ネタバレ有「アンという名の少女」シーズン2*第8話あらすじ感想|プリシーとフィリップス先生の結婚

アンという名の少女【シーズン2】

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海外ドラマ「アンという名の少女」シーズン2第8話のあらすじと感想、原作との違いをまとめました。

プリシーとフィリップス先生の結婚が決まり、祝福するアンたち。しかしフィリップス先生には誰にも言えない秘密があって…。

いじめに耐えかねたコールは学校をやめることを決め、アンにある告白をします。

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第8話のあらすじ

プリシーとフィリップス先生の結婚が決まり、アンは結婚について考える。女の子たちは母親が用意してくた花嫁道具について語り合うが、アンは「新しい人生に必要なものは自分で決めるべき」と意見する。

マリラは眼科医の診察を受けるため、リンド夫人に付き添われてシャーロットタウンへ。駅でバッシュが乗車拒否に遭うのを見たマリラは、バッシュとギルバートを自席へ誘う。

バッシュは黒人が住むというスラム街“ボグ地区”へ向かい、洗濯屋で働くメアリーと出会う。ギルバートは父の主治医だった医者に歓迎され、見習いとして働くことに。

コールが教室に持ち込んだ粘土の塊をビリーが取り上げ、投げつけて窓を壊してしまう。フィリップス先生は自分と同じく同性愛的傾向を持つコールを憎み、罰を与えようとする。

教室を飛び出したコールは「もう学校へは行かない」とアンに告げ、自分がジョセフィンと同じ同性愛者であることを打ち明ける。将来互いに恋人ができなかったら、結婚して自由な人生を共に生きようと約束するアンとコール。

マリラはシャーロットタウンの質屋でマシューの懐中時計とブローチを見つけ、買い戻す。アンはマリラの部屋で見つけたベールを破いてしまうが、帰宅したマリラは「嫁入り道具はすべてあなたのもの」と言う。

プリシーは結婚しても学業を続ける気でいたが、フィリップス先生に「妻の役割に専念してほしい」と言われ、結婚に迷いが生じる。結婚式で夫の顔に喜びがないことを知ったプリシーは、式の途中で教会を飛び出す。

第8話の感想と解説

プリシーとフィリップス先生の結婚

プリシーが結婚することになり、アンとダイアナとルビーは「理想的なプロポーズ」について語り合います。アンは美しい言葉で飾り立てた、ロマンチックなプロポーズを想像していましたが……。

実際は、フィリップス先生が求婚したのは、プリシーではなく彼女の父親でした。内容も「トロントの証券取引所で働くので、現地の有力者を兄に紹介してもらいます。この結婚で私の人生は満たされます」という現実的なもの。ロマンチックとはほど遠いですね。

このプロポーズが象徴するように、フィリップス先生のプリシーへの愛は偽物です。彼は、本当はコールやジョセフィンさんと同じ同性愛者でした。

シーズン1の時から、プリシーを見つめるフィリップス先生の表情はいつも何かに怯えているようで、まったく愛を感じられなかったんですよね(原作と違って)。そういうことだったのか。

そんなことは知らないプリシーは、愛する人と結婚できる喜びでいっぱい。ダイアナはロンドンのいとこに頼んで「6ペンス硬貨」を取り寄せ、花嫁に贈ります。

これはイギリスの古い詩に由来するジンクス。

Something old, something new,
なにかひとつ古いもの、なにかひとつ新しいもの
something borrowed, something blue,
なにかひとつ借りたもの、なにかひとつ青いもの
and a sixpence in her shoe.
そして靴の中には6ペンス銀貨を

「古いもの」は伝統を、「新しいもの」は新生活を、「借りたもの」は友人との縁を、「青いもの」は聖母マリアのシンボルカラー(純潔)を象徴し、結婚式で花嫁が身につけると幸せになれるという、欧米に伝わる習慣です。

でも、フィリップス先生から「妻の役割に専念し、僕が出世できるよう支えてほしい」と言われ、学業を続けるつもりだったプリシーは迷い始めます。

結婚式でフィリップス先生の顔を見た瞬間、笑顔が消えて凍り付くプリシー。彼が結婚を喜んでいないこと、愛されていないことに気付いたのでしょう。

ラストの雪遊びのシーンは、結婚しない決断をした彼女の勇気を、アンやダイアナたちが褒め称えているように見えました。

コールの決断

プリシーを愛せないフィリップス先生は、同性愛者であるコールに自分を重ね、自分を罰するように彼を「問題児」扱いします。そのことに気付いたコールは、フィリップス先生に事実を突き付けます。

「それはあなたの決めつけで、実際は違う。あなたが憎んでいる相手は鏡の向こうにいます」

よく言えたなぁコール。それだけでも立派だよ。

度重なるビリーのいじめと、フィリップス先生の八つ当たりに耐えかねたコールは、学校をやめることを決意。

アンは登校拒否経験者だから、誰よりもコールの気持ちがわかるはず。だから心配はしていても、「学校へ行くべき」とは言いません。

そして同性愛者であることを告白したコールを受け入れ、将来結婚相手が見つからなかったときは、お互いにプロポーズして自由な人生を共に生きようと誓い合います。

シャーロットタウンで

マリラとリンド夫人、ギルバートとバッシュはそれぞれ別の目的でシャーロットタウンへ。なんかしょっちゅうシャーロットタウンへ行ってますね。原作では、そんな手軽に行けるような場所としては書かれてないんだけど。

マリラは眼科医を受診し、ひとまず老眼鏡を使って3か月後にまた受診するように言われます。帰り道、質屋でブローチとマシューの懐中時計を見つけ、リンド夫人にお金を借りて買い戻すマリラ。

ブローチはシーズン1の最終話でアンが借金返済のために、懐中時計は同じくシーズン1の第2話でマシューが汽車賃に換えるために売ったものです。懐中時計は兄マイケルの形見だったようです。

一方、歯を抜いて感染症になったバッシュは、ギルバートの父親の主治医だったワード医師に治療してもらい、黒人が住むスラム街「ボグ地区」へ行きます。

そこで洗濯屋で働くたくましい女性メアリーと出会い、バッシュはどうやら一目惚れした様子。

バッシュを取り巻く環境も辛いですね。マリラやリンド夫人は差別主義者ではなかったけれど、アヴォンリーのほかの人々はバッシュを「野蛮人」扱いしています。

店で買い物をする権利も、汽車に乗る権利もあるのに、有色人種というだけで当然のように拒否されるバッシュ。

もしも当時のアヴォンリーに日本人が住んでいたら、バッシュと同じような扱いを受けていたでしょうね。

原作との違い

ここからは松本侑子さん訳の文春文庫版『赤毛のアン』をもとに、ドラマと原作との違いを見ていきます。シーズン2は原作にないオリジナルエピソードがほとんどなので、原作と共通する部分だけ取り上げます。

フィリップス先生

フィリップス先生との結婚が決まったプリシーでしたが、結婚式で逃げ出してしまいます。原作にはこの場面はありません。

フィリップス先生が同性愛者だという設定は、ドラマオリジナルのものです。原作のフィリップス先生は、かなり積極的にプリシーへの愛を示しています。

たとえば摘んできた花をプリシーに贈り、「美しい花を、美しい乙女に」と言ったり、演芸会でプリシーに熱い視線を送りながらシェイクスピアを暗唱したり。

しかし彼はアンがグリーン・ゲイブルズへ来て1年後に学校を去り、それ以降は登場していません。プリシーとの結婚式も描かれていません。

原作では、フィリップス先生が去る時、女の子たちは号泣して別れを惜しみました。ただし、アンは「先生のことが大好きで泣いたんじゃないわ。みんなが泣くからつられたのよ」と語っています。

コールとの約束

アンはコールと「将来恋人ができなかったら、パートナーになろう」と約束します。原作にコールは登場しないので、この場面はありません。

その代わり、アンが14歳になる前に、ダイアナとの将来を語る場面があります。アンはマリラに、「二人とも結婚しないで、立派な未婚女性として、生涯、一緒に暮らす約束をしようかしらって真剣に考えているの」と言っています。

しかしダイアナのほうは「乱暴な性悪男と結婚して、夫を改心させるのも崇高な行い」だという気がして、まだ約束には至っていません。

マリラの視力

眼科医を受診したマリラは、目が疲れないよう老眼鏡をかけることを勧められます。重篤な病気ではないとわかり、ほっとするマリラ。

原作では、アンが来た当初から、マリラはしばしば頭痛と目の疲れを訴えていました。そして物語の終盤、眼科医を受診したマリラは裁縫や読書などの目に負担になることを続ければ失明する、と言われてしまいます。

このとき、原作ではマシューは既に他界しています。そしてアンは大学へ進学することが決まっていました。一人で農場を経営するのは無理だと判断したマリラは、グリーン・ゲイブルズを売ることを考えます。

アンはマリラとグリーン・ゲイブルズのために大学進学を諦め、教師として働くことを決めます。

医者を目指すギルバート

医者になることを決めたギルバートは、父の主治医だったシャーロットタウンの医師ワードのもとで、見習いとして働くことに。

原作『赤毛のアン』には、ギルバートが医者になりたいと語る場面は出てきませんし、見習いとして働く場面もありません。ギルバートが医者になる決意を固めるのは、2作目の『アンの青春』で、教師として働いている時。

アンの18歳から22歳までを描いた『アンの愛情』では、ギルバートはアンとともにレッドモンド大学へ進学します。そして卒業後さらに大学の医学部へ進んで、医者を目指すことになります。

人種差別

黒人青年の“バッシュ”ことセバスチャンは、ドラマオリジナルの登場人物です。原作には、有色人種は登場しません。

『赤毛のアン』は、原作者のL.M.モンゴメリが、自分が住んでいた場所を背景にし、当時の暮らしぶりや子供時代の思い出を反映させた物語です。

だからこそ、現代では人種差別と思われる表現もあります。フランス人の描き方は、明らかに差別的です。おそらくそれが現実で、モンゴメリ自身、そして当時の島の人々に、そこまで問題意識はなかったのでしょう。

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