ネタバレ有「ミセス・ウィルソン」全話あらすじ・感想・登場人物(キャスト)一覧

海外ドラマ「ミセス・ウィルソン」

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英国ドラマ「ミセス・ウィルソン」(全3話)についてまとめました。

英BBC Oneで2018年に放送されたミステリードラマ。英国アカデミー賞3部門にノミネートされました。IMDbの評価は7.4。

主人公アリソン・ウィルソンを演じるのは、「刑事ジョン・ルーサー」で美しき殺人犯アリスを演じたルース・ウィルソン。彼女の祖母アリソン・ウィルソンの実話をベースに、アリソンとその家族の回顧録から製作された作品です。

舞台は1940~1960年代のロンドン、そして1930年代のインド。

愛する夫を心臓発作で亡くしたウィルソン夫人の前に、自分こそ本当の妻だという女性グラディスが現れます。元MI6のスパイだった夫は、2つの家庭を持ち、二重生活を送っていたことが判明します。

しかも夫の秘密はそれだけにとどまらず、やがて第三の妻の存在も明らかに……。

作品概要

  • 放送局:スーパー!ドラマTV
  • 放送時間:2019年7月17日(水)から毎週水曜22:00ほか
  • 製作国:イギリス(2018年)
  • 原題:Mrs Wilson
  • 脚本:アンナ・サイモン
  • 監督:リチャード・ラクストン
  • 製作総指揮:ルース・ウィルソン/ルース・ケンリー=レッツほか

あらすじ

1963年、ロンドン。アリソン・ウィルソンは、イギリスの秘密情報部で働いていた時に出会った夫のアレクザンダー、2人の息子たちと平凡で幸せな日々を送っていた。しかしある日、アリソンが食事の準備をしている間に、夫のアレックが突然亡くなってしまう。間もなくして、アリソンの目の前に自分がアレックの本当の妻であると主張する女性が現れる。アリソンは自分たちの結婚の有効性、そしてアレックの自分への愛を証明するためにも、夫が本当は誰なのかを探ることを決心する。

スーパー!ドラマTV公式サイトより

予告動画

登場人物(キャスト)一覧

アリソン・ウィルソン(ルース・ウィルソン)
アレックの妻。秘密情報部の元職員。アレックとは職場で出会い、1941年に結婚した。海軍に所属する長男と、高校卒業間近の次男がいる。夫アレックが急死し、夫が隠していた衝撃の事実が次々と明らかになる。

アレクザンダー・“アレック”・ウィルソン(イアン・グレン)
アリソンの夫。小説家であり、少佐であり、元秘密情報部の諜報員。表向きは外交機関の職員。アラビア語を話せることから諜報員を務めていた。アリソンとは職場結婚で、前妻グラディスとは正式に離婚したと嘘をついていた。

ナイジェル・ウィルソン(オットー・ファラント)
アリソンとアレックの息子。次男。高校卒業を間近に控えている。父・アレックを尊敬し、その死を深く悲しむ。アレックが諜報員だったことは知らない。大学に合格し、ゴードンの提案で家を出ていく。

ゴードン・ウィルソン(カラーム・リンチ)
アリソンとアレックの息子。長男。海軍に所属している。アレックが諜報員だったことは知らず、死後、独自に調査してアレックが様々な嘘をついていたことを知る。アレックとアリソンに不信感を募らせ、ナイジェルに家を出るよう促す。

グラディス・ウィルソン(エリザベス・ライダー)
アレックの最初の妻。アレックとの間に一人息子のデニスがいる。アレックの死をきっかけにアリソンの存在を知り、ショックを受ける。

デニス・ウィルソン(パトリック・ケネディ)
グラディスとアレックの息子。母親の代わりにアリソンと話し合い、アレックの遺体をサウスシーに埋葬することで合意する。

ドロシー・ウィック(キーリー・ホーズ)
アレックの葬儀に現れた女性。元女優で、アレックの2番目の妻。インドでの潜入任務に協力し、アレックと夫婦役を演じたことがきっかけで男女の関係に。マイクを妊娠したため結婚したが、カリムの工作で正式な婚姻届は出していない。
ロンドンで幸せな生活を送っていたとき、アレックが陰でアリソンと会っていることを知り、家を出て行く。

コールマン(フィオナ・ショウ)
秘密情報部時代、アレックとアリソンの指揮官だった人物。アレックとは今でも定期的に連絡を取り合っていた。アリソンにアレックの過去を掘り起こすのをやめるよう警告する。

シャバーズ・カリム(アヌパム・カー)
アレックが戦前インドで任務にあたっていたときの管理者で、親友。アレックにドロシーを紹介した人物。アレックとドロシーが結婚したいきさつをアリソンに語る。

各話あらすじ(ネタバレ有)

1963年。アリソン・ウィルソンはロンドンで年の離れた夫アレックと幸せな結婚生活を送っていたが、ある日アレックが突然心臓発作を起こし急死する。悲しみに暮れる間もなく、夫の妻だという女性グラディスが遺品を引き取るため家を訪ねてくる。
グラディスはアレックの前妻で、アリソンがアレックと出会ってまもない1940年に、2人は離婚したはずだった。しかし離婚を証明する記録はなく、アリソンは夫が嘘をついていたことを知る。
戦争中、アリソンは秘密情報部で働いていた。諜報員だったアレックとは職場で知り合い、アレックの離婚を機に正式に交際を始めた。爆撃で家を失ったアリソンはアレックの家に身を寄せ、1941年に2人は結婚した。
アリソンは離婚証明書を偽造してグラディスのもとを訪ねるが、グラディスとアレックの息子デニスはすぐに偽造だと見抜く。父を尊敬している2人の息子、ゴードンとナイジェルに事実を知られたくないアリソンは、デニスと相談して遺体をサウスシーに埋葬することに合意する。
しかしアレックの葬儀の場には、アリソンの知らない女性が姿を見せる。墓地でアレックに声を掛けた男は、アリソンを「ドロシー」と間違える。男は「1942年の潜入捜査の本当の理由をコールマンに聞け」と言い残して立ち去る。

アリソンはアレックの荷物から謎の女ドロシーが映っているスライドを見つけ、コールマンを再び訪ねる。だがコールマンはドロシーについて語ろうとせず、過去を掘り起こすのはやめるようアリソンに警告する。
アリソンは当時住んでいたアパートへ出向く。大家によると、ドロシーはアレックの妻で、アリソンの前に同じ部屋でアレックと息子マイクと三人で暮らしていたことが判明する。
アリソンはドロシーに会いに行き、彼女の口から驚くべき事実を聞かされる。ドロシーはインドで女優として舞台に立っていた時にアレックと出会い、結婚したと言う。その後ロンドンで幸せな生活を送っていたが、アレックが隠れてアリソンと会っていることを知り、息子を連れて家を出たと告げる。息子のマイクは、父親は戦争で死んだと思い込んでいた。
アリソンは墓の前で会ったカリムに会いに行く。カリムは任務を遂行するためにドロシーをアレックに紹介したこと、アレックのために結婚の手続きを偽装したことを明かす。
アリソンは戦争で徴発されたブレイクフィールドのアレックの実家について建設省に問い合わせるが、所有者は別人だとわかり、ショックを受ける。息子のゴードンもまた父がさまざまな嘘をついていたことを知り、アリソンを非難する。
アリソンはアレックの財布の中に隠されていた〝アークハーツ質店〟のカードを発見する。

アリソンは〝アークハーツ質店〟に電話をかけるが繋がらない。息子のゴードンは、病院で働くアレックを見かけたことがあると言う。アリソンが病院を訪ねると、当時アレックが職員として働いていたこと、週に一度コールマンと会っていたことが判明する。再びコールマンを問い詰めるアリソン。コールマンは、1942年にアレックが情報部を解雇されていたことを告げる。アレックの任務がすべて嘘だったと知ったアリソンは、夫の言葉を信じた自分を激しく責める。
〝アークハーツ質店〟に電話が繋がり、カリムが話に応じる。カリムはアレックが話したことは全て真実だと言い、情報部はアレックに嫌疑をかけて窃盗罪で逮捕させ、追放したのだと話す。裁判所にはアレックの裁判記録が残っていなかった。
アレックを信じようとしたアリソンだったが、ウィルソンの姓を名乗る少年と彼の母親が「夫を探している」と言って訪ねてくる。残酷な現実に打ちのめされるアリソン。
3年後、ゴードンに娘が生まれる。アリソンは家を売り、修道女となることを決意。息子たちに真実を書き残す。アリソンは2005年に他界。2007年にアレックの子どもたちが集合し交流を持った。2018年、外務省はアレックの任務に対する情報開示を機密として拒否した。

感想(ネタバレ有)

「事実は小説よりも奇なり」という言葉がぴったりの作品でした。実話をもとにしているとは思えないほど、展開がドラマチックで謎に満ちていて、見ている間ずっと驚きの連続でした。

主人公アリソンが夫アレックの死後に知ることになる“メガトン級の秘密”は、もはや人生を根底から揺るがすレベル。誰にでも隠し事はあるとはいえ、これはあまりにも重すぎます。ドラマとしては面白いですが、もし自分がアリソンの立場だったら……と考えると、胸が苦しくなります。

生きているうちなら怒りをぶつけることもできるけれど、亡くなった後では真実を確かめることすらできない。そのもどかしさと孤独感が、彼女の苦しみをより深く感じさせました。たとえ嘘でも、アリソンは本人の口から言い訳を聞きたかったんじゃないかと思います。

アレックの語っていたことがどこまで本当だったのかは、最後まではっきりしません。家柄や学歴は偽りだったようですが、MI6の任務だとされていた話も、実際にはどうだったのか……。コールマンの証言によれば、アレックは1942年にすでにMI6を解雇されていたそうで、もしそれが事実なら、彼の語っていた任務はすべて嘘ということになります。ただし、コールマン自身も信頼できる人物とは言い切れず、真相は闇の中です。

「アレックは病的な嘘つきだった」というコールマンの言葉には、妙に納得させられるものがあります。だって隠し妻が4人もいたんですよ。どう考えてもスパイ活動とは関係ないですよね。ただの女好きとしか思えません。しかも、ドロシー以外の3人は自分が“正式な妻”だと信じていて、浮気の気配すら感じていなかったというのだから、アレックはまさに超一流のペテン師です。

そんなアレックを演じたイアン・グレンの演技がまた絶妙で、見た目は誠実そうで善良に見えるのに、どこか胡散臭さを感じさせるところが見事でした。もし生きている間に浮気がバレていたとしても、彼なら飄々とした態度で言い訳していたんじゃないかと思わせる説得力があります。

アレックは生きている間、家族を不安にさせ、経済的にも苦しめ、死後には妻と子どもたちを裏切り、深い傷を残しました。そんな彼を許し、心の平穏を求めて修道女になる道を選んだアリソンの強さには、心から敬意を抱きます。彼女の人生は波乱に満ちていましたが、その中で自分を見失わず、静かな場所へとたどり着いた姿が印象的でした。

アリソンを演じたルース・ウィルソンは、アリソンの実の孫にあたります。彼女はインタビューでこんな話をしていました。

「祖母は私がプロの女優になる前に亡くなりました。そして(新しい)家族と出会って分かったのは、彼らにストーリーテリングの才能があるということでした。新しい家族には、作家や俳優、監督、詩人もいます。愉快なことに、ウィルソン家の秘密を世に出そうと言い出したのは私じゃないんですよ。皆、私に『ドラマにしましょうよ』って言うんです。『私は97歳だから早くして頂戴』なんて言う人もいました。だからドラマ化には全然問題なかったんです。摩訶不思議なストーリーを世に出すのは当然といわんばかりでした」

このドラマの完成後、ウィルソン家の人々(約50人)が集まり、試写会を行ったそうです。見終わった後は涙を流し、抱き締め合ったとか。

やはり「事実は小説よりも奇なり」です。

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