WOWOWで放送された中国ドラマ「三体」第21話~第30話(最終話)についてまとめました。
終盤に突入し、これまで描かれてきた数々の謎を解き明かす壮大な答え合わせが始まります。難しすぎて理解できない部分もありますが、雰囲気さえつかんでいれば大丈夫。
第29話の「古筝作戦」は圧巻でした。
▼第11話~第20話はこちら
中国ドラマ「三体」第11話~第20話ネタバレ・感想・登場人物(キャスト)・視聴方法※この記事は随時更新中です。各話視聴後、加筆修正します
作品概要
- 放送局:WOWOW
- 製作国:中国(2023年)
- 原題:三体
- 原作:劉慈欣『三体』
- 脚本:田良良(ティエン・リャンリャン)/陳晨(チェン・チェン)
- 監督:楊磊(ヤン・レイ)
あらすじ
申玉菲に突然起きた出来事に動揺する汪ミャオ。気持ちの整理がつかない中、「三体」プレーヤーオフ会への招待メールが届く。立ち止まっている時ではないと史強に背中を押されて汪ミャオは会場に向かうが、そこにいたのは高難度のゲームをクリアした社会的エリートたちと、オフ会主催者の潘寒だった。プレーヤーとの質疑応答で「三体」の目的について問われた潘寒は、ある質問を参加者に投げかける。
WOWOW公式サイトより
視聴方法(動画配信)
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登場人物(キャスト)
主要人物
汪淼(ワン・ミャオ)/張魯一(チャン・ルーイー)
応用物理学者。ナノ素材の研究者。ある日、作戦センターでの秘密会議に招集され、世界中で相次ぐ物理学者たちの自殺を調査するため、学術組織《科学境界(フロンティア)》への潜入を依頼される。自身も不可解な現象に見舞われるようになり、謎を解くために史強と協力して調査を進めることに。VRゲーム「三体」の世界に入り、三体世界の秘密を探る。
史強(シー・チアン)/于和偉(ユー・ホーウェイ)
作戦センターに所属する停職中の警察官。捜査官としては優秀だが、礼儀知らずで学問については門外漢。元上官である常偉思の指示で、科学者たちの自殺を調査する。汪淼とともに《科学境界》を調べるうちに、自殺した楊冬の母で天体物理学者の葉文潔の関与を疑い始める。
葉文潔(イエ・ウェンジエ)/陳瑾(チェン・ジン)
天体物理学者。楊冬の母。文化大革命で理論物理学者だった父親を亡くしている。清華大学出身で、教壇にも立っていた。若い頃は紅岸基地に勤務し、地球外知的生命体の探査を目的とする“紅岸プロジェクト”に参加していた。
作戦センター
常偉思(チャン・ウェイスー)/林永健(リン・ヨンジエン)
作戦センターの陸軍少将。史強の元上官。各国の司令官たちと協力し、姿の見えない〝敵〟と戦っている。世界各地で相次ぐ科学者たちの自殺に事件性を感じ、史強に調査させる。学術組織《科学境界》の関与を疑っており、汪淼に潜入捜査を依頼した。
徐冰冰(シュー・ビンビン)
史強の助手として捜査課から配属された警察官。10人分の働きをする有能な助手。
地球三体協会(ETO)と周辺人物
マイク・エヴァンズ
地球三体協会(ETO)の創始者。大型タンカーを改造して第2の紅岸基地“審判の日(ジャッジメント・デイ)”号を作り、〝主〟との連絡手段を確立した。〝主〟が降臨して人類に罰を与えることを望む「降臨派」のトップ。
潘寒(パン・ハン)
環境保護主義の生物学者。環境破壊に対して強い危機感を持っており、記者の慕星を利用して科学への不信感を広めようとする。エヴァンズの側近でもあり、敵対する「救済派」を一掃すべく画策する。
申玉菲(シェン・ユーフェイ)/李小冉(リー・シャオラン)
外国籍の物理学者。学術組織《科学境界(フロンティア)》の会員で、汪淼を科学境界に誘い、「三体」のゲームに参加させた人物。人類を救済するために〝三体問題〟を解決しようとする「救済派」だったが、潘寒と対立して殺害された。
慕星(ムー・シン)
独立系メディアの記者。環境保護について調べている。潘寒への取材を通して彼に感化され、協力するようになる。
魏成(ウェイ・チョン)
申玉菲の夫。天才数学者。ひたすら三体問題の計算をしている。潘寒に計算をやめるよう脅され、現在は公安局に匿われている。
葉文潔の周辺人物
楊冬(ヤン・ドン)
自殺した物理学者。ひも理論の研究者。自殺する10か月前に超弦理論の衝突実験に失敗し、婚約者の丁儀と結婚して普通に暮らす道を選択していた。遺書には「人類の物理学は存在しない」と書かれていた。
丁儀(ティン・イー)
楊冬の婚約者。基礎物理学者。楊冬の死の真相を知りたいと思っており、作戦センターの会議に出席する。
陳雪(チェン・シュエ)
葉文潔の姪。母親の葉文雪と離別し、大学からは文潔が援助していた。今年6月にマサチューセッツ工科大学を卒業し、帰国して文潔の家の上の階に住んでいる。武術の達人で、葉文潔のボディーガードをしている。
1960~70年代の人々
葉文潔(イエ・ウェンジエ)/王子文(ワン・ズーウェン)
天体物理学者。父親が反革命派だったことから家族がバラバラになり、大興安嶺の営林場に配属される。その後、反革命罪に問われるが、父の教え子だった楊衛寧に引き抜かれ紅岸基地へ。地球外知的生命体の探査を目的とする“紅岸プロジェクト”に参加する。
葉哲泰(イエ・ジョータイ)
葉文潔の父。理論物理学者。大学教授。文化大革命の犠牲となり、1967年に紅衛兵に殺害された。
紹琳(シャオ・リン)
葉哲泰の妻。文潔の母。物理学者。夫・哲泰とは科学に対する見識が異なリ、後に彼が連行された際に文雪とともに糾弾した。
葉文雪(イエ・ウェンシュエ)
葉文潔の妹。父親を連行させ、母・紹琳とともに糾弾した。
雷志成(レイ・ジーチョン)
紅岸基地の政治委員。野心家。幹部として常に前線に立ち、困難で危険な作業を率先して行う。葉文潔の功績を自分のものにしようとする。
楊衛寧(ヤン・ウェイニン)
紅岸基地のチーフ・エンジニア。かつての葉哲泰の教え子。重刑を課されそうになった葉文潔を救うため、雷志成に頼んで紅岸基地に異動させた。文潔の研究を後押しする。
参考
射撃手と農場主
《科学境界》の用語。第2話で語られた。
Shooter(狙撃手)とFarmer(農場主)を略してSFと呼ばれる。宇宙の法則の本質を説明する2つの仮説、「射撃手仮説」と「農場主仮説」を意味する。
【射撃手仮説】
凄腕の射撃手が的に10センチ間隔で一つずつ穴を開ける。この的には二次元生物が住んでいて、その二次元生物の科学者は“宇宙”を観察して「10センチごとに必ず穴が空いている」と気づく。射撃手の気まぐれによる行為を、“宇宙の不変の法則”だと考えた、というもの。
【農場主仮説】
ある農場で農場主が毎朝11時に七面鳥に給餌する。七面鳥の科学者は、この現象を一年近く観察し、一度の例外も見つからなかったため、「この宇宙では毎朝午前11時に食べ物が出現する」と発表する。しかしその日は感謝祭で、午前11時にエサは現れず、農場主がすべての七面鳥を殺してしまった。
三体問題
天体力学の一分野。三個の物体が、万有引力で引き合っている場合の運動を明らかにする研究。二体問題はニュートンによって解かれたが、三体問題は今日に至るまで厳密な解は得られていない。
精選版 日本国語大辞典より
第21話~第30話のあらすじ(ネタバレ有)
2007年。申玉菲の死に関して聴取を受ける潘寒。だが防犯カメラには、彼が去った後に申玉菲が拳銃で自らを撃つ様子がはっきりと映っており、自殺として処理される。
動揺する汪淼のもとに、「三体」プレイヤーオフ会への招待メールが届く。汪淼が会場に足を運ぶと、そこには高難度のゲームをクリアした社会的エリートたちが集まっていた。オフ会主催者として登場した潘寒は、「もし三体文明が実在し、彼らが新たな故郷を求めていたら?」と参加者に質問する。
参加者のうち6名は、人類への絶望を語り、三体文明の地球降臨を望むと表明。汪淼は潘寒の目的を探るために熱心なファンを装い、彼らに賛同する。潘寒は汪淼たちを同志と呼び、“地球三体協会(ETO)”に迎え入れる。
三体文明が実在すると確信した汪淼と史強は、カウントダウンや宇宙の明滅、科学者の死には三体人が関わっており、彼らの目的は地球への移住だと常偉思に報告する。
史強は記者の慕星に真実を告げ、潘寒に利用されていることを指摘する。慕星は作戦センターに協力することを決め、潘寒のパソコンからコピーした地球三体協会の会員名簿を史強に手渡す。作戦センターはその情報をもとに会員の一斉逮捕に踏み切るが、それは“救済派”を一掃させるための潘寒らの策略だった。
潘寒は“救済派”が拡大した原因となったゲーム『三体』のサーバーを閉鎖するよう、エヴァンズに提案する。
作戦センターは地球三体協会(ETO)の欧州支部を襲撃し、大勢の会員を逮捕する。だが逮捕されたのは“救済派”のみで、“降臨派”は含まれていなかった。人工衛星上にある『三体』のサーバーも潘寒によって閉鎖され、汪淼がログインするとゲームはラストシーンを迎えていた。
「三体」の世界では、汪淼が最後にログインしたときから3つの文明が過ぎ、三体文明は星間航行能力を得るまでに大きく飛躍していた。汪淼は三体艦隊が4光年の彼方にある星系へ向かって旅立つ場面を目撃し、目的地は間違いなく地球だと確信する。
作戦センターは地球三体協会の中に救済派、降臨派、生存派といった派閥があり、互いに攻撃し合っていることを把握する。ゲーム「三体」のプレイヤーは三体問題の解決を主張する救済派に属し、申玉菲も救済派だった。常偉思は「総帥」と呼ばれる人物が“主”と連絡を取っているのではないかと推測し、総帥の正体を突き止めようとする。
慕星は「総帥」の情報を得るため潘寒に接触するが、史強は彼女の身に危険が及ぶことを懸念して調査をやめるよう忠告する。だがその夜、慕星は葉文潔の姪・陳雪に襲われ、路上で命を落とす。陳雪を煽って慕星を襲わせたのは潘寒だった。
慕星が殺された現場を訪れた史強は、彼女がバイクに隠していたレコーダーを発見する。レコーダーには犯人との会話が録音されており、慕星は「清華大を調べたせい?」と発言していた。そのことから、史強は彼女が総帥の正体に気づき、清華大関係者というヒントを残したと推測する。
首を折るという殺害方法と、防犯カメラに映っていた姿から、陳雪にたどり着く史強と徐冰冰。2人は汪淼のオフィスを訪れ、慕星が陳雪に殺されたこと、その直前に清華大学を調べていたことを話す。
慕星の事件と海市行きの列車内で起きた殺人事件は、葉文潔の姪・陳雪による犯行と推測された。それは葉文潔が「総帥」であることを示しており、汪淼は困惑を隠せない。
地球三体協会の集会の日。史強は特殊部隊と武装ヘリを待機させたうえで、汪淼を会場に送り込む。救済派の怒号が飛び交う中、潘寒は申玉菲を殺したことを認め、「協会が危機に陥ったのは彼女のような裏切り者がいるからだ」とうそぶく。
そこへ〝総帥〟として葉文潔が現れる。文潔は申玉菲が情報提供者だったことを明かし、エヴァンズと降臨派による協会への裏切り行為を戒め、その場で陳雪に潘寒を殺害させる。
文潔は同志たちに汪淼を紹介し、「ナノ技術は〝主〟が真っ先に地球から消滅させたい技術」だと告げる。その理由を問う汪淼に、文潔は紅岸基地での出来事を語り始める。
当時、紅岸基地でひそかに行われていた地球外文明の探査は難航していた。文潔は太陽からの干渉が監視の妨げになっていると考え、雷志成と楊衛寧の許可のもと、太陽雑音を排除する研究に取り組む。しかし、太陽放射の変動が起きても太陽表層に変化が見えないという奇妙な現象の謎が解けず、研究は混乱に陥ってしまう。
1971年。太陽雑音の研究に行き詰まった葉文潔は、ある日、外国の学術誌に掲載された論文に目を留める。そこには、木星が2度にわたって自ら強力な電磁波を放つのを観測したと記されていた。その日付は、紅岸監視システムが強烈な太陽の干渉を受けた日と同じだった。
文潔は太陽が木星の電磁波を受け、それを1億倍近くに増幅して反射したという仮説を立てる。太陽放射の変動が起きても太陽の表面で変化が見られなかったのは、宇宙からの放射線を太陽が増幅して反射したためだと彼女は考えていた。
もし紅岸の送信出力を閾値以上にして太陽に向けて送信すれば、太陽がスーパーアンテナとなり、地球から宇宙に向けて2型文明レベルの送信ができる。文潔は自らの仮説を楊衛寧に説明し、実験の許可を得ようとするが、雷志成は政治的リスクが高すぎるという理由で却下する。楊衛寧もまた、実験のことは忘れて研究に戻れと諭す。
どうしても諦めきれない文潔は、アンテナの性能テストという名目で、ひそかに太陽に向けて送信を実行する。しかしその後なんの反応も得られず、文潔は落胆する。
1973年の冬、葉文潔は楊衛寧と結婚した。穏やかな日々を送る中で、抑圧されていた過去の辛い記憶が蘇り始める。哲学や歴史に関する本を大量に読み、人類の邪悪な一面を見つめるようになった彼女は、生きる目標を失い、喪失感に陥っていた。
1979年10月21日。文潔は当直中、紅岸システムが受信した電波波形の異常に気付く。過去に受信した電波の識別度が全てC以下だったのに対し、今回の電波の識別度はAAAAA。それは紅岸の送信したメッセージと同一言語が使用されていることを意味していた。
文潔が受信データの解読を行うと、そこには「応答するな」というメッセージが…。
1979年10月21日。紅岸システムが受信した電波波形の異常に気付いた葉文潔は、受信データを解読する。すると「応答するな。応答すれば座標が特定される。あなた方の惑星は侵略され、世界は征服される」というメッセージが現れる。
三体文明の存在と彼らの星間移民の意図を知った文潔は、受信したメッセージを隠し、送信管制室へ向かった。そして三体文明を受け入れるため、太陽に向けて送信した。その日、文潔は山の上で倒れ、夫の楊衛寧から妊娠していることを告げられたのだった。
2007年。地球三体協会の集会で、葉文潔は汪淼が研究するナノ技術が、いずれ人類を宇宙に送り出す「宇宙エレベーター」の建設につながると話す。人類が宇宙空間に進出することは、〝主〟の降臨を妨げることになりかねない。だからナノ技術を潰す必要があるのだと語る。
史強率いる特殊部隊が集会に突入し、銃撃戦になる。陳雪は葉文潔を守るために核爆弾を持ち出し、文潔の解放を要求する。核爆発は起きないと考えた常偉思は、史強に球を撃つよう命じる。至近距離で球を撃った史強は被爆し、救急車で搬送される。
葉文潔は逮捕され、常偉思が尋問を行う。汪淼と丁儀はモニター室でその様子を見守ることに。紅岸勤務時の殺人容疑について問われた文潔は、1979年10月21日に雷志成と楊衛寧を殺害したことを認める。
その日、三体文明からのメッセージを受信した文潔は、その事実を報告することなく、独断で返信を行った。だが送受信データをコピーしていた雷志成は受信メッセージに気づき、報告を怠った文潔を叱責したうえで、黙秘するよう要求する。
雷志成は文潔の功績を横取りし、地球外文明の第一発見者として自らの名を歴史に刻もうともくろんでいたのだ。しかし彼が報告すれば、文潔がひそかに行った送信も発見され、三体人による世界征服は阻止されてしまうだろう。文潔は雷志成に同意しつつ、ひそかにある決意を固める。
1979年10月21日。葉文潔は設備室で点検するふりをして、受信システム用のアース線に不具合を発生させる。想定どおり、雷志成は原因究明と修理のために、ロープをつたって危険な崖を下りていった。
ロープを切ろうとする文潔だったが、夫の楊衛寧が現れ、同じロープを使って崖を下りていってしまう。今を逃せば二度と機会はない。そう考えた文潔は一切の感情を断ち、隠し持っていたノコギリでロープを切断する。2人は崖下に転落し、帰らぬ人となった。文潔は疑われることなく、2人の死は事故として処理された。
その後、斉家屯の子どもたちが紅岸基地を訪ねてくるようになり、文潔は子どもたちを集めて授業を行うようになる。楊冬の出産時、大量に出血して病院へと搬送された文潔を救ったのは、斉家屯の人々による献血だった。
出産後、すっかり体が弱った文潔は、生まれたばかりの楊冬とともに、斉家屯で療養することになった。村の人々が「2人の面倒を見る」と基地の幹部に掛け合ってくれたのだ。村で過ごした穏やかな時間は、文潔にとって夢のような、忘れがたい日々となった。
出産から2年後、父・葉哲泰とともに名誉を取り戻した文潔は、紅岸基地を去り、母校の教壇に立つことになった。紅岸での出来事が非現実的に思え、仕事に没頭することで忘れようとしたという。
ある日、文潔は父を裏切った母・紹琳のもとを訪れ、再会を果たす。彼女は教育部の元高級幹部と再婚し、裕福な暮らしを手に入れていた。父の死の責任から逃れようとする母親や、彼女を擁護し亡父の言動を非難する再婚相手に、文潔は憤りを覚える。
2007年。被爆した史強は入院し、検査を受ける。心配して見舞いに来た汪淼を追い返し、徐冰冰から検査結果を受け取る史強。涙を流す徐冰冰に、史強は「まだ生きてるぞ」と告げる。
紅岸基地を離れて大学に戻った葉文潔は、あるプロジェクトのために訪れた山村で風変わりな外国人マイク・エヴァンズと出会う。エヴァンズは絶滅危惧種の鳥を救うため、ひとりで中国に来て植樹を行っていた。
エヴァンズの父親は多国籍石油企業の総裁だった。彼が12歳のとき、石油を積んだタンカーが座礁する事件が起きた。海に流れ出した大量の石油で、海辺に生息する鳥や魚など多くの生物が命を落とした。
悲惨な現場をまのあたりにして涙を流すエヴァンズに、父親は「優先すべきは人類の生存と快適な生活の確保だ」と豪語した。その出来事がエヴァンズの人生を変えたという。彼は「地球上の生物の命はすべて平等」という〝種の平等主義〟を説いたが、人類が生存する限り、その理想は実現不可能だった。
3年後、葉文潔はエヴァンズから助言を求められ、再び彼のもとを訪れた。父が亡くなり45億ドルの遺産を相続したが、なんの意味もないとうなだれるエヴァンズ。どうやっても人類の愚行を止めることはできないと嘆く彼に、文潔はとうとう紅岸基地での出来事と三体世界について語ったのだった。
エヴァンズは文潔の話が真実かどうかを検証すると言い、姿を消す。そして3年後、文潔は彼がタンカーを改造して作った第2の紅岸基地、“審判の日(ジャッジメント・デイ)”号へと招かれた。エヴァンズは文潔から聞いた座標と周波数を使って三体世界と交信し、メッセージを受信したという。
“審判の日”号には、彼が創設した地球三体協会(ETO)の初代メンバーが乗船していた。彼らは三体文明によって人類文明を矯正し、罪なき世界を築くという理想に賛同し、世界各地から集まってきた人々だった。葉文潔はエヴァンズの求めに応じ、地球三体運動の総帥に就任した。
しかしその後、地球三体協会は降臨派、救済派、生存派に分裂。派閥争いに発展した。エヴァンズ率いる降臨派は人類滅亡を企み、三体世界との交信を独占した。文潔は対抗措置として紅岸基地の跡地に第3の紅岸基地を設立するも、三体世界からのメッセージを受信することはできなかった。
さらに、“審判の日”号を攻撃すれば、彼らが船のコンピューターに保存している三体世界からの重要なメッセージを失うことになる。そのため船には手を出せなかったと文潔は語る。
三体世界から送られてきたものに、電波以外のものはあったのか。そう問いかける常偉思に、葉文潔は三体世界から送られた2つの陽子が2年前に到着していたことを明かす。
三体艦隊が地球に到達するまでに要する時間は400年。彼らが地球に送った2つの陽子は、その400年間に人類科学が進歩しないように縛るための“枷”だという。
聴取を終えた常偉思に代わり、汪淼が葉文潔と面会する。楊冬の実験が成功し得ないことを知りながら、なぜそれを伝えなかったのか。汪淼の疑問を見透かすように、文潔は娘の死について語り始める。
物理学を失った楊冬は、生命の半分を壊されつつも、人生を諦めないために普通の女性として暮らす道を選択した。しかし偶然、文潔のパソコンに残っていたファイルを目にし、母親と三体世界の秘密を知ってしまったのだった。楊冬から物理学を奪い、残りの半分の命を壊したのは私だと、葉文潔は静かに語る。
文潔によって明かされた真実に、科学者である汪淼と丁儀は打ちのめされる。退院した史強はそんな2人を奮い立たせるように、各戦区の代表者たちが集まる共同作戦会議に出席させる。
作戦の目的は、“審判の日”号のメインコンピューターに保存されている三体文明からのメッセージを奪取すること。問題は、データを削除されないよう乗組員に気づかれる前に占領し、制御しなければならないという点だった。
各国の代表者が頭を悩ませる中、史強が“飛刃(フライング・ブレード)”を利用した奇策を提案する。パナマ運河の両岸に2本の柱を立て、その間にナノ素材でできた“飛刃”を平行に張って船を切断するという案だった。
“飛刃(フライング・ブレード)”を利用するという史強の案が全会一致で採用され、常偉思は各戦区に任務の振り分けを行い、汪淼に全面サポートを依頼する。作戦のコードネームは“古筝作戦”。
作戦当日、パナマ運河に到着した汪淼は、前線指揮官のスタントン大佐とともに作戦の遂行を見守る。罪のない人間を傷つけるのではないかと不安を抱く汪淼だったが、スタントン大佐によると船の乗組員はテロリストや連続殺人犯など凶悪な犯罪者ばかりだった。その中には、大佐の7歳の息子を虐殺した脱獄囚も含まれていた。
作戦はみごと成功し、“審判の日”号は50センチ間隔に張られた“飛刃”によって破壊される。乗組員たちは何が起きたのかわからないまま切り刻まれ、エヴァンズも命を落とす。
鉄くずとなった“審判の日”号からハードディスクが回収され、作戦センターは降臨派が留保していた三体世界からのメッセージをすべて手に入れることに成功。保存されていたデータの中には、降臨派が想像に基づいて作った、三体世界を描写したゲームソフトも見つかった。
汪淼と史強はゲームにログインする。そこは三体世界の天文観測所で、宇宙の監視を続ける“監視員”がたったひとりで孤独な監視を続けていた。そこへ、1971年に葉文潔が紅岸基地から送信したメッセージが届く。
太陽がひとつだけで永遠に恒紀が続く楽園のような星に、人類文明が誕生した。メッセージの内容からそのことを知った監視員は、独断で「応答するな。あなたがたの星は侵略され、征服される」と返信する。
彼の裏切り行為はすぐに三体元首の知るところとなり、厳しく糾弾される。監視員は、文明生存に全てを捧げ、感情を排除し、文学も芸術もなく、愛すらも語れない三体世界の生活に何の意味があるのかと問う。そして理想の世界である地球を救えたならば、自らの生涯は無駄ではないと訴える。
しかし元首は彼を許さず、命を奪う代わりに、地球が三体文明によって滅ぼされる日まで生きながらえるよう命じる。そして三体艦隊の総帥に、艦隊建造後すぐに出航せよと指示する。
ゲーム「三体」に入った汪淼と史強は、三体人が生存能力を高めるために感情を排除してきたことを知る。彼らに必要な精神は冷静さと無感覚であり、恐怖や悲嘆、喜び、幸福や美感に関する要素は存在しなかった。
地球時間の1983年。三体世界に葉文潔からの返信が届く。すでに三体艦隊は出航していたが、艦隊が到着するまでに地球文明の技術レベルが三体文明を凌駕する可能性があることを懸念した元首は、地球の科学技術の発展を止める3つの手段を講じる。
1つは科学の有害面を見せ、大衆に科学の嫌悪感や恐怖を抱かせること。2つめは超自然的な力を見せて、非科学で科学的思考を圧倒し、思考体系を瓦解させること。そして3つめは地球の科学を今のレベルに留め、重要なブレークスルーが起きないように基礎科学を停滞させることだった。
その計画は“智子計画(プロジェクト・ソフォン)”と呼ばれ、肉眼では見えない陽子(プロトン)をスーパーコンピューター“智子(ソフォン)”に改造して地球に送り込み、科学の発展を封じるという想像をはるかに超えた計画だった。
三体世界から地球に送り込まれた“智子”は、物理学研究に用いられる高エネルギー加速器に潜伏し、エラーを出して混乱をもたらしていた。楊冬の加速器実験が失敗したのも、“智子”による妨害が原因だった。
作戦センターに集まった人々に、「我々は“智子”の監視下にある」と告げる常偉思。すると人々の視界に「おまえたちは虫けらだ」という三体世界からのメッセージが出現する。
葉文潔は人類に危害を及ぼした罪で、無期懲役の判決を受ける。紅岸基地の跡地を訪れた文潔は、山の向こうに沈む夕日に手をかざし、「これが人類の落日」とつぶやく。
三体人によって地球の科学は完全に封じられ、永遠に進歩できない。その事実に打ちのめされ、絶望する汪淼と丁儀。史強は自暴自棄になった2人を連れ出し、自らの故郷へ向かう。そこではバッタが大量発生し、広大な草原を飛び交い、空を覆い尽くしていた。
蝗害対策のために殺虫剤を散布し、天敵を導入し、遺伝子操作による繁殖防止まで行われたが、虫たちはいっこうに減っていないと語る史強。三体人は地球人類を虫けら扱いしたが、虫たちは今まで一度も負けたことがない、と断言する。
史強の指摘に心を動かされた汪淼と丁儀は、絶望から立ち上がる。
第21話~第30話の感想(ネタバレ有)
全30話完走しました。
難しかったけど、面白かった。壮大なストーリーに圧倒されました。古筝作戦すごかった!
紅岸基地での葉文潔の研究(太陽雑音とか数学モデルとか)と、三体人による“智子計画”のシーンは、何度見てもさっぱりわからなかった。前後の流れと雰囲気でなんとなく把握できた程度だったので、もしあらすじが間違ってたらごめんなさい。
まずは、前回からの答え合わせ。
楊衛寧と雷志成の死について
葉文潔が殺したことはわかっていましたが、その状況がとても衝撃的でした。しかも2人を殺害した日は、彼女が三体世界からのメッセージを初めて受信した日です。
雷志成は、文潔がメッセージを受信したにもかかわらず報告しなかったことを知り、彼女の功績を自分のものにしようともくろみました。彼は文潔が返信したことには気づいていません。
文潔は三体人による地球侵略を望んでいましたから、いずれ雷志成がそのことに気づき、阻止されるのを恐れました。そして彼を亡き者にして口を封じようと決意します。
誤算だったのは、夫の楊衛寧までが彼と一緒に崖を下りていってしまったこと。
しかしこの機会を逃すわけにはいかないと、葉文潔はロープを切り、2人を転落死させました。
楊冬の死について
葉文潔が語ったところによると、楊冬の自殺には2つの要因があったようです。ひとつは加速器実験の失敗で、物理学を失ってしまったこと。もうひとつは、母・葉文潔の秘密を知ってしまったこと。
実験の失敗は、三体世界から送り込まれた智恵を有する粒子“智子(ソフォン)”による妨害が原因なので、結局のところ彼女を自殺に追い込んだのは葉文潔ということになります。
楊冬の遺書にあった「物理学は存在しない」というのは、「宇宙のどの場所においても通用する物理法則は存在しない」という意味らしいです。
カウントダウンの仕掛けについて
こちらも、三体世界から送り込まれた“智子(ソフォン)”によるもの。難解なのでゲームの中で三体人が説明していたセリフをそのまま載せます。
“智子(ソフォン)”は高エネルギー粒子でフィルムを感光させ、同様に光速で網膜に投影することも可能。さらに、彼らの瞳の中で宇宙の明滅も起こせます。
彼らの意図は、地球人類に「超自然的な力を見せて、非科学で科学的思考を圧倒し、思考体系を瓦解させる」ことでした。
最終話。三体世界から「おまえたちは虫けらだ」というメッセージが届き、打ちのめされる汪淼と丁儀。そんな2人に、史強はバッタが大量発生した故郷を見せ、「虫けらは今まで一度も負けたことがない」と言います。
三体艦隊が到着するのは400年後。科学を封じられた人類は、その日をただ待つことしかできないのか…。
物語はまだ序章。今回のストーリーは、原作の1冊目にすぎません。このドラマが完成するまでには紆余曲折あったようなのですが、どうか続編も作ってほしい。
そして2024年3月21日に配信予定のNetflix版も見たい。こちらは汪淼役が女性らしいです。
時系列(年表)
年代 | 出来事 |
---|---|
1967 | 葉文潔の父・葉哲泰が文化大革命の犠牲となり、命を落とす |
1969 | 葉文潔が紅岸基地に配属され、地球外知的生命体の探査を目的とするプロジェクトに参加 |
1971 | 葉文潔が紅岸基地からメッセージを送る |
1973 | 葉文潔と楊衛寧が結婚 |
1975 | 三体世界に葉文潔が送ったメッセージが届き、監視員が「応答するな」と返信する 三体元首が三体艦隊に出航を命じる |
1979 | 葉文潔が「応答するな」という三体世界からのメッセージを受信し、独断で返信する 秘密を守るため、葉文潔が雷志成と楊衛寧を事故死に見せかけて殺害する |
1980 | 葉文潔が楊冬を出産。体を壊し、斉家屯で養生する |
1982 | 葉文潔が紅岸基地を離れ、清華大学で物理学を教え始める 葉文潔が西北地方の山中でマイク・エヴァンズと出会う |
1983 | 三体世界に葉文潔からの返信が届き、送信源が確定される 三体元首が“智子計画(プロジェクト・ソフォン)”を打ち立て、巨大粒子加速器を建設する |
1985 | 葉文潔がエヴァンズと再会し、三体文明の存在について話す |
1987 | 紅岸基地が閉鎖される |
1988 | エヴァンズが第2紅岸基地となる“審判の日号”を作り、地球三体協会(ETO)を創設する 葉文潔が地球三体協会の総帥に就任する |
2004 | 葉文潔が清華大学を退職する 三体世界が送った“智子(ソフォン)”1号と2号が地球に届く |
2007 | 世界各地で科学者の自殺が相次ぎ、葉文潔の娘・楊冬も自殺する 汪淼の網膜にカウントダウンが出現する |
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