ネタバレ解説*BBCドラマ「そして誰もいなくなった」全話あらすじ・キャスト・感想

BBCドラマ「そして誰もいなくなった」(2015)

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BBCドラマ「そして誰もいなくなった」(全3話)の感想と解説です。

2015年のクリスティ生誕125年記念特集ドラマとして、英BBC Oneと米Lifetime Channelが放送したリメイクドラマ。BBCが手掛けるアガサ・クリスティシリーズの第1弾となる作品です。

舞台は1939年のイギリス。謎の人物によってデヴォン州の孤島に集められた、互いに面識のない男女10人。隔絶された孤島の屋敷で、ひとり、またひとりと、童謡「10人の小さな兵隊さん」の歌詞どおりに殺されていく…。

このシリーズの画面からたちのぼる陰鬱さ、薄ら寒さがたまりません。後半のたたみかけが見事で、原作とは違うラスト10分にしびれました。

作品概要

  • 製作国:イギリス(2015年)
  • 原題: And Then There Were None
  • 原作:アガサ・クリスティ『そして誰もいなくなった』
  • 脚本:サラ・フェルプス
  • 監督:クレイグ・ヴィヴェイロス

あらすじ

謎の人物から孤島の邸宅に招待された10人の男女が、童謡「10人の兵隊」の歌詞の通りに、次々と殺されていく。彼らしかいないはずの島のどこかに殺人鬼が潜んでいるのか。それとも、彼らの中の誰かが犯人なのか。繰り返される惨劇の中で、次第に追い詰められていく登場人物たち。互いを疑い、さらには自分が過去に犯した罪の記憶にも苛まれる。

AXNミステリー公式サイトより

予告動画

原作について

このドラマの原作は、1939年に発表されたアガサ・クリスティの長編小説『そして誰もいなくなった』です。

クリスティの最高傑作とも言われる作品で、ミステリ史に名を残す不滅の名作。世界中で1億部以上を売り上げている大ベストセラーです。

タイトルからも「そして誰もいなく」なることはわかりきっているのですが、外界から隔絶された空間の閉塞感や、意味のわからない童謡が醸し出す怖さ、探偵役不在でただ死に怯え恐怖する登場人物たちに、毎回(犯人を知っていても)ドキドキさせられます。

登場人物(キャスト)

※ネタバレを含みますのでご注意ください

オーエン夫妻
兵隊島の持ち主で、招待客8人と使用人2人を屋敷に集めた謎の人物。夫妻の名前を略すとどちらもU. N. Owenで、UNKNOWN (何者とも判らぬ者)と似た発音となる。初日の夕食後、レコードに記録した音声で島にいる10人の罪を明かす。

アンソニー・マーストン(ダグラス・ブース)
白い高級車を乗り回す軽薄な青年。2人の子どもを車で撥ねて死亡させている。子どもの親を非難して自身の罪を認めず、半年間免停になったことを不満げにぼやいていた。「喉をつまらせた」の詞になぞらえて、酒にシアン化物を盛られて毒殺される。島で最初の死亡者。死後、部屋からドラッグが見つかる。

エセル・ロジャーズ(アンナ・マックスウェル・マーティン)
オーエン夫妻に雇われた使用人。トマスの妻。夫と共謀して以前の雇用主を殺害し、遺産を手に入れた。実際に手を下したのは夫のトマスだったが、罪の意識に苛まれていた。「寝過ごして」の詞のとおり、朝になってもベッドから起きてこず、死亡が確認される(死因は不明)。2人目の死亡者。

ジョン・マッカーサー(サム・ニール)
退役した老将軍。第1次世界大戦の戦闘中、妻が部下と不倫していることに気づき、当の部下を銃で撃ち殺した。死の直前に「2人の幸せを願って身を引くべきだった」と後悔の言葉を口にしている。「デヴォンを旅した」の詞のとおり、散歩から帰らず、海岸で撲殺体となって発見された。3人目の死亡者。

トマス・ロジャーズ(ノア・テイラー)
オーエン夫妻に雇われた使用人。エセルの夫。妻と共謀して以前の雇用主を枕で窒息死させ、遺産を手に入れた。妻エセルの死亡後も屋敷に残って仕事を続けていたが、「自分を真っ二つ」の詞のとおり、斧で斬殺される。4人目の死亡者。

エミリー・ブレント(ミランダ・リチャードソン)
信仰に篤い厳格な老婦人。下層階級の女子の道徳教育に力を注いでおり、オーエン夫人から支援するという手紙をもらって島にやってきた。使用人だった10代の娘が妊娠した際、助けを求められたが突き放し、自殺に追い込んだ。「蜂に刺された」の詞になぞらえて、編み棒で頸部を刺突され死亡。5人目の死亡者。

ロレンス・ウォーグレイヴ(チャールズ・ダンス)
著名な判事。病を患っており、静養のために島へやってきた。無実と言われていた殺人事件の被告シートンに死刑判決を下し、処刑の場にも立ち合っている。招待客が次々と殺されていく中、常に平静を保ち他の招待客らを導く。「大法官府に入って」の詞になぞらえて、判事の正装に見立てた格好で銃殺される。6人目の死亡者。

エドワード・アームストロング(トビー・スティーヴンス)
ロンドンの医師。オーエン夫人の神経症を診るために島へやってきた。過去に酒に酔った状態で手術をして患者を死なせたことがある。酒を飲まないと手が震えるなど、アルコール中毒の症状が見られる。ウォーグレイヴ判事を信頼し、2人で結託して事件を解決しようとするが、判事の死後行方不明に。「燻製のニシンに飲まれて」の詞になぞらえて、嵐の海に突き落とされ溺死する。7人目の死亡者。

ウィリアム・ブロア(バーン・ゴーマン)
巡査部長。刑事としての手腕を買われ、オーエン氏に捜査を依頼されて島にやってきた。当初はデイヴィスと名乗り、正体を隠していた。ロンバートからは「ずんぐり」と呼ばれる。同性愛者を差別し、激しい暴行を加えて殺している。「大きなクマに抱かれて」の詞になぞらえて、熊の毛皮を被せられて殺された。8人目の死亡者。

フィリップ・ロンバード(エイダン・ターナー)
元陸軍大尉。オーエン氏から「事態を収拾する」役目として呼ばれる。そのため銃を所持している。ダイヤを手に入れるため東アフリカの部族を21人殺害した。初日の夜、ほかの招待客が罪を認めようとしない中、「俺については事実だ」とひとりだけ開き直って罪を認めた。ヴェラとは島へ向かう途中の列車で乗り合わせ、最初は反発し合っていたが、後に惹かれ合うようになる。9人目の死亡者。

ヴェラ・クレイソーン(メイヴ・ダーモディ)
教師。学校の長期休暇には家庭教師や秘書の副業をしている。職業紹介所でオーエン夫人の秘書の仕事を紹介され、島にやってきた。家庭教師をしていた子どもに泳げるはずのない距離を泳がせ溺死させている。子どもの叔父である青年ヒューゴと恋愛関係にあり、ヒューゴに遺産を相続させるためだったが、その後破局している。「自分で首をくくって」という詞のとおり、自室に用意されていたロープで自ら首を括った。10人目の死亡者。

10人の小さな兵隊さん

10人の兵士が食事に行った
1人が喉を詰まらせて9人になった

9人の兵士が夜更かしをした
1人が寝過ごして8人になった

8人の兵士がデヴォンを旅した
1人がそこに残り7人になった

7人の兵士が薪割りをした
1人が自分を真っ二つにして6人になった

6人の兵士が蜂の巣で遊んだ
1人が蜂に刺されて5人になった

5人の兵士が法律を志した
1人が大法官府に入って4人になった

4人の兵士が海に出かけた
1人が燻製のニシンに飲まれて3人になった

3人の兵士が動物園を歩いた
1人が大きなクマに抱かれて2人になった

2人の兵士が日なたに座った
1人が焼け焦げて1人になった

1人の兵士が最後に残った
自分で首をくくって、そして誰もいなくなった

感想と解説(ネタバレ有)

後ろ暗い過去を持つ10人

デヴォン州の孤島〝兵隊島〟に集められた10人。

各々の部屋には「10人の小さな兵隊さん」の歌詞が飾られており、ダイニングテーブルの上には10体の兵隊の人形が飾られていました。

この時点でもうすでに怖いです。この異様な設定がすべてと言ってもいいんじゃないかと思います。

10人が島に揃った最初の夜、不気味なレコードの音声が彼らの罪を明かします。実はこの10人には、法では裁かれなかった〝後ろ暗い過去〟がありました。

その後、島は完全な孤立状態となり、ひとりまたひとりと歌詞になぞらえた殺人が起こる。誰かが死ぬたびにテーブルの上の人形が減っていく…。

犯人はこの中にいる〝誰か〟なのか? それぞれが疑心暗鬼に囚われ、追い詰められていきます。

ここから先は、犯人とトリックのネタばらしをしています。

殺される順番

それぞれの犯した罪は、回想シーンで描かれます。全員、クロです。

気になるのは、彼らが殺される順番。これはおそらく心の闇の深さではないかと。つまり後に残る人ほど、闇が深いということ。最後に残されたのはヴェラでした。

オーストラリア出身の女優メイヴ・ダーモディの演技が素晴らしかった。白のように見えて真っ黒、というヴェラの恐ろしさ、不気味さが全身から滲み出ていました。

彼女の罪が回想シーンによって徐々に明かされる後半は、まさに息をのむ展開。張り詰める異様な閉塞感の演出も見事でした。

ヴェラの罪

ヴェラはロンバードを信じることができず、銃で殺してしまいます。最後に残ったのが2人で、自分が犯人じゃないのなら、相手が犯人ってことになりますもんね。

ひとり生き残ったヴェラでしたが、彼女の前に溺死したシリルの亡霊が現れ、彼女を死刑台(自室)へと導きます。たどり着いた部屋の中には、首つり用のロープが天井から下がっており、その下にはご丁寧に椅子まで用意されていました。

天井についていたフックはシャンデリア用ではなく、首つり用だったというわけです。ゾッとします。

シリルはヴェラが家庭教師をしていた男の子。ヴェラはシリルの叔父ヒューゴと恋に落ち、結婚を考えていました。ところがある日、ヴェラはシリルの母親から「シリルが産まれなければ、ヒューゴが遺産相続者だった」という事実を聞かされます。

ヴェラはヒューゴに遺産を相続させるために、シリルを溺死させたのでした。

「自分も助けにいったけれど間に合わなかった」とヴェラは嘘をつき、シリルの母親はその言葉を信じてヴェラに感謝の言葉を述べるのですが、恋人のヒューゴはヴェラの嘘を見抜いていました。ヴェラは体育教師だったので、走るのも泳ぐのも得意だったのです。

そのことを知っていたヒューゴは「君が間に合わなかったはずがない」とヴェラを詰り、別れを告げました。

原作にはないラスト10分

ロンバードを殺し、錯乱状態に陥ったヴェラ。自ら首つりロープに首をかけ、自殺を図ろうとします。そこへ登場したのが、死んだはずのウォーグレイヴ判事です。

ここ、ストーリーを知らない人はかなり驚いたのでは? ここから先の10分は原作にはないんですけど、抜群の見せ場でした。

10人を島に呼び集め、殺害した〝オーエン夫妻〟の正体は、ウォーグレイヴ判事でした。

ウォーグレイヴ判事の死は、アームストロング医師の協力による偽装工作で、実は死んでいなかったのです(その直後、アームストロング医師は殺された)。

転がった椅子にわずかに足の先が届くギリギリの状態で、首に食い込むロープから逃れようと必死に命乞いをするヴェラ。「ロンバードが犯人ということにして、私たち2人で生き残りましょう」

もちろん判事が許すはずもなく、ヴェラは椅子を外されてしまいます。

犯人の最期

ウォーグレイヴ判事はヴェラの部屋を出た後、自殺を図りました。他殺に見えるよう工夫して死ぬところも徹底していますね。

原作では彼は幼少時から生物を殺すことに快感を覚える性質を持っており、判事になったのも法の下で堂々と殺人を行えるという理由からでした。

このドラマでは、殺人犯シートンとの出会いによって、判事がずっと気づかないふりをしてきた自身の性質に気づかされる(彼曰く〝自分の才能に目覚める〟)という設定になっていました。

ちなみに原作では、警察は事件の真相を突き止めることができませんでした。ある漁師がボトルに入った手紙(ウォーグレイヴ判事の告白文)を見つけたことで、すべての謎が解明するという仕掛けになっています。

BBCドラマシリーズ