではなく、デルフィーヌと同じトリカブトだと気づく。アカシアはトリカブトの解毒剤にもなることから、被害者が解毒のために食べたものだった。
デルフィーヌの病室には、フランソワーズが遺伝子操作をして作った青いバラ“デルフィニジン”があった。2人が秘密の恋人だったことを知ったラファエルは、デルフィーヌの夫ビュランに疑いの目を向ける。
フランソワーズが使った喘息の吸入器から、大量のトリカブトが検出される。その吸入器の購入者はビュランだった。ビュランはデルフィーヌから別れを切り出され、正気を失って彼女にトリカブト由来の薬を盛ったことを明かす。そして病室の青いバラを見て妻の浮気相手がフランソワーズだと知り、殺害に及んだのだった。
アストリッドとラファエルは、テツオとニコラを夕食に招く。テツオと意気投合したニコラは、ラファエルに長年恋していたことを明かす。アストリッドは2人の会話をラファエルに伝える。
アストリッドを試験に合格させたいラングレは、アストリッドが捜査で“想定内の予定外”にどのように対応しているかを聞き、試験官や試験会場、課題の傾向などを徹底的に調査するための資料を用意する。
アストリッドの試験が近づく中、路上生活者のロランが殺される事件が発生する。ラファエルたちが捜査を進めると、これまでにも路上生活者を狙った殺人がすでに3件発生しており、いずれもろくに捜査されていなかったことが判明する。
4件の殺人の共通点を探っていたアストリッドは、彼ら4人が父アンギュスの情報提供者だったことに気づく。アンギュスは組織犯罪捜査班BRBの警視だったが、7年前、アロエベラ社の社長ヴァンサン・ベルジョーを調べている最中に何者かに殺されていた。
目撃者の証言により、ロラン殺害の容疑者として、アロエベラの警備責任者ベンルビが浮上する。ベンルビは犯行を認めるが、過去3件の殺人や、雇い主については黙秘する。
アストリッドは7年前から一度も入ることのなかった父の部屋に入り、「狼を追えば真実がわかる」というメッセージが書かれた絵葉書を見つける。“狼”を捜すため、犯罪資料局で7年前の事件の捜査資料に目を通すアストリッドだったが、供述調書の一部が機密扱いで閲覧できなくなっていた。
ラファエルは7年前の事件で警察内部に裏切り者がいたという情報を得る。かつてアンギュスと同じBRBに所属していた警視正を疑ったラファエルは、彼に内緒で捜査を進めることに。
ベルジョーはアストリッドに接触し、アンギュスとは友人だったと話す。アンギュスはベルジョーに近づきすぎたことから汚職の疑いをかけられ、国家警察監察総監IGPNの調査を受けていた。そしてその調査を担当したのがアンヌ・ラングレだった。
ラングレは1年かけて調査したが、汚職の証拠も無実の証拠も見つからなかったとアストリッドに話す。その調査の中でアンギュスと親しくなり、恋に落ちたのだと。
アストリッドとラファエルは、アンギュスが殺された倉庫を調べ、狼のロゴが印刷された荷物を発見する。それは「フェンリル」という貿易会社の荷物で、フェンリルの創設者はアロエベラ社の不動産売買に関与していた。
警視正の許可を得たラファエルは、裏切り者をあぶり出すため、アロエベラ社に乗り込んでベルジョーに揺さぶりをかける。
そんな中、アストリッドの司法警察員試験の日がやってくる。口頭試験のさなか、アストリッドはラングレとベルジョーが密会しているのを目撃し、ラファエルに電話して試験を抜け出す。
取り調べを受けたラングレは、7年前に長男を誘拐され、アンギュスのキャリアを潰すようベルジョーに脅されたことを明かす。アンギュスに情報提供していた路上生活者たちは、ベルジョーに雇われた運び屋たちだった。アンギュスが彼らから倉庫での取引の情報を得たと知ったラングレは、それをベルジョーに伝えたが、殺すとは思っていなかったと話す。
逮捕されたベルジョーは、アンギュスがいかに清廉潔白で実直な男だったかをアストリッドに語る。愛する人を殺した罪悪感に苦しむラングレは、警察署内でアルチュールの銃を奪い、ベルジョーを撃ち殺す。後日、警察の捜査でベルジョーの麻薬密売への関与が認められる。
アストリッドは試験よりも捜査を優先したことが強いストレス耐性の証拠だと認められ、司法警察試験に合格する。勾留中のラングレに会い、合格したことを伝えるアストリッド。また会いたいというアストリッドに、ラングレは7歳になる次男の父親がアンギュスであることを伝える。
ラファエルはニコラを呼び出して「あなたが好き」と告白するが、動揺したニコラは「今さらなんだよ!」と激怒する。怒ったままラファエルにキスして立ち去るニコラ。
翌日。アストリッドとラファエルは、互いに「話したいことがある」と告げ…。
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