英国ドラマ「埋もれる殺意~3年目の悔恨~」についてまとめました。
過去の未解決事件を掘り起こしながら、人間の記憶と罪を問いかける秀逸なミステリーシリーズの第6弾。
単なる犯罪捜査ものではなく、事件が人生に与える影響を細やかに描き出す点で、他のミステリードラマとは一線を画しています。IMDbの評価は8.4。
シーズン5を観終えたとき、どうしても受け入れられず「もうお別れかな…」と思ったのですが、もう少しだけ付き合ってみることにしました。考え直してよかったです。
「埋もれる殺意」らしさが戻ってきました。
▼シーズン5の記事はこちら

Contents
作品概要
- 放送局:WOWOW
- 放送時間:2025年6月28日(土)15:00~ ※全6話一挙放送
- 製作国:英国(2025年)
- 原題:Unforgotten
- 脚本:クリス・ラング
- 監督:アンディ・ウィルソン
- 製作総指揮:ガイ・デ・グランヴィル/アンディ・ウィルソンほか
あらすじ
2024年。ロンドン東部の湿原で人間の上半身の骨が見つかり、ロンドン警視庁ビショップ署の警部ジェス、サニー警部補らは捜査を開始。遺体のDNAから被害者は3年前に失踪したパブ経営者ジェラード・クーパーだと判明する。同じ頃、ジェラードの元妻の大学教員ジュリエットは学生から人種差別で告発される。
WOWOW公式サイトより
一方、ジェラードの元愛人である保守系TV局のリポーター、メリンダだが、恋人パトリックは事故で下半身不随となっていた。また、ジェラードのパブの元従業員である自閉症の青年マーティは田舎町ディールで暮らすが、ネットにはびこる暴力的コンテンツや極右陰謀論にはまっていた。またアフガニスタン難民を支える通訳者アシフも被害者に関与しており……。
予告動画
登場人物(キャスト)一覧
ビショップ署
ジェス・ジェームズ(シニード・キーナン/声:佐古真弓)
キャシーの後任として着任した警部。優秀だが勝ち気で気性が荒い。私生活では2人の息子の母親。シーズン5で夫スティーブの不倫を許し復縁したが、今もわだかまりを抱えている。
サニル・“サニー”・カーン(サンジーヴ・バスカー/声:目黒光祐)
ビショップ署に勤務する警部補。シングルファーザーで年頃の娘が2人いる。シーズン5で婚約者のサルと別れ、仕事に打ち込んでいる。病理学者のリアンと意気投合するが…。
マーレイ・ボールティング(ジョーダン・ロング/声:北田理道)
ビショップ署の捜査班のメンバー。
フラン・リングリー(カロリーナ・メイン/声:尾身美詞)
ビショップ署の捜査班のメンバー。
カズ・ウィレッツ(ピッパ・ニクソン/声:金田愛)
ビショップ署の捜査班のメンバー。
リアン・バルコム(ジョージア・マッケンジー/声:金田愛)
科学捜査ラボの病理学者。
容疑者と周辺人物
ジュリエット・クーパー(ヴィクトリア・ハミルトン/声:柳井景伊)
大学講師。数年前に夫のジェラードが失踪し、橋の近くで車が見つかったことから自殺と判断された。現在は娘のテイラーと2人暮らし。ホイットニー湿原でジェラードの遺体の一部が見つかったと知らされ、動揺する。
ジェラード・サミュエル・クーパー
ジュリエットの夫。パブの経営者。パンデミックで収入がなくなり、借金を抱えていた。2021年の2月に失踪し、その後テムズ川に飛び込んで自殺したと判断された。ホイットニー湿原で切断された遺体の一部が発見される。陰謀論的な右派思想に傾倒していた。
テイラー・クーパー(ピクシー・デイヴィス)
ジュリエットの娘。父親が自殺したことで深く傷つき、学校で繰り返し問題行動を起こしている。母親が何か隠しているのではないかと疑っている。
メリンダ・リッチ(マイアンナ・バーリング/声:田中奏多)
ケーブルテレビの毒舌コメンテーター。保守的な思想の持主。アイルランドのコーク県郊外に住み、リモートで出演している。婚約者のパトリックが交通事故を起こして入院中。過去に被害者のジェラードと付き合っていた。
ルーク・ライアン(ダミアン・モロニー)
メリンダが住む小さな村の教会の神父。メリンダを慰めるうちに深い関係になるが、彼女が警察の取り調べを受けていることが噂になり、距離を置く。
アシフ・サイエド(エルハム・エーサス/声:沢城千春)
難民支援の通訳として働く青年。自身もアフガニスタンからの難民で、英国市民権を得るために努力している。アフガニスタンから逃げてきたハッサンを自宅にかくまうが、同居するパートナーのサムに見つかり、関係がこじれてしまう。
マーティン・“マーティ”・ベインズ(マクシミリアン・フェアリー/声:三原玄也)
自閉スペクトラム症を抱える青年。数年前、ジェラードのパブで働いていた。父親はコロナで亡くなり、要介護者の母親と2人で暮らしている。
そのほか
スティーブ・ジェームズ(アンドリュー・ランセル)
ジェスの夫。建設業者。多忙なジェスとすれ違いが続き、満たされない心を埋めるためにデビーと浮気をしてしまう。「キスだけ」だと言っていたが…。
デビー(グラーニア・キーナン)
ジェスの妹。ジェスの夫スティーブと関係を持ち、ジェスとは断絶状態にある。精神的に不安定で、体調を崩して家に引きこもっている。
ケイト(ケイト・ロビンス)
ジェスの母。夫の浮気や妹との関係に悩むジェスに寄り添い、相談に乗る。
ラム・シドゥ(ファルダット・シャーマ)
シーズン4でサニーに逮捕された元警部。数件の汚職で2022年から服役中。2021年にジェラードの失踪事件を担当していたことがわかり、サニーが面会して当時の話を聞く。
各話のあらすじ(ネタバレ有)
2024年。婚約者のサルと別れたサニーは仕事に打ち込む。ジェスは夫スティーブの不倫を許して復縁するが、彼の上着に赤い髪の毛が付いているのを見つけ再び疑いを抱く。
そんな折、ロンドン東部のホイットニー湿原で切断された人の上半身の骨が見つかり、ビショップ署のチームは捜査を開始する。
まもなく、湿原の歩道近くで片足が見つかる。黒いゴミ袋に包んであったため保存状態がよく、太もも上の刺し傷が死因だとわかる。DNA鑑定により、被害者は2021年に失踪し、自殺と判断されたジェラード・サミュエル・クーパーと判明。当時捜査を担当したのは、かつてサニーが逮捕した元警部ラム・シドゥだった。
アイルランドで暮らすメリンダ・リッチは、毒舌コメンテーターとしてケーブルテレビの保守系番組にリモート出演していた。メリンダの婚約者パトリックは交通事故で入院していたが、医師は「これから一生車いす生活になる」とメリンダに告げる。
自閉スペクトラム症を抱える青年マーティ・べインズは、介護が必要な母と2人でケント州に住んでいた。だがマーティには母の介護は難しく、生活は荒んでいた。
セントラル・ロンドン大学で教えるジュリエット・クーパーは、学生組合から苦情を申し立てられる。彼女が差別的なタイトルの本を生徒のリズに貸したことが問題だというのだった。納得がいかないジュリエットは、副学長のポールに強硬な態度をとる。
ジュリエットの娘テイラーは、たびたび学校で問題を起こし、停学処分になる。自殺した父親のことで心に傷を負った娘に、ジュリエットはカウンセリングを勧める。
アフガニスタン出身のアシフ・サイエドは、アフガニスタンから逃げてきたハッサンを自宅にかくまう。ハッサンは難民としてイギリスに正式に保護してもらい、立派な仕事に就きたいと考えていたが、アシフは自身の経験から反対する。
被害者のジェラード・クーパーは、2019年7月に傷害罪で逮捕されていた。ジェスとサニーはジェラードの妻ジュリエットを訪ね、遺体の一部が見つかったことを知らせる。
ジュリエットは自殺という警察の判断に疑問を抱き、何度も捜査を求めたと話す。ジェラードはパブの経営のほかに賃貸物件を所有していたが、パンデミックでパブは営業できなくなり、賃貸物件の入居者は家賃が払えず、借金が膨らんでいったという。
ジェラードが失踪した当日は結婚記念日で、一緒に夕食をとる約束だったが、彼は帰ってこなかった。16時に会う予定だったビール会社の知人にも、ジェラードはキャンセルの電話を入れていた。そしてそれきり姿を消してしまったという。
ジェラードは失踪する3週間前に、パブの駐車場で何者かに暴行されていた。ジュリエットはその5日後にマルカジというアルバニア人が店に来たことを話す。ジェラードは彼から金を借りていたという。
サニーは服役中のラム・シドゥと面会し、ジェラード失踪時の捜査状況を訪ねる。シドゥは夫婦円満だというジュリエットの言葉に疑念を持っていた。さらにジェラードがパンデミックのとき解雇した若い店員に脅されていたらしいことを話す。
ジェスはマルカジに会い、ジェラードについて聞く。彼は事件への関与を否定し、ジェラードに不倫相手がいたことを話す。
メリンダは母からの電話でジェラードの遺体が発見されたことを知らされ、動揺する。メリンダはジュリエットの携帯に「私が怪しまれるようなことを一言でもしゃべったら、後悔するわよ」というメッセージを残す。
ジュリエットは夫の浮気について問われると、かたくなに否定する。だがパブの元店員からも夫婦が円満ではなかったことが指摘される。
捜査チームは、ジェラードがパンデミックのとき解雇した店員がマーティ・べインズであることや、ジェラードの愛人が“メリンダ”という名の女性であることを突き止める。
ジェラードが所有していた賃貸物件を調べると、彼がずさんな管理で入居者とたびたびトラブルを起こしていたことが判明。中でもアフガニスタン人の一家とかなり揉めていたらしく、そのとき通訳を担当していたのがアシフだとわかる。
そのころ、アシフの家に恋人サムが任務を終えて帰宅。ハッサンをめぐって2人は口論になる。サムは不法移民に関わることを拒み、すぐに家から追い出すようアシフに要求する。
ジェラードが2019年7月に傷害罪で逮捕されたときの被害者は、彼の友人だった。友人によると、ジェラードは陰謀論的な右派思想に傾倒し、周囲に怒りをぶつけていたという。さらに、彼が「UKユナイテッド」というフォーラムをインターネット上に開設し、極右のたまり場になっていたと証言する。
ジェスはマーティを署に呼び、事情聴取を行う。パンデミック時、雇用主のジェラードは政府から帰休手当を受け取っていたが、マーティには支払われていなかった。その件でジェラードと口論になったが、殴ってはいないとマーティは話す。
マーティの母は、「絶対に父さんのことを話してはダメ」とマーティの留守電にメッセージを残す。
サニーは病理学者のリアンとパブで飲み語らい、楽しいひとときを過ごす。だが翌日から、リアンはなぜかサニーの電話に出なくなる。
ジェスは妹デビーとの関係を修復するため、彼女と会って話をする。「真実が知りたい」というジェスに、デビーはスティーブと何度も性的関係を持ったことを告白する。ジェスはスティーブが嘘をついていたことに動揺しつつも、「話してくれてありがとう」とデビーを抱きしめる。
マーティは事情聴取で、「ジェラードのせいで父さんが死んだ」と話す。陰謀論者のジェラードからコロナワクチンは政府の陰謀だと聞かされたマーティは、両親のワクチン接種を阻止し、その結果父親は新型コロナウィルス感染症悪化で死亡したという。
ジェスとサニーはアシフの家を訪ね、ジェラードについて聞く。だがアシフはよく覚えていないと言い、ジェラードと揉めていたアフガニスタンから来た難民一家のドワリ家についても、記憶にないと話す。だが自治体の担当者によると、アシフは自治体との契約が切れた後も無報酬でドワリ一家をサポートしていたらしい。
捜査チームは、ジェラードの愛人がブリタニアチャンネルのコメンテーター、メリンダ・リッチであることを突き止める。アイルランド在住のメリンダに対しリモートで事情聴取を行うが、彼女はジェラードとの不倫関係を認めるものの、2020年の夏からせいぜい2か月程度だったと話す。その後、メリンダはひそかに2021年の日記帳を処分する。
ジェスたちはジェラードの過去のメッセージを調べ、メリンダとの関係は2018年頃から始まり、2021年頃に彼がメリンダを脅迫していたことを突き止める。
ジュリエットは娘のテイラーから「パパを殺したの?」と問い詰められる。断固として否定しつつも、「夫婦喧嘩のことは警察には絶対に言わないで」とテイラーに約束させる。テイラーはジェラードが失踪する1週間前に、自宅に侵入したマーティに脅されたことを打ち明け、ジュリエットはそのことをジェスに伝える。
サムはアシフに謝り、自分も力になりたいと告げる。ハッサンはイギリス移民管理局による強制捜査で連行され、サムの家にも家宅捜索が入る。
マーティの家に通っていた介護士が異変に気付き、警察に通報。家の中で昏睡状態に陥っている母親を発見する。
マーティの母親は強い向精神薬のオーバードーズで病院に搬送される。警察はマーティのしわざだと考え、逃亡中の彼を追う。
パブの元店員の証言で、ジェラードがジュリエットに暴力を振るっていたことが判明。ジェスたちは娘のテイラーから話を聞こうと準備を進めるが、ジュリエットの激しい抵抗に遭う。
暴行事件の際にジェラードの着衣に残ったDNAと、アシフのDNAが一致する。アシフは容疑者として身柄を拘束されるも、完全黙秘を貫く。
サニーはメリンダに会うためアイルランドを訪れる。メリンダはジェラードとの交際期間を偽っていたことを認めるものの、彼から暴力を受けたことはなく、自然消滅だったと言い張る。脅迫についても覚えがないという。
サニーはメリンダと親しかったライアン神父に会い、メリンダがジェラードの子どもを妊娠していたことを知らされる。メリンダが借りているイギリスの貸し倉庫を強制捜査すると、血液が付着したジャケットが見つかる。鑑定の結果、血液はジェラードのものと判明。メリンダは地元警察に逮捕される。
ジュリエットは大学側からの早期退職のオファーを拒み、解雇される。ジュリエットを訴えた生徒のリズは、「そんな結果を望んだわけじゃない」と、世の中に対する不安を正直に語る。
ジェスに問い詰められたスティーブは、デビーとの不倫関係を認め、彼女以外の複数の女性たちと浮気をしたことを打ち明ける。そしてカウンセリングを受けた結果、セックス依存症だと指摘されたと話す。
夫婦関係を続けることを望むスティーブに対し、激怒したジェスは離婚を決意。今すぐ家から出ていくようスティーブに告げる。
アイルランドで逮捕されたメリンダは、2020年にジェラードの子どもを妊娠し、中絶したことを告白する。2021年2月12日、メリンダに借金を断られたジェラードは激怒し、不倫の末に妊娠中絶したことをメディアにばらすと脅して、メリンダを殴りつけた。メリンダはジェラードの頭を置物で殴って逃げたが、そのときジャケットに彼の血が付いたのだった。
メリンダがジュリエットと話したのはジェラードが失踪する1年前のことで、電話で罵られただけで直接会ったことはないという。
アシフは黙秘を続けていたが、ドワリ家の幼児ジャマルについて聞かれるとついに口を開く。ジャマルは部屋のかびが原因で感染症にかかり、2021年の2月21日に亡くなっていた。家主のジェラードが彼らの訴えを無視し、部屋の改善を怠ったためだ。
アシフはジャマルが入院した日の夜にジェラードに会いに行き、話をしようとした。だがジェラードは怒って殴りかかってきたという。アシフはジェラードを殴り倒したが、殺してはいないと語る。
マーティはジュリエットの家に侵入し、警察に逮捕される。侵入した理由を聞かれると、「お悔やみを言いたかった」というマーティ。彼はジェラードが失踪した2021年2月24日の行動を事細かく記憶しており、事件に関与していなかったことが判明。さらに、マーティの母親は自ら薬を飲んで自死しようとしたことがわかる。
ホイットニー湿原で犯人らしき人物を見たという目撃者の老人によると、ジェラードの遺体が遺棄されたのは2月24日の午前3時半だった。捜査チームは湿原の駐車場の防犯カメラ映像から、犯人のものと思われる車を特定。車の所有者ジュリエットを連行する。
ジュリエットはジェラードとの夫婦関係がずっと前から終わっていたことを明かす。2021年2月22日の夜、ジェラードに殴られたジュリエットはナイフで彼の足の付け根を刺して殺害。翌23日の午後に彼の遺体を切断してゴミ袋に入れ、深夜2時半ごろに家を出て湿原に向かい、遺体を遺棄したと話す。
24日の午後にビール会社の留守電に残っていたメッセージは、ジュリエットが過去のジェラードの声を再生して偽装したものだった。
だがジュリエットの嘘に気づいたジェスは、テイラーに話を聞きにいく。当時11歳だったテイラーは両親のケンカを何度も目撃しており、事件当日もジェラードがジュリエットに暴力を振るうのを目撃していた。
このままでは母親が死んでしまうと思ったテイラーは、暴行を止めるためにテーブルの上の小さなナイフで父親の足を刺したという。だが彼女はそれが致命傷になったことを知らず、自分が父親を殺したとも思っていなかった。
真実を知ったジェスは、どうすべきか判断に迷う。サニーは「あなたが背負いこむべきじゃない」と告げ、ジュリエットと話し合うことを提案する。
自分が罪をかぶると言い張るジュリエットに、真実を話せば2人とも不起訴になる可能性がある、と告げるジェスとサニー。ジュリエットはテイラーに真実を打ち明け、法にゆだねる道を選択する。その結果2人は訴追を免れ、釈放される。
局から解雇を告げられたメリンダは、最後の番組出演で本音を語り、別れを告げた婚約者のもとへ戻る。サムはハッサンの件でアシフの罪をかぶり除隊処分になるが、「後悔してない」と言い、アシフにプロポーズする。マーティは意識を取り戻した母親と再会する。
ジェスはスティーブが落胆していると聞いて様子を見に行くが、彼は赤毛の女性と楽しそうに酒を飲んでいた。
サニーはリアンと話し、彼女が以前から自分に好意を持っていてくれたことを知る。だがリアンには不幸な過去があり、20年以上会っていない娘がいた。彼女はそのことを打ち明けられずに苦しんでいたのだった。
リアンから事情を聞いたサニーは、「誰にでも過去はある。会ってもっと話そう」と留守電にメッセージを残す。
感想(ネタバレ有)
シーズン5で感じた深い喪失感と違和感。それでも「埋もれる殺意」への信頼を手放すことができず、戸惑いと不安を抱きながらシーズン6を観ました。
印象としては、以前の「埋もれる殺意」が戻ってきたという感じ。冷静で丁寧な捜査と、登場人物の内面描写のバランスが改善され、「またこのシリーズと向き合いたい」と思える内容でした。
キャシーがいなくなったシーズン5は作品そのものが変わってしまったように感じられ、これはもうわたしの好きな「埋もれる殺意」じゃない、と悲しい気持ちになりました。ですが今シーズンは、新しい物語が始まったことを穏やかに受け入れられる、誠実な作品になっていました。
正直に言えば、ジェスのことはやっぱり好きになれない。彼女の思考や態度に共感しにくい場面も多々あります。それでも、以前よりも感情のバランスが落ち着き、サニーとの関係性が自然なものになってきたことで、チーム全体としての一体感が少しずつ戻ってきているように感じられました。
そしてサニーの佇まい。静けさの中に滲む優しさは今季も健在で、かすかに芽生える新たな恋の予感が、ほんのりとした希望の光を灯してくれました。物語は次なる章へとゆっくり進み始めている。そんな気配を感じました。
今回描かれた事件は、このシリーズらしく複雑で、最後まで緊張感が続く巧みな構成。遺体の発見から始まり、関係者たちの人生が徐々に解き明かされていく展開に「埋もれる殺意」の本質が詰まっていて、ミステリーとして純粋に楽しめた。
シーズン4や5では、キャラクターの私生活が前面に出すぎて事件の筋が薄まってしまっていた印象があったけれど、今回は逆。事件が物語の中心に据えられたことで、より深く入り込めました。
今作では、パンデミック後の社会、政治的分断、難民問題、家庭内暴力といった社会問題が物語に織り込まれています。
それは事件の動機や背景にとどまらず、「誰が語るべき物語なのか」「どんな声が社会に届くのか」という根源的な問いとして投げかけられていたように思う。
中でも心に残ったのは、ジェスとサニーが最終的に対峙する「真実を明かすことが本当に正義なのか」という葛藤。
加害者が子どもであり、被害者が同時に加害者でもあったという構図は、正義を白黒で裁くことができない現実を突きつけました。これは日本の刑事ドラマではあまり描かれない、倫理的グレーゾーンに踏み込んだテーマです。
判断を迫られたとき、サニーは「僕たちが決めることじゃありません」とジェスにいう。シーズン2でキャシーにすべての責任を背負わせてしまったことを、サニーは今も後悔しているのかもしれない。
ドラマの中では、彼らが選んだ道は希望ある結果へとつながったけれど、現実はもっと厳しい。だからこそ、この結末が一層心に残ります。
事件にしっかりと焦点を当てながらも、キャラクターたちが確かに歩みを進めていたシーズン6。好評を受けて、すでにシーズン7の制作も決定しています。また彼らに会いたいと思える——今はそれだけで十分です。
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