海外ドラマ「トロム~フェロー諸島殺人事件~」(全6話)についてまとめました。
デンマークの自治領フェロー諸島を舞台とする、フェロー諸島初のオリジナルドラマ。
モンテカルロ・テレビ祭のゴールデンニンフ賞でフィクション部門の最優秀俳優賞と審査員特別賞を受賞しています。IMDbの評価は6.8。
タイトルの「トロム」はフェロー諸島で使われるフェロー語で、「つば」「瀬戸際」「境界線」を意味する言葉。
事件を追うジャーナリスト、ハンニスを「Face to Face-尋問-」のウルリク・トムセンが演じています。
息をのむほど美しいフェロー諸島の風景が圧巻。海にそそり立つ荒涼とした断崖も、謎めいたストーリーを効果的に盛り上げています。
Contents
作品概要
- 放送局:WOWOW
- 放送時間:2022年11月19日(土)15:30~全6話一挙放送
- 製作国:フェロー諸島/デンマーク/アイスランド/ドイツ(2022年)
- 原題:Trom
- 原作:イェグバン・イサクセン
あらすじ
ジャーナリストのハンニスは、ソニアという女性からビデオメッセージを受け取るが、それは“私はあなたの娘です。あるネタを追っていて身の危険を感じています”という内容だった。ハンニスは事情を探るため、故郷であるフェロー諸島に向かう。反捕鯨を訴える環境保護活動家ソニアは地元放送局のスタッフと何か取材を進めていたが、そのスタッフが乗った車が暴走して彼が重傷を負う事故が発生。しかもソニアの家には何者かが侵入した形跡があり、彼女の行方も分からなくなる。
地元警察の主任警部カーラは脅迫被害を訴えてきたソニアを相手にしなかったことを反省し、彼女の捜索を開始。やがて海にクジラの群れが現われ、漁師たちと反捕鯨団体“ガーディアンズ・オブ・ザ・シー”の活動家たちの間に緊張が走る……。
WOWOW公式サイトより
予告動画
フェロー諸島について
物語の舞台となるフェロー諸島は、北部大西洋上にあるデンマーク自治領の島々。イギリスとアイスランドの中間付近に位置します。
18の火山島からなり、1島を除いて全島に人が住んでいます。温暖な北大西洋海流の影響で、冬でも港は凍りません。住民はノルウェーに発するバイキングの末裔です。
登場人物(キャスト)
※一部ネタバレを含みます
ハンニス・マーティンソン(ウルリク・トムセン/声:千葉哲也)
調査ジャーナリスト。娘を名乗る環境活動家のソニアから助けを求めるビデオメッセージを受け取り、故郷のフェロー諸島へと向かう。だがソニアはすでに失踪し、海で遺体となって発見される。ソニアの死の真相を突き止めるため、彼女が追っていたネタを調べ始める。
ソニア・オァ・ヘッジ(Helena Heðinsdóttir/声:山根舞)
反捕鯨・環境保護活動家。KVF放送局のポール・ハンセンとともにある取材を進めていたが、脅迫や嫌がらせを受け、警察にも相談していた。父親だが面識のないハンニスに「身の危険を感じているので相談したい」というビデオメッセージを送った後、行方不明となって遺体で発見される。
カーラ・モーア(マリア・リッチ/声:本田貴子)
トースハウン警察の主任警部。ソニアから何度も脅迫被害の相談を受けていたが、ただのいたずらだと真剣に取り合わなかった。ソニアが遺体で発見されたことに責任を感じ、捜査に全力を傾けるが、息子のグンナーが事件に関与している可能性が浮上して隠蔽に走る。
ポール・ハンセン(Dánjal á Neystabø)
KVF放送局の局員。ソニアとともにある企業に関する取材を進めていた。脅しを受けて内部告発インタビューの放送を中止せざるをえなくなり、そのことをソニアに告げた直後、乗っていた車が暴走して重傷を負う。
ラグナー・ウィ・ロング(オーラフ・ヨハネセン/声:山路和弘)
地元のビジネスマン。ノーシープ、イクトゥス、サウンドサーモンの3社を中心に、島の漁業や水産業を牛耳っている。妻を亡くしたときに支えてくれたアウローラを家族のように思っている。
アウローラ・オァ・ヘッジ(Gunnvá Zachariasen/声:冨樫真)
ソニアの母。ハンニスが島を出た後、彼の子であるソニアを出産した。ラグナーを信頼し、家族のように接している。ソニアの死後、孫娘のトゥリとともにラグナーの家で生活するようになる。
イェニー(Sissal Drews Hjaltalin/声:高橋雛子)
ソニアの友人。ラグナーの会社で働いている。ソニアからいろんなことを打ち明けられ、密かに彼女の活動に手を貸していた。ソニアの死後、真相を突き止めようとするハンニスに協力する。
ハーラルドゥル・マーティンソン(ハンス・トーガル/声:本宮泰風)
ハンニスの弟。島で捕鯨を行っている漁師。反捕鯨団体“ガーディアンズ・オブ・ザ・シー”の活動家たちから抗議や妨害を受けている。
ベルグル・マグヌッセン(Torkil Tórgarð)
自動車修理工場で働く修理工。事故が起きる前にポールとソニアの車を修理していた。前科があり、出所後はラグナーが主催する更生プログラムを受けている。
アニタ・ラウン(Mariann Hansen/声:西村野歩子)
トースハウン警察の警察官。カーラが信頼を置く優秀な部下。妊娠中で、1か月後に産休に入る予定。
グィスリ(Hjálmar Dam/声:内野孝聡)
トースハウン警察の警察官。カーラのことが苦手で、アニタが産休に入った後のことを不安に思っている。
オーウィン(Páll Danielsen)
署長。地元の有力者であるラグナーに迎合している。
キシュティン・ハンセン(Vígdis Eliesersdóttir Hentze Bjørck)
ポールの妻。ポールの仕事内容をあまり把握しておらず、ソニアとの仲を誤解している。
グンナー・モーア(Magnus Reinert Gásadal/声:宮崎遊)
カーラの息子。高校生。ソニアの死後、彼女と何度か会って話を聞いていたことがわかる。
トリグヴィ・ウィ・ロング(Brandur Teitsson)
ラグナーの息子。グンナーと同じグラシル高校に通っている。
スチュアート・ピータース(Michael Worthman)
ソニアと志を同じくする環境活動家。
アーニ・ブレスティスオッジ
ある企業の財務責任者。ソニアとポールの取材に協力し、内部告発のインタビューに応じていた。脅迫を受けて家族とともに国外へ引っ越した。
各話のあらすじ(ネタバレ有)
反捕鯨・環境保護活動家のソニアは、ある朝、一緒にネタを追っているKVF放送局のポール・ハンセンから連絡を受ける。彼は脅しを受けてインタヴューを放送できなくなったと話し、ソニアとの電話中に事故を起こして重傷を負ってしまう。
ソニアの家には何者かが侵入し、娘のベッドに血だらけの鯨肉が置かれていた。身の危険を感じたソニアは警察に訴えるが、主任警部のカーラは取り合ってくれない。ソニアは娘のトゥリを母アウローラに預け、サマーハウスへ身を隠す。
調査ジャーナリストのハンニスは、見知らぬ女性からビデオメッセージを受け取る。それは娘を名乗るソニアからのもので、「あるネタを追っていて身の危険を感じています」という内容だった。ハンニスはソニアに会うため、故郷のフェロー諸島へと向かう。
ソニアの友人イェニーは警察を訪れ、昨夜からソニアと連絡が取れないことをカーラに知らせる。ソニアがスピーチするはずだった抗議集会の会場があるガサダールへ向かうと、昨日はなかったはずのソニアの仕事用の車があり、車内にはソニアの携帯電話が残されていた。事態を重く受け止めたカーラはすぐに捜索隊を出し、ソニアの捜索を開始する。
ソニアが行方不明だと知ったハンニスは、彼女のビデオメッセージに映り込んでいたトフタ湖畔のサマーハウスを探し出し、部屋の中にあったパソコンとUSBメモリーを見つける。
そんな中、反捕鯨団体“ガーディアンズ・オブ・ザ・シー”が漁を妨害しているという知らせが入り、警察は漁が行われるビーチを封鎖する。活動家や住民たちがビーチに集まる中、海面に人が浮かんでいるという声が上がる。ハンニスが海に入って抱き上げると、それは遺体となったソニアだった。
主席医務官のランヴァはソニアの死因を溺死としたうえで、デンマーク警察の法医学者による司法解剖を勧める。カーラはソニアの死の真相を明らかにすべく、トースハウン警察署の面々と事件の解明に乗り出す。
ハンニスは島で漁師をしている弟ハーラルドゥルの家に身を寄せ、独自捜査を始める。サマーハウスで見つけたUSBメモリーには、ポールとソニアが行ったある企業の内部告発のインタビューが入っていた。これが原因で2人の命が狙われたのではと考えたハンニスは、ポールの妻キシュテインを訪ね、インタビューの相手がアーニ・ブレスティスオッジという財務責任者であることを聞き出す。
アーニの家を訪ねたハンニスだったが、彼の家は火事で燃え、一家は外国に引っ越していた。近所の住人から、彼が水産会社のイクトゥスに勤めていたことや、ポールとソニアも彼を捜してここへ来ていたことを知らされる。
カーラの部下アニタは、自動車修理工のベルグルがソニアを脅していたことを知り、彼の職場を訪ねて聞き取りを行う。ベルグルは否定するが、修理工場にはソニアが一週間前に持ち込んだという自家用車があった。
ソニアの携帯は高度なセキュリティアプリがインストールされ、顔認証でしかロック解除できないようになっていた。カーラは密かに遺体安置所に忍び込み、遺体のソニアの顔を使って携帯のロックを解除する。
携帯を調べたカーラは、ソニアと環境活動家のスチュアート・ピータースとのメッセージのやり取りを見つける。そこには「カーラの息子グンナーは利用できそう」と書かれていた。
カーラは防犯カメラ映像を確認し、息子のグンナーがソニアと会っている映像を発見する。グンナーに連絡すると彼は病院にいて、何があったか尋ねても話そうとしなかった。ガーラはソニアの携帯の中身を見たことを隠したまま、デンマーク警察にロック解除を依頼する。
ハンニスはソニアの家で見つけた地図に記されていた場所を訪ね、ソニアの友人イェニーと出会う。地図はもともと彼女のもので、地元の有力者で彼女の雇い主でもあるラグナーのビジネス拠点を記したものだった。彼女によると、ソニアはラジオ放送で捕鯨や水産業についてのメッセージを発信しようとしていたという。
修理工のベルグルがポールの車を修理していたことが判明し、カーラはベルグルを逮捕する。彼はポールの車と同じ不具合がソニアの車にもあったと認めるが、自分は関与していないと主張する。
法医学者の検視により、ソニアの死因は溺死ではあるものの、死後に崖から突き落とされた可能性が高いと判明。グンナーの上着からソニアのネックレスを見つけたカーラは、グンナーとソニアが映っている防犯カメラ映像をひそかに削除する。
一方、昏睡状態だったポールは意識を取り戻すが、病室に現れたラグナーに脅され、「何も覚えていない」とカーラの尋問を拒む。
ソニアの地図に記されていた場所を訪ねたハンニスは、環境活動家のスチュアート・ピータースに銃を向けられる。ハンニスがソニアの父親だと知ると、スチュアートはソニアがラグナーを標的にしていたことや、追っていたネタの証拠を探すためどこかに忍び込むと言っていたことを打ち明ける。
一方、カーラは記者会見で捜査状況を説明する。グンナーをかばいたい彼女は検視結果を巧妙に伏せ、自殺もしくは事故の可能性が高いと発表する。ハンニスは警察が情報を隠していると見抜き、アウローラに検視報告書を見せてほしいと頼む。
逮捕したベルグルは証拠不十分で釈放せざるをえなくなる。ラグナーが報奨金を出すと公表したため、警察には市民からの情報が殺到し、アニタやグィスリは電話対応に追われるはめに。ストレスを抱えるカーラは感情的になり、ラグナーに迎合する署長のオーウィンを激しく非難する。
帰宅したカーラはグンナーを問い詰め、彼がソニアと何度か会って環境活動に関する話を聞いていたことを聞き出す。カーラはグンナーの上着のポケットに入っていたソニアのネックレスを見せるが、グンナーは「見たことがない」と言い張る。
ハンニスに呼び出されたイェニーは、ソニアがラグナーの会社に侵入する手助けをしたことを明かす。そして最後にソニアを見たのはラグナーの会社の本社ビルだと話す。
アウローラの許可を得て、ハンニスのもとに最新の検視報告書が届く。それを見たハンニスは、ソニアが死んだ後で崖から突き落とされたことを知り、カーラの家を訪ねてなぜ情報を隠すのかと糾弾する。
ハンニスとイェニーはラグナーが疑惑の中心人物だと睨み、一連の事件のつながりを示す証拠を得ようとする。イェニーはラグナーの本社ビルでソニアが映っている防犯カメラ映像を見つけ、ひそかにコピーするが、ラグナーはすべてお見通しだった。
ハンニスは保険会社を訪ね、アーニの家で起きた火事について尋ねる。すると担当者は侵入の痕跡があったにも関わらず警察から否定されたことや、取締役会が早く調査を終えるよう指示してきたことを話す。最終的に失火として処理されたが、アーニはサインを拒んだという。
ハンニスは防犯カメラ映像でソニアがラグナーの家に向かったことを知り、ラグナーの家を訪ねる。そこにはアウローラと孫娘トゥリがいた。ハンニスはソニアとポールがラグナーの不正を調べていたことや、内部告発しようとした財務責任者のアーニが家を燃やされたことを突きつけ、「もしおまえがソニアの死に関与していたとしたら、おまえを殺す」と脅迫する。
カーラはベルグルの再逮捕に踏み切るが、彼は姿を消していた。自宅の冷蔵庫には、ソニアへの嫌がらせに使われた鯨肉の残りが入っていた。逃走したベルグルはラグナーに助けを求め、「見捨てるなら自首する」と脅すが、ラグナーは「自首するな」と告げて冷たく追い払う。
カーラはベルグルの元同僚がソニアに脅迫メールを送っていたことを突き止め、彼が乗る漁船ホシアンナ号を港に呼び戻す。逮捕された元同僚は、ベルグルと一緒にソニアを脅迫し、家に侵入して鯨肉を置いたことを認める。だがソニアの殺害には関わっていないと主張する。
路上でベルグルの遺体が発見される。死因は薬物の過剰摂取によるものと思われた。カーラはソニアのネックレスをベルグルの証拠品の中に紛れ込ませ、夫と息子に「犯人が見つかった」と話す。
ハンニスはラグナーの留守中に自宅の書斎に忍び込み、ソニアが捜していたと思われる合併契約書を見つける。だが家にいたラグナーの息子トリグヴィに、逃げるところを見られてしまう。
ラグナーの家から書類を盗み出したハンニスだったが、帰宅するとラグナーと用心棒らが部屋の中で待ち伏せていた。ラグナーは書類を取り上げ、島を出ていかなければ家族が辛い目に遭うことになる、と脅迫する。
殴られて意識を失ったハンニスを、イェニーが助け起こす。ソニアの検視報告書を調べたイェニーは、胃と肺から検出されたバクテリアが淡水性のものだと気づき、ソニアが海で溺れたのではないと結論付けていた。
殺害現場がラグナー宅近くの小川ではないかと考えたハンニスは、小川の水のサンプルをイェニーに検査してもらう。すると、ソニアの肺で見つかった微生物叢と一致する結果に。ハンニスはソニアがラグナー宅に侵入した際、トリグヴィに見つかったのではないかと推測する。
アニタはデンマーク警察から、ソニアの携帯のメッセージが何者かによって一部削除されているという報告を受ける。犯人はベルグルではないと考えていたアニタは、カーラに対する疑惑と信頼のはざまで思い悩む。
ハンニスはガソリンスタンドの店員から、高級車に乗った少年2人を見たという証言を得る。ハンニスがグラシル高校でトリグヴィを締め上げていると、それを見たグンナーが逃げ出す。ハンニスはグンナーを捕まえ、車のトランクに閉じ込めて移動する。
通報を受けて学校に駆けつけたカーラは、ハンニスがグンナーを追っていったと聞き、ハンニスの車を追跡する。そして崖の上に立つ彼を見つけ出す。その場所はソニアが突き落とされた場所だった。グンナーはトランクの中から発見される。
グンナーが逮捕され、追い詰められたトリグヴィは父親のラグナーに事情を打ち明ける。ラグナーはトリグヴィを連れて警察に出頭し、集まったマスコミに「主任警部が捜査を撹乱していた」と話す。捜査から外されたカーラは、アニタを後任にしてほしいと署長に頼む。
アニタはグンナーとトリグヴィをそれぞれ尋問する。2人はラグナー宅にいたとき、書斎に忍び込んだソニアを見つけ、一緒に追いかけたと話す。トリグヴィはソニアを殺したのはグンナーだと主張するが、それは自分を守るための嘘だった。
ソニアに追いつき、小川で彼女の首を絞めて殺したのはトリグヴィだった。そしてグンナーとともに遺体をエストゥロイ島へ運び、崖の上から海に落としたのだ。そのときグンナーが抗議集会のことを思い出し、ソニアの車をガサダールに停めたという。殺すつもりはなく、父親のビジネスを壊そうとした彼女を懲らしめたかっただけだと話す。
ソニアの葬儀の日。カーラはソニアのネックレスと同じものをトゥリに贈る。ハンニスは葬儀に参列しようとしたラグナーを追い返し、「ソニアの遺志は私が継ぐ」と宣言する。だがその直後、トゥリが姿を消してしまう。
感想(ネタバレ有)
全6話完結かと思ってました…まさかのクリフハンガー。
結局、明らかになったのはソニアの死の真相のみ。脅迫とは無関係だったので、ソニアとポールが追っていたネタについては何も明かされないまま終わってしまいました。ハンニスが書斎で見つけた「合併契約書」が何なのかもわからずじまい。
最終話で、ラグナーが誰かと電話していて「頼む、もう少しだけ時間がほしい」と話していたので、ラグナーの背後にいる人物が黒幕なのかも。
ハンニスは「ソニアの遺志は私が継ぐ」とラグナーに向かって宣言したし、ソニアの娘トゥリが行方不明になったところで終わったので、おそらく続きがあるのだとは思いますが、今のところシーズン2の情報は入ってきていません。
あまり馴染みのないフェロー諸島を舞台にしたドラマということで、美しい風景ともどもとても新鮮で楽しめました。ぜひシーズン2を作っていただきたいです。
北欧ドラマの記事