WOWOWの連続ドラマ「コールドケース3-真実の扉-」第4話“オルゴール”のあらすじと感想(ネタバレ有)です。
ガラケー世代の男が時代に取り残される話。世代が近いので身につまされる部分もあって、切なかったです。
元ネタは、アメリカ版「コールドケース」シーズン5第12話“Sabotage”です。
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ネタバレ有「コールドケース2-真実の扉-」登場人物(キャスト)一覧・全話あらすじ感想第4話「オルゴール」のあらすじ
2018年12月。電気店の女性店員・内藤由美子(福田沙紀)が紙袋に入ったオルゴールを見つける。オルゴールは“切手のないおくりもの”のメロディーを奏で、爆発する。
現在。スポーツクラブで爆発が起き、非番の消防士・谷岡真吾(佐伯大地)が爆発に巻き込まれて左腕を失う。焼け跡からオルゴール型爆弾のシリンダーが見つかり、2年前の電機店爆破事件と同一犯だと思われた。
スポーツクラブでバイトをしていた高校生の今井哲也(醍醐虎汰朗)は、ロッカーの掃除中にオルゴールを見つけ、蓋を開けたと証言。その直後に谷岡が入ってきたたため、オルゴールを元に戻して立ち去ったという。
さらに本牧総合病院でも爆破事件が発生し、小児科医の長谷川洋介(迫田孝也)が死亡する。シリンダーの購入者は高原浩(仲村トオル)と判明。自宅の壁には爆発の被害者たちと、次の標的と思われる当麻夫妻と中年男性の写真が貼られていた。
百合(吉田羊)と高木(永山絢斗)は当麻夫妻を訪ね、当麻渉(音尾琢真)が高原浩の実の弟だと知る。高原の狙いは渉だったが、当日渉がスポーツクラブへ行かなかったため、谷岡が爆発の被害に遭ったのだ。
高原浩の実家は木材加工を扱う小さな工場で、1981年に閉鎖されていた。弟の渉はその直後に当麻家に養子に出され、工場は2017年に再開発によって取り壊されていた。
かつて高原が勤務していたGDB恵比寿町工場で爆破事件が起き、社員の田畑英治(佐藤貢三)が負傷する。田畑は数年前、高原にリストラを言い渡した人物だった。
離婚した高原の元妻・杉山佳子(紺野まひる)は、高原の転職がうまくいかなかったことや、その後すぐに娘の葉月が小児がんだと診断され、辛い日々を送ったことを語る。葉月の担当医は爆破事件の被害者・長谷川洋介だった。
爆弾に使われたオルゴールは、職人だった高原の父が葉月のために作ってくれたものだった。渉は工場が取り壊しになる前、高原と会ったことを百合たちに打ち明ける。
仕事も家族も失って怒りを溜め込んでいた高原は、銀行員として働く渉を「他人にたかって甘い汁をすするだけ」と罵倒したのだった。その日以来、兄とは絶縁状態になったという。
百合たちは高原の父親が手掛けた椅子がある礼拝堂へ向かう。高原はオルゴールの箱を抱えて礼拝堂の椅子に座っていた。だがオルゴールの中に入っていたのは家族写真だけだった。
爆弾は別の場所だと気づいた百合は、渉の妻子を護衛している立川に連絡する。妻子はピアノ発表会の会場にいた。渉の娘がオルゴールを開け、爆発音が鳴り響く。
百合と渉が現場に駆けつけると、妻子は無事だった。高原は警察官に拘束される。
第4話の登場人物(キャスト)
高原浩(仲村トオル)
連続爆破事件の犯人。“切手のないおくりもの”が流れるオルゴール型爆弾で次々と爆破事件を起こす。リストラで仕事を失い、再就職に失敗している。
杉山佳子(紺野まひる)
浩の元妻。浩との間に娘の葉月をもうけるが、小児がんで亡くしている。娘の死後、浩のもとから去った。
当麻渉(音尾琢真)
銀行員。高原浩の実弟。父親が工場を閉じた直後に当麻家に養子に出された。爆発事件が起きたスポーツクラブの会員。
当麻祥子(山田キヌヲ)
渉の妻。スポーツクラブの職員を名乗る男から、不気味な電話を受けていたことを警察に打ち明ける。
谷岡真吾(佐伯大地)
消防士。今回の爆破事件の被害者。非番の日にスポーツクラブに来ていて被害に遭った。爆発後に“切手のないおくりもの”のメロディーを奏でる口笛を聞いたと証言する。
今井哲也(醍醐虎汰朗)
高校生。爆破されたスポーツクラブでアルバイトをしている。爆破前、ロッカーの掃除中にオルゴールを見つけたことを供述する。
田畑英治(佐藤貢三)
GDB恵比寿町工場に勤務する社員。爆破事件の被害者。5年前、高原浩に解雇通告をしている。
長谷川洋介(迫田孝也)
本牧総合病院の小児科医。爆破事件の被害者。過去に高原の娘・葉月を担当していた。
内藤由美子(福田沙紀)
大型電気量販店の店員。2年前の爆破事件の被害者。高原浩にスマホへの乗り換えを提案していた。
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ネタバレ有「コールドケース3-真実の扉-」登場人物(キャスト)一覧・全話あらすじ感想第4話で使用された曲
- DA PUMP「U.S.A.」
- 米津玄師「Lemon」
第4話の感想
切手のないおくりもの
日本版のオルゴールの曲が何になるのか、今回もっとも気になってたところ。まさか「切手のないおくりもの」だとは! 完全に予想外だった!
わたしが小学生のとき、担任の先生から教えてもらった曲です。作詞・作曲はチューリップの財津和夫さん。もともとはNHKの音楽番組で発表されたものらしい。今でも小学校で歌われたりしてるのかなぁ。
こんな素敵な曲のオルゴールを爆弾に使うとは、高原の心はもう壊れていたのかもしれませんね。
ちなみにアメリカ版では「ジョン・ヘンリー」という、日本人にはなじみのない曲でした(詳しくは後述)。
ガラパゴスの悲哀
実家の土地は再開発で奪われ、21年間勤めた会社からは突然クビを宣告され、ひとり娘を病気で失い、妻にも去られ…。まっとうに生きたかっただけなのに、すべて奪われてしまったと嘆く高原。
「“これからの時代”。私にはそんなものはありません。かといって昔にも戻れない」
年齢的にはあまり変わらないので、このセリフは切ないものがありました。さすがにわたしの世代で年功序列や終身雇用を信じてる人は、もういなかったと思うけど。
社会人になったばかりの頃、上司から「この技術を身につければ一生食いっぱぐれない」と言われ必死になって習得したら、わずか数年でパソコンやネットが普及し、見事に食いっぱぐれました。以来、「永遠に続くもの」などないと思って生きてます。
でもたぶん、彼がこだわっているのは、技術的なことよりも精神的なことなんだろうな。その点では日本版はやや漠然とした印象で、インパクトに欠けていたかもしれない。
アメリカ版との違い
ここからは、元ネタとなったアメリカ版「コールドケース」シーズン5第12話“Sabotage”との違いについて説明します。
電器店爆破事件の時代設定は、日本版が2018年だったのに対し、原作のアメリカ版では1991年でした。
ストーリーと登場人物はほぼ同じですが、犯人に辿り着く過程と、オルゴール曲にまつわる背景がアメリカ版のほうが複雑でした。
爆破事件
原作における爆破事件の流れは以下のとおり。
- 1999年 家電量販店
- 2001年 エンジニアリング会社(かつての勤務先)
- 2003年 郡立病院
- 現在 スポーツジム
日本版では、犯人は本名「高原浩」でシリンダーを購入していましたが、原作では他人の名前を使っています。
名前を借りた人物の両腕には「ジョン」と「ヘンリー」というタトゥーがありました。犯人の実家があった場所は「ジョン・ヘンリー通り」で、いずれもオルゴールの曲「ジョン・ヘンリー」に繋がっています。
オルゴールの曲
日本版では、高原の父が好きな曲として「切手のないおくりもの」がオルゴール曲に使われていました。アメリカ版では「ジョン・ヘンリー」という曲です。
ジョン・ヘンリーは、アフリカ系アメリカ人の英雄にして悲劇の労働者。1870年頃にウェスト・バージニアあたりで伝説化されたと言われています。
大男で怪力のジョンは、ダイナマイト用の穴掘りを蒸気ドリルと競争して勝利し、自分が蒸気ドリルよりも有能であることを立証しますが、体を酷使したために死んでしまい、結局は機械へと置き換えられてしまうのです。
この話は、技術の進化と戦う無益さの例えとして、アメリカでは多くの歌や演劇、小説などで扱われています。
高原浩/ロッシリーニ
高原(アメリカ版ではロッシリーニ)が見舞われる不幸は、原作と同じです。
娘の病気は日本版では小児がんでしたが、アメリカ版では網膜芽細胞腫。医療保険が払えず、発見が遅れたことが致命的となりました。
日本版で標的にされた担当医は、アメリカ版では内科助手。病院で何時間も待たされていたロッシリーニが声をかけた男で、その理由が「コンピューターの故障」でした。
また、会社をクビになったときも「君の代わりはもう機械で充分なんだ」と言われています。
ジョン・ヘンリーの話を「体より頭を使え」という教訓にして、教育を受けて就職して一生懸命働いたけれど、結局最後は使い捨てだった、と吐き捨てるロッシリーニ。
ロッシリーニにとって、オルゴールの箱は父親が作った「永遠に価値の変わらない完璧な物」でした。
電気店の店員
日本版では女性店員でしたが、原作では21歳の男性店員(売り場主任)カートです。
日本版ではガラケーが時代遅れの象徴として、高原本人に重ね合わされていました。原作のアメリカ版では、もちろんガラケーは登場しません。
カートは、ロッシリーニが不良品のシャワー・ラジオを持ち込んだときに対応した店員です。購入日から30日過ぎていたため返品できず、口論に。
最後は「新しいのを買った方が安くつきますよ」「使い捨て商品です」というカートの言葉にカッとなったロッシリーニが、かごの中にオルゴールを入れて立ち去りました。
当麻渉/ルーク・ロス
日本版では当麻渉本人がすぐに弟だと明かしましたが、原作では終盤まで兄弟であることはわかりません。
ロッシリーニの妻の話でルチアーノという弟がいることがわかり、調べてみると改名してルーク・ロスになっていた。そこで初めて兄弟だと判明します。
ルークが最後に兄に会ったのは、再開発に抵抗して実家の売却を拒否し、立て籠もっていたときでした。
「前に進まないと」と説得するルークに、ロッシリーニは「おまえはこの世界にぴったりな人間だ。他人に寄生して金儲け」と罵倒し、兄弟の縁を切りました。
日本版では、渉の妻子はピアノ発表会に出ていて爆破に巻き込まれましたが、原作では自宅です。娘が学校のロッカーに入っていたオルゴールを持ち帰り、家で開けてしまいます。
日本版のラストシーンでは、どうして娘が助かったのか謎でしたが、原作では硝煙の中からすすだらけのニック(日本版の立川)が娘を抱きかかえて家から出てくる場面で救出されたことがわかります。
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