WOWOWの連続ドラマ「コールドケース3-真実の扉-」第6話“壁の女たちへ”のあらすじと感想(ネタバレ有)です。
重くて、切なくて、胸に迫る回でした。
被害女性を演じた山口紗弥加さんはじめ、女優さんたちの演技がみんな凄かった。その表情を一瞬たりとも見逃したくなくて、ずっと画面から目が離せず、釘付け状態でした。
元ネタは、アメリカ版「コールドケース」シーズン5第10話“Justice”です。
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ネタバレ有「コールドケース2-真実の扉-」登場人物(キャスト)一覧・全話あらすじ感想第6話「壁の女たちへ」のあらすじ
1996年5月。大学のスターでボランティアサークルの代表だった平山陽介(赤楚衛二)が、キャンパス内で何者かに殺害される。
2021年。平山陽介が通っていた大学の掲示板に「平山陽介はレイプ犯!」と落書きがされていることがわかり、百合(吉田羊)たちは25年前の事件を再捜査することに。
調べてみると事件の少し前にレイプの被害届が出ており、平山の名前が加害者としてあがっていた。担当したのは現在警察学校の教官をしている泉本薫(渡辺真起子)で、被害者は牧村美里(久保田紗友)という同じ大学の苦学生だとわかる。
当時はデートレイプが認知されておらず、立証は難しいと判断した薫は、美里に諦めるよう説得していた。
百合と高木(永山絢斗)は美里(山口紗弥加)を訪ねるが、美里は事件のあった時刻に弟と自宅にいたことを主張し、殺害を否定する。
やがて美里以外にも平山からレイプされた女性が複数いることが判明。掲示板に落書きをしたのはその中の一人、香月貴子(東風万智子)だった。
25年前に平山のレイプによって妊娠し、中絶手術を受けていた貴子は、平山の追悼式が行われることを知ってみんなの代わりに真実を書いたと言う。
被害者の一人だった奈良崎花苗は事件の一か月前に自殺しており、花苗の父・亮一(津田寛治)は警官の泉本が「私のせいです」と謝罪していたことを話す。
百合に追及された泉本は「彼女たちを守りたかった」と言い、美里に正当防衛による殺人を示唆していたことを打ち明ける。
百合は美里から話を聞こうとするも拒否され、チーム内でも捜査打ち切りの空気が漂う。花苗が残した日記にはほかの被害女性たちのことが書かれており、百合は彼女たちが大学の女子トイレの壁の落書きを通じて互いの存在を知っていたことを突き止める。
女性たちは復讐するため、事件の夜に平山を呼び出したことを認める。美里が刃物を手にして平山にレイプしたことを認めさせ、その後は近くのゴミ箱に刃物を捨てて、全員で朝まで一緒にいたことを告白する。
平山を殺したのは、当時まだ少年だった美里の弟・雄大(池田優斗)だった。アパートで美里が平山にレイプされるのを見ていた雄大は、姉を守りたい一心でゴミ箱から刃物を拾い、平山を刺したのだった。
美里は正当防衛を訴えるが、百合は「それを決めるのは私たちじゃありません」と答えることしかできず、美里に頭を下げて取調室を出る。そして堪えきれず、感情を爆発させる。
本木(三浦友和)は停職が解け、捜査一課に戻ってくる。
第6話の登場人物(キャスト)
牧村美里(久保田紗友/山口紗弥加)
25年前のレイプ事件の被害者。警察に相談するも無罪になると言われ、告訴を諦めた。現在は生命保険会社に勤めている。
平山陽介(赤楚衛二)
25年前に殺害された大学生。爽やかな風貌で大学の人気者だった。ボランティアサークルで知り合った女性たちを巧みに誘い、レイプを繰り返していたことが判明する。
岡田理香(駒井連/鈴木麻衣花)
25年前のレイプ事件の被害者。平山にレイプされたことを親友に打ち明けるも信じてもらえず、行き場のない思いを抱える。
香月貴子(奥山葵/東風万智子)
25年前のレイプ事件の被害者。学長に訴えるも取り合ってもらえず、その後、妊娠して中絶手術を受けている。平山の追悼式が開かれることを知り、大学の掲示板に落書きした。
奈良崎香苗(北沢響)
25年前のレイプ事件の被害者。平山が殺される1か月前に自殺している。彼女が残した日記が事件をひもとく鍵となる。
奈良崎亮一(津田寛治)
レイプ被害を苦に自殺した奈良崎花苗の父親。レイプされたという花苗の言葉を信じなかったことを、今も悔やんでいる。
泉本薫(手塚真生/渡辺真起子)
警察学校の教官。25年前は東保土ケ谷署に勤務する巡査で、美里のレイプ事件を担当した。女性たちを守れなかったことに責任を感じ、ある行動に出る。
牧村雄大(池田優斗/岩瀬亮)
美里の弟。25年前、姉の美里とアパートで2人暮らしをしていた。現在は弁護士として美里を守ろうとする。
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ネタバレ有「コールドケース3-真実の扉-」登場人物(キャスト)一覧・全話あらすじ感想第6話で使用された曲
- 安室奈美恵「Don’t wanna cry」
- スピッツ「チェリー」
- Mr.Children「花 -Mémento-Mori-」
第6話の感想
百合の葛藤とジレンマ
今シーズンでいちばん泣きました。
過去のシーズンを含めても、わたしの中では上位に入るエピソードだった。
百合さんの顔が映るたびに、胸が苦しくなるんですよね…。
淡々と仕事しているように見えて、彼女が内心の悔しさや憤りを必死に堪えていることがわかって、ずっと辛かったです。
泉本教官とのやりとりも切なかった。何もできなかった彼女の悔しさを、自分のことのように感じたんじゃないかなぁ。
泉本教官を演じた渡辺真起子さんの凜とした演技がすばらしかった。自分のしたことを正義と信じて疑わない、まっすぐな心が伝わってきました。
だからこそ、弱い立場の人を守りたいという思いは同じなのに、彼女のしたことを正義と認められない百合のジレンマがいっそう辛くて、苦しかった。
正義を貫くアメリカと、貫けない日本
アメリカ版のサブタイトルは「Justice(正義)」。
実はアメリカ版と日本版では、ラストが大きく異なります。アメリカ版は彼らが信じる“正義”を貫くというハッピーエンドです(詳しくは後述します)。
アメリカ版を見たとき、わたしは「これは日本では無理だろうな」と思いました。日本のドラマは基本的に殺人を肯定しないから。
原作ではそうなっていても、ドラマ化する際にあたりさわりのない着地に変更することが多々あって、そのたびに「またか」と思うことが過去に何度もありました。
ですが今回の改変は、逃げたのではなくむしろ挑戦したように見えました。
“正義を貫けない現実”を残酷に突き付けるラストだからこそ、胸をえぐられるような衝撃を残したし、キャストの鬼気迫る演技を見ることもできたのだと思う。
原作の「コールドケース」シーズン5が放送されたのは、2007年でした。最近はアメリカのドラマも変わってきているので、今ならこういうラストにはしないかもしれないですね。
アメリカ版との違い
ここからは、元ネタとなったアメリカ版「コールドケース」シーズン5第10話“Justice”との違いについて説明します。
過去の時代設定は日本版が1996年だったのに対し、アメリカ版では1982年でした。日本はいろんな面でアメリカより10年遅れていると言われているので、なんとなく納得です。
ストーリーはラストと凶器を除いてほぼ同じです。アメリカ版の凶器は例によって銃でした。
平山陽介/マイク・ディレイニー
レイプ犯罪を続ける大学生・平山の設定は、原作と同じ。爽やかなイケメンで大学の人気者で、女子の憧れの的です。
彼が口説きのテクニックとして使う“チューリップの折り紙”は、アメリカ版ではバラの造花でした。
ちなみにアメリカ版の平山=マイク役を演じたのは、人気ドラマ「THIS IS US」のケヴィン役で知られるジャスティン・ハートリー。めっちゃ若い!
日本版の赤楚衛二さんも「どこかの大学にいそう」なチャラい青年を無理なく演じてて、すごいリアルだった。「罪の意識のなさ」が非常に怖かったです。
被害に遭った女性たち
被害に遭った女性たちの設定も、まるっきり原作と同じです。アメリカ版のままなのに違和感がないのが不思議です。女優陣の演技力ですかね。
山口紗弥加さん以外では、香月貴子役の東風万智子さんが印象に残ってます。どこかで見たことあると思ったら、旧芸名「真中瞳」さんでした。電波少年見てました!
図書館で平山に声をかけられる点や、自殺した女の子が日記を残していた点、女子トイレの壁に落書きしていた点も同じ。
違うのは掲示板の落書きで、アメリカ版ではマイクの墓石に赤いスプレーで落書きされてました(さすがにこれをやる日本人女性はいないよね)。
泉本薫/マギー・ラファティ
警察学校の教官・泉本は、「鉄仮面」と呼ばれて恐れられていました。アメリカ版では「ロックンロール・ラファティ」というあだ名で呼ばれている警察学校の射撃教官でした。
1982年当時の彼女は「性犯罪課」に属していましたが、デスクと電話1台もらっただけの形だけの部署。上司は「合意だろ」と決めつけ、女性の言い分を聞こうともしません。
最も大きな違いは、テシー(アメリカ版の美里)に「正当防衛を示唆」しただけでなく、過去に強盗事件で使われた証拠品の銃を渡していること。
事件当日、テシーはその銃を使ってマイクを脅しました。
ボスと呼ばれるねこさん
原作も日本版同様、このエピソードからボスが停職になってます。代わりにねこさんがみんなから「ボス」と呼ばれて嫌がるシーンがありましたが、あそこも原作どおりです。
百合が捜査続行にこだわって、困ったねこさんが休暇中の代理に相談に行くシーンも同じ。アメリカ版のボスはクルーズ船に乗ってましたけどもね。
日本版ではラストで代理が復帰するシーンがありましたが、原作にはなく、ウィル(アメリカ版の金子)がボスの席に移動してします。
正当防衛
平山を殺した犯人は、美里の弟・雄大でした。原作も同じです。成長して弁護士になっているところも同じ。
違うのはここから。
日本版では「正当防衛だったんでしょ?」と言うのは美里でしたが、アメリカ版ではリリー(アメリカ版の百合)なのです。
その前まで、リリーは仲間たちが「あんなクズは殺されて当然」と正当殺人を主張するのに対して、「殺人に甲乙をつけていいの?」と異議を唱えていました。
でも、ここで態度を変えて正当防衛を誘導するんです。「怖かったから銃を手にした。危険を感じたのね?」と。
取調室の会話を隣の部屋で聞いていたニック(日本版の立川)とウィル(日本版の金子)は、即座に音声を切って「聞かなかった」ことにします。
その結果、事件は「正当防衛」として処理されました。
見ている側からすると救われるラストではあるけど、ちょっと強引な感じもしますね。
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