ネタバレ解説*映画「八つ墓村(1977)」トラウマになる怖さ!落武者の呪いと32人殺し

映画「八つ墓村」(1977年)あらすじネタバレ感想

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1977年の映画「八つ墓村」のあらすじと感想です。

初めて見たけど怖かった…。怪談です。ホラーです。白塗りの顔が夢に出てきそうです。

しかし芸術的な雰囲気もあって、古さは感じても安っぽさは感じません。

キャスティングには、昭和の名優がずらり。ショーケンこと萩原健一さん、小川真由美さん、山本陽子さん。山崎努さん、市原悦子さんの怪演は言わずもがな。金田一耕助役の渥美清さんが、意外にも違和感なくハマっていました。

萩原健一さん演じる辰弥の少年時代を、吉岡秀隆さんが演じているところにも注目です。

監督、撮影、脚本、音楽ともに映画「砂の器」と同じスタッフを起用。2年の製作期間と7億円の制作費をかけて作られました。

作品概要

  • 製作国:日本
  • 上映時間:151分
  • 公開日:1977年10月29日
  • 原作:横溝正史『八つ墓村』
  • 監督:野村芳太郎(「砂の器」「鬼畜」)
  • 脚本:橋本忍(「砂の器」「八甲田山」)
  • 音楽:芥川也寸志

あらすじ

尋ね人の呼びかけに応え、寺田辰弥は法律事務所を訪れた。そこには亡母の父・丑松が辰弥を生まれ故郷の八つ墓村へ迎えにきていた。だが、丑松はその場で謎の死を遂げる。八つ墓村へ向かった辰弥は、そこで血にまみれた連続殺人事件に巻き込まれていく。

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原作について

この映画の原作は、このドラマの原作は、横溝正史の探偵小説『八つ墓村』です。

本陣殺人事件』『獄門島』『夜歩く』に続く、「金田一耕助シリーズ」の長編第4作。

本陣殺人事件』『獄門島』と同じく、著者が戦時下に疎開した両親の出身地・岡山県が舞台。昭和13年に岡山県で実際に起こった「津山事件」がモチーフとして使われています。

原作についてはこちら↓の記事で詳しく書きました。

横溝正史「八つ墓村」原作ネタバレ解説&感想 「八つ墓村」原作ネタバレ解説|映画とは違う爽やかな結末

登場人物(キャスト)

主要人物

寺田辰弥(萩原健一/吉岡秀隆)
JALの航空誘導員として働く青年。多治見家の後継ぎとして八つ墓村に呼ばれ、事件に巻き込まれる。

金田一耕助(渥美清)
私立探偵。諏訪弁護士の依頼で井川丑松の死について調査するため八つ墓村にやってくる。

森美也子(小川真由美)
八つ墓村で「西屋」と呼ばれる森家の未亡人。井川丑松の死後、代わりに辰弥を迎えに来る。

磯川(花沢徳衛)
岡山県警の警部。連続殺人事件の捜査を担当する。

多治見家

多治見久弥(山崎努)
多治見家当主で辰弥の異母兄。重い病を患っており、余命わずか。親類縁者に財産をとられることを恐れ、辰弥を探し出して多治見家を継がせようとした。薬に硝酸ストリキニの毒物を混ぜられ、毒殺される。

多治見春代(山本陽子)
辰弥の異母姉。一度嫁に出たが子宮筋腫を患い子どもが産めなくなったため、婚家から戻ってきた。辰弥に父・要蔵の秘密を明かす。

多治見小竹(市原悦子)
多治見家を仕切る双子の老姉妹の姉。多治見家の跡取りとして辰弥に期待をかける。妹の小梅と共に、夜な夜な地下の鍾乳洞に通っている。

多治見小梅(山口仁奈子)
多治見家を仕切る双子の老姉妹の妹。小竹と2人で鍾乳洞にいる時に誘拐され、殺害された。

多治見要蔵(山崎努 ※二役)
辰弥の父。妻子がいたが鶴子に恋をし、拉致監禁して妾になることを強要した。鶴子の失踪後、発狂して村人32人を虐殺。その後行方不明になる。辰弥が自分の子どもではないことを知っていた。

多治見おきさ(島田陽子)
要蔵の妻。久弥と春代の母。28年前の事件で要蔵に殺された。

多治見庄左衛門(橋本功)
多治見家の祖先。村の相談役4人のうちの1人。落武者8人を殺した首謀者として、毛利から莫大な山林の権利を得て財産家となる。その後、発狂して村人7人を斬り殺し、最後に自分の首を切り落とした。

井川家

井川鶴子(中野良子)
辰弥の実の母。若い頃、要蔵に拉致監禁された末に妾となり、辰弥を産んだ。辰弥が子どもの頃に亡くなっており、生前「おまえは“龍の顎”で産まれた」と話していた。

井川丑松(加藤嘉)
鶴子の父で、辰弥の祖父。諏訪法律事務所で辰弥と面会後、毒殺される。辰弥が要蔵の子どもでないことを工藤から聞いており、出発前に勘治に伝えていた。

井川勘治(井川比佐志)
丑松の息子で、鶴子の兄。父から聞いた秘密を辰弥に教える。

落武者

尼子義孝(夏八木勲)
出雲国の戦国大名・尼子義久の弟。永禄九年に毛利勢の追手から逃れ、八つ墓村に辿り着く。夏祭りで村人たちに騙し討ちにされ、「祟ってやる」という言葉を残して壮絶な最期を遂げた。

落武者(田中邦衛)
尼子義孝に仕える家来。義孝と共に惨殺される。

落武者(稲葉義男)
尼子義孝に仕える家来。義孝と共に惨殺される。

そのほか

久野恒三郎(藤岡琢也)
要蔵の甥で、村の診療所の医師。多治見の財産を狙っている。鍾乳洞内で遺体となって発見される。

濃茶の尼(任田順好)
八つ墓村の尼。八つ墓明神の祟りを恐れ、辰弥に村から出て行くよう警告する。

工藤(下條正巳)
村の小学校の校長。辰弥が要蔵の子どもではないことを知るただ唯一の人物。辰弥に真相を伝えようとするが、法事の席で毒殺されてしまう。

亀井陽一(風間杜夫)
辰弥の実の父。

森荘吉(浜村純)
西屋の当主。美也子の義父。

吉蔵(山谷初男)
西屋の博労。28年前の事件で要蔵に新妻を殺されている。多治見家の跡取りとして八つ墓村に現れた辰弥に、激しい憎悪を抱く。

新井(下條アトム)
八つ墓村の巡査。村人たちをなだめつつも、八つ墓村の祟りを恐れている。

諏訪(大滝秀治)
神戸の弁護士。辰弥と井川丑松を引き合わせる。事務所で丑松が毒殺されたことから、金田一に事件の調査を依頼する。

感想(ネタバレ有)

八つ墓村の祟りじゃ~!

思ってた以上に怖かったです。
昭和のおどろおどろしさが満載でした。

落武者を血祭りにするシーンの怖いこと怖いこと!

原作ではサラッと書かれていた部分ですが、この映画では重要な伏線にもなっているので、あえて残酷さを極めたんでしょうね…しかし強烈でした。特殊メイクはニセモノ感ありありだし、血も傷口もリアルには程遠いんですけどね。

この映画が公開された1977年、わたしはまだ小学校低学年でした。
当時の映画に関する記憶は定かではないのですが、

「八つ墓村の祟りじゃ~!」

というフレーズはよく覚えているので、CMは見ていたかもしれません。

原作では、これは濃茶の尼や村人たちによる被害妄想に過ぎず、連続殺人事件と〝祟り〟は一切関係ないのですが、この映画では連続殺人事件のもうひとつの真相を〝落ち武者の呪い〟と思わせる独自の脚色がなされています。

最後の最後に金田一が事件の真相を語ったときは、ゾッとしました。

原作とはまったく異なる結末ですが、これはこれで面白かったし、映画としてもストーリーとしてもよくできていました。

ショーケンが演じるワイルドな辰弥

原作同様、主人公は寺田辰弥です。演じるのはショーケンこと萩原健一さん。原作でも「男前」という設定ではありましたが、ショーケンが演じる辰弥はちょっと不良っぽい。

原作の辰弥と違って、彼は最初から多治見家の跡取りになる気はさらさらなく、自分が要蔵の子どもではないことがわかると、もう関係ないと言ってすぐに村を出て行こうとします。

実はこの映画の時代設定は、原作の昭和20年代ではなく、現代(公開時)に変更されているんですよね。つまりショーケン演じる辰弥は、1970年代の若者。ちょっと冷めたような不良っぽさ、ワイルドさはいかにも70年代という感じがしました。

色気ムンムンの美也子と辰弥の恋

辰弥を八つ墓村へと案内するのは、原作同様、未亡人の森美也子。演じるのは小川真由美さん。画面に見とれるほどの美しさ。まるで手塚治虫や石ノ森章太郎のマンガに出てくる美女みたい。

原作の美也子は中盤から出番が減り、辰弥に対しても態度を硬化させるのですが、今作では原作における典子(辰弥と恋仲になる)の役目も担っていたため、出ずっぱりでした。

辰弥と美也子は惹かれあい、終盤、鍾乳洞の中で結ばれます。
そこはかつて辰弥の母・鶴子が愛する人と結ばれた場所でした。

原作の辰弥と典子の恋はどこか幼い雰囲気を纏っていましたが、萩原健一さんと小川真由美さんですからね……めちゃくちゃ色っぽかったです。

トラウマ必至!? 山崎努の要蔵が怖すぎる

原作では序盤で語られる、28年前の大量虐殺事件。映画では、八つ墓村の鍾乳洞の中で、辰弥が姉の春代から聞かされることになります。

妾だった鶴子(辰弥の母)が失踪したことで、要蔵は発狂。
日本刀と猟銃で次々と村人たちを惨殺していく。

山崎努さん演じる要蔵の異様な姿が、脳裏に焼き付いて一生忘れられないほどの怖さ。

頭に巻いたはちまきの両側に懐中電灯を1本ずつ差し、首からナショナルランプを提げ、地下足袋を履き、日本刀と猟銃を両手に持ち、満開の桜の下を疾走する要蔵。顔は白塗りで、さながら悪鬼のごとし。

ちなみにこの要蔵のいでたちは、この事件のモデルとされた「津山事件」の犯人を再現しています。

約4分ほどのシーンですが、インパクトは絶大でした。もし子どもの頃に見ていたら、絶対トラウマになってる。それほど凄まじかった。おそらく今後も、77年映画版を超える「多治見要蔵」は出てこないでしょう。

双子の老姉妹役・市原悦子の怪しさ

『八つ墓村』には怪しい人たちがたくさん登場しますが、その代表格とも言えるのが辰弥の大伯母である双子の老姉妹、小竹と小梅。

〝双子の老姉妹〟というだけでも謎めいた雰囲気がバシバシ出ているのですが、双子の姉・小竹を演じているのが市原悦子さんとなれば……ますますもって怪しさ満点。老姉妹の髪は真っ白で、顔は白塗り。ほんと怖いって!

夜な夜な、離れの納屋に通う老姉妹。
その姿を目撃した辰弥は、ある日納屋に忍び込んで地下への抜け穴を見つけます。

ホラー全開! 鬼女と化す美也子

祟りを恐れた村人たちは、暴徒化して辰弥を殺そうと多治見家に押し寄せます。鍾乳洞へ逃げ込んだ辰弥は、一連の殺人事件の犯人が美也子であることに気づきます。

そのとたん、美也子の顔が恐ろしい般若面に変貌(またも白塗り!)する。

暗い鍾乳洞の中を、必死に逃げる辰弥。美也子はすすり泣き、髪を振り乱し、白い服をたなびかせながら辰弥を追ってくる。あんなに美しかった小川真由美さんが、もう怨念に取り憑かれた鬼女にしか見えない……。

寅さん(渥美清)の存在にホッとする

その頃、金田一耕助は村人たちに事件の真相を語っていました。

本作の金田一は、寅さんでおなじみの渥美清さん。
異色のキャスティング!かと思いきや、意外や意外、似合ってます。

終始シリアスで重苦しい雰囲気なので、渥美清さんが放つ独特の緩さにホッとさせられるんですよ。その緩さが金田一の持つ〝飄々とした〟雰囲気とも重なって、作品の世界観に見事にハマっていました。

実はこのキャスティング、原作者の横溝正史の指名だったそうです。「おたく(松竹)ならやっぱり渥美清だろう」と。著者がイメージする金田一は、二枚目ではなかったんです。

ちなみに渥美清さんは金田一を演じるにあたり、32人殺しのモデルとなった「津山事件」が実際に起きた集落に足を運び、生き残りの村民から話を聞いています。

金田一のゾッとする謎解き

真犯人は、森美也子。
その目的は、八つ墓明神の祟りを利用した財産横領でした。

しかし、本当に恐ろしいのはここから。

金田一は後半、八つ墓村を抜け出して全国各地をまわり、事件関係者の家系を調べていました。その結果、恐ろしい事実が判明します。

28年前の多治見要蔵による32人殺しで、一家全員が皆殺しにあったのは3家族。彼らは、過去に落武者殺しを企んだ村の代表4人のうちの3人の子孫でした。

つまり、落武者殺しの首謀者4人のうちの1人多治見庄左衛門の子孫である多治見要蔵が、残り3人の子孫を殺したということになるのです。そして今回の事件の犯人・森美也子は、落武者の大将・尼子義孝の直系の子孫でした。

これが、多治見要蔵も、森美也子も、村の人々も、誰も知らなかった真実です。

洞窟内の落盤によって美也子は死亡。鍾乳洞からあふれ出た蝙蝠の大群が多治見家を襲い、仏壇の火が燃え移り、多治見の屋敷は炎に包まれ崩れ落ちていきます。その様子を、丘の上から満足げに眺めている尼子義孝と家来たちの亡霊…。

辰弥の父・亀井陽一の正体も怖い

辰弥の父・亀井陽一の正体も、原作とは大きく異なります。

彼の正体がわかるのは、物語の最後。金田一が諏訪弁護士に語るシーンで明らかになります。亀井陽一は、尼子の出自である島根県広瀬町の付近の生まれでした。

しかし、金田一は「調べるのやめました」と言います。

「ハッキリ尼子一族だとすると、八つ墓村の事件は、辰弥君が全然意識しなかったとしても、森美也子ひとりのものではなく、辰弥君と2人で力を合わせてやった、ということになるんじゃないでしょうか」

辰弥はもとどおり空港職員として働く生活に戻ります。

辰弥が知らずに背負わされていた〝宿命〟が、怨念や呪いという形で現代に蘇る。
スタッフが同じなだけに、どことなく「砂の器」を思わせる作品でした。

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