英国ドラマ「英国最後の女性死刑囚ルース・エリス~なぜ彼女は恋人を殺したのか?」(全4話)についてまとめました。
28歳の若さで死刑判決を受け、英国で絞首刑を執行された最後の女性ルース・エリスの実話に基づく物語。IMDbの評価は7.0。
映画「ボヘミアン・ラプソディ」でフレディ・マーキュリーの元婚約者を演じ、ドラマ「なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?」ではフランシス役を演じたルーシー・ボーイントンが主人公ルース・エリスを見事に演じています。
- 放送局:ミステリーチャンネル
- 放送時間:2025年4月27日(日)19:45から全4話一挙放送
- 製作国:英国(2024年)
- 原題:A Cruel Love: The Ruth Ellis Story
- 原作:キャロル・アン・リー『A Fine Day For Hanging: The Real Ruth Ellis Story』
- 脚本:ケリー・ジョーンズ
- 監督:リー・ヘイヴン・ジョーンズ
あらすじ
1955年の華やかで魅惑的なロンドンのクラブシーンで、ルースは28歳にしてロンドン最年少のクラブ支配人になる。しかし、カーレーサーのデヴィッド・ブレイクリーと熱烈な恋に落ち、暴力に悩まされる関係へともつれ、破滅に向かう。デヴィッドを殺したルースは、きらびやかな世界から引き離され、ホロウェイ刑務所の独房に入れられる。ロンドン中央刑事裁判所で、彼女は犯した罪よりも重い審判を下され、死刑を求刑される。死刑執行の日が迫る中、彼女の命を救おうとする闘いが繰り広げられ、法廷での彼女の証言は事件の一部でしかないことが暴かれていく。だが闘いもむなしく、ルースは絞首刑で命を落とす。
ミステリーチャンネル公式サイトより
予告動画
Contents
登場人物(キャスト)一覧
ルース・エリス(ルーシー・ボーイントン)
ナイトクラブ〈リトル・クラブ〉の支配人。元ホステス。14歳からシネマカフェやカフェバーで働き、稼ぎを母に仕送りしてきた。2度の結婚でもうけた息子アンドレと娘ジョージナを育てている。3歳年下の恋人デヴィッド・ブレイクリーを射殺して逮捕されるが、動機を明かそうとしない。
デヴィッド・ブレイクリー(ローリー・デヴィッドソン)
ルースの恋人。上流階級出身のカーレーサー。酒好きで、遊び人。ルースをひと目見て恋に落ち、彼女の家で暮らし始めるが、母親の意向に逆らえず別の女性と婚約する。ルースの家族の証言で、妊娠中のルースに暴力を振るっていたことがわかる。1955年4月10日、パブ〈マグダラ〉から出てきたところをルースに撃たれて死亡した。
デズモンド・カッセン(マーク・スタンリー)
裁判のカギを握る男性。ルースとの結婚を強く望み、彼女のクラブに通ってアプローチしていた。彼女にはふさわしくない相手としてデヴィッドを憎んでいた。元英国空軍パイロットで、戦時中は爆撃機を操縦していた。
ジョン・ビックフォード(トビー・ジョーンズ)
ルースの事務弁護士。過去にオーストリアで戦争犯罪を担当していたことがあり、銃に詳しい。ルースが使った凶器の銃を見て違和感を覚え、事件の裏に何かあると気づく。ルースの命を救うべく奔走する。
メルフォード・スティーブンソン(トビー・スティーブンス)
ルースの勅選弁護士。法廷でルースを弁護する。ルースの弁護方針についてはジョンと異なる見解を持つ。
ヴィクター・ミシュコン(アーサー・ダーヴィル)
ルースの離婚訴訟を担当した弁護士。ジョンからルースの担当を引き継ぐ。
レスリー・デイヴィス(ジョー・アームストロング)
ハムステッド署の警部。ルースの事件を担当する。ルースを悪女と決めつけ、彼女を処刑台に送るためにある証言を隠ぺいする。
モリス(クリスチャン・パターソン)
〈リトル・クラブ〉のオーナー。ルースを支配人として雇い、店の2階に住まわせていた。
アンソニー・フィンドレイター(エド・セイヤー)
デヴィッドの親友。妻のキャロルがデヴィッドと浮気したことを今も根に持っている。
キャロル・フィンドレイター(ベシー・カーター)
アンソニーの妻。過去にデヴィッドと浮気したことがある。ルースとデヴィッドの仲を裂こうとする。
ジョージ・エリス(ハワード・ゴッシントン)
ルースの2番目の夫。アルコール依存症で、ルースに暴力をふるっていた。離婚の条件として娘のジョージナを引き取りたいと要求する。
ジェイヴィア(アドヴァイト・コッタリー)
新聞記者。ルースの裁判に疑問を抱く。
ジャクリーン(オードリー・ブリッソン)
ルースの友人。裁判の結果に不満を抱き、ルースを救うために署名を集める。
ヴィッキー(ローワン・ロビンソン)
ルースの友人。ショーガール。
バーサ(アマンダ・ドリュー)
ルースの母。
ミュリエル(マディ・ヒル)
ルースの姉。ルースがデヴィッドの子を流産したことを弁護士のジョンに話す。
ジョイ(グロリア・オビアニョ)
ルースが収監されているホロウェイ刑務所の刑務官。
チャリティ・テイラー(ジュリエット・スティーブンソン)
ホロウェイ刑務所の所長。
ヘイヴァース裁判長(ナイジェル・ヘイヴァース)
ルースの裁判を担当した裁判長。※実際にルースの裁判を担当したヘイヴァースの孫であるナイジェル・ヘイヴァースが演じています
各話のあらすじ(ネタバレ有)
1955年4月10日。ルース・エリスは恋人のデヴィッド・ブレイクリーを射殺し、逮捕される。彼女は殺害した動機について「迎えに来なかったから頭に来た」と語り、罪を認める。
事務弁護士のジョン・ビックフォードは、ルースが銃の入手先について嘘をついているのではないかと疑問を抱く。警察はルースの自供と目撃証言で事件解決とみなし、銃の指紋採取はおろか、入手先の捜査も行っていなかった。
ビックフォードはルースがデヴィッドから暴行を受けていたことや、彼の子を流産したばかりだということをルースの家族から聞かされ、事件の背後に彼女の苦しみがあったのではないかと考え始める。
ビックフォードはルースに求婚していたデズモンド・カッセンに会いに行く。そして銃を与えたのはデズモンドであり、所有するタクシーでルースを殺害現場のパブまで送り届けたのも彼だと知る。
ビックフォードはルースに事実を話すよう求めるが、ルースはデズモンドを巻き込むことを頑なに拒み続ける。
ルースがデヴィッドと出会ったのは、彼女が「リトル・クラブ」の支配人に採用された直後だった。28歳にしてロンドン最年少のクラブ支配人となったルースは、カーレーサーで上流階級出身のデヴィッドと恋に落ち、彼に夢中になる。
デヴィッドはクラブの2階のルースの部屋に転がり込み、2人は一緒に暮らし始める。ルースに恋心を抱くデズモンドは、デヴィッドが別の女性と婚約したことをルースに伝え、別れさせようとする。
デヴィッドが母親を怖がっていることを知ったルースは彼を罵り、殴られる。
ロンドン中央刑事裁判所でルースの罪を問う裁判が始まる。ビックフォードはデヴィッドがルースに暴力を振るい、辱め、全財産を奪ったことを証明すれば故殺になると考えていたが、ルースの勅選弁護士スティーヴンソンは「嫉妬に駆られ、抑制が効かず殺した」と主張し、デヴィッドの暴力について触れようとしない。
検察側はデズモンドを証人として呼び出し、ルースとの関係や事件当日について証言させる。デズモンドは事件当日の行動を偽り、殺害には関わっていないとウソをつく。
ルースは「弁護の余地はない」として謀殺罪で有罪となり、死刑を言い渡される。ルースの友人ジャクリーンは激怒し、デズモンドが事件に関わっていると警察に通報する。
ビックフォードは検察側にデズモンドの親戚エドワード・カッセンがいることを知り、この裁判が仕組まれたものであることに気づく。スティーヴンソンも彼らの仲間であり、あえて反対尋問を避けてルースを死刑に導いたのだった。
過去。デヴィッドとの同居を続けるルースだったが、彼の親友であるフィンドレイター夫妻はルースを認めようとしなかった。妻キャロルはデヴィッドと浮気した過去を持ち、ルースとデヴィッドの仲を裂こうと画策する。
デヴィッドはルースが準備した誕生日パーティーに現れず、代わりにキャロルがやってくる。怒りと嫉妬に駆られたルースは、デズモンドを誘惑して一夜をともにする。デズモンドはルースに求婚し、デヴィッドと別れるよう諭す。
ルースは「婚約は破棄する」というデヴィッドの言葉を信じ、元夫ジョージとの離婚手続きを進めるため、彼の要求をのんで娘のジョージアを引き渡す。
ルースの有罪が確定し、12日後に絞首刑が執行されることに。ビックフォードは内務省にデズモンドの関与を報告し、執行猶予を求めようとするが、スティーヴンソンに「君が事実を隠ぺいしたんだ」と指摘され、保身に走ってしまう。
ジャクリーンは恩赦を求める嘆願書への署名活動を始め、記者のジェイヴィアと出会う。ジェイヴィアから「警察はデズモンドが銃を持っていることを把握していた」という情報を得たジャクリーンは、ハムステッド署のデイヴィス警部を問い詰めるが、彼は「デズモンドの銃は号砲用で、凶器ではなかった」と主張する。
ルースはアンドレの学費が支払われていないことを知り、ショックを受ける。デズモンドに裏切られたと悟ったルースは、デズモンドから銃を受け取ったことを告白するが、ビックフォードは「もう手遅れだ」と言う。
ビックフォードは5万人分の署名を持って内務省を訪ね、事務次官に恩赦の検討を願い出る。だが内務大臣が出した結論は、予定通り刑の執行を行うというものだった。
ルースははじめて「死にたくない」と口にし、号泣する。そしてルースを救うことよりも保身を選んだビックフォードを解雇する。
ルースが新たな弁護士として選んだのは、元夫ジョージとの離婚訴訟を担当してくれたヴィクター・ミシュコンだった。
過去。ルースはクラブを破綻させたとして解雇され、部屋を追い出される。行く当てのないルースは、デヴィッドとの関係が続いていることを隠したまま、デズモンドの家に住み始める。
妊娠したルースはデヴィッドからプロポーズされ、彼の実家へ向かう。だが怖気づいたデヴィッドは、ルースを母親に会わせることなく逃げてしまう。
親友のヴィッキが交通事故で命を落とし、ルースは悲嘆にくれる。デヴィッドは妊娠を疑うキャロルの言葉を鵜呑みにし、ルースが自分を騙したと思い込んで激怒する。ルースはデヴィッドに腹を殴られ、流産する。
死刑執行まで、22時間。ルースは弁護士のミシュコンと面会し、デヴィッド殺害にいたるまでの真実を語り始める。
デヴィッドから「やり直そう」と言われたルースは、彼の言葉を信じてデートの約束をする。だがデヴィッドは現れず、フィンドレイター夫妻の家で別の女性と過ごしていた。
夫妻の思惑を悟ったルースは激怒し、デヴィッドと直接話そうとするが、デヴィッドは会うことを拒んで家の中に隠れ、ルースはキャロルに追い返されてしまう。
デヴィッドと付き合ったために仕事も貯金も住む家もなくし、子どもも失った。これまでの彼の仕打ちを思い返し、激しい怒りに包まれるルース。ぼろぼろになったルースはデズモンドの家を訪ね、「彼に死んでほしい」とつぶやく。
ルースの言葉を聞いたデズモンドは引き出しから銃を取り出し、ルースの目の前に置く。使い方がわからないというルースを森の中に連れ出し、銃の撃ち方を教えるデズモンド。そのようすを息子のアンドレが目撃していた。
事件当日。ルースはデズモンドが運転するタクシーでパブ〈マグダラ〉へ向かい、「君ならできる」と彼に背中を押されて、店から出てきたデヴィッドを射殺。拳銃自殺をしようとするが、アンドレのことを考えて思いとどまった。
ルースの話を聞いたミシュコンは、デズモンドを共謀罪で訴え、ルースの処刑延期を求める。だが共謀罪を裏付ける証拠はなく、デズモンドは逃亡して姿をくらまし、残された時間は16時間しかなかった。
ルースが収監されているホロウェイ刑務所の外には、死刑執行に反対する市民が大勢集まり、抗議の声を上げ始めていた。
ジャクリーンはアンドレに証言させるべきだとルースを説得するが、ルースは息子を巻き込みたくないと拒む。そしてアンドレを守るため、ロンドンから連れ出してほしいとミシュコンに頼む。
1955年7月13日。ルースはお気に入りの服を身にまとい、食事をすませ、その時を待つ。午前9時、ルースは死刑執行人のピアポイントによって処刑される。彼女はイギリスで最後の女性死刑囚となった。
ルースの死後、アンドレは取材を受け、デズモンドが銃の使い方を教えたと証言した。彼の供述書は内務省に提出されたが、内務省は読むことを拒んだ。
1972年、ビックフォードは「デズモンドの関与を隠ぺいした」と告白。ルースの弁護に失敗したことを悔やんだビックフォードは、アルコール依存症で1977年に亡くなった。
デズモンドは関与を否定し続け、罪に問われることはなかった。彼はオーストラリアへ移住し、1991年に老衰で亡くなった。
1957年、イングランド法に限定責任能力の原則が導入され、1965年には死刑が廃止された。
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