海外ドラマ「アンという名の少女」シーズン2第7話のあらすじと感想、原作との違いをまとめました。
華やかで都会的なパーティーに出席するアンとダイアナ。絵が描けなくなったコールは、パーティーで希望を見つけます。
マリラは頭痛に悩まされ、視力にも異変が…。
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第7話のあらすじ
マリラは視力に異変を感じ、頭痛に悩まされる。アンとダイアナはコールの付き添いを得て、ジョセフィンが同性パートナーを偲んで開いた華やかなパーティーに出席する。
パーティーで個性的な人々と出会い、アンとコールは解放される。コールは骨折の後遺症で芸術を諦めようとしていたが、パーティーで彫刻家の作品に感銘を受ける。
ダイアナは周囲についていけず、疎外感を覚えてしまう。さらにジョセフィンと同居人が“恋人同士”だったことを知らされ、嫌悪感を抱くダイアナ。パーティーの翌日、コールはジョセフィンに自分も同性愛者だと打ち明ける。
マシューは寝込んでいるマリラの世話を焼く。マリラの人生を奪い、可能性を閉ざしたのは母親と自分だと告げるマシュー。そしてこれからは、アンと3人でどんなことがあっても立ち向かうと約束する。
パーティーから戻ったアンはマリラを見舞い、パーティーの話を語って聞かせる。アンがいなくて淋しかったと打ち明けるマリラ。翌朝、マリラは眼科を受診することを決意する。
ギルバートは医者になることを決め、医大へ進学するための勉強を始める。コールは粘土で彫像を作り始め、アンは詐欺師にもらったペンに“可能性のペン”と名付ける。
第7話の感想と解説
最先端パーティーの喜びと困惑
ジョセフィンおばさんのパーティーに出席するため、コールを付き添いにして一芝居うち、それぞれの家族から許可を得ることに成功したアンとダイアナとコール。
会場に集まったパーティー客は、みんな一風変わった人たちばかり。ここでは誰もアンの髪を笑わないし、自分らしく振る舞っても変人扱いされない(むしろ褒められる)。
でも、アンとコールにとっては居心地のいい空間が、ダイアナにとっては逆に居心地の悪い場所になってしまいます。
「結婚して良き妻、良き母になる」ことを当然のこととして受け入れているダイアナは、個性的な人々にも、先駆的な考え方にもついていけません。
アヴォンリーでは輝いていたダイアナが、ここでは完全に存在感を失ってしまうという集団の残酷さ。こういうちょっとした(作り手の)悪意が、このドラマを“今までにないアン”にしているのは間違いないと思います。
絵が描けなくなったコール
前回の骨折の影響で、手が思うように動かせなくなったコール。大好きな絵も描けなくなり、芸術の道を諦めようとします。
しかしパーティー会場で出会った彫刻に感銘を受け、その作品を手がけた彫刻家の言葉に勇気づけられます。
「1人の芸術家の悲しみが、悩める少年の心を思わぬ場所で楽にした。作品にこめた思いが誰かの悲しみを癒やすこともある。芸術にも人生にも楽な道はないわ。道すらないかも。壁を崩し木を倒して進んでいくしかない」
小説や絵画などの芸術作品に触れていると、「ああ、この人もわたしと同じものを見た(感じた)んだ」と思えるときがあります。
自分にとっては厄介な、時に消し去りたくなるようなものを、その人が素晴らしい芸術作品に昇華させているのを見ると、感動で胸がいっぱいになります。
コールの孤独や悲しみも、いつか誰かを救う日がくるかもしれない。
アヴォンリーに戻ったコールは、さっそく粘土を使った創作に取り組んでいました。森の中の秘密の小屋は、いつのまにかコールの作業場になってますね。
ジョセフィンとコールの告白
ダイアナはジョセフィンと亡き同居人ガートルードが“恋人同士”だったことを、パーティー客から聞かされて初めて知り、ショックを受けます。
女同士の恋愛なんて間違ってる、と主張しますが、そう思ってるのは自分だけで、アンもコールも同性の恋愛を認める発言をします。
「おばさんは自分に違和感を抱えてたはずだ。自分はおかしいんじゃないか、他の人と同じにできないのは不自然だってね。でもある日彼女と出会い、その考えは間違いだと気付いた。そのままの自分でいいんだってわかったんだ。それってすごいことだよ」
コールはその後ジョセフィンさんに自分も同性愛者だと打ち明けているので、このセリフは自分に向けた言葉でもあるんだと思う。
でも当時としては、ダイアナの感覚が普通だろうなぁ。ジョセフィンさんもそれをわかったうえで、ダイアナに真実を伝えたかったのでしょう。
マリラとマシューの辛い過去
アンのいないグリーン・ゲイブルズでは、マリラが体調を崩していました。いつもより酷い頭痛に悩まされ、視力にも異変を感じるマリラ。
マリラが寝込んだことで、マシューはかつて母親が寝込んでいた辛い日々を思い出します。兄マイケルが亡くなったショックで塞ぎ込んだ母親は、1年以上もベッドから起き上がれず、ずっとマリラが看病していたのです。
母親だけなく、自分もまたマリラに頼り切っていたことを思い出し、胸を痛めるマシュー。マリラの人生を奪い、可能性を閉ざしたのは自分と母親だと。
「私も辛かった。お前も辛かったのに、毎朝早起きして私の世話をした。今はアンを育ててる。お前は強いからだ。母さんよりも」
マリラが恐れていたのは、自分も母親のように寝たきりになるのではないか、かつて自分が味わった苦しみを、アンにも味わわせることになるのではないか、ということでした。
マシューは「これから先、何が起ころうと家族3人で立ち向かうんだ」と言い、マリラは眼科医の検診を受けることを決意します。
アンのこの言葉も、マリラに勇気を与えたように思います。
「愛についても学んだわ。感じ方や形は人それぞれにあるものなのね。愛する人と人生を送ることは、どんな形でも間違いじゃないよね」
原作との違い
ここからは松本侑子さん訳の文春文庫版『赤毛のアン』をもとに、ドラマと原作との違いを見ていきます。シーズン2は原作にないオリジナルエピソードがほとんどなので、原作と共通する部分だけ取り上げます。
ジョセフィンのパーティー
ジョセフィンさんがパーティーを開く場面は、原作にはありません。ドラマでは、アンたちが頻繁にシャーロットタウンへ出かける様子が描かれていますが、原作ではほとんどありません。
アンとダイアナが初めてジョセフィンさんの家に泊まりに行くのは、アンがグリーン・ゲイブルズへ来て3度目の9月、13歳の時です。2人はパーティーではなく、品評会や競馬やコンサートに連れて行ってもらい、夢のように楽しい数日間を過ごします。
ちなみにジョセフィンさんの家は、「ぶなの樹屋敷」という名前で呼ばれています。ガートルードはもちろん、ドラマに出てくる個性的な友人たちも登場しません。
マリラの頭痛
頭痛に悩まされ、視力にも異変を感じるマリラ。ドラマでは今回が初めてでしたが、原作では早い段階から、マリラの頭痛は日常的なものとして頻繁に描かれていました。
それらは物語の終盤に繋がる伏線となっていて、グリーン・ゲイブルズに訪れた悲しい出来事とも重なってきます(マリラとマシューの母親の話は原作にはありません)。ネタバレになるので、詳しくは次回書きます。
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