ネタバレ有*NHKドラマ「荒神」あらすじ感想|怪物の正体は何だったのか

NHKドラマ「荒神」

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NHK・BSプレミアムで放送されたスーパープレミアム スペシャル時代劇「荒神」のあらすじと感想です。

怪獣×時代劇を真面目に描いた斬新なドラマ。映像としては楽しめましたが、登場人物やストーリーに関しては描き足りない部分が多く、不満が残りました。

登場人物についてはこちら

NHKドラマ「荒神」 NHKドラマ「荒神」登場人物(キャスト)・あらすじ・原作

あらすじ(ネタバレ有)

朱音(内田有紀)が暮らす永津野藩・名賀村に、旅の浪人・榊田宗栄(平岡祐太)が傷だらけの少年を背負って現れる。少年が敵対する香山の民だとわかり人々は躊躇するが、朱音は自分の家に連れて帰り、介抱する。

朱音は永津野藩の筆頭家老・曽谷弾正の妹だった。圧政を敷いて領民を苦しめる弾正のやり方に心を痛めながらも、兄を止めることができず心を痛めていた。

目を覚ました少年・蓑吉は、「怪物に襲われた」と語る。朱音と宗栄は怪物の出現を砦に伝えに行くが、その直後、怪物に襲われ砦は壊滅する。

砦から戻る途中、朱音たちは蓑吉の祖父・源一(大地康雄)と会う。源一によると、怪物は香山が永津野と戦うために瓜生一族の呪術を使って生み出したものだった。その後、怪物は絵馬によって封印されていたという。

絵師の圓秀(柳沢慎吾)は、自分が絵馬を盗んだために封印が解かれたと知り、絵馬を返しに行く。だが怪物は名賀村に現れ、朱音と弾正の妻・音羽(前田亜季)に襲いかかる。

じい(中原丈雄)によって怪物を追い返すことに成功するが、弾正は音羽を怪物の生贄にして香山に復讐しようとする。弾正と朱音は、呪術を操る瓜生一族の末裔だった。幼い頃香山の者に命を狙われ、2人で逃げ延びてきたのだった。

朱音と宗栄、圓秀、源一は、音羽を助けるため妙高寺へ向かう。朱音は自らの背中に呪文を書き写すよう圓秀に頼み、怪物に身を捧げる決意をする。朱音を愛する宗栄は止めるが、あの怪物を生んだのは自分だと朱音は言う。20年前、朱音は実の兄である弾正と過ちを犯していた。

朱音を助けようとした弾正は、怪物に食われてしまう。朱音は怪物に身を捧げ、宗栄と源一が怪物にとどめを刺す。

一年後。名賀村には再び平和な日々が訪れていた。圓秀は飲まず食わずで怪物の絵を仕上げる。弾正と音羽の娘・小夜のうなじには、瓜生一族の証が浮き上がっていた。

感想(ネタバレ有)

この壮大な物語は、110分では足りない

最新のVFXを駆使しているのにどうしてか懐かしさの漂う怪物や、モノクロ寄りのコントラスト抑えめの映像、気品があって美しい内田有紀さん。映像としては充分楽しめました。

でも、やはり登場人物の描き方は浅くて物足りなかったし、ストーリーも慌ただしくて「ん?」「なぜ?」と疑問を抱くシーンが多かったですね。

わたしは原作を読んでいないので推測ですが、原作で丁寧に書き込まれていた背景や経緯、人物間のやりとり等を削ぎ落とし、“あらすじ”だけを追うドラマになってしまった印象です。600ページもある原作をたった110分で描こうというのだから、そりゃそうなってしまいますよね。

特に、弾正の人物描写がもったいなかった。ドラマを見ただけでは、独り善がりで冷酷で残虐な人狩り魔にしか見えず、朱音への愛情が伝わってきませんでした。

怪物の正体は、謎のままでよかった

私が最も気になったのは、「怪物が生まれた理由」です。

明念和尚は、怪物が現れたのは「誰かが命を吹きこんだ」からだと説明しました。圓秀は自分が封印である絵馬を盗んだからだと言い、弾正は自分が香山の民を殺し続けたからだと言い、朱音は自分が兄と過ちを犯したからだと言う。

おそらく、理由はひとつではないのでしょう。

原作は、映画「シン・ゴジラ」のような群像劇になっているとのこと。群像劇なら、たくさんの登場人物が怪物と対峙し、それぞれに理由を考え、自分なりの答えを出すことで、「怪物が生まれた理由はひとつじゃない」という結末に導くことが可能です。

だけど、このドラマは群像劇にはなっていません。
主人公の朱音が、怪物の正体(自分の正体)を追う物語になっています。

自然に考えれば、朱音が出した答え=怪物の正体ということになるのですが、正直、朱音と弾正の過ちが怪物を生んだという答えは、全然納得がいかない。で、「結局なんだったの?」という感想になってしまう。その点が最も残念なところでした。

110分では難しかったのかもしれないけど、このお話は群像劇だからこそ、このテーマが生きたように思います。

怖くない怪物。この明るさは狙い?

原作では描かれていたはずの「強大な敵に立ち向かう民衆」という部分も、非常に弱かった。怪物の襲撃シーンがそれほど怖くなかった、というのもあります。

怪物、絵的に面白かったけど、怖くはなかったよね。
「シン・ゴジラ」の蒲田くんそっくりで。

最新の技術使ってるのに、そこはかとなく漂う昭和感は何なんだろうなー。怪物が村を襲う場面は、むかし子どもの頃に見た特撮を思い出してしまった。

一応舞台は江戸時代の東北という設定なんだし、子守歌っていうミステリネタも出てくるし、もうちょっとおどろおどろしいというか、不気味で恐ろしい雰囲気を出してもよかったのではないかな。全体的に“暗さ”が足りない気がしました。

ちなみに、劇中に出てきた子守歌はこれ。

坊や坊やよ 泣くのはおよし
あれ見てみんろ
つちみかどさまが来なすった
鬼をぺろりと平らげた

でも、このドラマの明るさ、ちょっと狙ってる気がしないでもないですね。

モヤモヤしたのはこんなこと

最後に、わたしが消化できなかった不明点を上げておきます。

  • 永津野藩と香山藩がいがみ合うようになった原因は?
  • 瓜生一族って何者?
  • 朱音と弾正(瓜生一族)は、誰に命を狙われたの?
  • 弾正が復讐しようとしてる「香山」って、具体的に何を指すの?藩?藩主一族?土地?
  • 弾正はどうやって家老になったの?
  • じいは瓜生一族ではないのになぜ怪物を退治できたの?
  • 朱音が「思い出した」のは、何だったの?
  • 明念和尚はなぜそんなに詳しいの?

    いろいろ文句を並べ立てましたが、こういうチャレンジングなドラマは好きなので、どんどんやってほしいです。

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