映画「探偵物語」あらすじネタバレと感想。薬師丸ひろ子と松田優作のユルい探偵ゴッコ

薬師丸ひろ子主演映画「探偵物語」

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どうも、夏蜜柑です。

あの「探偵物語」が34年ぶりに映像化されるというので、1983年に公開された角川映画「探偵物語」を34年ぶりに見ました。

最初にお伝えしておきます。

この映画は、わたしの思春期のメモリーと深く結びついているため、思いっきり私情を絡めたセンチメンタル全開の感想になっております。そして長文です(いつもだけど)

それでもいいよ~という方だけ読んでください。

作品情報

  • 製作国:日本
  • 上映時間:111分
  • 公開日:1983年7月16日
  • 監督:根岸吉太郎
  • 脚本:鎌田敏夫
  • 音楽:加藤和彦
  • 主題歌:薬師丸ひろ子「探偵物語」
  • 原作:赤川次郎「探偵物語」

あらすじネタバレ

女子大生でお嬢様の新井直美(薬師丸ひろ子)は、1週間後に大学を休学して父のいるアメリカで暮らすことが決まっている。

直美は憧れの先輩・永井裕(北詰友樹)と海でデートをした後ホテルに入るが、冴えない中年男・辻山秀一(松田優作)に邪魔をされる。辻山は直美の尾行とボディガードを依頼された探偵だった。

その後も尾行を続ける辻山を振り回し、面白がる直美。そんな中、永井には同棲している彼女・進藤正子(坂上味和)がいることがわかる。

正子は、辻山の別れた妻・直木幸子(秋川リサ)が愛人関係を結ぶ暴力団員・国崎和也(鹿内孝)が経営するナイトクラブで働いていた。

国崎がホテルのバスルームで殺害され、一緒にいた幸子に殺人の疑いがかかる。幸子は国崎組と警察から追われ、辻山に助けを求める。

直美は2人を自宅にかくまい、自分たちで真犯人を見つけようと言う。

国崎の妻・三千代(中村晃子)が国崎組のまとめ役・岡野(財津一郎)と愛人関係にあることを突き止めた直美と辻山だったが、辻山と幸子が再び体の関係を持ったことに傷ついた直美は、夜の街に出て行きずりの中年男性とラブホテルに入る。

そこは国崎が殺されたホテルだった。直美はバスルームの換気口が隣の部屋に繋がっていることに気づく。

直美が家に帰ると、幸子と辻山は姿を消していた。直美は三千代の浮気現場を録音したテープを持って国崎組に乗りこみ、国崎和也の父で国崎組組長の剛造(藤田進)に事の次第を説明する。

剛造は辻山と幸子を釈放するが、2人は警察に連行されてしまう。直美は換気口で拾ったペンダントから、国崎を殺した犯人が正子だと気づく。

正子は国崎のもとで売春をしていた。永井の子供を妊娠していることがわかり辞めようとしたが、国崎に脅されて辞められない状況だった。

正子が自首したことにより、辻山と幸子は釈放される。直美は辻山の部屋を訪ね「好きになった」と告白するが、辻山は何も答えない。

翌日、直美はアメリカへ旅立つため空港へ向かう。空港には辻山がいた。2人はキスを交わし、何も言わずに別れる。

 

キャスト

  • 新井直美……薬師丸ひろ子
  • 辻山秀一……松田優作
  • 長谷沼君江……岸田今日子
  • 永井裕……北詰友樹
  • 進藤正子……坂上味和
  • 直木幸子……秋川リサ
  • 国崎三千代……中村晃子
  • 岡野……財津一郎
  • 国崎剛造……藤田進
  • 赤川晶……荒井注
  • 高峰刑事……蟹江敬三

感想

中学生のころ、角川映画が大ヒットしていました。

わたしは筒井康隆さんのSF小説「時をかける少女」に夢中になり、映画化を今か今かと心待ちにし、原田知世さんが歌う「時をかける少女」のレコードを毎日聞いていました。

映画が公開されると、ソッコーで見に行きました。
同時上映されていたのが、この「探偵物語」です。

松田優作と昭和のエロ

当時角川書店がプッシュしていた赤川次郎さんの推理小説は、読みやすくわかりやすく、中学生だったわたしも抵抗なく読める小説でした。「探偵物語」も読みました。

映画「セーラー服と機関銃」(原作は同じく赤川次郎さん)で大ブレイクした薬師丸ひろ子さんの久々の映画ということもあって、期待したのですが……。

当時のわたしの正直な感想は、「つまらない」でしたね。

なんの感動もなかったし、今では伝説的存在となっている名優・松田優作さんのことも「誰これ。パッとしないオジサンだなー」とか思ってた(ヽ(゚Д゚;)ノヒィィィィ!!)

原作だと、辻山は43歳でまったくイケてないドジ探偵という設定なので、原作に比べれば映画の辻山はそこそこクールでかっこいいんだけどね。

当時のわたしは松田優作さんのことをまったく知らなかったし、33歳のオジサンに1ミリも興味が湧かなかったのですよ(見る目のない中2女子)

そんなわけで、内容はほぼ忘れてしまっていて、犯人が誰かも覚えていなかったのですが。

今回34年ぶりに見て、驚きました。えらいお色気シーンの多い映画だったんだねぇ。時代的にはおかしくないんだけど、薬師丸ひろ子さんがピュアなイメージを持っていたので、ちょっと意外でした。

ナイトクラブのバニーガールとか、ラブホの回転ベッドとか、喪服で愛人とナニするとか、昭和のエロが出るわ出るわ!

ウブな中2女子、さぞや面食らったことであろう(笑)

今になって気づいたけど、私のラブホの基本的イメージ、この映画で植え付けられてました。ラブホの部屋がこうなってるって、この映画で初めて知ったんじゃなかろうか……。

ミステリではなく恋愛映画

一応ミステリの形式をとってはいますが、恋愛映画です。
なので、ミステリ部分は目をつぶりましょう(ツッコミどころ満載でキリがないので)

ただ、直美が犯人に辿り着くくだりだけは、予想外で面白かったです。

冒頭で、直美が想いを寄せる先輩・永井と海でデートする場面が出てくるのですが、その時、直美は彼にペンダントを2つ買ってもらうんです。

これがかなり悪趣味なペンダントで。ナメクジと貝殻、その2つのペンダントを合わせると、カタツムリになるっていう(しかも直美は、ナメクジのほうを選んでいた)

その後、永井には同棲中の彼女・正子がいることがわかり。正子が、その時に買ったペンダントの片方をつけて直美の前に現れるというシーンがあったんですね。

でもカメラは彼女の首元をアップで映さないから、画面では全くわからないんです。ラスト近くで直美が拾ったペンダントを彼女に届け、犯行を問い詰めるまで、このシーンが伏線だとは気づきませんでした。完全にしてやられました。

辻山と探偵ゴッコを繰り広げるうちに、だんだん辻山に惹かれていく直美。

だけど、直美が辻山にキュンとするような、あからさまな描写は一切なし。アメリカに発つ前の夜、アパートに押しかけて辻山に迫る直美のヒリヒリするような緊張感がリアルでした。

あんまり詳しくないのでわかりませんが、カメラワークが少し変わってるなぁという印象も。

先のペンダントもそうですが、徹底的に引きで撮影されてるんですよね。当時人気絶頂だった薬師丸ひろ子さんのアップも、極めて少なかった。

原作は映画のために書き下ろされた?

原作を書いた赤川次郎さんが、最近こんなことを語っていました。

映画「セーラー服と機関銃」(1981年公開)の後、大学受験で1年間芸能活動を休んでいた薬師丸くんの復帰作として、もともとあった短編小説を長編に伸ばす形で書いた本が「探偵物語」だったんです。執筆にあたっては、事件は事件としてミステリー仕立てにしつつ、基本的には“若い女の子に振り回される、ちょっと情けない疲れた中年男”というパターンで恋愛物語にしよう、と考えました。( ORICON NEWSより)

ええっ!?
そうだったの?

映画のために書き下ろされた作品だったなんて、今の今まで知りませんでした。
脚本家が当て書きをする話はよく聞くけど、小説家が映画向けに書き下ろすパターンは珍しいのでは。

ちなみに赤川さんが映画化を前提に書いた本は、「探偵物語」「愛情物語」「早春物語」の3作品だけらしいです。

でも、赤川さんには申し訳ないけど、わたしは映画化前提に書き下ろされたこれらの作品は、小説としては好きではなかったなぁ。ほかの作品に比べてミステリ要素が中途半端で、全然面白くなかったんですよね。

当時は、映画化前提に書き下ろされていたことは知らなかったけど、今となってみれば「なるほどなぁ」と思います。子供心に、オトナの事情が透けて見えたのかもしれません。

ちなみにわたしのベストオブ赤川作品は、「赤いこうもり傘」です。

ラストシーンが残す強烈なインパクト

最大の見どころは、ラストシーンでしょう。
内容ほぼ忘れていたけれど、ここだけはしっかり覚えていました。それだけ強烈でした。

アメリカへ旅立つ直美が、空港で辻山とキスを交わすシーン。
台詞は一個もありません。

身長183cmの松田さんが、154㎝の薬師丸さんにディープ・キスをするという。2人の身長差30㎝が話題になりましたが、このキスシーンを見ると納得です。中2のワタシ、ドン引きしたからね^^;

そして小さく手を振って立ち去る直美を見送り、ずっとずっと、直美が画面から消えた後もずーっと、その場から動かない辻山。

普通ならここで主題歌「探偵物語」が流れるはずなのですが、流れるのは明るいポップなBGM。

今見ると、とてもいいラストシーンだなぁと思いました。

手が届く存在と、届かない存在に

当時の薬師丸さんのことを、多くの人が「超人気アイドルだった」と語っていますが、わたしには「アイドル」という印象がないんですね。

あまりテレビに出てなかったし、映画が公開される直前だけ歌番組に出演してたりしたけど、聖子ちゃんや奈保子ちゃんみたいなキラキラ衣装は纏わず、ほとんど喋らず、笑顔も控えめで、そのくせ歌はめちゃくちゃ上手い。

「なかなかお目にかかれないスター」という印象で、明らかに別格でした(角川の戦略に引っかかったともいえる)

むしろ今のほうが親しみやすいというか、「手の届きそうな存在」にはなりましたね。お母さん役もすっかり板に付いてきましたし、コミカルな演技も上手いので、いつも楽しく拝見しています。

そして松田優作さんは、この映画では平凡で冴えない中年男を淡々と演じていて、今見ると「えっ、こんな普通の役だっけ?」と拍子抜けしてしまうほど(ラストシーンを除いて)。その後に見た「ブラック・レイン」のギラギラしたイメージが焼きついてしまってるのかも。

松田さんは、この映画の6年後にがんで亡くなり、永遠に手の届かない存在となりました。
全然似てないと思ってたけど、松田龍平さんと松田翔太さん、やっぱり似てますね。

あんなに激しい潮騒が

この映画の主題歌「探偵物語」は、今聴いても名曲でした(作曲は、大滝詠一さん)

劇中ではラストで流れず、その少し前のシーンで使われていました。冒頭の「あんなに激しい潮騒があなたの後ろで黙りこむ」って歌詞、読んだだけでもメロディが浮かぶ。すごいねぇ。

たぶん、映画としては良くできたものではないと思います。
でも今見ると、いろんな発見があって楽しかった。

当時の街の風景とか。昭和のファッションとか。
携帯もパソコンもない、アナログ時代の世界のユルさとか。

ああ、やっぱり長くなりすぎました。もうこのへんでやめておきます。
4月8日放送のドラマ「探偵物語」を楽しみに待ちつつ(斎藤工さんは二枚目すぎる気もしますが)

あ、もうひとつだけ。
松田さんが探偵・工藤俊作を演じた連続ドラマ「探偵物語」は、この映画とは一切関係のないまったくの別作品です。なんで同じタイトルにしたんだろうねぇ。ややこしい。

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