WOWOW連続ドラマ「盗まれた顔~ミアタリ捜査班~」(全5話)についてまとめました。
芥川受賞作家・羽田圭介氏の小説をドラマ化。記憶と勘を武器に指名手配犯を捜し出す「見当たり捜査員」の苦悩や葛藤を描いたサスペンス・アクションです。
主人公がさまざまな「顔」に翻弄される、緊張感のあるドラマ。
原作よりバイオレンス色が濃くなっています。
ラストで明かされる恋人の正体は、ドラマオリジナルの設定でした。
Contents
作品概要
- 放送局:WOWOWプライム
- 放送時間:2019年1月5日(土)から毎週土曜夜10時~【全5話】
- 原作:羽田圭介『盗まれた顔』
- 監督:武正晴
- 脚本:足立紳
- 音楽:海田庄吾
あらすじ
警視庁捜査共助課で、自ら記憶した指名手配犯の顔だけを頼りに潜伏する容疑者を捕まえる“見当たり捜査員”の白戸崇正(玉木宏)。
彼は抜群の記憶力と相貌識別力で、部下の安藤香苗(内田理央)、谷遼平(町田啓太)とともに繁華街を行き交う群衆の中から指名手配犯を捜し続けていた。そんなある日、白戸は群衆の中に「見つかるはずのない顔」を見てしまう。4年前に謎の死を遂げた先輩刑事・須波通(渋川清彦)。須波は“見当たり捜査員”として優秀な刑事で、白戸が慕っていた人物だった。見間違いだと否定しようとしていたが、そんな中、白戸は須波にまつわる噂を耳にする。
しかし須波について調べるうち、公安や中国マフィアが動きだし、いつしか白戸は命をも狙われることになる。さらに、同棲している恋人の千春(伊藤歩)の不可解な言動に、白戸はある疑念を抱き始め…。
WOWOW公式サイトより
原作について
このドラマの原作は、羽田圭介さんの『盗まれた顔』(2012年刊行)です。
原作の感想(ネタバレなし)
予想以上に濃密なクライムサスペンスで、不思議な読後感を残す作品でした。人間の「顔」というものに対して抱いていた印象が、この作品を読むとガラッと変わります。
主人公は、見当たり捜査員として働き始め5年目の白戸。彼の仕事は数百人にものぼる指名手配犯の「顔」を記憶し、街の雑踏の中から見つけ出すこと。
同棲中の恋人・千春と知り合ったのは、「顔」だけで選んだ出会いサイト。そんな白戸の前に、4年前死んだはずの先輩・須波の「顔」が現れる。
中盤は何かが起こりそうで起こらない日々が続き、密度の濃い精緻な表現による日常風景が延々と続きます。ひたひたと寄せてくる黒い水のように、徐々に不安が満ちていきます。
ジェットコースターのようにめまぐるしく展開するエンターテインメント小説とは一線を画しているので、少々しんどいかもしれませんが、文章を読むのが好きな方は圧倒的な文章力を堪能できると思います。
後半、主人公の心に迷いが生じ、自分の世界を見失いかけていく描写がリアルで、読んでいるこちらまで足元がぐらつくような錯覚に陥りました。
張り巡らされた伏線が徐々に回収されていき、最後にある陰謀が明らかになります。
わたしは事件の真相よりも、「顔」や「記憶」をめぐる心理学的・哲学的な考察のほうが興味深く、最後まで面白く読ませてもらいました。謎めいた恋人との奇妙な結末もいい。
ドラマはエンターテインメント要素を強く押し出す方向になるのかな、と思います。映像ならではの面白さが見られることを期待しています。
登場人物(キャスト)
※第4話までのネタバレを含みます
警視庁捜査共助課
白戸崇正(玉木宏)
3000人の顔を記憶するベテラン捜査員。安藤、谷とチームを組んで見当たり捜査にあたっている。4年前に殺されたはずの元見当捜査員・須波を街の中で見かけ、戸惑う。同棲している恋人・千春とは出会いサイトで知り合い、お互いのことをよく知らないこともあって、彼女の不審な行動を怪しんでいる(第1話)。
川本が監視していた王を逮捕したことで、公安や中国人マフィアたちから狙われる(第3話)。
安藤香苗(内田理央)
白戸が制服警官から抜擢した新人捜査員。抜群の相貌識別能力を持っている。特技は柔道。かつて出会い系サイトで知り合い、既婚者とは知らずに付き合っていた男性がいる。須波のことは知らないものの、白戸や谷の言動から須波が事件に関わっていることに気づく(第3話)。
川本と須波の関係を知り、事件に深入りし始めたため、白戸と同様に命を狙われる(第4話)。
谷遼平(町田啓太)
白戸とチームを組む中堅捜査員。スランプで無逮捕が続き、焦っている。ようやくホシを見つけるが、逮捕する際に中国人マフィアのバンに轢き殺されてしまう(第3話)。
須波通(渋川清彦)
白戸の元先輩。有能な見当たり捜査員だったが、4年前に焼死している。殺された恋人の復讐のため中国人マフィアを次々と惨殺し、その報復に殺されたと噂されている(第1話・第2話)。実は死亡は川本の偽装工作で、生存している(第3話)。
4年前から川本の協力者として公安の裏の仕事を引き受けていたが、川本と決裂。川本および中国マフィアから命を狙われることになる。川本を社会的に抹殺するため、白戸に協力を求める(第4話)。
その他の警察官
川本(丸山智己)
警視庁公安部外事二課。中国人マフィアのボスと密会し、不透明な取引を行っている。白戸が中国人マフィアのひとりで強盗殺人犯の王の身柄を押さえようとしたとき、身分を明かさずに邪魔をした(第1話)。4年前、偽装工作で須波通を死んだこととし、密かに協力者として利用していた(第3話)。その後須波と決裂したため、須波を殺害しようとしている(第4話)。
小池(和田聰宏)
警視庁人事一課。白戸の同期。白戸に捜査情報などを教える。川本と須波、および中国人マフィアとの関係を白戸に教え、この件から手を引くよう助言する(第3話)。
森野(バッファロー吾郎A)
大阪府警捜査共助課。白戸に見当たりの仕事をレクチャーした元上司。
指名手配犯
角田里子(友近)
詐欺罪の容疑をかけられている指名手配犯。元小学校教師。アイドルグループ「チャッキーズ」のコンサート会場で出待ちをしているところを安藤に見つかり、連行される(第1話)。
塚本孝治(山崎樹範)
指名手配犯。外資系精密機器メーカーの日本リング元社員。東京で弁護士を、栃木で歯科医師を殺害した容疑をかけられ逃亡。街中で白戸に見つけられ、逮捕された(第2話)。無実を訴え、白戸に日本リングと警察の間で密かに行われている裏取引について話すが、その直後に殺される(第4話)。
王龍李(テイ龍進)
密航組織「蛇頭」の一員。地下銀行のボス。大阪で3人殺害したあと中国に逃げ帰り、周という名の偽造パスポートで再び来日していた。白戸が見つけ大阪府警へ護送中、何者かに毒殺される。張と対立しており、川本の監視下にあった(第1話・第2話)。
そのほか
千春(伊藤歩)
白戸の恋人。介護ヘルパー。白戸とは出会い系サイトで知り合い、同棲するようになった。最近帰宅が遅くなったり休日に外出することが多くなり、白戸に疑われている(第2話)。中国人マフィアに自宅を突き止められ、危険を感じた白戸により強制的に自宅を追い出される(第3話)。
由美(中村ゆり)
白戸の元恋人。結婚話も持ち上がっていたが、ある日突然姿を消した。
張(呉汝俊)
歌舞伎町の中国人マフィアのボス。戸籍の不正売買を通じて勢力を強めている。川本と度々密会し、取引をしている。
林小麗(北浦愛)
須波通の婚約者。在日中国人二世。新宿の中華料理店「福仙楼」で働いていた。4年前、何者かに殺害され、手足をバラバラに切断された状態で発見される(第2話)。
大牟田(眞嶋秀和)