ネタバレ有「誰かがこの町で」全話あらすじ・感想|集団心理の恐ろしさを描いたオカルト・ミステリー

WOWOWドラマ「誰かがこの町で」あらすじキャスト一覧

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WOWOWの連続ドラマ「誰かがこの町で」(全4話)のあらすじと感想(ネタバレ有)です。

閉鎖的な町を舞台に集団心理の恐ろしさを描いたオカルト風味のミステリー。犯人よりも「町」に怖さを感じるところが斬新でした。

現在と過去が交互に描かれ、意外な人物が繋がっていく展開が面白かったです。

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各話のあらすじ

2001年。埼玉県北名市与久那町福羽地区「美しが丘ニュータウン」で、木本千春(大塚寧々)・俊樹(戸次重幸)夫妻の一人息子、貴之が行方不明になり、翌朝遺体で発見された。
副地区長の延川善治(宮川一朗太)と防犯係の松尾和夫(尾美としのり)らは、自分たちの手で犯人を捕まえようと動き始める。延川らの犯人探しはエスカレートし、無実の外国人を犯人と決めつけて抗議活動まで行う。
息子を亡くして憔悴する千春は、民宿と農園を営む近藤利雄(でんでん)から梅の木を譲ってもらい、庭に息子の遺骨の一部とともに植える。
2024年。岩田喜久子法律事務所に望月麻希(蒔田彩珠)と名乗る若い女性が現れる。麻希は児童養護施設で育ったが、最近になって家族の身元がわかり、喜久子(鶴田真由)に捜してほしいと調査を依頼する。麻希の母・良子(玄理)は喜久子の大学時代の親友で、19年前に一家で失踪していた。
麻希がほんとうに良子の娘なのかどうか調べてほしい、と喜久子に頼まれた真崎雄一(江口洋介)は、麻希の家族が住んでいた埼玉県北名市与久那町福羽地区「美しが丘ニュータウン」へ向かう。
だがその町は〝よそ者〟に対して異常なほど警戒心が強く、真崎は到着してすぐに「子どもに暴力をふるった」と勘違いされ、警察に連行されてしまう。
近藤が営む民宿「源泉館」に宿泊した翌朝、真崎は麻希が松尾たちに連れ去られようとしているのを目撃し、彼女を助ける。麻希は自力で家族の行方を突き止めようと、ひとりで調査を始めていたのだった。
松尾らは麻希の調査を妨害しようとしたのだ。さらに真崎に逮捕歴があることを知った彼らは、「この町に寄り付かないでほしい」と吐き捨てて立ち去る。
真崎には、高校生の娘・絵里(本間里彩)を自殺で亡くした過去があった。自殺の原因はいじめだったが、学校側は絵里がいじめの加害者で主犯だったと主張。納得がいかない真崎は、いじめの首謀者だった同級生の少女につきまとい、しつこく問い詰めたことでストーカー扱いされ、逮捕されたのだった。

2024年。真崎と麻希は民宿「源泉館」を拠点に、望月家の失踪事件を調査することに。
近藤によると、福羽地区は20年前の誘拐殺人事件をきっかけに防犯意識が強まり、「安全安心な町作り」がいつのまにか独り歩きを始めたという。
真崎と麻希は副地区長の延川を訪ねる。望月一家の失踪事件について聞くと、延川は「失踪ではなく、近所とうまくいかずに引っ越していっただけ」と主張し、まともに取り合おうとしなかった。
真崎は自分の家族について麻希に聞かれ、娘の絵里がいじめを苦に自殺したことを打ち明ける。
当時、政治家の秘書をしていた真崎は、裏金づくりのための二重帳簿を作成するよう命じられ、葛藤を抱えながら仕事をしていた。絵里のサインにも気づかず、「いけないことでも、しなければならないってことがある」と言ってしまったことを、真崎は今でも後悔していた。
5年前に亡くなった地区長の菅井昭次郎(本田博太郎)が民自党の所属で、政治家だった喜久子の父・岩田聡一と同じ大学出身だと知った真崎は、2人の間に何らかのつながりがあったのではないかと疑い始める。
2005年。木本家の隣に望月一家が越してくる。千春はすぐに良子と親しくなり、4年前の事件で息子を亡くしたことを良子に打ち明ける。
だがまもなく、望月家を「この町の住人として不適格」と中傷する文書が各家にばらまかれる。防犯係の夫・俊樹は、町のやり方に口を挟む良子を要注意人物とみなし、仲良くしないよう千春に釘を刺す。
やがて住民らによる望月家への嫌がらせが始まり、千春はわけがわからないまま良子を避けるようになる。
2024年。20年前の誘拐殺人事件の被害者が、望月家の隣に住んでいた木本千春の息子だと聞かされた真崎と麻希は、千春に話を聞きにいく。
町で千春を見かけた2人は彼女を尾行し、林の中の祠にたどり着く。千春は庭から取ってきた梅の枝を祠に供えると、その場に倒れ込んでしまう。
千春を病院に運んだ真崎と麻希は、千春が望月家の事情について何か知っているのではないかと推測するが、目を覚ました千春は良子の娘だという麻希を見て「あなたは娘なんかじゃない」と断言する。

2024年。千春は「良子さんは梅の花が好きだった」とだけ告げ、口をつぐんでしまう。真崎と麻希は千春に連絡先を教え、連絡を待つことに。
2005年。千春のもとに地区長の菅井が現れ、「線香をあげさせてほしい」という。菅井は妻と一人息子を亡くし、憔悴していた。千春に何か言おうとする菅井だったが、延川と松尾が来て菅井を強引に連れ出す。
良子は千春をカラオケボックスに連れていき、自分が嫌がらせを受けることになった経緯を説明する。良子は20年前の誘拐殺人事件について、自分なりに調べていたという。一時は弁護士を目指していたこともあり、良子の調査は本格的なものだった。
調べるうちに、犯人の目撃証言をした松尾がウソをついていることに気づき、彼を問い詰めたという。嫌がらせが始まったのはその直後からだった。
さらに調査を進めた良子は、2年前に宇都宮で起きた連続男児誘拐殺人事件が、貴之の事件と類似していることに気づいた。そこで福羽地区から宇都宮近辺に移った人物を調べ、菅井の息子・菅井輝夫(末原拓馬)にたどり着いたという。
菅井輝夫は半年前に交通事故で亡くなっているが、自殺の可能性もあると良子は見ていた。そしてもし輝夫が貴之を殺した犯人だとしたら、調査を妨害されるのも納得がいくという。
良子は事件の真相を明らかにすると千春に告げ、万が一のときは友人の喜久子に連絡するよう、喜久子の連絡先を渡す。
千春は何も知らずに延川たちに利用されている夫・俊樹に真相を話すが、洗脳された俊樹は真実を明らかにすることを拒み、「町を守るのが最優先だ」と言い張る。
2024年。麻希は千春に呼び出されて木本家を訪れ、リビングで千春の遺体を発見する。そして重要参考人として警察に連行されてしまう。
真崎から連絡を受けた喜久子は、刑事専門の弁護士・朝比奈を連れて福羽地区へ向かう。喜久子は真崎に、隠していた過去の過ちについて打ち明ける。
良子は失踪する半年前に、アメリカにいる喜久子に誘拐殺人事件の資料のコピーと手紙を送っていた。手紙には犯人と思われる「菅井輝夫」の名前も書かれていた。
だが帰国した喜久子は、誘拐事件についても、望月家の失踪事件についても、明らかにしようとしなかった。民自党の議員である父・岩田聡一に反対されたからだ。父と菅井は同じ派閥だった。
喜久子自身も研修を終えて大手弁護士事務所に入ることが決まっており、民自党を敵に回して干されることを懸念した。正義感よりも自分の将来を選んだのだという。
自分が取った行動を恥じ、悔やんでいるという喜久子。真崎は自分も同じだと告げ、麻希を守る決意をする。
真崎たちは釈放された麻希とともに「源泉館」に戻って来るが、麻希を殺人犯と決めつける福羽地区の住民たちから襲撃を受ける。

2024年。住民たちを追い返した真崎は、福羽地区の全住民を告発すると決意する。喜久子は良子の手紙を麻希に見せ、自分が隠蔽に加担したことを謝罪する。
2005年。延川と松尾たちは、事件の真相を知ってしまった良子の口を封じようと、菅井と木本夫妻を連れて望月家を訪れる。
良子が説得に応じないことを知ると、延川たちは強引に家に押し入り、良子と夫、さらに5歳の息子・幸太郎を殺害してしまう。
千春は幼い赤ん坊の麻希を連れて逃げようとするが、延川たちに見つかってしまう。菅井は自分の過ちを悔い、もし赤ん坊を殺すなら今すぐ警察に自首して4年前の事件を明らかにする、と延川たちを脅す。
4年前、息子の輝夫が貴之を殺してしまったとき、菅井は延川たちに助けを求めて事件を隠蔽させたのだった。菅井の妻は息子のしたことに耐えきれず、首をつったという。
延川は秘密を守り抜くという条件で、麻希を殺さないことに同意する。延川たちが望月一家3人の遺体を処理する中、千春は麻希を抱いてその場から逃げ、行くあてもなくさまよう。そうしてたどりついたのが児童養護施設「清心園」だった。
2024年。延川家を訪ねた真崎と喜久子は、良子が失踪する前に誘拐殺人事件について調べ、犯人にたどり着いていたことを延川に話す。
そして、延川が19年前に建てたという祠の下に、望月一家の遺体が埋められているはずだと指摘する。
焦った延川は、松尾らに命じて遺体を掘り起こし、別の場所に移動させようとするが、警察にその場を押さえられて逮捕される。3人の遺体を前にした麻希は涙を流す。
千春を殺したのは松尾の会社の従業員だった。千春のようすがおかしいと妻・美千代(池津祥子)から聞いた延川が、「口封じに殺すしかない」と指示したのだ。
真崎は自分の過去と向き合うことを決め、裏金づくりを命じた民自党の幹事長を告発する。その記者会見の場には、代理人を引き受けてくれた喜久子と、喜久子の事務所で働くことになった麻希の姿があった。

感想

梅の花が重要な役割を果たしているので季節は冬~春なのですが、内容的にはオカルト・ミステリーで、「夏」向きのドラマ。

「安全で安心な町づくり」という、一見ありきたりで平和な標語が、ある事件をきっかけに暴走して町全体が異常な同調圧力に支配されていく。

自分の息子が殺されたにも関わらず、犯人を捕まえることよりも「町の平和」を選び、隠蔽に加担する父親。まったく理解できませんが、洗脳されるとこうなってしまうのでしょうか。

物語の中では「正義の味方」の位置にいるはずの真崎や喜久子にも、同調圧力に屈して間違った選択をした過去があるという設定が興味深く、特に喜久子が事件の隠蔽に加担していたという事実は衝撃的でした。

集団に属していれば、誰もが多少の忖度や「右へならえ」は経験があるはず。中にいるときはたいてい気づかなくて、離れてから「あれはおかしかったのかも」と思うことも多い。

同調圧力の中で「おかしい」と声をあげられるかどうか。たった一人でもブレーキをかけられるかどうか。

そうありたいと思ってはいても、いざとなったらたぶん行動に移すのは難しい。告発者が守られる社会にはなっていないから。

* * *

このドラマを見て、1989年にオウム真理教の幹部に殺された坂本弁護士一家を思い出し、暗澹たる気持ちになりました。

この事件も1995年にご遺体が発見されるまで、「失踪」として報道されていました。

リアルタイムで経緯を見ていた昭和生まれのわたしには、ドラマの望月一家が坂本弁護士一家と重なり、最終話の殺害シーンは本当に見ていて怖かったし、やりきれない気持ちになりました。

ドラマの中では赤ん坊の麻希が助かり、生きていてくれたことが救いです。

時系列

  • 2001年、木本夫妻の息子・貴之が誘拐され、遺体で発見される
  • 菅井昭次郎の息子・輝夫が福羽地区から栃木県宇都宮市に引っ越す
  • 2003年、宇都宮周辺で連続男児誘拐殺人事件が発生
  • 菅井昭次郎の妻が自殺する
  • 菅井輝夫が交通事故で死亡する
  • 2005年、木本家の隣に望月一家が越してくる
  • 望月良子が木本千春と仲良くなり、貴之の事件を調べ始める
  • 望月家が住民たちから嫌がらせを受けるようになる
  • 望月良子が貴之を殺した犯人を突き止め、事件の真相を木本千春に話す
  • 望月良子が事件の資料をアメリカにいる岩田喜久子に送る
  • 延川と松尾らが口封じのため望月一家を殺害し、遺体を埋める
  • 木本千春が赤ん坊の麻希を児童養護施設に預ける
  • 延川が望月一家の遺体を埋めた場所に祠を建てる
  • 岩田喜久子が帰国し、望月家の失踪事件について調べようとするが父親の反対を受けて断念する
  • 2012年、失踪宣告により望月一家が死亡したものとみなされる
  • 2019年、菅井昭次郎が病死する
  • 2024年、望月麻希が岩田喜久子法律事務所を訪れ、家族を捜してほしいと依頼する

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