英国ドラマ「アガサ・クリスティー 殺人は容易だ」(全2話)についてまとめました。
1939年に発表されたアガサ・クリスティーの原作小説を、独創的かつ現代的な解釈を加えて映像化。
舞台を1950年代に移し、主人公ルークを若き黒人男性に置き換えるなど、大胆な脚色と斬新なアプローチが取り入れられています。IMDbの評価は5.8。
BBCが製作してきたアガサ・クリスティー原作ミニドラマシリーズの第7弾で、「そして誰もいなくなった」や「ABC殺人事件」などの流れを継ぐ作品です。
※この記事は随時更新中です。各話視聴後、加筆修正します
Contents
作品概要
- 放送局:NHK総合
- 放送時間:2025年7月27日(日)、8月3日(日)23:00
- 製作国:英国(2023年)
- 原題:Murder Is Easy
- 原作:アガサ・クリスティー『殺人は容易だ』
- 脚本:シアン・エジウンミ=ル・ベール
- 監督:ミーヌ・ガウル
あらすじ
1954年、ルーク・オビアコ・フィッツウィリアムがナイジェリアから政府職員としてイギリスへやってきた。彼はロンドンに向かう列車で老婦人のラヴィニア・ピンカートンと出会う。彼女は村で起きた連続殺人事件を通報するためロンドン警視庁に行くと言うのだ。当初は懐疑的だったルークだが、彼女がひき逃げに遭ったことで事の重大さを認識する。問題の村に乗り込み、独自に調査を始めるが、そこで奇妙な人々と新たな事件に遭遇する
ミステリーチャンネル公式サイトより
予告動画
原作について
このドラマの原作は、アガサ・クリスティーの長編小説『殺人は容易だ』(1939年刊行)です。
ポアロやミス・マープルが登場しない独立した作品で、元警察官のルーク・フィッツウィリアムを主人公とする巻き込まれ型のミステリー。
犯人は巧妙に殺人を重ね、周囲の人々はそれを「偶然の事故」として受け入れてしまうため、ルークの捜査は難航。物語の終盤では、意外な人物が犯人として明かされます。
全体的に抑えた筆致でダークな気配が漂い、村社会の閉鎖性や迷信、心理的な恐怖が強調されています。「殺人は容易だ」というタイトルの意味は序盤にあっさりと明かされますが、実はそれこそが本作のテーマ。
登場人物(キャスト)一覧
ルーク・オビアコ・フィッツウィリアム(デヴィッド・ジョンソン)
ナイジェリア出身の青年。イギリスの政府職員として働くため渡英。ロンドンへ向かう列車の中で老婦人ラヴィニア・ピンカートンに出会ったことで、事件に巻き込まれていく。イギリスに来てから奇妙な夢を見るようになる。
ブリジェット・コンウェイ(モーフィッド・クラーク)
ホイットフィールド卿の秘書で、婚約者。聡明だが村では孤立した存在。村の外からやってきたルークに興味を持ち、一緒に事件を調べ始める。
ラヴィニア・ピンカートン(ペネロピ・ウィルトン)
村の住人。村で起こった複数の事故死を連続殺人と疑い、ロンドン警視庁へ通報しに行く途中、ルークと出会う。ロンドンに到着した直後、ひき逃げに遭い死亡してしまう。
ゴードン・ホイットフィールド卿(トム・ライリー)
アッシュ館の主で、村で最も裕福な貴族。もともとはアッシュボトム出身で靴職人の息子だったが、セメント業で成り上がり、貴族の称号も金で手に入れた。優越志向が強く、アッシュボトムの人々から嫌われている。
トーマス医師(マシュー・ベイントン)
村の医師。ホイットフィールド卿と親しい。牧師の娘ローズ・ハンブルビーと交際している。
ハンブルビー牧師(マーク・ボナー)
村の牧師。貧富の分け隔てなく村の住人たちのことを考え、ホイットフィールド卿の傲慢な態度に辟易している。娘のローズとトーマス医師の交際に反対している。
ハンブルビー夫人(ニムラ・ブッチャ)
ハンブルビー牧師の妻。インド出身。従軍牧師としてインドに駐留していた夫と出会い、結婚した。
ローズ・ハンブルビー(フィービー・リコリッシュ)
ハンブルビー牧師の娘。トマス医師と交際している。
ホートン少佐(ダグラス・ヘンシャル)
村の住人。前年に妻を病気で亡くしている。競馬が趣味で、ラヴィニアとは馬好き仲間だった。ルークの部族である“イボ族”の言葉を話せる。ルークと意気投合し、事件の捜査に協力する。
ホノリア・ウェインフリート(シネイド・マシューズ)
村の住人。エイミーを住み込みのメイドとして雇っている。歴史に詳しく、ホイットフィールド卿の収蔵品の管理を任されている。
エイミー・ギブス(ホーリー・ギルクライスト)
ウェインフリート家のメイド。カーター夫人の姪。
トミー・ピアス
アッシュボトムの清掃員。アッシュ館のバルコニーの手すりから転落し、死亡した。
ハリー・カーター
アッシュボトムのパブの店主。酒に酔って水車小屋で溺死した。
リヴァーズ(ジョン・ポインティング)
ホイットフィールド卿の運転手。ホイットフィールド卿のことを快く思っていない。
ピアス夫人(タムジン・アウスウェイト)
転落死したトミー・ピアスの母。村でさまざまな仕事をしている。カーター夫人と親しく、村の事情に詳しい。
カーター夫人(キャスリン・ハウデン)
溺死したハリー・カーターの妻。エイミーのおば。ピアス夫人と親しく、村の事情に詳しい。
ブル刑事(ブライアン・マッカーディー)
村で続く死亡事件の捜査を担当する。何度も事件現場に居合わせたルークを犯人と疑う。
リード巡査(ケビン・メインズ)
村の警察官。ブル刑事の捜査を補佐する。
各話のあらすじ(ネタバレ有)
1954年6月。ナイジェリアの青年ルーク・オビアコ・フィッツウィリアムは、海を渡ってイギリスへ。植民地省のオシントン卿に評価され、政府職員として勤めることになったのだ。
ロンドンへ向かう列車の中で、ルークは老婦人のラヴィニア・ピンカートンと出会う。彼女は村で起きた3人の事故死を連続殺人と疑っていたが、犯人は“立派な人物”で地元では誰も聞く耳を持たないため、ロンドン警視庁に通報しに行くという。
当初は懐疑的だったルークだが、ラヴィニアがひき逃げ事故に遭って亡くなったことで、事の重大さを認識。オシントン卿から数日の待機を命じられたルークは、彼女の村ウィッチウッドへ向かう。
村では溺死したハリー・カーターと、転落死したトミー・ピアスの検視審問が行われていた。目撃者は存在せず、いずれもは事故死という評決に至る。
ルークは村の住人ブリジェット・コンウェイと出会い、アッシュ館での夕食に招かれる。アッシュ館の主人で村の有力者でもあるホイットフィールド卿は、彼女の婚約者だった。
夕食にはホイットフィールド卿の友人たち――ホートン少佐やトーマス医師、ハンブルビー牧師一家も招かれていた。ルークは文化人類学者と偽り、変死について調べていると説明したうえで、ラヴィニアが事故で死んだことを彼らに伝える。
翌朝、ホノリア・ウェインフリートの家で住み込みのメイドをしていたエイミー・ギブスが変死を遂げる。トーマス医師によると、彼女はせき止め薬と間違えて赤い帽子の塗料を飲んでしまったらしい。
だがそれを聞いたブリジェットは、「ありえない」と断言。赤毛のエイミーが赤い帽子をかぶるはずがないと言う。ルークとブリジェットはウェインフリート家を訪ね、エイミーの部屋を調べるが、瓶は1つしかなかった。
ルークとブリジェットは、トミーやハリーの死も他殺だと確信し、連続殺人事件と考えて調査に乗り出す。3人が同じ地域の出身だと聞いたルークは、アッシュボトムを訪れることに。
アッシュボトムのパブには、カーター夫人とピアス夫人、そしてホイットフィールド卿の運転手リヴァーズらがいた。彼らによると、トーマス医師は経済状況によって患者を選別し、裕福でない人には質の低いコデインしか処方しないという。彼がエイミーに渡した“せき止め薬”もコデインだった。
ルークはトーマス医師の診療所を訪れ、彼が優生思想に傾倒していることを知る。ハリーやトミー、エイミーの死を「合理的な排除」と呼ぶトーマス医師に、ルークは強い嫌悪感を抱く。
ルークはラヴィニアの友人だったホートン大佐と意気投合し、彼の妻リディアが亡くなる前、「毒を盛られた」と言っていたことを知らされる。リディアの主治医はトーマス医師だった。
ホイットフィールド卿に誘われ、ルークたちはテニスを楽しむ。ルークはブリジェットに迫り、なぜホイットフィールド卿を選んだのかと問い詰める。ブリジェットは愛した男に裏切られ婚約を破棄した過去を語り、「金銭的にも精神的にも安定が欲しい」と言う。
テニスの最中、ハンブルビー牧師が突然倒れ、息を引き取る。
亡くなったハンブルビー牧師は、娘のローズとトーマス医師の交際を認めていなかった。トーマス医師を怪しんだルークは、ローズの前で彼の危険な思想を暴く。
ハンブルビー牧師の遺体は解剖され、事件性はないと判断される。リヴァーズはエイミーらの遺体も調べてほしいと訴えるが、予算の無駄だと一蹴される。怒ったリヴァーズは「それが当局のやり方だ」と悪態をつく。
その後、リヴァーズはアッシュ館の敷地内で殺害され、遺体で発見される。ホイットフィールド卿は村の警官を抱き込み、内密に処理させる。
ルークは祖国ナイジェリアの独立を人任せにし、イギリス政府で働くことに疑問を抱き始める。ブリジェットはホイットフィールド卿と結婚したくないという本心をルークに打ち明ける。
ルークとブリジェットはトーマス医師の診療所に侵入し、彼がホイットフィールド団地の資金を横領している証拠をつかむ。だがリヴァーズ殺害現場で婦人靴のかかと部分を発見したルークは、犯人は女性かもしれないと疑い始める。
ホイットフィールド卿とブリジェットの婚約を祝うパーティーがアッシュ館で開かれる。そのさなか、トーマス医師が殺される。ルークはホイットフィールド卿の車の中から片方のかかとがない婦人靴を見つけ、ホイットフィールド卿が犯人だと確信する。
ルークに問い詰められたホイットフィールド卿は、死んだ人々がみな自分を侮辱し楯突く存在だったことを認め、「私の敵はみな神の罰を受ける」と豪語する。
ルークはアッシュボトムの女性たちの力を借りてホイットフィールド卿を拘束し、ブル刑事に逮捕させる。ロンドンでラヴィニアをひいた高級車も、ナンバーからホイットフィールド卿の車だと判明する。
そのころ、ブリジェットはウェインフリート家を訪ね、ホノリアにホイットフィールド卿との関係を問いただしていた。ホノリアはホイットフィールド卿と別れた経緯を語り、彼の恐ろしい本性を知っていたため、連続殺人犯だと疑っていたと話す。
だがブリジェットは、出された中国茶を飲んで朦朧とし、彼女こそ犯人だと気づく。ホノリアはかつて自立を望み、ひそかに大学を受験。家族に内緒で家を出ようとしたが、ホイットフィールド卿が父親に告げ口し、大学進学の道は閉ざされたという。
当時、ホイットフィールド卿はホノリアの父親に雇われていた。友人だった彼女の秘密を話したのは、彼女の父親に「言わないと追い出す」と脅されたためだった。
将来を奪われ、囚人のように閉じ込められたホノリアは、精神が崩壊。復讐のためにホイットフィールド卿を殺人犯に仕立て上げる計画を立て、彼の敵をつぎつぎと手にかけていったのだった。
ブリジェットの危険を察したルークは、ウェインフリート家へ向かう。そしてホノリアに殺されようとしていたブリジェットを救う。
ホノリアはトミーをベランダから突き落とし、ハリーを水路で溺死させ、エイミーの薬の瓶をすり替えて殺害。ハンブルビー牧師にはストリキニーネを、トーマス医師には庭のドクニンジンを、ホートン大佐の妻リディアにはヒ素を盛って殺した。リヴァーズを殺害し、証拠の婦人靴をホイットフィールド卿の車に隠したことも明かす。
ロンドン警視庁に通報しようとしたラヴィニアを尾行して突き飛ばし、交通事故に見せかけて殺したあと、目撃者として名乗り出て警官にホイットフィールド卿の車のナンバーを知らせたのもホノリアだった。
事件解決後、ブリジェットはホイットフィールド卿との婚約を破棄する。ルークは祖国の独立運動に加わるため、ナイジェリアに戻ることを決める。
感想
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