ポイズンドーター・ホーリーマザー最終話|姉の罪、妹の罪、母親の罪

WOWOWドラマ「ポイズンドーター・ホーリーマザー」

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夏蜜柑
どうも、夏蜜柑です。

WOWOWの連続ドラマ「ポイズンドーター・ホーリーマザー」最終話(第6話)。

衝撃的なラスト、怖かったです。
ストーリーは同じなのに原作よりも不気味でショッキングでした。

原作にはないパン屋の店員の存在が効いていました。
淑子の閉ざされた世界を巧く表現していたと思います。

主人公が自分と同じ「長女」で「猫を飼っている」というだけで感情移入してしまっていたもんだから、どうにもやりきれなくて。妹の「おかしい」という言葉にも、自分が言われているような、複雑な気持ちになりました。

キャラクター造形が類型的になっていたのは、あえてそうしたのかなぁ。
わたしが原作を読んだときの印象とは、少し違うような……。

伊藤歩さんと佐津川愛美さんはさすがの演技力で、見事に〝歪んだ姉妹〟を演じておられました。

最終話「マイディアレスト」の概要


  • 実家で暮らす淑子(伊藤歩)は、一度も地元を離れたことがない40歳の独身女性。現在は仕事に就かず、スカーレットと名付けた飼い猫だけに心を開いている。
  • 町で妊婦が襲撃されるという事件が相次ぐ中、奔放な妹・有紗(佐津川愛美)が出産のため実家に帰ってくる。自分には厳しい母親(梅沢昌代)だが、妹には甘い。家族の中心である有紗が帰ってきたことで、家の中の空気も変わっていく。
  • ある日、淑子はパン屋の店員(ウダタカキ)に声を掛けられる。その日から、淑子は彼に一方的な恋心を抱くようになる。だが、淑子が店を訪れると彼の姿はなく、ほかの店員たちも「そんな人はいない」と言う。
  • 有紗は淑子が読んでいるロマンス小説をバカにし、「35歳で処女ってありえなくない?」と笑う。部屋にこもって猫の蚤ばかり取っている淑子を、有紗は「ちょっとおかしくない?」と母親に話す。
  • 夜、スカーレットを探して外に出た淑子は、スカーレットが道端で雄猫と交尾をしているところを見てしまう。有紗は「先越されちゃったね」と言い、動転した淑子は落ちていた角材を拾って有紗に振り下ろす。
  • 取り調べ室で淑子に尋問している男は、パン屋の店員だった。有紗が殺された時間、何をしていたのかと問われた淑子は、「蚤取りをしていました」と答える。


  • 放送局:WOWOWプライム
  • 放送時間:8月10日(土)夜10時
  • 原作:湊かなえ『ポイズンドーター・ホーリーマザー』
  • 最終話脚本:吉川菜美(「PとJK」「純平、考え直せ」)
  • 最終話監督:滝本憲吾(「鈴木先生」「女はそれを許さない」)
  • 音楽:きだしゅんすけ/池永正二

登場人物(キャスト)

寺崎淑子(伊藤歩)
実家で両親と暮らす40歳無職の独身女性。スカーレットと名付けた猫を飼っている。恋愛経験に乏しく、ロマンス小説の世界に憧れている。

有紗(佐津川愛美)
年の離れた淑子の妹。高校卒業後、東京で暮らしていた。突然結婚と妊娠の報告をし、家族を驚かせる。地元で出産するため実家に帰ってきた。

淑子と有紗の母(梅沢昌代)
世間体を重んじる厳格な母。淑子に対する躾は厳しいが、有紗には甘い。

パン屋の店員(ウダタカキ)
商店街にある「スマイルパン」の店員。淑子に声を掛けてくる。

最終話の感想

姉と妹の育て方の違い

どうしても淑子に同情してしまいますね。ラストを除いて。

わたしも妹に対しては思うところがあるし、両親の対応の違いに傷ついた経験もあるので、淑子の気持ちはよくわかる。姉妹とか兄弟って難しいよなぁ。

親もたぶん同じように愛情を注いで育てたつもりなんだろうけど、どうしたって育て方に違いは出るよね。姉妹と言っても別の人間だし、その時の状況も違うだろうし。それが時に大きな差を生んでしまうこともあると思う。

今は子育ての本がたくさん出ていて、勉強しているお母さんたちが多いと思うけど、何が正解かはきっと今も昔もわからない。

ただ淑子の母親に限って言えば、彼女は自分が長女に対して支配的な態度を取ってきたことにも気づいてなさそうだった。

でも、淑子の怒りは母親ではなく、妹に向けられるんですよね……。

姉の罪、妹の罪、母親の罪

殺人は理解できないけど、有紗に怒りを覚える気持ちはわからなくもない。
ドラマに不満があるとすれば、そこの説得力が少し足りなかったところかな。

ドラマは淑子の異常性や狂気のほうを強く印象づける演出になっていて、淑子が殺害に至った経緯(母の差別的な態度や有紗の意地悪)がかなり省略されていました。

佐津川愛美さんはちょっとした目線や態度で、うまく表現されていましたが……。

だからと言って報復されてもいいとは決して思いませんが、ただ静かに息をして暮らしている人を、自己満足のためだけに容赦なく傷つける暴力的な人たちのことは、うやむやにしてほしくなかった。

ちなみにわたしはほかの妊婦殺しは淑子の犯行ではないと思っているのですが、これは願望。もし彼女の犯行だとしたら、闇はもっと根深いのでしょうね。

わかりやすさの危険性

わたしがいちばん引っかかってしまったのは、淑子のキャラクター造形です。

彼女を視覚的にわかりやすいキャラクターにしたのは、意図的だったのかもしれませんが、わたしは〝平凡な40歳の独身女性〟として、フラットに描いてほしかったなぁ。

なんていうか……「猫を飼う40歳の独身女性」や「ロマンス小説を読む40歳の処女」に対する偏見が感じられるんですよね。

世間のイメージそのものなのかもしれませんけど、そういうの、もうぶっ壊してほしい。

全6話、どのお話も面白かったです。
やっぱりWOWOWは配役がうまいな~とあらためて。

東京二十三区女」の女優競演もすごくよかったですもんね(見てない方は8/21深夜の再放送をぜひ!)。

またこういう企画をお願いしたいです。
できれば現代の女性が見て息苦しさを感じない、自由な生き方を描いたドラマがいいな。