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あらすじ(ネタバレ有)
昭和63年8月14日。山梨県の別荘で和辻製薬会長・和辻与兵衛(大和田伸也)の誕生日を祝うパーティーが開かれる。
集まったのは、与兵衛の大姪・和辻摩子(土屋太鳳)、摩子の母・淑枝(中山美穂)、摩子の継父・道彦(岡本健一)、与兵衛の妻・みね(夏木マリ)、与兵衛の弟・繁(鶴見辰吾)、摩子の婚約者・卓夫(松本岳)、与兵衛の主治医・間崎鐘平(吉田栄作)、そして摩子の大学の先輩で人気劇団の主宰者・一条春生(美村里江)。
春生は摩子の脚本家としての才能を高く評価していたが、与兵衛は女性の社会進出を認めておらず、女の幸せは「男を支え守ってもらう」ことだと考えていた。摩子にも大学卒業後は結婚して夫を支えるよう強要する。
その夜、摩子が血まみれのナイフを手にして部屋から出てくる。与兵衛に襲われそうになり、果物ナイフで刺してしまったという。親族たちは和辻家の名誉を守ることを優先し、強盗に襲われたと見せかけるため、全員で偽装工作を行う。
翌朝、通報を受けて富士河口署のベテラン刑事・中里右京(渡辺いっけい)が現場にやってくる。中里はその場にいた全員から話を聞き、強盗が与兵衛の部屋だけを狙って金品を盗んだことに疑念を抱く。
その後、再び中里が別荘を訪れると、偽装工作に使われたチューブの切れ端や犯人のものと思われるスニーカーが小麦粉の袋の中から見つかり、警察は内部の犯行と疑うようになる。
さらに、中里が犯人をかばった者は相続権を失うという「相続欠格」について語ると、一同は疑心暗鬼になり、互いを疑うようになる。
摩子の犯行を疑った春生は、摩子が誰かをかばっているのではないかと考え、摩子を問い詰める。摩子は一同の前で和辻家の人間を、特に母親を嫌っていることを打ち明け、与兵衛を殺したのは故意だったと告白する。
摩子が自首しようとしていることを知った淑枝は、自殺未遂を図る。事件の夜、摩子は淑枝から与兵衛を殺したことを打ち明けられ、母親の幸せを守るために自分が身代わりを買って出たのだった。
だが、淑枝もまた与兵衛を殺してはいなかった。淑枝が摩子に真実を語っていると、継父・道彦が部屋にやってくる。与兵衛を殺したのは道彦で、淑枝は道彦に騙されて計画に利用されていたのだ。
道彦は初めから和辻家の資産が目的で淑枝と結婚したこと、与兵衛に研究への資金援助を断られ、遺産を手にするために彼を殺す計画を立てたことを話す。
民法891条には但し書きがあり、殺害者が配偶者もしくは直系血族であったときは「相続欠格」を免れるという。道彦は最初から摩子を殺人犯に仕立て上げ、親族一同に偽装工作をさせ、わざと警察にバラして「相続欠格」にさせ、淑枝ひとりに遺産を相続させるつもりだったのだ。
道彦は摩子を自殺に見せかけて殺そうとし、背後から淑枝に刺されて命を落とす。一同が見守る中、摩子と淑枝は警察に連行されて別荘を後にする。
3年後。バブルが崩壊し、和辻製薬は海外企業に買収されようとしていた。摩子と再会した春生は、摩子が『Wの悲劇』で新人戯曲賞最優秀賞に選ばれたことを喜ぶ。
摩子は淑枝とは会っていないことを明かすが、「いつかもう一度、母と出会い直してみたい気もします」と語る。
感想(ネタバレ有)
別荘の間取りが1984年映画版(の中の舞台装置)とほぼ一緒だったせいか、舞台を見ているようでした。
前半の、親族全員による偽装工作のくだりがリアルで面白かったです。渡辺いっけいさん演じる中里刑事もよかった。中里刑事が自力で偽装工作を見破る場面があったらよかったんですけどね。ストーリーの構成上「犯人がわざとバラす」ことが必須だったので、仕方ないんだけど。
以下、事件の全容を時系列にしてみました。
- 道彦が与兵衛に資金援助を断られ、遺産を手に入れるため殺害を計画
- 8月14日、親族が集まる誕生日パーティーで与兵衛を殺害する
- 淑枝に「誤って殺してしまった」と嘘をつき、摩子に罪を被せるよう説得
- 淑枝が「私が殺した」と摩子に助けを求める
- 摩子が身代わりになると言い出し、親族の前で「おじいさまを殺してしまった」と告白
- 親族が摩子と和辻家の名誉を守るため、偽装工作をする
- 15日朝、警察に通報
- 道彦がわざと警察の目に付くよう「偽装工作の痕跡」を残す
- 警察が偽装工作に気づく
- 「相続欠格」により、淑枝以外の親族は相続権を失う
- 淑枝が罪悪感にかられて摩子に真実を打ち明ける
- 道彦が摩子を自殺に見せかけて殺そうとする
- 淑枝が道彦を殺害する
犯人は摩子の継父・道彦でした。偽装工作がバレた時点で警察が親族についてひととおり調べた際、それぞれに与兵衛を殺す動機があったことが判明しました。
吉田栄作さん演じる主治医の間崎が実は与兵衛の隠し子だったり、かなりドロドロなお家事情。このあたり、原作ではもっと書き込まれているのかもしれませんが、ドラマは割とあっさりしてましたね。
摩子は幼い頃から母・淑枝の不幸な姿をまのあたりにしてきて、今度こそ自分が母を守りたかったと語っていたけど、別の思いもあったんじゃないかと思う。
摩子が春生に「誰かをかばってるんじゃないの?」と聞かれ、疑いを払拭するために親族の前でぶちまけたこのセリフ。
「この家の人たちがずっと嫌いだったんです。和辻家の男の人たちは、傲慢で不潔で。でも私が本当に嫌いなのは、和辻家の女の人。男の人に従って泣き寝入りするだけ。この家から逃げる勇気もない。ママ、あなたもよ。私はあなたが一番嫌い!」
これもまた、彼女の本心だったんじゃないかなぁと。印象的なシーンでした。
全体的には満足していますが、わたしとしては、もう少し「密室劇の怖さ」が欲しかったなぁ。人里離れた別荘、雨の降る夜、殺人事件、真夜中の偽装工作…と、怖い要素は揃っているのに、あまり怖さを感じなかった。
あえて恐怖演出を省いたのかもしれませんが、物足りなく感じてしまいました。
NHKドラマの記事