BBCドラマ「検察側の証人」感想と解説|怒濤のどんでん返しと原作にはない結末

BBCドラマ「検察側の証人」

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どうも、夏蜜柑です。
BBCドラマ「検察側の証人」(全2話)の感想と解説です。

金持ちの未亡人を殺害した容疑で起訴された青年とその妻、青年の弁護士を中心に展開する法廷サスペンス。ラスト15分間で繰り広げられる怒涛の展開は必見!(AXNミステリー公式サイトより)

脚本は、2015年にBBCで放送されたドラマ「そして誰もいなくなった」のサラ・フェルプス。演出は「ロイヤル・ナイト 英国王女の秘密の外出」「キンキーブーツ」のジュリアン・ジャロルドが担当しています。

なんの情報も入れずに見た結果、みごとに騙されました。
後半のどんでん返しが鮮やかです。

舞台は1923年。第一次世界大戦から5年後のロンドンです。
戦争で壊れたものを元に戻そうと、誰もが必死にもがいている時代。

そういう時代背景も頭に入れ、登場人物の心情に注目して見るとより楽しめると思います。

夏蜜柑
撮影は主にリバプールで行われました。

番組概要

  • 原作:アガサ・クリスティ『検察側の証人』
  • 制作:イギリス(2016年)
  • 原題: The Witness for the Prosecution
  • 脚本:サラ・フェルプス
  • 監督:ジュリアン・ジャロルド

予告動画


あらすじ

容姿端麗な青年レナードは仕事に恵まれず、内縁の妻ロメインの収入に頼って貧しい暮らしを送っていた。そんなある日、大富豪の未亡人フレンチ夫人に見初められ、密かに情夫となる。ところがある夜、夫人が何者かに撲殺されてしまう。フレンチ夫人の殺害容疑で起訴されたレナードは、検察側に有力な証人が現れたことで、もはや有罪は避けられないと思われた。ところが証人の卑劣でおぞましい陰謀が露見し、事態は急展開を迎える。一躍、時の人となった弁護士のメイヒュー。しかし、そんな彼を待ち受けていたのは衝撃の事実だった…。(AXNミステリー公式サイトより)

原作について

このドラマの原作は、アガサ・クリスティの短編小説『検察側の証人』です。

1925年に雑誌『Flynn’s Weekly』誌に掲載され、その後クリスティ本人が戯曲化し、1953年に初演されています。

わたしは原作も舞台も映画も知らない状態でこのドラマを見ました。

犯人がわかった時には「あれっ、意外と大したことない」と思ったのですが、実はその先にさらなる〝どんでん返し〟がありました。まったく見抜けなかったです。

さらに今回のドラマ版では、原作にはない〝真実〟がラストに用意されています。

登場人物(キャスト)

ジョン・メイヒュー……トビー・ジョーンズ
事務弁護士。妻アリスと2人でつましく暮らしている。拘置所でレナードから弁護を頼まれ、レナードの無実を証明しようと裁判に挑む。第一次世界大戦のガス攻撃で息子を亡くし、自らもガスの後遺症で咳に悩まされている。

レナード・ヴォール……ビリー・ハウル
容姿端麗な青年。戦地からの帰還兵。定職に就けず、内縁の妻ロメインの収入に頼って生活している。偶然出会ったエミリーに気に入られ、情夫となる。エミリー殺害の容疑者として逮捕されるが、無実を訴える。

ロメイン・ハイルガー……アンドレア・ライズバラ
レナードの内縁の妻。ウィーン出身の舞台女優。レナードとは終戦間際に戦地で出会い、恋に落ちた。レナードの無実を証明できる唯一の証人だったが、突然検察側の証人となり、レナードが不利になる証言をする。

エミリー・フレンチ……キム・キャトラル
大富豪の未亡人。華やかな生活を好み、若い男性をとっかえひっかえしている。レナードを気に入って情夫にしていた。ある夜、自宅で遺体となって発見される。殺される前、全財産をレナードに相続させるという遺言書を作っていた。

ジェネット・マッキンタイアー……モニカ・ドーラン
エミリーの使用人。エミリーに献身的に仕え、彼女の性格や嗜好のすべてを把握している。レナードを嫌っており、エミリーが殺された夜「レナードを見た」と証言する。

クリスティーン・モファット
舞台女優。ロメインにスターの座を奪われる。ロメインが恋人のマックスに近づくことを危惧していた。

アリス・メイヒュー……ヘイリー・カーマイケル
ジョンの妻。ジョンと2人で質素な生活を送っている。戦争で亡くなった息子のことを常に思っている。

チャールズ・カーター卿……デヴィッド・ヘイグ
法廷弁護士。ジョンから依頼を受け、法廷でレナードの弁護を担当する。

感想と解説(ネタバレ有)

未亡人を殺害したのは誰か?

物語は、戦争帰りのレナードが大金持ちの未亡人エミリーに見初められるところから始まります。

レナードを気に入ったエミリーは、なんと遺産を全部レナードに譲ることに。
弁護士を呼んで、遺言を書き換えさせます。

遺言書を書き換えた数日後、エミリーは自宅で惨殺され、レナードに疑いがかかります。

レナードは、エミリーの情婦を続けていたのは仕事を紹介してもらうためだったと言い、エミリーが殺された時刻には帰宅していた、と無実を訴えます。

「こんなはずじゃなかった。帰還兵は英雄だと。バラに囲まれた家に住み、三度の食事ができると思ってた。仕事が選べて、金に困ることなどない。なのに肉みたいに値踏みされ、家賃のために耐えてる」

事務弁護士のジョンは、レナードの無実を信じます。
帰還兵のレナードに、戦争で死んだ自分の息子を投影したんですね。

レナードが無実だとすると、エミリーを殺した真犯人は……いったい誰なのか?

 

※この先はネタバレを含みます

 

妻・ロメインの裏切り

レナードの無実を唯一証明できるのは、殺害時刻にレナードと一緒にいた妻のロメインだけ。ところがロメインは、突然レナードを裏切って検察側の証人となります。

エミリーが殺された夜、レナードの帰りが遅かったことや、様子がおかしかったことを証言台で語るロメイン。ジョンは、貞淑で控えめな女性と思っていたロメインの裏の顔を知ってショックを受けます。

ロメインはクリスティーンに火傷を負わせてスターの座を奪い、彼女の恋人マックスを奪っていたのです。

しかもロメインはレナードと出会う前に結婚しており、「ハイルガー」は夫の姓であることが判明します。マックスとの結婚を望むロメインは、その事実を知るレナードを陥れて絞首刑にしようと企んだのでした。

ロメインの計画が明らかになったことで、レナードの無実が証明されます。

ロメインは偽証罪で捕らえられ、ジョンは裁判に勝利しました。

真犯人は家政婦……じゃない?

その後、レナードは莫大な遺産を受け取り、大金持ちになります。

ジョンは家政婦のジェネットをエミリー殺害の真犯人とし、ジェネットは裁判で絞首刑を言い渡されます。名声を得たジョンは、大きな事務所をかまえるほど出世します。

事件は解決したように見えました。
しかし、ジョンは大きな間違いを犯していました。

真犯人は家政婦のジェネットではなかったのです。

事件の真相

出世して裕福になったジョンは、妻のアリスを連れて旅行に出かけます。

旅先で偶然ジョンが見かけたのは、レナードの結婚式でした。
レナードにお祝いの言葉を贈ろうとホテルの部屋を訪ねると、そこにはロメインがいました。

レナードが結婚した相手は、ロメインでした。

2人が共謀していたことを知り、パニックに陥るジョン。
エミリーを殺害したのは家政婦のジェネットではなく、レナードだった。

「愛妻がアリバイ証言をしても説得力がない」と考えたロメインは、自分が〝悪女〟になることでレナードを救ったのです。

裁判の決め手となった証拠(偽の手紙)をジョンに手渡したのも、ロメインでした。

原作は未読なので、どの時点から2人が共謀していたのかはわかりません。もしかしたら最初から財産目当てでエミリーに近づいたのではないか……と思うほど、2人(特にロメイン)に狡猾な印象を持ちました。

戦争が残した傷

第一次世界大戦は、ドイツ・オーストリア・イタリア(三国同盟)と、イギリス・フランス・ロシア(三国協商)の対立を背景として起こった戦争です。

外国人(オーストリア人)のロメインが〝悪女〟となり、イギリス人のレナードを無実に仕立て上げることは、たやすいこと。少なくともロメインはそう考えたのだと思います。

レナードに肩を掴まれたジョンは「触るな、人殺し」とレナードの手を払いのけますが、レナードは「戦地じゃもっと殺したぞ」と言い返します。

「あなただって私たちと変わらない。勝つためなら何でもする非情さがある。罪を消したかったんでしょ? レナードの罪じゃなく自分の罪を」

ジョンもまた戦争によって深い傷を負い、逃れられない罪をひそかに抱えこんでいました。

もうひとつの真相と結末

ここからは、おそらくドラマオリジナルのストーリーと思われます。

2人から逃げるように部屋にもどったジョンは、妻アリスに「愛してる」と言います。
でも、アリスは決してジョンに「愛してる」とは言いません。

アリスは、あなたを愛することも許すこともできない、と言います。
ジョンは戦地に息子を連れて行くため、まだ若かった息子の年齢を詐称したのでした。

「あなたを許そうとした。愛そうともしたけど無理。あなただけ帰って、あの子は戻らない」

これからも一緒に生きていくけれども、愛することはないと断言するアリス。
打ちのめされたジョンは、ひとり日の沈む海に入っていきます。

ジョンが偽善者であることは、彼がクリスティーン・モファット(実は変装したロメイン)にお金を払っていないことからも、明らかです。

「妻と亡き息子に誓って金を払う」と約束し、裁判に勝って金持ちになったにも関わらず。

1957年の映画

1957年にはビリー・ワイルダー監督によって「情婦」というタイトルで映画化されています。

ドラマを見た後で映画版も観賞しました。

こちらは病み上がりの法廷弁護士が主人公で、レナードは女好きの道楽者。
レナードの妻は原作どおり「ドイツ人」という設定です。

ラストは少し違っていますが、ほぼ同じストーリーでした。
前半はコミカルな場面が多く見られ、明るいタッチで描かれています。

前半の明るさやレナードの屈託のなさ、レナードの妻が最初から冷酷で打算的な女に見える……という視覚的なトリックが、ラストのどんでん返しをより衝撃的にしています。

マレーネ・デートリッヒの演技が見事でした。

 

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