海外ドラマ「アンという名の少女」シーズン3最終話(第10話)のあらすじと感想、原作との違いをまとめました。
ついに最終話となりました。すれ違うアンとギルバート、グリーン・ゲイブルズとの別れ、そしてアンのもとに届いた手紙…。
まだまだ彼らを見ていたくなる、感動的で心温まる終幕でした。
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最終話(第10話)のあらすじ
ギルバートはウィニフレッドに結婚する意志がないことを伝える。傷ついたウィニフレッドは噂が広まる前に海外へ行くことを決め、それまで破談になったことを誰にも話さないでほしいと頼む。
クィーン学院の合格発表があり、アンとギルバートは同じ得点で1位に。ギルバートはステイシー先生にソルボンヌ大へ行けなくなったことを打ち明け、トロント大へ行けるよう口添えしてほしいと頼む。
ダイアナも合格するが、内緒で受験したことを知った両親は激怒し、親不孝者と罵る。「お前にはこの家にふさわしい相手と結婚する義務がある」と言われ、絶望するダイアナ。
ギルバートはアンに手紙を書き残すが、婚約の報告だと思い込んだアンは破り捨ててしまう。後悔して紙片を拾い集めるも、「婚約する」「愛していない」と書かれていると誤解するアン。
マシューはアンがいなくなる淋しさを悟られまいと、わざと素っ気ない態度を取ってアンを傷つけてしまう。マリラはバリー夫人と話し、子供のやりたいことを邪魔すれば一生失うことになるかもしれない、と説得する。
アンは進学のためグリーン・ゲイブルズを去り、シャーロットタウンの下宿先に移る。スコットランドの教会からアン宛の手紙が届き、マシューとマリラはアンに届けるためシャーロットタウンを訪れる。
ジョセフィンの屋敷で手紙を読むアン。だが両親に関する情報は何も得られなかった。マシューは「お前がいないと淋しい」と本心を打ち明け、アンに愛していることを伝える。
マシューとマリラはかつてアンを引き取ったトーマス夫人を訪ねる。彼女の家の本棚で、古い花言葉辞典を見つける2人。それはアンの父ウォルターが妻バーサへ贈ったものだった。
町を散策していたアンは偶然ウィニフレッドと会い、彼女からギルバートとの結婚が破談になったことを聞かされる。急いで下宿先に戻ったアンは、荷物をまとめてギルバートに会いに行こうとする。
トロント大への進学が決まったギルバートは、移動中の汽車の中でバリー氏とダイアナに会う。ダイアナはギルバートを責め、ギルバートは初めてアンの手紙について知らされる。
ギルバートはアンの下宿先へ向かい、今まさに出発しようとしていたアンと鉢合わせる。キスをして互いの想いを確かめ合う2人。ギルバートはトロント大へ行くことを告げ、2人は文通を約束して別れる。
両親から進学の許しを得たダイアナは下宿先でアンと会う。マシューとマリラも戻ってきて、アンに花言葉辞典を渡す。本の裏表紙には、バーサの似顔絵が描いてあった。母親も赤毛だったと知り、喜ぶアン。
その夜、アンはさっそくギルバートに手紙を書く。
最終話の感想と解説(ネタバレ有)
ギルバートの決断
ウィニフレッドにプロポーズすると思われたギルバートでしたが、なんと「結婚できない」と伝えました。これはさすがにウィニフレッドが気の毒ですね。
ギルバートに愛されていると信じこみ、結婚の準備を進めていたウィニフレッドと両親。彼女は破談の噂が広まる前に海外へ行くといい、それまで破談になったことを誰にも言わないで、とギルバートに約束させます。
そのためアンに本当のことが言えず、アンは手紙にも婚約にも触れようとしないギルバートに失望し、2人の気持ちはますますすれ違っていくことに。
ギルバートはグリーン・ゲイブルズを訪ねますが、みんな農作業で出払っていて、アンに手紙を書き残します。また手紙! すれ違いを生むNo.1アイテム!
何も知らないアンは、ギルバートが手紙で婚約を知らせようとしていると思い込み、腹を立てて手紙を読まずに破いてしまいました。
すぐに後悔して破り捨てた紙片を拾い集めますが、「愛してない」と書かれていると誤解してしまう。あーあ。やっぱりこうなるよねー。
合格発表とダイアナの絶望
クィーン大学の合格発表があり、アンはギルバートと同じ得点で1位合格します。ルビーやジョーシーたちも全員合格。ダイアナも合格していました。ルームメイトになれると喜ぶ2人でしたが…。
ダイアナが内緒でクィーン学院を受験したと知った両親は怒り狂い、「親不孝者」と罵ります。予想を上回る激昂ぶりにドン引きしてしまったわ…。
「お前が人生で果たすべき義務はひとつしかない。それを果たすんだ。花嫁学校へ行きなさい。結婚したあとで夫にねだるがいい。おまえが望んでいることとやらをな!」
ひっどい言い草。しかもバリー氏は、夫人が跡継ぎ(男の子)を産まなかったせいでこうなったような発言をし、「よくこんな娘に育てたな」と夫人を責める始末。はぁ~~。
娘に裏切られたと嘆き悲しむバリー夫人に、マリラは自分の経験を話します。
「私が反対すればするほど、アンは私から遠ざかる。私があの子のやりたいと思っていることを邪魔したら、あの子を一生失うことになるって」
問題は彼女よりも、バリー氏のほうだと思うけどなぁ。ジョセフィンさんも無責任にダイアナを焚きつけるだけじゃなく、バリー氏を説得しておいてほしかったよ。
さよならグリーン・ゲイブルズ
マシューはアンがいなくなることが辛くてたまりません。でもアンを心配させまいとわざと素っ気ない態度を取って、アンを傷つけてしまいます。
愛するギルバートは別の女性と婚約し、親友のダイアナは進学を許されず、マシューからは冷たくされて、心が塞いでしまうアン。ステイシー先生に「私は幸せを掴めない気がする」と漏らすと…。
「いつも幸せでいたいと思うのは無理があると思うわ。正直言って不可能だし、現実的じゃない。悲しい思いをしなければ、喜びも感じられない。いちばん深く沈むことのできる人が、いちばん高く羽ばたくことができる」
ステイシー先生の言葉はいつも心に刺さるなぁ。
アンがグリーン・ゲイブルズを発つ日も、マシューは「淋しい」と言えないまま。大好きな切妻の部屋に別れを告げて、アンはシャーロットタウンへ旅立ちました。
アヴォンリーの女の子たちは、みんな同じ下宿先へ。髪をアップにして、すっかり大人の女性の装いになっていました。
バッシュの新しい家族
バッシュのお母さんは考えを改めたみたいで、バッシュにもデルフィーヌにも優しい言葉をかけてくれるようになりました。初めて褒められ、思わず涙ぐむバッシュ。
丸く収まってよかった…と安心したのも束の間、今度はメアリーの息子イライジャが戻ってきました。第2話でギルバートの父親の形見を盗んで姿を消し、ボグ地区でバッシュと殴り合いになって以来の再会です。
酒をやめて、真面目に働いているというイライジャ。バッシュはメアリーを裏切った彼を許せず、一旦は追い返そうとしますが、デルフィーヌのそばにいたいというイライジャの思いを汲んで、家族として受け入れることに。
ギルバートは、ステイシー先生の尽力でトロント大へ行けることになりました。
愛を確かめ合う2人
アンはシャーロットタウンの町で偶然ウィニフレッドと出会い、ギルバートが結婚を破談にしたことを知ります。
ギルバートに会いに行こうとしたとき、下宿の前にギルバートが現れます。汽車の中でダイアナに会い(ダイアナがギルバートに怒りをぶちまける場面はちょっとスカッとした)、アンが告白の手紙を書いていたことを知って、シャーロットタウンの駅から走ってきたのです。
ようやく気持ちを確かめ合うことができた2人。でもギルバートはトロント大へ向かう途中だったので、落ち着いて話をする時間はなく。文通する約束だけして、去っていきました。
すっごく慌ただしい展開だったけど、2人の幸せオーラが明るい陽射しと相まって優しい気持ちにさせてくれた…素敵なシーンでした。
ダイアナもクィーン大学に通う許可を得て、アンたちに合流。よく許してくれましたね~。バリー氏の気が変わるとは、到底思えなかったけど。どうやって説得したんだろう。
アンの両親が残した花言葉辞典
第4話でアンとマリラがスコットランドの教会に出した手紙の返事が届き、マリラはアンに届けるため、マシューと一緒にシャーロットタウンのジョセフィンさんの屋敷を訪れます。
城のように大きな屋敷に圧倒され、「家を間違えたのでは」と心配する2人。アンはマシューとマリラ、ジョセフィンさん、コールに見守られながら手紙を読みますが、両親に関することは何もわかりませんでした。
アンと別れて帰路に就くマリラとマシューでしたが、ノヴァスコシアのトーマス夫人を訪ねることを思いつきます。トーマス家は、かつてアンが暮らしていた家です。
高齢のトーマス夫人は記憶がおぼろげでしたが、アンのことを覚えていました。そして、かつてアンが“ケティ”と名付けた架空の友達を生み出した本棚(シーズン1第4話参照)を見せます。
本棚の中には、ほこりをかぶった古い花言葉辞典が入っていました。その最初のページには、こんな言葉が書いてありました。
バーサへ。君が生徒たちと一緒に自然と親しめるようにこの本を贈ります。愛を込めて。ウォルターより
すぐさまアンのもとへ戻り、本を手渡すマリラとマシュー。本のページのいたるところに母バーサの書き込みがあり、中には「1883年7月13日 アン初めてのピクニック」と書かれたものも。
そして裏表紙には、父ウォルターが描いたと思われるバーサの似顔絵がありました。赤毛は母ゆずりだとわかって、涙を流すアン。
「私の人生の空白部分が埋まった。叶えてくれてありがとう。誕生日の願いごと、最高の贈り物よ」
「私にとっては、あなたがうちにきたことが最高の贈り物」とアンを抱き寄せるマリラ。あたたかい気持ちでいっぱいになる、感動的なラストでした。
原作との違い
ここからは松本侑子さん訳の文春文庫版『赤毛のアン』および『アンの青春』『アンの愛情』をもとに、ドラマと原作との違いを見ていきます。重要なネタバレを含みますのでご注意ください。
クィーン学院の合格発表
ステイシー先生の家で合格発表を確認するアンたち。原作では、ステイシー先生はすでに任期を終えて去っているため、それぞれ個別に新聞で確認しています。
アンに合格の知らせをもたらしたのは、ダイアナでした。父親がブライト・リヴァーの駅から一足早く新聞を持ち帰ったのです。ちなみに原作のダイアナは受験していません。
ドラマと同様、アンとギルバートは同点で一番になり、アヴォンリーの受験生は全員合格します(ジョーシーはギリギリでした)。
アンは受験前から一番で合格することにこだわっていました。ギルバートへの対抗心もありますが、「アンは一番賢い」と信じて疑わないマシューを喜ばせるためでした。アンは真っ先にマシューのところへ行き、一番で合格したことを伝えます。
アンの旅立ち
アンの合格を喜び、いそいそと進学の準備をするマリラ。原作では、アンの「きれいな服」をたくさん用意したのはマシューでした。マリラが準備したのはイヴニング・ドレスだけです。
アンとの別れを淋しがったのは、原作ではマリラのほうでした。アンがシャーロットタウンに発った日は「どうしようもなくつらい心の痛み」を紛らわせようと、マリラは一日中必要もない仕事をして働きます。
そして夜のなると涙をこらえきれなくなり、ベッドの中でアンを想って激しくむせび泣きました。
アンの下宿先
ドラマでは、アヴォンリーの女の子たちは全員同じ下宿先になっていましたが、原作ではアンは1人だけ別の下宿です。
ジョセフィンさんは自分の屋敷にアンを住まわせたかったのですが、クィーン学院から遠かったので叶わず、彼女はアンのために上流婦人が経営する下宿屋を探してくれました。
アンが下宿先でひとりになってホームシックで泣いていると、ジョーシーやルビーやジェーンがやってきて、みんなで励まし合います。
ちなみにクィーン学院では、アンとギルバートが2年生クラス(2年分の学課を1年で修めて一級教員免許をとるコース)を選択し、ジョーシー、ルビー、ジェーン、チャーリー、ムーディーは二級免許をとるクラスを選択しました。
アンの両親が残したもの
マリラとマシューがトーマス夫人を訪ね、アンの両親が残した「花言葉辞典」を見つける場面がありましたが、原作にはありません。
ドラマでのトーマス夫人の位置づけはわかりませんが、原作ではアンの両親の家に通っていた掃除のおばさんです。
生後3か月で両親を亡くしたアンを引き取り、自分の子供たちと一緒に育てたのも彼女。なので、アンは両親が教師だったことや、“小さな黄色い家”に住んでいたことなどを、彼女から聞いて知っていました。
アンがレッドモンド大学に通う18歳~22歳の出来事を描いた『アンの愛情』には、アンが生家の“黄色い家”を訪ねる場面があります。
そこには、かつてアンの両親に家を貸していたという女性が住んでいて、アンに当時の思い出話を語ってくれました。
ドラマではアンの赤毛は母親ゆずりでしたが、原作では父親のほうが赤毛です。家具は売り払い、服や小物はトーマス夫人が持ち去り、残っていたのはクローゼットの中にあった手紙の束だけだった、と彼女はアンに手紙を渡します。
それは父と母が交わした12通の手紙で、アンが初めて手にした両親の「形見」でした。その後、アンは両親が眠る墓地を訪ね、花を供えています。
アンとギルバート
ドラマでは、アンはクィーン学院へ、ギルバートはトロント大へ行くことになり、2人は両想いになったのも束の間、すぐに離ればなれになってしまいます。
原作では、アンとギルバートはクィーン学院に進学し、1年で教員免許を取得したあと、アンはアヴォンリー校の、ギルバートはホワイト・サンズ校の先生になります。
そして2年間働いて貯めたお金と奨学金で4年制のレッドモンド大学に通います(アンはアヴォンリーから初めて大学へ進む女子として話題になりました)。
ギルバートはずっとアンを愛し続けますが、アンは友人としか思えず、ギルバートの想いを退けます。そしてアンがギルバートの求婚を断ったのを機に、2人の友情は壊れてしまいます。
アンがギルバートを愛していると気づいたのは、大学卒業後、アヴォンリーに戻ってしばらく経ったとき。ギルバートが重い病で危篤状態だと知らされたときでした。
奇跡的に回復したギルバートは、もう一度アンにプロポーズ。2人はついに愛を実らせます。
「アンという名の少女」の全体感想
キリスト教文学である『赤毛のアン』を大胆に改変し、かなり刺激的な内容になっていた今回のドラマ。ストーリーも日常生活を描いた原作とは異なり、町全体を巻き込むような騒動を中心に、ドラマチックに仕上がっていました。
プリンス・エドワード島の自然を背景にした美しい映像には心が洗われましたし、次は何が起こるのかというワクワク感と予想外な展開、生き生きと動き回る登場人物たちに、終始夢中にさせられました。
打ち切り(※)ということなので、物語的に中途半端なところで終わってしまったのは残念に思います。カクウェットのその後や、ステイシー先生とバッシュのその後は知りたかった。
※ シーズン3のカナダでの放送終了翌日、シリーズ打ち切りが発表されました。その前月にCBC社長のキャサリン・テイトが「長い目でカナダの産業の害になるNetflixとの共同製作はやめる」と発言していました。
総括すると、とても面白かったです。もうアンたちに会えないと思うとやっぱり淋しい。
ただ、『赤毛のアン』の映像化、という視点で見ると、やはりわたしにとっての一番ではなかったなぁ、という感想になります。わたしには騒々しすぎました(みんなガミガミ怒りすぎ…)。
というわけで、ドラマを見ている最中ずーーーっと見たくて見たくてたまらなかった、大好きな1985年の映画版「赤毛のアン」をこれから見ます。
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