WOWOWの連続ドラマ「コールドケース2―真実の扉―」第3話“PKO”のあらすじと感想(ネタバレ有)です。
今回は2007年の事件。ゲストは、萩原聖人さんと矢田亜希子さんでした。
母・恵理の転落死の真相を知りたいと訴える息子。2年前、突然恋人を亡くした高木の癒えることのない悲しみとも重なりました。
大切な人が心に深い傷を負ったとき、そばにいる人間はどうすればいいのか…。
今回の元ネタは、アメリカ版「コールドケース」シーズン4第2話“The War at Home”です。
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第3話「PKO」のあらすじ
捜査一課に、高校生の野々宮広志(西山潤)が現れる。広志は2007年に転落死した母・恵理(矢田亜希子)が事件当日に会っていたと思われるジャーナリスト・大野(菅原永二)の名刺を発見し、調べてほしいと訴える。
大野は当時、イラク派遣から戻った自衛官が立て続けに自殺した件を取材していた。大野は、事件当日に恵理と会う約束をしていたことは認めるが、恵理は待ち合わせ場所に現れなかったと話す。
恵理の夫で、広志の父・野々宮一希(萩原聖人)は、2006年のイラク派遣中に資材の下敷きになり、車椅子生活を送っていた。恵理が取材を受けようとした理由について、一希は心当たりがないと言う。
イラク派遣時、一希と同じ隊にいた自衛隊幹部の宮崎は、任務地のすぐ近くで爆撃があったことを認めるが、一希の怪我は爆撃によるものではないと否定する。
イラクから戻った一希は、実弟の蓮(永岡佑)と恵理の仲に疑いを抱き、恵理に辛くあたるようになっていた。PTSDを発症して精神的に追い詰められていた一希は、恵理と広志のために離婚を決意し、家を出て行く。
恵理はなぜビルの屋上へ足を運んだのか。高木(永山絢斗)はビルの近くに横浜スタジアムがあることに気づく。夫とやり直すことを望んだ恵理は、一希を呼び出してビルの屋上へ連れて行き、2人で横浜スタジアムから上がる花火を見ようとしたのだった。
だが花火の音が爆撃音と重なり、一希はフラッシュバックに襲われパニックに陥る。恵理は錯乱状態の一希を必死になだめようとするが、一希に突き飛ばされて転落してしまう。
最後まで父親を信じていた広志に見送られ、一希は警察に連行される。高木は、ずっと行けなかった亡き恋人の墓を訪れ、手を合わせる。
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ネタバレ有「コールドケース2-真実の扉-」登場人物(キャスト)一覧・全話あらすじ感想第3話で使用された曲
- 「旅立ちの唄」Mr.Children
- 「永遠の翼」B’z
- 「ポリリズム」Perfume
- 「愛唄」GReeeeN
第3話の感想
イラクで何があったのか?
今回は登場人物が多かったので(元ネタのアメリカ版も多い)、まずは人間関係を整理してみます。
被害者は、11年前にビルから転落死した主婦・恵理。彼女の夫はイラク派遣時に負傷して車いす生活を送る自衛官・野々宮一希。恵理と一希の息子・広志が今回の捜査の依頼主です。
一希の弟で同じく自衛官の蓮は恵理に片想いをしていて、当時2人の仲を疑っていた一希は自暴自棄になり、離婚届を書いて家を出ていました。
ジャーナリストの大野は、イラクから帰国した自衛官の自殺が相次いでいることを知り、自衛官の妻である恵理に接触。一希の怪我は建設現場での事故ではなく、ゲリラに巻き込まれたのではないかと疑っていました。
自衛隊の派遣はあくまでイラクの国家再建を支援するためだったので、平和な地域に限定されていました。なので、もしそれが真実だとしたら大問題なわけです。
結局、一希がゲリラで負傷したというのはデマでしたが、宿営地の近くで爆撃があったことは確かで、一希のPTSDはそのときの体験が原因でした。
アメリカ版では「イラクで何があったのか?」が大きな謎のひとつとなって物語を引っ張り、その真相も衝撃的なのですが、日本版はこの点がかなり弱かったなという印象です。仕方ないんですけど。
屋上の謎と弟が自衛官である理由
恵理の命を奪った犯人は夫の一希でしたが、故意ではなかったのが救いです。夫との関係を取り戻そうとして一緒に見た花火が、こんな結末になるとは…やりきれない。
ただ、フェンスのない危険なビルの屋上にやすやすと入れてしまうことや、体の不自由な一希が払いのけたくらいであそこまで吹っ飛ばされてしまうことには若干違和感が残りました。
2人であれだけ暴れたのなら何か痕跡が残っていそうだし、当時の警察も一希を疑ったと思うのですが、息子の広志が「父は犯人じゃない」と言い切る根拠が特に示されなかったことにも疑問を抱いてしまいました。
広志は一希がガラスの破片で恵理を刺そうとする現場を見ていましたからね。普通に考えたら真っ先に疑うはずです。それなのに「母親の死の真相を知りたい」と警察に訴えてくるのには、無理があるように感じました。
一希の弟・蓮の描き方もいまひとつでした。恵理と浮気してたわけでもないし、イラク派遣の真相についても知らないし、PTSDに苦しむ兄を理解する立場でもないんですよね。
このストーリーに、自衛官としての彼が必要だった理由がわからないんです。むしろ普通の会社員とかにしたほうが、一希と差別化できてよかったんじゃないかなぁ。
アメリカ版との違い
ここからは、元ネタとなったアメリカ版「コールドケース」シーズン4第2話“The War at Home”との違いについて説明します。
今回はほとんど原形を留めていないんですよね。登場人物、犯人、殺害場所、殺害に至った経緯、すべて違います。
このエピソードを日本に置き換えるのは難しい、ということは一目瞭然なので、わざわざこれを選んだということは、あえて作りたいという思いがあったのだろうと想像します。
イラクに派遣されたのは妻
まずイラクに派兵されたのは、夫ではなく妻デイナのほうでした。3か月後に帰国したとき、デイナは擲弾による爆撃で右腕を失っていました。デイナは前向きに受け止め、義手を装着して以前の暮らしを取り戻そうとします。
この義手が2年後に川で発見されたことから、事件の捜査が始まるわけです。
彼女と同じ部隊にいた友人の夫フランクはそのときの爆撃で亡くなり、もうひとりの兵士トミーは片足を失いながらもデイナによって命を救われていました。
デイナとトミーはともに帰国して戦地でのことを語り合ううちに親密になり、トミーはデイナに心を寄せるようになります。
イラクで何があったのか
デイナはPTSDを発症して情緒不安定になっているのですが、「イラクで何があったか」を誰にも語ろうとしません。さらに夫が近所の妻と不倫していることが発覚し、デイナはパニック状態に。
そこで初めて、夫に問い詰められてイラクで起きたことを語るデイナ。これが衝撃的なのですが…現地で補給車を運転していた彼女は、「道に立っている者は轢き殺せ」と命じられていました。
なぜかというと、車を止めるための敵の罠だからです。しかし、デイナは道路の真ん中に自分の娘と同じ年頃の女の子が立っているのを見て、思わず速度を落としてしまう。そして攻撃されたのです。
フランクを死なせたのは私だと、デイナはずっと自分を責めていたのでした。
新しい人生のために
夫に励まされて再出発することを決めたデイナでしたが、てっきり両想いだと勘違いしていたトミーはショックを受け、デイナを橋の上から突き飛ばして川に転落させてしまいます。
このトミーが日本版では一希の弟・蓮になっているのでしょうね。アメリカ版ではストーリーにがっつり絡んでいて、重要な役割になっているのです(なんせ犯人だから)。日本版で違和感を感じたのは、そこを改変したからだと思います。
主人公の子どもは日本版では男の子でしたが、アメリカ版では女の子。イラク派兵から2年しか経っていないので、捜査のときもまだ子どもです。広志のように、捜査に役立つ証拠を持ち込んでくることはありません。
アメリカ版では、イラクに派兵されたのが女性であり、母親であることが大きな意味合いを持つ内容になっていました。
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