Netflixのドラマ「今際の国のアリス」シーズン3についてまとめました。
死と再生をテーマにしたサバイバルアクションドラマの第3シーズン。アリスとウサギが再び“今際の国”へと導かれ、新たな仲間たちと過酷なゲームに挑みます。
シーズン3では原作から離れたオリジナルストーリーが展開されますが、これまで同様に「生きる意味」や「選択の重み」といったテーマが貫かれています。
アリスがカウンセラーとして他者の人生に寄り添う姿や、ウサギが父の死と向き合いながら成長していく過程など、2人が現実世界で互いに支え合いながら歩みを進めていく様子は、これまでにない“穏やかな日常”として新鮮に映りました。
ただ、物語の再構築にともなって整合性が揺らいだ部分や、キャラクターの描写がやや弱く感じられる場面もあり、シーズン1・2の完成度と比べると、期待が大きかった分だけ少し物足りなさを覚える内容でもありました。
▼シーズン2はこちら

Contents
作品概要
- 製作国:日本
- 配信開始日:2025年9月25日
- 原作:麻生羽呂『今際の国のアリス』
- 脚本:佐藤信介/渡部辰城/倉光泰子
- 監督:佐藤信介
- 音楽:やまだ豊
あらすじ
“今際の国”についての記憶を一切失ったまま現実世界に戻ったアリスとウサギ。2人は臨死体験の研究に傾倒する大学の助教授リュウジと出会う。
Netflix公式サイトより
予告動画
原作について
このドラマの原作は、麻生羽呂氏の漫画『今際の国のアリス』(全18巻)です。
ただ、原作の物語はシーズン2までで描き切っているため、シーズン3は大人になったアリスを描いた『今際の国のアリス RETRY』を下敷きとしたオリジナルストーリーになっています。
相関図

登場人物(キャスト)一覧
※シーズン2までのネタバレを含みます
主要人物
有栖良平(アリス)/山﨑賢人
カウンセリングセンターで実習中の大学院生。4年前の隕石落下で心肺停止に陥った過去を持つ。その際に迷い込んだ“今際の国”で過酷なゲームを経験し、仲間を思いやる強さと判断力を身につけた。シーズン3では、ウサギを追って再び“今際の国”へと足を踏み入れることに。
宇佐木柚葉(ウサギ)/土屋太鳳
アリスの妻。スポーツブランドに勤務している。父親の自殺という辛い過去を抱え、シーズン2では生きる意味を見失っていたが、“今際の国”で共に戦い抜いたアリスとの絆を通じて再び前を向くようになる。シーズン3では、臨死体験の研究をする松山隆二によって“今際の国”へと連れ去られる。
松山隆二(リュウジ)/賀来賢人
修志舘大学の助教授。臨死体験の研究に傾倒し、隕石落下の被災者たちを調査している。その調査の過程でアリスとウサギに出会い、死の想念から抜け出せずにいるウサギに親近感を抱く。“臨死体験”をテーマにしたセミナーへの参加をきっかけに“今際の国”へと足を踏み入れる。
盤田素那斗(バンダ)/磯村勇斗
“今際の国”の永住権を持つ国民。シーズン2でアリスがネクストステージをクリアした際、相棒のヤバとともに“今際の国”に「永住」することを選択した。現実世界では連続殺人を犯した死刑囚。有能な国民を求めており、アリスを“今際の国”に呼び戻すためにリュウジを利用してウサギを誘い込む。
アリスチーム
テツ/大倉孝二
薬物依存とギャンブルで身を持ち崩した男。“今際の国”での戦いを経て、薬物を断つことを決断するが、たびたび禁断症状に襲われる。
サチコ/須藤理彩
専業主婦。現実世界では夫からのDVに苦しんでいる。
ノブ/醍醐虎汰朗
大学生。いじめを苦に引きこもり生活を送っている。
レイ/玉城ティナ
アニメが好きな大学生。ゲーム【ゾンビ狩り】に参加し、アリスたちのチームに加わる。
カズヤ/池内博之
ヤクザ。暴力的で、人を殺すことに躊躇がない。
シオン/玄理
スタートアップ企業のCEO。ナツから「姉さん」と呼ばれて慕われる。
ナツ/吉柳咲良
新米ダンサー。
マサト/三河悠冴
中学校教師。
ウサギチーム
イツキ/岩永丞威
消防士。交通事故で両親を一度に失った過去を持つ。妹ユナの幸せを何よりも願っている。
ユナ/池田朱那
大学生。イツキの妹。両親の死後、唯一人の家族であるイツキを頼っている。
タロウ/森田甘路
鉄道オタク。
ジュリ/難波なう
ヒマリ/磯部理菜子
そのほか
安梨鶴奈(アン)/三吉彩花
シーズン1、2でアリスたちと一緒に戦った仲間。隕石事故から生還するも、PTSDを発症して療養所に入所している。“今際の国”での記憶が残っており、アリスにそのことを説明したうえで、薬を使って彼を“今際の国”へと送り出す。
矢場旺希(ヤバ)/毎熊克哉
“今際の国”の永住権を持つ国民。シーズン2のラストで、バンダとともに今際の国に「永住」することを選択した。傲慢で利己的なサディスト。
矢野/中心愛
修志舘大学に通う医学生。リュウジの教え子。死の世界に惹かれ、リュウジの研究に強い関心を持つ。
各話のあらすじ(ネタバレ有)
アリス(山﨑賢人)とウサギ(土屋太鳳)は、“今際の国”での記憶を失ったまま結婚。大学院生となったアリスはカウンセリングセンターで実習に励み、ウサギはスポーツブランドに勤務しながら、穏やかな日々を過ごしていた。
そんなある日、2人は臨死体験の研究に没頭する大学助教授・松山隆二(賀来賢人)と出会う。リュウジは隕石落下事故の被災者から“ゲーム”の記憶を聞き出しており、アリスが語った“旅をする夢”をその記憶と結びつけようと執拗に問いかける。
その後、リュウジは“臨死体験”をテーマにしたセミナーに参加し、命を懸けた【ばばぬき】のゲームに巻き込まれる。最後までジョーカーを持ち続けて生き残った彼の前に、“今際の国”の国民であるバンダ(磯村勇斗)が現れ、「ようこそ、今際の国へ」と告げる。
一方、ウサギはリゾートホテル「シーサイドパラダイス東京」で〈ビーチ〉の惨劇の記憶を呼び覚まし、錯乱の末に姿を消す。アリスが必死に行方を追う中、監視カメラにはウサギと隆二の姿が映っており、警察は密会の可能性を示唆するが、アリスは事件性を疑う。
やがてウサギは昏睡状態で発見され、病院に搬送される。薬物を投与された痕跡があり、さらに妊娠初期であることが判明する。隣のベッドには同じく昏睡状態の隆二が横たわっていた。
混乱するアリスの前にバンダが現れ、「君もいずれすべてを思い出す。そしてまたあの世界に戻ってくる。君の大切な彼女も参加することになったよ」と告げ、ジョーカーのカードを渡す。
アリスは、カウンセリングセンターで出会ったアン(三吉彩花)が語っていた“別の世界”の話を思い出し、彼女が入所する療養所を訪れる。そこでアリスは、臨死体験の世界が「心肺停止から死が確定するまでの2分間に広がる共同意識」であることを知らされる。
ウサギを救うには、その世界に入り、2分以内に彼女を連れ戻さなければならない。覚悟を決めたアリスは薬を受け入れ、心肺停止に陥る。その瞬間、世界は静止し、人々の姿が消える。
アリスは案内板の指示に従って無人の街を歩き、やがて氷川神社のゲーム会場にたどり着く。そこには大勢の人々が集まっており、「ゲームを開始します」というアナウンスが響き渡る。
アリスがたどり着いた氷川神社では、運命を左右するゲーム【おみくじ】が始まる。参加者は順におみくじを引き、記された内容を制限時間内に解読しなければならない。最初に挑んだテツ(大倉孝二)は「大吉」で無事だったが、次の女性は「吉」の数式を誤答し、火矢により命を落とす。サチコ(須藤理彩)、マサト(三河悠冴)、シオン(玄理)も失敗し、境内は炎に包まれる。
仲間が次々と犠牲になる中、アリスは“今際の国”での記憶を取り戻す。9回目の挑戦者ナツ(吉柳咲良)は誤差448本の火矢を招き、シオンが負傷。テツが救助に奔走する。そして10回目、アリスが「大凶」を引き、「地球の人口は何億人か」という問いに「79億人」と答えるが、正解は80億人。誤差1億本の火矢が降り注ぐと告げられる。
絶望の中、アリスはおみくじの方位が避難の鍵だと気づき、テツが引いた「大吉」に記された北西を頼りに地下室を発見。8人はそこへ逃げ込み、境内を焼き尽くす火矢から生還する。
上空にジョーカーの絵札が現れ、全員がそのカードを所持していることが判明。彼らはかつてこの世界を経験したことがあり、再び“今際の国”に呼び戻されたことを悟る。テツやサチコ、ノブ(醍醐虎汰朗)は現実世界でジョーカーを渡された記憶を思い出し、背後にバンダの存在を感じ取る。
翌日、アリスと仲間たちは次の会場である国立ウイルス研究所に到着。ゲーム【ゾンビ狩り】が始まり、参加者には7枚のカードが配られる。その中にはゾンビ、ショット、ワクチンといった特殊カードが含まれていた。1対1の対戦によりゾンビカードを出された者は感染してゾンビとなり、ショットカードでのみ倒すことができ、ワクチンカードで人間に戻せる。
20ターンの間にゾンビと人間の数で勝敗が決まるゲームで、アリスは大学生レイ(玉城ティナ)と協力し、“信頼のバリケード作戦”を実行。しかし、カズヤ(池内博之)やイケノ(落合モトキ)の暴走で混乱が広がり、マサトも感染。秩序が崩れる中、アリスは「最後に生き残った者同士が殺し合う」と直感し、仲間を守るために必死に道を探る。
レイの提案した“信頼のバリケード作戦”は崩壊し、仲間同士の不信と裏切りが広がる。マサトはゾンビに感染したことをイケノに見抜かれ、ショットされて命を落とす。ノブも感染し、疑心暗鬼が加速する。イケノたちは暴走し、隔離された感染者まで処刑しようとするが、アリスはノブと協力し、自らゾンビ化を受け入れることで仲間を守る道を選ぶ。
アリスはレイがゾンビでないことを見抜き、手持ちのゾンビカードを使って彼女を感染させる。これによりゾンビ側の勝利が確定し、最終ターンで人間側を圧倒。ゾンビは32人に達し、人間は13人に減少。人間側に残ったイケノたちは全員処刑される。
生き残ったアリス、テツ、カズヤ、ナツ、サチコ、シオン、ノブにレイが加わり、新たなチームが形成される。次のゲームまでの2日間、彼らは束の間の休息を取り、それぞれの過去や思いを語り合う。アリスは行方不明のウサギを想う。
その頃、ウサギはリュウジと共に“今際の国”で別のゲームに挑んでいた。リュウジは死の世界を見たいという欲望に突き動かされており、その願いを叶えるためにバンダの指示に従い、ウサギをこの世界へ誘い込んだのだった。
ウサギは父の死の記憶に苛まれながらもリュウジと行動を共にし、地下鉄を舞台にしたゲーム【暴走でんしゃ】に挑む。各車両に設置された毒ガスの罠を回避しつつ先頭車両まで進み、無人運転の列車を停車させなければならないというルールだった。
参加者たちは酸素ボンベと勘を頼りに進むが、次々と仲間が犠牲となる。鉄道オタクのタロウ(森田甘路)の知識をもとに、車両構造から毒ガスの有無を推測するウサギたちだったが、タロウが電車の型式を誤認していたことが判明。生き残った参加者たちはウサギの勘に賭けるが、それも外れてしまい、彼らは窮地に追い込まれる。
ウサギたちは先頭車両を目指すも、酸素ボンベを使い切ってしまい絶体絶命の状況に陥る。生き延びるため、彼女は並走する別の電車への飛び移りという危険な選択をし、リュウジ、タロウ、イツキ、ユナ、ヒマリと共に命がけのジャンプを敢行。無事に車両へ移った直後、ウサギは並走する別の電車の中にアリスの姿を見つける。互いに手を伸ばすも届かず、車両は離れていく。
アリスの乗る電車はブレーキが間に合わず横転。彼は重傷を負うが、テツの応急処置により命を取り留める。ウサギたちはゲームをクリアし、病院で休息を取る。リュウジは過去に臨死体験の実験で教え子を死なせてしまったこと、その後の交通事故で歩けなくなったことを打ち明ける。ウサギは「どんな傷も生きる理由になる」と語り、共に元の世界へ戻ることを誓う。
やがてセミファイナルゲームが始まり、ウサギたちは東京タワーを舞台にした【東京びんごたわー】に挑戦。タロウとヒマリを失いながらも、最頂部の“FREE”ボタンを押してクリアする。一方、アリスのチームは爆弾が仕掛けられた【かんけり】に挑み、シオンとナツが犠牲となる中、最終的にアリスを含む数名がクリアするが、カズヤは最後の缶と共に爆死する。
リュウジはバンダと密会し、次のゲームでウサギを殺すよう命じられる。バンダの狙いは、ウサギの死によってアリスを絶望させ、「国民」としてこの世界に縛りつけることだった。リュウジは銃を受け取り、その場を後にする。
そして、アリス、テツ、ノブ、サチコ、レイの5人は渋谷駅に到着。最後のゲーム会場は、スクランブル交差点の中心に設置されていた。アリスが会場に入ると、そこには大勢の人が行きかう渋谷の日常の風景が広がっていた。
アリスたちは突如現れた渋谷の街に困惑するが、それがモニター映像であり、自分たちの姿も映っていることに気づく。アリスは映像の中の“自分”を追い、ウサギや子どもと暮らす未来にたどり着く。そこへ本物のウサギが現れ、2人はようやく再会を果たす。
やがてアナウンスが響き、エントリー数が10名と告げられる。だが実際には9人しかおらず、アリスはウサギのお腹の子が人数にカウントされていることに気づく。アリスから妊娠の事実を告げられたウサギは驚きながらも受け入れる。
アリス、ウサギ、リュウジ、サチコ、テツ、ノブ、レイ、イツキ、ユナの9人は、新たなゲーム【ミライすごろく】に挑戦する。25の部屋をサイコロの目に従って進み、15ターン以内に出口を目指すというルール。各部屋の壁には参加者の未来映像が映し出され、選んだ未来が現実となる仕組みだった。
アリスはなるべく一緒に行動するよう指示するが、第1ターンではサイコロの目により二手に分かれて進むことを余儀なくされる。リュウジはアリスへの不信感を隠さず、ゴールである可能性が高い角部屋を目指す。さらに“自分の幸福な未来”を選ぶ者も現れ、チームは分裂していく。
テツは建築士として更生する未来に希望を見出すが、進むにつれて薬物の禁断症状に苦しみ、元妻ユキコの幻覚に導かれて入った部屋で大量のポイントを失い、ゲームオーバーとなって命を落とす。
交通事故で両親を失った過去を持つイツキは、妹ユナの幸せを優先し、アリスの指示を無視して進む。しかしその選択が裏目に出て、ポイントをすべて失い命を落としてしまう。
ノブは母の死を映す未来に絶望するが、かつて母に言われた「生きて」という言葉を思い出し、再び立ち上がる。アリスは残された角部屋のどこかに出口があると推測するが、仲間たちは強制ステイやマイナス部屋に翻弄され、思うように進めない。
そしてモニターには、ウサギの死を示す未来が映し出される。アリスは激しく動揺するが、同時に「出口」の存在も示され、さらに自身の死の未来も映し出される。
アリスは、ウサギと自身の死を映す未来映像を目にし、「これ以上誰も死なせない」と誓う。仲間全員を救うため、策を練り始めるアリス。年長者のサチコは、自ら強制ステイを引き受けることで仲間を守る覚悟を示す。
ウサギは大きなマイナスが予想されるA3の部屋へ進み、そこでテツの遺体と対面する。子どものポイントを使って生き延びるが、残された時間とポイントはわずかだった。
アリスは、ウサギが持つ子どもの腕輪をA2の部屋に置くことで、サチコの強制ステイを解除する作戦を立てる。ユナの協力のもと、危険な作業は成功し、仲間たちは再び合流する。
出口があるA5の部屋に到達した一行は、最後のサイコロを振るよう求められる。アリスが振った目は「7」。出口へ進めるのは7人だけと告げられ、アリスは自ら残ることを選び、泣き叫ぶウサギに「生きてくれ」と告げる。
仲間たちは出口から外に出て、アリスは一人部屋に残される。リュウジにウサギを託したアリスだったが、モニターにはリュウジがウサギに銃を向ける姿が映る。しかし、リュウジは思いとどまり、ウサギの死の未来は回避される。
アナウンスはアリスの犠牲を讃え、「ゲームクリア」を宣言。勝者はアリスだった。渋谷の街は崩壊し、外に出た仲間たちは濁流に飲み込まれる。
動揺するアリスの前にバンダが現れ、「ゲームに勝利した君には、国民となる権利が与えられる」と告げるが、アリスはそれを拒絶。部屋の壁を壊して外へ出ると、濁流に流されたウサギを救うため飛び込むが、意識を失って水中に沈んでしまう。
そのとき、アリスの脳裏に現実世界から呼び掛けるアンの声が響き、アリスは意識を取り戻して浮上する。失望したバンダはアリスに銃を向けるが、空から放たれたレーザーによって撃ち抜かれる。
アリスの前に現れたのは、謎の老紳士(渡辺謙)だった。彼はアリスに「生と死の選択」を迫る。アリスは「ウサギと共に生きる」と答え、濁流に飛び込んで彼女を救い出す。ウサギを道連れに死の世界へ向かおうとしていたリュウジは、ウサギをアリスに託し、渦の中へと消えていく。
現実世界で臨死状態から目覚めたアリスは、病院で意識を取り戻したウサギと再会する。リュウジは息を引き取るが、仲間たちはそれぞれの人生を歩み始める。ノブは大学を卒業し、ユナは恋人と兄の墓参りを誓い、サチコは息子と仲良く歩き、レイはアニメ制作に携わる。
ウサギとアリスは、新たな日々の中で生まれてくる子どもの名前を考える。アリスはカウンセラーとして、クイナ、アグニ、ヘイヤ、ニラギ、チシヤと向き合い、それぞれが「生きる意味」を模索する姿を見守っている。
感想(ネタバレ有)
※原作未読のため、ドラマ作品のみの感想になります
アリスがウサギを追って“今際の国”へ
シーズン1・2の大ヒットを受けて制作された待望の続編。シーズン2のラストで暗示された“ジョーカー”の謎が、どのように解き明かされるのかとワクワクしながら観ました。
アリスとウサギが“今際の国”から生還して4年。2人は結婚して(まだ一緒には暮らしてないけど)、穏やかな日常生活を送っているように見えます。しかしウサギは未だ心の傷(父の自殺)を癒せず、死の想念から抜け出せていません。
臨死体験を研究する大学助教授・リュウジによって、ウサギは“今際の国”へ連れ去られてしまい、アリスはウサギを追って再び異世界に足を踏み入れます。この導入は『不思議の国のアリス』のオマージュのようで、印象的でした。視聴者の期待をうまく引き込んでいたと思います。
だからこそ、アリスとウサギの再会は、もっとエモーショナルな演出にしてほしかった。2人が“今際の国”で再会する場面は見どころのひとつだったはずですが、やや盛り上がりに欠けた印象でした。
ゲームの緊張感と映像の迫力
本作の魅力の大きな要素となっている「ゲーム」。今シーズンでも、さまざまなアイデアを駆使したゲームが展開されます。個人的には、第1話の【おみくじ】と終盤の【ミライすごろく】が面白かったです。
【おみくじ】は原作の第1巻に登場し、アリスたちが“今際の国”に来て最初に参加したゲーム。神社という舞台設定が映像化によって美しくも不気味に再現されていて、最後に1億本の火矢が飛んでくるシーンは圧巻でした。
【ミライすごろく】は、参加者それぞれの人生が浮き彫りになる構造で、選択の重要性を感じさせるゲームでした。パズル的な要素もあり、少し難解ではありましたが個人的にはとても楽しめました。
映像面でも、渋谷の街の崩壊や津波の濁流のシーンなど、VFXの完成度が高く、スケール感のある演出が作品の世界観を支えていたと思います。
キャラクター造形の光と影
キャラクター面では、ウサギの心の闇(自殺した父親に会いたいという思い)が丁寧に掘り下げられていた点は評価できます。また、アリスがカウンセラーとして他者の“生きる意味”を見守るラストは、彼自身の成長を感じさせる場面でした。
新キャラクターの中では、テツとカズヤの存在感が際立っていました。テツはギャンブルと薬物依存で身を持ち崩しながらも、他者を助けることに躊躇しない姿が人間味にあふれていて、もっと見たいと思わせる存在でした。
カズヤは第4話で退場してしまいましたが、彼の内面を掘り下げないまま終わってしまったのが残念。もし彼が最後のゲームに参加していたら、より破壊的で面白い展開になったかも……。
イツキとユナの兄妹も良かったです。イツキが妹の幸せを願いながら、彼女の未来(結婚式の映像)を見ながら死んでいくシーンは、最も感情を揺さぶられたシーンでした。
一方で、リュウジのキャラクター造形には違和感が残りました。死の世界への執着、過去の実験事故、交通事故による車いす生活、ウサギへの思いなど、設定が盛り込みすぎていて散漫な印象です。行動も一貫性に欠け、視聴者として彼の動機に納得しづらい場面が多かったように思います。
さらに残念だったのは、新キャラクターたちに“哲学”が感じられなかったことです。
シーズン2までの登場人物(ボーシヤ、アグニ、チシヤ、クイナ、クズリュウ、ミラ、キューマなど)は、それぞれが独自の価値観や人生観を持ち、それがゲームの中で浮き彫りになっていく構造が本当に面白くて魅力的でした。彼らの“哲学”は、物語の核となる問いに深く関わっていました。
しかしシーズン3では、DVや引きこもり、薬物依存など、現実的な問題を抱えたキャラクターが登場するものの、それらが“哲学”として昇華されることはなく、描写も表面的にとどまっていた印象です。人間の内面を掘り下げるという点では、前シーズンの方がはるかに深かったと感じました。
世界観と設定の変化への疑問
これまでのシーズンでは、トランプのスート(マーク)と数字によってゲームの種類と難易度が明確に示されていました。スペードは肉体型、ダイヤは知能型、クラブはバランス型、ハートは心理型という分類が、ゲームの性質を理解する手がかりになっていました。
しかし、今シーズンではその設定がなくなり、プレーヤーは“案内板”によって行き先を告げられるだけになりました。これにより、ゲーム選択の自由や戦略性が失われ、面白味が減ったように感じます。
また、“国民”となったバンダが今際の国と現実世界を自由に行き来している描写や、サチコ、テツ、ノブといった人物がなぜ招かれたのかが語られなかった点は、物語の整合性に少し引っかかりを感じる部分でした。
さらに、現実世界でアンだけが記憶を保持し、アリスを“今際の国”へ送り出す役割を担う展開も(彼女の再登場自体はうれしいものの)、物語の都合に合わせた印象を受けてしまいました。
なぜまた「生と死の選択」を迫られるのか
最終話、たったひとりゲームに勝ち残ったアリスは、謎の老紳士から「生と死」の選択を迫られます。
渡辺謙さん演じる老紳士の登場は、サプライズ的な要素も含め、圧倒的な重厚感で見せ場のひとつとなっていました。しかし、「ここは生と死の狭間の世界」という彼の説明は、すでに視聴者が理解していることでもあり、驚きや新鮮味には欠けていました。
一度完結した物語を再構築するにあたって、再び「生と死の選択」を描く必然性がどこまであったのかは、疑問が残るところです。すでにシーズン2で過酷なゲームを経て「生きる」ことを選んだアリスが、なぜまた同じ問いに直面するのか。その理由づけがもう少し深く掘り下げられていれば、より納得感を得られたのではないかと思います。
ラストシーンでは、老紳士の「これから大勢の人間がここに来る」という予言を裏付けるかのように、世界各地で地震が頻発し、不穏な描写で幕を閉じます。
カメラは日本からアメリカへ移動し、カフェの女性店員のネームプレート「Alice」がアップになったところで終わる。このラストの演出は、シーズン4への布石なのか、それとも新たな物語の始まりなのか、気になるところです。
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