WOWOWの連続ドラマ「60 誤判対策室」最終話(第5話)回のあらすじと感想です。
いやー…すごい最終回でしたね。この結末は予想できませんでした。
冤罪を証明することの難しさ。一度埋もれてしまった真実を知ることが、いかに難しいか。心の深い部分を揺り動かす、いいドラマでした。
Contents
最終話のあらすじ(ネタバレ有)
春名(星野真里)は、矢野高虎(赤堀雅秋)に頭を殴られ気を失う。目を覚ますと、高虎の妻・琴乃(ハマカワフミエ)が包丁で高虎を刺した後だった。
有馬(舘ひろし)は、古内(康すおん)の死刑執行を止めるため、警察に出頭して自分が長谷川由美を殺したと偽りの自白をする。新聞記者・山岡(伊藤洋三郎)が記事を出したことで、古内の死刑執行は停止になる。
高虎に強要されて長谷川由美を刺した、という琴乃の供述が続く中、有馬は琴乃について調べ始める。琴乃は過去にたびたび恋人や友人とトラブルを起こしており、関係を拒絶されるとキレる性格だった。
有馬は古内と面会。高虎の浮気相手を許せなかった琴乃が、長谷川由美と子供2人を殺したのではないかと問うが、古内は「娘はやってない」と言い張る。
有馬の前に風俗嬢・マミ(酒井若菜)が現れる。マミは、かつて有馬が冤罪に陥れ、自殺に追い込んだ中倉徹(竹原ピストル)の妻・綾子だった。
中倉徹は釈放された後も仕事が決まらず、高虎の詐欺グループに加わっていた。しかし詐欺を働くことに悩み、高虎から脅されて辞めることもできず、苦しみ抜いた末に自殺を図ったという。綾子は「一生有馬さんを許しません」と告げて立ち去る。
古内の再審が行われる中、意識不明で入院中だった高虎が亡くなる。裁判は古内と琴乃の無実を証明し、高虎を真犯人とするものだった。証人として証言台に立った琴乃は、傍聴席にいる有馬を見つめていた。
キャスト
有馬英治(舘ひろし)
世良章一(古川雄輝)
春名美鈴(星野真里)
西島慎太郎(村上淳)
マミ(酒井若菜)
中倉徹(竹原ピストル)
世良光蔵(若松武史)
古内博文(康すおん)
矢野高虎(赤堀雅秋)
梶永(小林勝也)
矢野琴乃(ハマカワフミエ)
古畑勝茂(利重剛)
坂口克之(井上肇)
松下詩織(水崎綾女)
最終話の感想(ネタバレ有)
開始早々に有馬が自首して古内の死刑執行を停止させ、琴乃が高虎を刺して自供を始め、「あれ、意外とあっさり…」と思ったら、とんでもなかった。
そこから徐々に暴かれる事件の真相は、かなり恐ろしいものでした。
有馬は、長谷川由美を殺したのは古内でも高虎でもなく、琴乃だと推測しました。
子供の頃から、片目を失明し目の色が違うことでいじめられていた琴乃。でも、彼女は泣き寝入りするタイプじゃなかった。
しかも、彼女が怒りを向けたのはいじめた相手ではなく、いじめに同調した友達のほうだった。大人になってからも、自分との関係を拒絶する恋人や友人を決して許さず、しつこく攻撃したという琴乃。
長谷川由美を殺したのは、高虎の浮気相手だったから。
あんな酷い男と一緒にいるなんてどういう心境なんだろう、とずっと不思議に思ってたけど、同類だったんですね。見た目のおとなしさにすっかり騙されてしまった。
有馬はいつから気づいていたんだろう?
でも、唯一の目撃者である高虎が死んでしまったので、結局真相は闇の中。
最初は実の父親に罪を被せ、冤罪が証明されそうだとわかると口封じのために高虎を殺し、今度は高虎に罪を被せて平然と証言台に立つ琴乃…恐ろしい。
ラストシーンの有馬を振り返る顔は、何を意味していたんだろう? 琴乃は有馬と面識あったっけ?
いずれにしても、琴乃がやったと考えるのはあくまで有馬の推測だから、なんとも言えない。もしかしたら、「私はやってません」と訴えている顔なのかもしれない。
でも、もし本当に琴乃が真犯人だとしたら、誤判対策室が新たな冤罪を生み出すことになる。高虎も相当悪いヤツだけど、それでも殺してなかったら冤罪ですよね。
そういう危うさを含んだ、秀逸なラストシーンでした。
もうひとつ衝撃だったのが、風俗嬢・マミの告白です。
彼女が中倉徹の妻だということは気づいてたけど、あの情報が嘘だったとは! そして中倉徹が、高虎の詐欺グループの一員だったとは!!
有馬の正体を知ったマミが、有馬と高虎に復讐するためにわざと〈冤罪情報〉を流した…というまさかの新事実。
時系列にならべてみると、
- 有馬が中倉徹に自供を強要し、冤罪に陥れる
- 中倉徹の罪が確定した後、冤罪が証明され、釈放される
- 中倉徹が就職できず、高虎に声をかけられ詐欺グループに入る
- 詐欺グループから抜けようとするが高虎に脅され、中倉徹が自殺
- 有馬が中倉徹の妻・綾子(マミ)の風俗店に通い始める
- 綾子が有馬の正体に気づく
- 綾子が「店の裏で男が『3人殺した』と話していた」と有馬に嘘をつく
- 有馬が「府中母子3人強盗殺人放火事件」について調べ始める
- 有馬が事件の犯人・古内の冤罪を確信する
という流れになるのですが、やはり7→9のところが腑に落ちません。
「3人殺した」って話を聞いただけで、有馬はどうしてピンポイントで「府中母子3人強盗殺人放火事件」だとわかったんだろう? しかも、すぐに古内は冤罪だと確信していたんですよね。
有馬は、中倉徹が矢野高虎と繋がっていたことを知ってたの? 綾子の話を聞いたときの有馬の表情を見る限り、知ってた感じではなかったけどなぁ。
中倉徹が矢野高虎と繋がっていたことは驚きの新事実だったけど、「ああ~、なるほど!」というストンと落ちる感じはないんですよね。
そういうのを狙ってるドラマじゃないんだろうけど、点が点のままで繋がらないモヤモヤ感が残りました。
有馬がこの事件にだけ異常にこだわった理由も、最後まで明かされず、うやむやのままでした。たぶん、贖罪のつもりだったのだと思うけど…。
ひとつは、無実の中倉徹を犯罪者に仕立て上げ、自殺に追い込んだこと。
もうひとつは、家庭を顧みず、娘の詩織との関係をうまく築けなかったこと。
でも、それは簡単に許されることじゃなかった。
それに、有馬と古内は決定的に違いましたよね。
古内は、琴乃がどんな人間であれ、父親として心から愛していたのだと思います。でも、有馬は、もしかしたら娘に愛情というものを抱いていないんじゃないでしょうか。
有馬は娘のことを「未だに何を考えているかわからない」と言っていたけど、わからないんじゃなくて「知らない」のでは?
だから、客観的に見れば限りなく黒に近い琴乃を、古内が「娘はやってない」と断言できることが、有馬には信じられなかったのだと思います。
いくつかスッキリしない部分はあったものの、最後まで結末が読めず、スリリングで面白かったです。
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