海外ドラマ「アンという名の少女」シーズン3第4話のあらすじと感想、原作との違いをまとめました。
マリラの反対を押し切って、両親について調べるためハリファックスへ向かうアン。ダイアナは小さな冒険をし、ジェリーの家で楽しい時間を過ごします。
寄宿学校で辛い目にあっているカクウェットを、早く救い出してほしい。
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Contents
第4話のあらすじ
メアリーが亡くなり、バッシュを心配するギルバートはワード医師のもとへ通うのをやめる。バッシュはボグ地区でイライジャを見つけるが、母親の死の知らせを聞いても態度を改めないイライジャに憤り、殴り合いになる。
カクウェットは寄宿学校に入ることになり、アンは小さくなったパフスリーブの服をカクウェットに譲り旅立ちを見送る。だがリンド夫人からその話を聞いたマリラは激怒し、引き続きアンの遠出を禁じる。
マリラに愛されていない、と悲しむアンの姿を見て心を痛めたマシューは、マリラに「お前が間違っている」と抗議し、独断でアンのノヴァスコシア行きを許可する。ハリファックスの教会へ足を運んだアンは、両親がスコットランド出身で、病死したことを知る。
アンはインディアン寄宿学校を訪ねるがカクウェットに会わせてもらえず、伝言を預けて帰る。カクウェットは“ハンナ”と呼ばれ、英語以外の言語を禁じられ、反抗するとムチで打たれる辛い生活を送っていた。
デルフィーヌの世話で疲労困憊するマリラは、町の人々から向けられる軽蔑のまなざしに耐えるが、ステイシー先生の前で思わず涙をこぼす。アンを失いたくないと打ち明けるマリラに、ステイシー先生は愛情が無限であると同時に脆いものでもあると語る。
反省したマリラは態度を改め、帰宅したアンにスコットランドの教会に手紙を書いて両親について問い合わせることを提案する。アンは嘘をついたことを謝り、マリラも厳しくしすぎたことを謝って2人は和解する。
退屈な毎日にうんざりするダイアナは、手伝いのメアリ・ジョーと一緒に買い物へ行き、ジェリーの家を訪れてつかのまの自由を楽しむ。
メアリーの葬儀が行われ、牧師からメアリーの子供の頃の話を聞いたバッシュは号泣する。バッシュはデルフィーヌを抱いて、メアリーが楽しみにしていた黄色い凧を揚げる。
第4話の感想と解説(ネタバレ有)
アンとマリラのすれ違い
アンがミクマク族の少女カクウェットに会いに行ったことを知ったマリラは怒り心頭。「あなたは未熟で正しい判断ができない」と、引き続きアンの遠出を禁じます。
リンド夫人がよけいなこと言うから、もう~。マリラと言い争いをして家を飛び出すアンを見て、リンド夫人は「相変わらず癇癪持ちね」と呆れたように言ってたけど、わたしの目にはマリラのほうが癇癪持ちに見えるわ…。
マリラに愛されていないと思い込んだアンは泣きじゃくり、「クィーン学院へ行ったら、もう二度とここには戻らない」と言い出します。それを聞いたマシューは大慌て。
「遠出を禁止したのは、おまえがあの子を失うのを恐れているからだろう。このままじゃ今すぐ失うぞ、おまえの身勝手な振る舞いのせいでな!」
と、珍しくマリラを叱責し、アンがノヴァスコシアへ行くことを勝手に許可しました。温厚で内気なマシューが怒りを露わにするのも、このドラマならではですねぇ。
マリラの苦悩
アンは両親の記録を調べるためハリファックスの教会へ。バッシュとギルバートもシャーロットタウンへ出かけてしまい、マリラはひとりでデルフィーヌの世話を任されます。
疲労困憊し、赤ん坊を抱いて買い物へ行くと町の人々から冷たい言葉を投げかけられるマリラ。毅然とした態度で立ち向かうものの、ステイシー先生に会うと気がゆるんで泣き出してしまう。
アンが離れていってしまうのではないか、と不安を口にするマリラに対し、ステイシー先生は「人が持つ愛情の量には限りがない」と助言します。
「アンがこれから誰を愛しても、そのせいであなたとの絆が弱まることはありません。ただ愛情には脆さもある。大事に守り育てていかなければ、消えてしまいます」
ようやく自分が間違っていたと気付いたマリラは、アンへの態度を改め、ルーツ探しに協力するようになります。
両親の記録を見つけるアン
ジョセフィンさんの家で“大人の女性”に変装し、ひとりでハリファックスの教会を訪れるアン。毎回アンの冒険に協力してくれるジョセフィンさんが好き。
ちなみにハリファックスは、ノヴァスコシア州の州都でカナダ東部最大の港町。1749年にイギリス軍がフランスの砦に対抗して作った軍港です。
アンは教会の記録で、両親が「スコットランド出身」であることと、既に死んでいることを知ります。捨てられたのではなかったとわかり、ほっとするアン。
グリーン・ゲイブルズに帰ってくると、マリラが優しく迎えてくれました。アンの部屋には、第1話でマリラが作っていた小さな枕が置いてあります。そこには「Anne of Green Gables(グリーン・ゲイブルズのアン)」の刺繍が。
カクウェットの学校生活
親元を離れ、ハリファックスに新設された寄宿学校へ入ることを決めたカクウェット。
父親は反対しますが、母親は「白人の知識を取り入れて、移り変わる世界で強く生きるため」と前向きな発言をしていました。カクウェット本人も、純粋に勉強したいという気持ちから決断したのだと思います。
おそらくリンド夫人も、学校の実態をよく知らずに「よかれと思って」勧めたのでしょうけど…。やりきれない気持ちになりますね。
「インディアン寄宿学校」は、カナダやアメリカでインディアンの子供たちを“同化”するために作られた施設です。最近でも裁判が行われたりしているので、少し調べればどれほど酷いことが行われていたかすぐに分かると思います。あまりにも残酷な同化教育に、胸が痛むと同時に怒りさえ覚えます。
名前も言葉も宗教も奪われ、髪を切られ(インディアンにとって、髪を切るのは身内が亡くなった時)、居留地では役に立たない白人の文化を強制的に仕込まれ(彼らは居留地から出ることを許されない)、アイデンティティを根こそぎ奪う教育は、まさに「インディアンを殺す」ものでした。
カナダで最後の「インディアン寄宿学校」が閉鎖されたのが1996年、という事実にも驚きを隠せません。
ダイアナの冒険
「お嬢様」として生きることを両親に強いられ、不満を募らせるダイアナは、お手伝いのメアリ・ジョーと一緒に買い物へ出かけます。
たまたま精肉店が休みだったので、彼女と一緒に猟師の家へ行くことに。すると、そこにはジェリーの一家が住んでいました。
シーズン1で、ジェリーは「大家族で町に住んでいる」と話していたので、てっきり大通りに住んでいるのだと思っていました。まさかこんな山の中だったとは。
足を怪我したと嘘をついて、メアリ・ジョーを家に帰してジェリーの家に留まるダイアナ。貧しくも心豊かに暮らすジェリーたち家族と、つかのまの自由を楽しみます。
ちなみに「アカディア人」とは、フランス系カナダ人のことです。当時、プリンス・エドワード島のアカディア人は、イギリス系の人々に差別されていました。
原作との違い
ここからは松本侑子さん訳の文春文庫版『赤毛のアン』をもとに、ドラマと原作との違いを見ていきます。シーズン3も原作から離れたストーリーになっているので、原作と共通する部分だけ取り上げます。
ハリファックス
両親について調べるため、ハリファックスの教会を訪ねるアン。これは原作には出てこないエピソード。原作のアン(11歳~16歳)は、ノヴァスコシアへもハリファックスへも行きません。
原作のアンが初めてハリファックスを訪れるのは、『アンの愛情』でレッドモンド大学に入学した18歳の時。“レッドモンド大学”は架空の大学ですが、ハリファックスにある名門ダルハウジー大学がモデルとされています。
大学がある港町もハリファックスではなく「キングスポート」という架空の名前になっていて、アンはこの町で4年間の大学生活を送ることになります。
両親はスコットランド人
アンは教会の記録で両親が「スコットランド出身」であることを知りました。原作には明記されていませんが、アンがスコットランド系であることを匂わせる描写がたくさんあります。
またマリラとマシューもスコットランド系です。原作には、2人の母親がスコットランドから持ってきた薔薇「スコッチ・ローズ」が、マシューのいちばん好きな花として登場します。
原作者のL.M.モンゴメリもスコットランド系で、祖先はスコットランドからプリンス・エドワード島に入植し、キャベンディッシュ(アヴォンリーのモデルとなった村)を開拓した移民でした。
『赤毛のアン』を翻訳した松本侑子さんは、「『赤毛のアン』シリーズこそ、ケルトとキリスト教の融合」だと語っています。
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