それぞれの結末(ネタバレ有)
ここからは、登場人物をひとりずつ紐解いていきたいと思います。
ネタバレを含みますので、ご注意ください。
ジョン・メイバオ
停電の夜、自宅で遺体となって発見された被害者。
子供の頃、母の再婚相手イエン・ヨンユエンから性的虐待を受けていました。一家を救おうとした外科医のメイリーと弟ジュンとともに逃げようとするも、母をヨンユエンに殺され、ヨンユエンを刺して寄宿学校に入れられます。
寄宿学校でリー・モーリー、ディン・シアオリンと出会い、校長室からルイス・ラグランジュのレコードを盗みました。
その後も継父ヨンユエンから逃げる生活を続けていましたが、モーリーの新居である摩天大楼(ホライズン・タワー)で空き店舗を見つけ、引っ越すことを決意。連絡を取っていなかった弟ジュンや、メイリーとも再会します。
メイバオが隠れるように暮らしていたのは、継父ヨンユエンをジュンに近づけさせないためでした。
しかしジュンがピアニストとして有名になってヨンユエンに見つかってしまい、過去の写真をばらまくと脅されて金を要求され、ジュンを守るためにヨンユエンを自宅に監禁します。
監禁にはモーリーとシアオリンが協力し、隣室のミンユエや警備員のバオルオも事情を知っていました。
監禁は1年続き、耐えられなくなったメイバオはヨンユエンを殺して自殺しようとしますが、思いとどまって彼を解放。自首することを決意するも、ヨンユエンに殺されてしまいます。
彼女が死んだ日に着ていた白いドレスは、弟ジュンが幼い頃にヨンユエンから暴行を受けたとき身につけていた服でした。
シエ・バオルオ
マンションの警備員で、メイバオの友人。
彼の供述がどこまで本当なのかは、最後まではっきりしません。
「シエ・バオルオ編」では、彼がメイバオに誘惑されているような意味深なシーンがありましたが、たぶん2人の間にそういうことはなかっただろうと思います。
バオルオが一方的に好意を持っていただけじゃないかと。
彼はメイバオが引っ越してきたとき停電でエレベーターが停まっていたため、部屋まで荷物を運んだと供述していましたが、これは嘘ですね。
彼が荷物を運んだのは、1年前の年越しパーティーの夜。メイバオが継父ヨンユエンを監禁するため、大きなバッグに入れて自室に運び込もうとしたときです。
バッグの中身を怪しんだバオルオに、メイバオはすべてを打ち明けていました。
第2話でバオルオが語ったメイバオの家族の話は、彼がメイバオから聞いた話を少しだけ変えて喋ったのだと思います。警察には「家族には会ったことがない」と強調していた彼ですが、実際には1年前に会っていました。
最終回、バオルオはミンユエと一緒にメイバオのカフェで働いていました。お店を引き継いだのかな。
リン・ダーセン
建築家。メイバオの幼なじみで愛人だったと証言。
しかし実際は幼なじみでも愛人でもなく、単なる「妻の友人」でした。
「リン・ダーセン編」での彼の供述は、メイバオに関する部分はほとんど作り話。服やベッドを贈ったというのも嘘。
結婚式の夜にメイバオから電話がかかってきたのは本当ですが、あくまで「モーリーの友人」としてであり、その前からメイバオのことは知っていたようです。
彼は妻モーリーがメイバオのために家を買ったことや、ヨンユエンの監禁に関わっていたことを、事件の日まで知りませんでした。
メイバオの遺体を発見したモーリーから事情を打ち明けられ、妻と産まれてくる子供を守るために自分が悪者になることを決意。メイバオの部屋に戻って指紋を拭き取り、警察には嘘の証言をしました。
最終回、ダーセンは服役を終えて出所したモーリーを、子供と一緒に出迎えていました。
リー・モーリー
ダーセンの妻。
メイバオが死んだ日に産気づき、病院に運ばれています。
第4話の供述では夫婦仲はよくないと言っていましたが、実際のところは2人は愛し合っています。彼女とメイバオは寄宿学校時代からの親友で、メイバオは2人の結婚を祝福していました。
モーリーはメイバオが継父ヨンユエンに脅されていることも知っていて、何かと協力していました。年越しパーティーの夜にメイバオがヨンユエンを殴って気絶させたときも、現場に居合わせています。
その夜、モーリーはメイバオとお揃いの服に着替えて、防犯カメラに映るというアリバイ工作をしていました。
屋上で同じ服を着たメイバオと鉢合わせたのは、計算していなかったこと。とっさに険悪な雰囲気を装い、喧嘩するフリをしたのです。
メイバオの部屋を購入したのは、家主が突然「家を売る」と言い出したから。ヨンユエンを監禁中なので、簡単には引っ越せません。なので夫には「投資のため」と嘘をつき、家を買ったのです。
事件の日はメイバオの弟ジュンのコンサートに出かけていましたが、マンションに戻ってきてメイバオの遺体を発見。近くに練炭があったことから、彼女が無理心中を図ったのだと思い込みます。
その直後に産気づき、救急車に運び込まれたときに夫ダーセンに事情を打ち明けていました。
最終回、モーリーは監禁罪と傷害罪で懲役判決を受けます。シアオリンとともに出所した彼女は、夫ダーセンに迎えられました。
リン・モンユー
マンションの仲介業者で、覗き趣味がありました。
彼は第6話でメイバオとダーセンが不倫関係にあり、ダーセンが彼女のために妻とまったく同じ服やアクセサリーをプレゼントしていた、と証言していましたが、これはデタラメ。
そもそも覗きができるのはC棟だけで、ダーセンが住むB棟は覗けなかったのです。
年越しパーティーで同じ服を着たメイバオとモーリーが鉢合わせた場面を、「妻と愛人の喧嘩騒ぎ」に仕立て上げるためについた嘘でした。
モンユーとシアオリンもまたメイバオの遺体発見現場に居合わせ、シアオリンから事情を聞いたモンユーは、愛する彼女のために協力することを誓ったのです。
同じく第6話で、2人のこんな会話がありましたよね。
「心配するな。余計なことは何も言ってない」
「ありがとう」
「君のためなら何でもするよ」
彼は年越しパーティーのあとメイバオの部屋を覗くのをやめているので、彼女がヨンユエンを監禁していることは知らなかったのでしょう。彼女の部屋の隣と上下階の部屋を売り止めたのも、シアオリンからの頼みで、本当の理由は知らされていませんでした。
物語のラスト、彼は服役を終えて出所したシアオリンを出迎えています。
シェン・メイチー
モンユーと同居中の元妻。
夫が趣味の覗きに使っている通風孔を発見し、メイバオの部屋に繋がっていることを知って嫉妬を募らせていました。
第6話で、彼女は夫の愛情を奪ったメイバオへの憎悪をあからさまにし、こう語っていました。
「彼女たちのやることは周りの男の気を引くことだけ。死ぬ時でさえ最も美しい方法を選ぶ。きれいに着飾ってね」
しかし、メイバオが死んだときの服装は公表されておらず、「着飾って」いるかどうかは知りようがないはず。最終回でそのことに気づいたジョン刑事は、メイチーが現場を目撃したのではと考えます。
最初は否定するメイチーでしたが、ヤン刑事の説得で「メイバオは自殺じゃない」と真実を打ち明けます。
事件の日、彼女は通風孔からメイバオの部屋を覗き、事件の一部始終をスマホで撮影していました。それによってヨンユエンの犯行が証明され、事件は解決します。
ディン・シアオリン
モンユーの愛人で、マンションの住人。
彼女もモーリーと同じく、メイバオとは寄宿学校時代からの親友。第5話で母親の“年の差婚”を同級生にからかわれ、喧嘩して寄宿学校に入れられたと語っていました。
「そこで親友と出会った。その子は人の目を気にしない方法を教えてくれた」
この親友はメイバオのことだったんですね。
彼女もヨンユエンの監禁に協力し、叫び声が漏れてもいいように、隣と上下階の部屋を売り止めるよう愛人のモンユーに頼んでしました。
最終回、モーリーとともに懲役判決を受けて服役した彼女は、出所してモンユーに迎えられています。
ウー・ミンユエ
メイバオの隣に住む、引きこもりの小説家。
事件の夜、メイバオに何かあったと知った彼女は、執筆中の小説「祥雲幻影録」の原稿をベランダから捨てます。警察の捜査の対象になることを恐れたのでしょう。この作品は、メイバオと弟ジュンをモデルに書いたものでした。
「ウー・ミンユエ編」で明らかになった作品の内容を振り返ると、現実と重なる部分ばかりです。
- 姉弟は引き離され、互いに分かる方法で寄り添っていた
- 姉は仙界での罪人が懲罰を受ける場所・葬魂谷に送られる
- 狐と鶴と仲良くなる
- 弟を救うため、姉は自ら魔王の元へ
- 姉は魔王を殺して姿を消す
メイバオから辛い過去を打ち明けられたミンユエは、「弟のためにこの秘密を守って」と頼まれていました。隣室なので監禁中のヨンユエンの叫び声も聞こえていましたが、見て見ぬふりをしていました。
最終回、彼女はバオルオとともにカフェで働いていました。パニック障害は克服できたみたいですね。
イエ・メイリー
メイバオの家に出入りする優秀な家政婦。
年越しパーティーの夜、イエ・シュージュンを誘拐した罪で逮捕されました。
「イエ・メイリー編」で彼女が語ったところによると、元外科医で、メイバオが暮らしていた町の病院に勤務していました。夫ヨンユエンからの暴力で怪我をしたメイバオの母ジエが病院に来たのを機に家族と親しくなり、ジエと子供たちを助けるため一緒に逃げることを計画。
しかしジエが死んでしまい、メイバオが復讐のためヨンユエンを刺したため、ジュンだけを連れて逃げました。
その後メイバオと再会し、マンションで家政婦として働きながら姉弟を見守っていましたが、ヨンユエンの通報によって誘拐罪で逮捕されてしまいます。
ラストでは、刑務所を出る様子が一瞬だけ映っていました。
イエ・シュージュン
ピアニスト。本名はイエン・ジュンで、メイバオの異父弟でした。
メイバオの母ジエと、再婚相手ヨンユエンの実の息子。幼い頃からピアノの才能を発揮していましたが、メイリーの援助によって本格的な教育を受け、ピアニストになる夢を叶えました。
メイバオと同様、幼少時にヨンユエンから性的虐待を受けていました。ミンユエが警察に提出した写真に写っていた子供は当初メイバオと思われていましたが、ジュンであることが判明。
彼が精神的に不安定で、精神科への入退院を繰り返していることも、過去に起因していると思われます。
第12話では、父ヨンユエンに2年前から大金を強請られていたことを供述。そのせいで蓄えをすべて失い、仕事を増やして手を痛めてしまいました。そのことを知ったメイバオは、ジュンを守るためにヨンユエンを監禁します。
最終回、コンサート前にジュンとメイバオが電話で交わした会話の内容が明らかになります。
「光のもとで暮らそう。過去のことは僕らの過ちじゃない。それに僕はもう大人になった。強くなってる。姉さんに守られなくても、自分で対処できる。あんな写真で僕は何も変わらない」
彼の言葉はメイバオに自殺を思いとどまらせ、生きる希望を与えました。
イエン・ヨンユエン
メイバオの継父で、ジュンの実父でした。
心理学の手法を用いてメイバオの母ジエの心を操作し、家族を暴力で支配してきました。幼いメイバオとジュンに性的虐待を与え、姉妹が手に入れたピアノを燃やし、幾度となくジエを病院送りにしています。
ジエが逃げた後も執拗に追いかけ、ついには自殺に見せかけて殺害。それを知ったメイバオに刺されますが、警察には通報しませんでした(おそらく自分の犯行を隠蔽するため)。
メイバオが寄宿学校を出た後は彼女につきまとい、ジュンがピアニストとして成功すると写真をネタに金を強請っていました。メイバオが手切れ金を渡して関係を断とうとすると、嫌がらせを始めます。
警察に通報し、メイリーを誘拐犯として逮捕させたのです。メイバオはカフェで彼を殴って気絶させ、モーリーとシアオリンの協力を得て自宅に監禁。
事件の夜にメイバオによって解放されるまで、監禁は1年間続きました。
解放されたヨンユエンはメイバオを殺し、練炭自殺を偽装して逃亡。その後しばらくは身を隠していましたが、自ら警察に出頭し、ジュンに精神障害があることを暴露。釈放後、テレビの生番組に出演してジュンに刺されます。
事情聴取では「目が覚めたらメイバオが死んでいた」と供述していましたが、メイチーが撮影していた動画によって彼の犯行と証明され、逮捕されました。
ラストでは死刑判決を受けたことが明らかになっています。
ジョン刑事
メイバオの事件を捜査しました。
いいかげんに見えますが、鋭い観察力と洞察力で関係者の嘘を見抜きます。
ある事件の関係者にセクハラで訴えられていましたが、捏造だったことが第9話で明らかになりました。さらに、彼がいつも心配している少女シアオシアオは娘ではなく、亡くなった相棒の娘であることが最終回で判明します。
撃たれた殺人犯を助けようとして、結果的に相棒を死なせてしまったジョン。
彼はそのときの時刻のまま止まっている相棒の時計を身につけていましたが、最終回でシアオシアオから新しい時計をプレゼントされていました。
若いヤン刑事やシアオシアオのまっすぐな心が、ジョン刑事の止まっていた時間を動かしたのかもしれません。
ヤン刑事
ジョン刑事とともに事件を捜査しました。
真面目で一生懸命ゆえに、仕事に没頭して恋人とのデートをおろそかにしがち。
彼女のまっすぐな正義感と偽りのない態度に、何度も胸を打たれました。ベテランのジョン刑事がどこか斜に構えた態度で関係者に接していたのに対し、彼女は時にあからさまに感情をぶつけて相手の心を揺さぶります。
彼女の諦めない心、「別の道を探す」という考え方は、どんなことにも当てはまる人生の指針のようにも思えました。
「摩天楼のモンタージュ」記事一覧