「獄門島」原作あらすじと感想|俳句見立て殺人の真相と悲しい結末

横溝正史著「獄門島」ネタバレと感想

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どうも、夏蜜柑です。
横溝正史の小説「獄門島」についてまとめました。

金田一耕助シリーズの1作目「本陣殺人事件」のあと、続けて雑誌『宝石』に連載された2作目の作品で、1947年(昭和22年)1月から1948年(昭和23年)10月に掲載されました。

著者は連続して書いていますが、「本陣殺人事件」の舞台は昭和12年(1937年)、「獄門島」は昭和21年9月と、作中の時間設定は9年もの開きがあります。

その間、金田一耕助も、磯川警部も、戦地へ行っていました。
2人は獄門島で9年ぶりに再会することになります。

磯川警部が健在であることを島の駐在さんから聞いたとき、金田一が柄にもなく涙ぐむ場面も。

舞台は瀬戸内海に浮かぶ小島〝獄門島〟。
そこでどんな事件が繰り広げられたのか、順を追って紐解いていきたいと思います。

最後に事件の真相をまとめていますが、その都度〈ネタバレ〉も追記しています。

※引用文はすべて横溝正史著『獄門島』(角川文庫)より引用しています

登場人物

主要人物

金田一耕助(きんだいちこうすけ)
東北生まれの私立探偵。年齢は34、5歳。もじゃもじゃ頭で風采のあがらぬ小柄な人物。セルの袴を身につけ、形のくずれたソフト帽を被っている。興奮するとどもりがひどくなり、もじゃもじゃ頭をかき回してフケをまき散らす。
二十代半ばで「本陣殺人事件」を解決した後、戦地へ。ニューギニアで行動を共にした鬼頭千万太の死を知らせるため、千万太の故郷・獄門島を訪れる。

磯川常次郎(いそかわつねじろう)
岡山県警の警部。昭和12年の「本陣殺人事件」で金田一と共に捜査した。戦争で招集され、数年間を軍隊で過ごした後、県の刑事課へ転勤。逃げた海賊のひとりを追って獄門島へやってきて、金田一と再会する。

清水(しみず)
獄門島の駐在所に勤務する警官。磯川警部に「金田一から目を離しちゃいけない」と言われて犯罪者だと誤解し、第一の殺人のあと留置場に閉じ込めてしまう。

鬼頭千万太(きとうちまた)
本鬼頭家当主・与三松の息子。金田一がニューギニアで行動を共にした戦友。死を極度に恐れていた。復員船の中で金田一に「おれの代わりに獄門島へ行ってくれ」と言い残して絶命した。三長老に宛てた手紙を書き、金田一に持たせている。

鬼頭早苗(きとうさなえ)
千万太のいとこ。一の妹で、嘉右衛門の孫。両親は早くに亡くなり、本家に引き取られた。気性のしっかりした娘で、座敷牢の与三松の世話をするなど、本家を切り盛りしている。兄・一の帰りを心待ちにしている。

本鬼頭家

鬼頭嘉右衛門(きとうかえもん)
獄門島を仕切る網元・本鬼頭家の先代当主。千万太の祖父。昨年脳溢血により78歳で死去した。島では〝太閤さん〟と呼ばれる。芝居や俳句に入れ込み、趣向好きの性癖があった。与三松の妻・小夜を嫌っていた。

鬼頭与三松(きとうよさまつ)
本鬼頭家当主。精神病を患い、10年間座敷牢に入っている。前妻は千万太を産んでまもなく亡くなり、妾だった小夜を後添いとした。小夜が亡くなった後に精神を病んだと言われている。

鬼頭月代(きとうつきよ)
与三松の長女。18歳。後添えのお小夜の娘で、千万太の腹違いの妹。母親と同様に、祈祷を行っている。山狩りの最中に祈祷所で絞殺され、遺体には萩の花が添えられていた。

鬼頭雪枝(きとうゆきえ)
与三松の次女。17歳。後添えのお小夜の娘で、千万太の腹違いの妹。花子が殺された次の日、吊り鐘の中から遺体で発見される。

鬼頭花子(きとうはなこ)
与三松の三女。16歳。後添えのお小夜の娘で、千万太の腹違いの妹。千万太の通夜の晩、千光寺の梅の木に逆さに吊されているのを了然和尚が発見する。

鬼頭一(きとうひとし)
千万太のいとこで、早苗の兄。本鬼頭分家。ビルマに出征していたが、まもなく復員するという知らせが入る。

勝野(かつの)
嘉右衛門の妾。お勝と呼ばれている。

お小夜(おさよ)
与三松の後妻。故人。三姉妹の母。元女役者で、「道成寺」の鐘入りが十八番だった。芝居を見に来た与三松に見初められて妾になり、後添いとなったが、嘉右衛門には大反対されていた。祈祷が当たると評判となるが、晩年は精神を病み座敷牢に入っていた。

分鬼頭家

鬼頭儀兵衛(きとうぎへえ)
分(わけ)鬼頭の当主。「権現様」に例えられている。本鬼頭の親類筋だが、代々仲が悪い。嘉右衛門には一目おいていたが、彼の道楽にはついていけず、それがもとで嘉右衛門を怒らせることになった。痛風を患っている。

鬼頭志保(きとうしほ)
儀兵衛の後妻。廃業した網元・巴屋の娘で、色気が匂い立つような美人。もともとは千万太に惚れ込んでいたが、脈がないため儀兵衛に乗り換えた。鵜飼章三を利用して本鬼頭をつぶそうともくろんでいる。

鵜飼章三(うかいしょうぞう)
分鬼頭に居候する復員軍人。三姉妹を虜にする美少年。志保の指示で月代に手紙を送っている。

獄門島の三長老

了然(りょうねん)
千光寺和尚。獄門島の三長老のひとり。網元の上に君臨し、村長でさえ頭が上がらない絶対的存在。時々、突拍子もない俳句を口ずさむ。

荒木真喜平(あらきまきへい)
村長。獄門島の三長老のひとり。かつて千万太の父・与三松と小夜を取り合ったと言われている。フラれた腹いせに小夜の素性を調べ、嘉右衛門に告げ口した。

村瀬幸庵(むらせこうあん)
漢方医。獄門島の三長老のひとり。どじょう髭が自慢。無類の酒好きで、すぐに酔っ払う。島に逃げ込んだ海賊と格闘し、片腕を骨折する。

そのほか

了沢(りょうたく)
千光寺の典座(厨房係)。早苗の幼なじみ。

竹蔵(たけぞう)
本鬼頭に出入りする潮つくり(潮の加減を見る役)。

清公(せいこう)
床屋の親方。横浜に長く住んでいたことがあり、江戸弁が自慢。趣味の俳句を通じて嘉右衛門とも親交があった。

海賊の男
警察の追跡から逃れ、獄門島に上陸した海賊のひとり。早苗に兄と間違われる。山狩りで追い詰められ、転落死する。

相関図

「獄門島」相関図

あらすじ(ネタバレ有)

戦友ちまたの死

金田一耕助が獄門島にやってきた理由は、3つあります。

  1. 戦友・鬼頭千万太(ちまた)が静養地として紹介してくれたため
  2. 千万太が死んだことを家族に知らせるため
  3. 千万太が死ぬ間際、「獄門島へ行ってくれ」と遺言を残したため

問題は「3」です。

「死にたくない。おれは……おれは……死にたくない。……おれがかえってやらないと、三人の妹たちが殺される……だが……だが……おれはもうだめだ。金田一君、おれの代わりに……おれの代わりに獄門島へ行ってくれ。……いつか渡した紹介状……金田一君、おれはいままで黙っていたが、ずっとまえから、きみがだれだか知っていた……本陣殺人事件……おれは新聞で読んでいた……獄門島……行ってくれ。おれの代わりに……三人の妹……おお、いとこが、……おれのいとこが……」

こんな言葉を残して逝かれたら、名探偵金田一耕助としてはほっとけません。

「おれが帰らないと妹が殺される」とは、どういう意味なのか。
それを探るべく、獄門島へ向かったのでした。

千万太の祖父・嘉右衛門は、「千万太が戦死したときは、3姉妹を殺してもうひとりの孫・一に本鬼頭家を継がせる」と決意していました。千万太は戦地へ行く直前、そのことを伝えられていたのです。

逆さに吊された死体〈第一の殺人〉

金田一が島に渡って10日ほど過ぎた日。
千万太の通夜が行われた夜、最初の殺人が起こります。

犠牲者は、千万太の腹違いの妹・花子。
花子は絞殺され、千光寺の梅の木に逆さに吊されていました。

殺害現場に残されていた謎は、以下のとおり。

  1. コウモリの傷がついた足跡
  2. 何者かが寺に侵入し、ご飯を食べた痕跡
  3. 落ちていた煙草の吸い殻
  4. 花子が持っていた月代宛の手紙
  5. 了然和尚が呟いた「きちがいじゃが仕方がない」という言葉
花子を殺したのは了然和尚でした。①②③は警察の追跡から逃れて島に上陸した海賊のしわざ。煙草は本家の座敷牢から盗んだもの。④は鵜飼章三が愛染かつらの木に隠していた手紙を花子が手に入れたもの。⑤は「季違いじゃが仕方がない」とう意味。花子は「鶯の身を逆に初音かな」という春の句に見立てられていたため。

千光寺の屏風と3つの俳句

金田一は千光寺に寝泊まりしています。

枕元には風よけの屏風が置いてあります。
これは了然和尚が彼のために持ってきてくれたもの。

実はこの屏風に大きなヒントが隠されていたのですが、金田一にはそこに書かれている句が読めません。

後に判明することになりますが、屏風には3つの俳句が書かれていました。

  1. 鶯の身を逆に初音かな
    松尾芭蕉の弟子・宝井其角の句。鶯が春の到来を告げてさえずっているうちに、枝に逆さまにぶらさがり、それでもなおさえずりつづける様子を詠んだ句。
  2. むざんやな冑の下のきりぎりす
    松尾芭蕉の句。多太神社に祀られている斉藤実盛の兜を見た芭蕉が、実盛の兜の下で(実盛の亡霊の化身とも思われる)コオロギが、秋の哀れを誘うように鳴いているのを詠んだ句。
  3. 一つ家に遊女も寝たり萩と月
    松尾芭蕉の句。同じ宿に遊女と泊まり合わせた芭蕉が、庭に咲く萩の花を自分に、夜空の月を遊女にたとえて詠んだ句。
屏風を置いたのは、了然和尚があえて金田一に事件解決のヒントを与えようとしたため。①は花子、②は雪枝、③は月代がそれぞれ見立てられた。句を書いたのは鬼頭嘉右衛門で、「極門」は嘉右衛門の雅号。

金田一、留置場に入れられる

その頃、島のお巡りさん(清水)は、本署の警官たちと一緒に海で海賊船を追っていました。
その警官の中には、あの磯川警部もいたのです。

「(中略)それはたいへんだ、あの男があだやおろそかのことで、獄門島みたいな離れ島へ来る気遣いはない。なにかきっと、大きなもくろみがあるにちがいない。清水君、気をつけにゃいかんぞ。その男から眼をはなしちゃいかんぞ。わしもそのうちに暇をみて、きっと一度行ってみるが……」

磯川警部から金田一のことを聞いた清水さん、すっかり誤解してしまいます。
清水さんにとって金田一は、怪しい風来坊そのものですから……。

花子を殺した下手人は金田一に違いないと、思い込んでしまったんですね。

清水さんの策略にひっかかり、金田一はまんまと留置場へ入れられてしまいます。

吊り鐘の下の死体〈第二の殺人〉

金田一が留置場に入れられたその夜、第二の殺人が起こります。
殺されたのは、3姉妹の次女・雪枝。

雪枝は〝天狗の鼻〟と呼ばれる海に面した平地で、吊り鐘の中に押し込められていました。伏せてある吊り鐘の下から、鮮やかな振り袖がはみ出していました。

犯人はてこの原理を使って重い吊り鐘を持ち上げ、絞殺した雪枝の死体を吊り鐘の中に押し込んだのです。

しかし、夜通し雨が降っていたはずなのに、雪枝の体は濡れていませんでした。

雪枝を殺したのは村長の荒木真喜平。村長は、3姉妹の母・小夜が芝居で使っていた張り子の吊り鐘を本物の吊り鐘の上から被せ、タイミングを見て張り子が海に落ちるよう細工していた(アリバイ工作)。「むざんやな冑の下のきりぎりす」という句に見立てた。

山狩りで死んだ男の正体

磯川警部が合流し、清水さんの金田一への誤解も解けました。
磯川警部は、この島に海賊のひとりが逃げ込んだと言います。

花子が殺害されたとき寺に侵入したのは海賊ではないか、と考えた金田一は、山狩りを提案します。

海賊は山狩りによって追い詰められ、転落死します。
そしてその時、早苗が海賊を復員した兄だと思い込んでいたことが判明。

早苗は復員した兄が花子を殺したと誤解し、兄を守るために密かに食事を用意したり、本家の庭に残っていた足跡を消すなどの偽装工作をしていました。

しかし、その男は早苗の兄・一ではなく、殺人事件とも無関係でした。

無関係の闖入者に、金田一も早苗も振り回されてしまったのです。

海賊はたまたま花子の殺害現場に遭遇しただけ。花子を殺した了然和尚は山狩りのどさくさに紛れて(口封じのために)海賊を撲殺し、転落死に見せかけていました。早苗の兄・一は実は戦死しているのですが、この時点ではまだ生きていると思われています。

萩の花をまかれた死体〈第三の殺人〉

金田一や磯川警部が山狩りに参加しているさなか、本家では第三の殺人が起こっていました。

殺されたのは3姉妹の長女・月代。
ついに、千万太の言葉通り3人の妹が殺されてしまったのです。

月代は本家の敷地内にある祈祷所で絞殺され、死体の上には萩の花がふりまかれていました。

祈祷所からはずっと鈴の音が聞こえていて、誰もが月代が祈祷を行っていると思い込んでいましたが、それは犯人が施した細工で、鈴を鳴らしていたのは猫でした。

月代を殺したのは医者の村瀬幸庵です。幸庵はこのとき片腕を骨折していましたが、鴨居に固定した手ぬぐいを使い、片腕で月代を絞め殺しました。一つ家とも呼ばれる祈祷所で殺害し、萩の花を置いたのは「一つ家に遊女も寝たり萩と月」の句に見立てたため。

与三松とお小夜

金田一は、千万太と3姉妹の両親についても、聞き込んでいます。

まず、千万太と3姉妹の父・与三松
嘉右衛門の息子です。

この人は精神疾患を患い、現在は本家の座敷牢で早苗が面倒を見ています。

千万太の母は千万太を産んですぐに亡くなり、与三松は父・嘉右衛門の反対を押し切って小夜という妾を後添えにしました。3姉妹の母親です。

小夜は元女役者でしたが、なぜか祈祷をするようになります。
彼女の祈祷はたちまち評判となり、島民たちはこぞって彼女を頼るようになりました。

分鬼頭の当主・儀兵衛は、小夜についてこう語っています。
少し長いですが、非情に興味深い内容なので引用します。

「あんたは知るまいが、この中国筋にはカンカンたたきという筋のものがある。(中略)なんでも陰陽師安倍の晴明が、中国筋へくだってきたとき、(中略)道ばたの草に生命をあたえて人間とし、これをお供にして御用を果たしたが、さて京へかえるとき、もとの草にもどそうとすると、(中略)このままでおいてくだされと頼んだそうだ。そこで晴明さんもふびんに思って、そのまま人間にしておくことにしたが、もとをただせば草だから、たつきの業を知らぬ。晴明さん、そこで祈祷の術を教えて、これをもって代々身を立てようといいきかされたというのじゃが、その筋のものを草人、一名カンカンたたきといって、代々祈祷をわざとしている」

小夜はこの「カンカンたたき」の筋のものだと言うのです。

嘉右衛門はもともと素性の知れない小夜を妾にすることには反対していましたが、この話を聞いてますます忌み嫌うようになり、了然和尚、村長、幸庵もそれにならったのです。

小夜の言動はエスカレートし、やがて精神を病み、嘉右衛門は家の中に座敷牢を作って小夜を監禁しました。小夜をの死後、今度は与三松が精神を病み、座敷牢に入ることになったのです。

事件の真相1(金田一の話)

了然和尚が隠遁することが決まり、「伝法の儀式」が終わった後、金田一は了然和尚を呼んで事件の真相を話します。

花子と海賊を殺したのは、了然和尚。
雪枝を殺したのは、村長の荒木真喜平。
月代を殺したのは、医者の村瀬幸庵。

そしてその殺害を命じた人物は、亡き鬼頭嘉右衛門であると。

千万太は生きているとき、金田一が獄門島で快適に過ごせるようにと紹介状を書き、手渡していました。

紹介状の宛名が祖父の嘉右衛門ではなく、了然和尚と村長と幸庵であることに、金田一は疑問を抱いたのです。千万太は嘉右衛門を恐れていたのではないかと。

戦争が始まり、千万太と一の2人の孫が招集され、本鬼頭の血筋が途絶えることに恐れを抱いた嘉右衛門は、2人を呼んである決意を語りました。

もしも本家の千万太が死んで、分家の一が生きて帰ってきたときは、本鬼頭の家は一に継がせる。雪月花の3姉妹を殺して。

嘉右衛門は、精神を患う3姉妹が家を継げば、まちがいなく本鬼頭家は潰れると考えたのです。

事件の真相2(了然和尚の話)

嘉右衛門がなくなる2日前、了然和尚は村長と幸庵と共に、嘉右衛門の枕元に呼ばれました。

そこで嘉右衛門は、3姉妹をいかに殺害するかを、彼らに語って聞かせたのです。そのときに手渡されたのが、例の3つの句を書いた3枚の色紙でした。

嘉右衛門は芝居や俳句などの道楽が好きで、趣向好きの性癖がありました。
死体を俳句に見立てようと考えたのも、その性癖によるものでしょう。

和尚はもらった色紙を屏風に張って、金田一の枕元に置きました。

彼は金田一が有名な探偵だということを知っていました。彼に何も手がかりを与えずに決行するのは卑怯だと考え、あえて屏風を置いたのです。

本物の探偵ならば、その謎が解けるはずだと。

嘉右衛門から遺言を託されたものの、3人とも本気で受け取っていたわけではありませんでした。条件が揃わないからです。

犯行に必要な千光寺の吊り鐘は、戦争で軍に供出していました。

ところが1年後、その吊り鐘が島に戻されてきます。
そして千万太が死んだこと、一が生還したことがわかります。

条件が揃ってしまった今、3人は遺言どおりに決行するしかなくなりました。

物語の終わり

金田一によって犯罪が暴かれ、幸庵は発狂してしまいます。
村長は島から逃亡します。

そして衝撃的な真実が明らかになります。
生きていると思われた早苗の兄・一は、戦死していたのです。

一の生還を知らせにきた男は復員詐欺で、戦友が生きていることを家族に知らせて、家族からごちそうや礼をもらっていたのでした。

嘉右衛門の遺言では、千万太と一のどちらもが戦死した場合、月代に養子を取って本鬼頭家を継がせることになっていました。

真実を知った了然和尚は、ショックを受けて卒倒し、亡くなってしまいます。

金田一が島を去る日、早苗は島に残って婿を取り、本鬼頭家を守っていくことを金田一に告げます。

血縁の悲劇

この作品には、精神疾患を持つ人物が多数登場します。

金田一以下、登場人物はこぞって「きちがい」という言葉を連呼しますし、金田一が島全体から「病的」なものを感じ取る場面も出てきます。

獄門島は、かつては海賊の根城で、その後流刑地となった場所。

他の島々と縁組みをすることはめったになく、島民のほとんどが海賊と流刑人の子孫です。他国からやってきた小夜もまた、血の交流がなかった筋に属していました。

瀬戸内海の孤島で起きた陰惨な事件は、一見単純なようにも見えますが、実は「犬神家の一族」や「悪魔が来りて笛を吹く」と同様に、近親婚や血縁による悲劇を描いた作品であることがわかります。

感想

先に読んだ「悪魔が来りて笛を吹く」「犬神家の一族」に比べると、ストーリーや人間関係は比較的単純でわかりやすいものになっていました。

犬神家に比べると、相関図を作るのがめちゃくちゃ楽だった。

ちょっと物足りない印象も受けましたが、瀬戸内海の小島という閉鎖的な空間で繰り広げられる事件の背景には、この時代が持つ暗さと排他的な人間模様が巧みに織り込まれていて興味深かったです。

四国・中国地方には伝承や昔話が数多く残っていて、民俗学的にはネタの宝庫。
ここに出てくる「カンカンたたき」は初耳ですが、ありそうな話です。

この作品では、俳句を使った「見立て殺人」が出てきます。

著者は戦前にヴァン・ダインの「僧正殺人事件」を読んで、イギリスの童謡マザー・グースの歌詞に合わせた見立て殺人のアイデアに感心し、自分もやってみたいと思ったものの、真似したと批判されるだろうと考えていました。

ところがその後、知人からアガサ・クリスティの「そして誰もいなくなった」の原書が送られてきます。

クリスティがマザー・グースの歌詞を使って「見立て殺人」を書いていることを知り、それなら自分も書いてみようってことで、「獄門島」が生まれたそうです。

横溝作品は映像から入る人が多いと思うし、わたし自身もそうなのですが、原作を読むと本格的な探偵小説であることをしみじみと感じます。

映像の場合はインパクトが先行してホラーの印象が強くなっていますが、怪奇小説ではないんですよね。

ちなみに映像は、

  1. 片岡千恵蔵さん主演の映画(1949年)
  2. 石坂浩二さん主演の映画(1977年)
  3. 古谷一行さん主演の連続ドラマ(1977年)
  4. 片岡鶴太郎さん主演の2時間ドラマ(1990年)
  5. 古谷一行さん主演の2時間ドラマ(1997年)
  6. 上川隆也さん主演の2時間ドラマ(2003年)
  7. 長谷川博己さん主演のNHKドラマ(2016年)

と、豪華なラインナップ。
まずは2016年版を見ようかな、と思っています。

▼ドラマの感想はこちら
長谷川博己主演NHKドラマ「獄門島」ネタバレ感想NHKドラマ「獄門島(2016)」あらすじ感想。エキセントリックな金田一と病んだ人々

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