「刑事モース~オックスフォード事件簿~」Case25のあらすじと感想です。
モース役のショーン・エヴァンスが番組初監督を務めた回。
キャッスルゲート署の刑事部に着任したモース。
着任早々、新たな事件が舞い込みます。
これまで築き上げた人間関係を失い、ボックス警部のもとで虐げられるモースとサーズデイ警部補。ブライト警視正も不本意な立場にあり、なんだか切ない。
Case25「月の裏庭」のあらすじ
1969年7月下旬。アポロ11号が打ち上げられ、月に向かう。モースがキャッスルゲート署の刑事部に着任した朝、テレビでも人気の天文学教授アダム・ドレイクが交通事故を起こし、同乗していた身元不明の女性と遺体で発見される。
モースはデスクワークに回されたサーズデイに協力を頼み、捜査に当たる。車の持ち主はドレイクではなく、彼の同僚のハンボルト博士だった。さらに、女性は車が衝突する前に死亡していたことがわかる。
女性の名前は〈ヘビサイド・スタジオ〉で個人秘書をしていたクリスティーン・チェイスと判明。ドレイクとクリスティーンはヴィンクヴィスト博士の家で開かれたパーティーに参加していたが、2人が帰ったところを見た者は誰もいなかった。
ボックスはこれ以上捜査しても無駄だというが、モースは納得がいかない。ドレイクのポケットには誰のものかわからない車のキーが入っており、彼がなぜ自分の車ではなくハンボルト博士の車に乗って帰ったのかも不明だった。
車のブレーキオイルが抜かれていたことがわかり、何者かが細工をした可能性が浮上。だが車の持ち主であるハンボルトは去年の9月から免停中で運転しておらず、パーティーの日に車を運転したのは妻イソベルだった。
ボックスはモースを捜査から外し、証拠取扱責任者にする。納得がいかないモースは指示を無視して捜査を続け、ドレイクが治療を受けていたというセラピスト、ガブリエル・ヴァン・ホーンを聴取する。
〈ヘビサイド・スタジオ〉で人形使い・エリックの遺体が発見される。エリックは3年前に妻パトリシアをひき逃げ事故で亡くし、自殺を図った過去があった。彼は再婚相手のマリリンに「妻を轢いた車を見かけた」と話していたという。
ヴィンクヴィスト家で行われていたのは乱交パーティーで、ドレイクのポケットに入っていたのはヴァン・ホーンの車のキーだった。パーティーに参加していたヴァン・ホーンはドレイクの車のキーを引き当て、クリスティーンと寝ることに。
だがクリスティーンは転落死してしまい、ヴァン・ホーンは遺体を放置してタクシーで逃げ帰った。ドレイクはクリスティーンの遺体を彼女の家に運び込もうとしたが、車の鍵はヴァン・ホーンが持ち帰っていたため使えず、ハンボルトの車を借りたのだ。
ハンボルトの車はもともと2台だったのを切ってつなげたもので、後ろ半分は3年前にパトリシアを轢いた車だと判明。モースは妻の復讐をもくろんだエリックがブレーキに細工し、自殺したと考える。ボックス警部は警視長に報告し、手柄を横取りする。
モースはヴァン・ホーンのデスクで音声を録音したテープを見つける。ハンボルトの車に細工したのはエリックではなく、〈ヘビサイド・スタジオ〉のヒルデガルド・スレイトンだった。
彼女はドレイクの元恋人で、ドレイクを奪ったハンボルト博士の妻イソベルを恨んでいた。イソベルを抹殺するために車に細工をしたが、ドレイクが偶然その車を運転し、事故を起こすことに。
エリックは「妻を轢いた車を見た」とヒルデガイドに話したことから、車に細工をした犯人に仕立て上げられ、自殺に見せかけて殺されたのだ。
ハンボルトの娘フローラが弟とともに失踪し、モースはジョアンとともに2人を見つけ出して保護する。
Case25の登場人物(キャスト)
アダム・ドレイク教授(ベンジャミン・ウィンライト)
オックスフォード天文台に勤める天文学教授。テレビにも出演する人気者。ヴィンクヴィスト家で開かれたパーティーからの帰り道に交通事故で死亡する。
クリスティーン・チェイス(ケイティ・フェイ)
ドレイク教授の恋人。ドレイクとともにパーティーに参加していた。ドレイクが運転する車に同乗していたが、事故の前に死亡していたことが判明する。
ラリー・ハンボルト博士(サルゴン・イェルダ)
ドレイクの同僚。パーティーに参加していた。妻イソベルとの仲はうまくいっていない。娘と息子がいる。
イソベル・ハンボルト(ソフィー・ウィンザー)
ラリーの妻。パーティーに参加していた。ドレイクに夢中で、夫婦仲は冷え切っている。問題行動を起こす娘のフローラとも向き合おうとしない。
フローラ・ハンボルト(サーシャ・ウィロビー)
ラリーとイソベルの娘。ガールガイドの小屋を燃やして警察沙汰になる。
エリオット・ヴィンクヴィスト博士(オリバー・クリス)
ドレイクの同僚。パーティーに参加していた。
ナタリー・ヴィンクヴィスト(アリス・オル=ユーイング)
エリオットの妻。パーティーの主催者。
ジェフ・スレイトン(マシュー・コトル)
クリスティーンが個人秘書をしていた〈ヘビサイド・スタジオ〉の経営者。ドレイクに「ムーン・レンジャーズ」という新番組の監修を依頼していた。
ヒルデガルド・スレイトン(メアリー・ストックリー)
ジェフの妹。ジェフとともに〈ヘビサイド・スタジオ〉を運営している。
ガブリエル・ヴァン・ホーン(ブレイク・リットソン)
ドレイクが治療を受けていた〈シングルウェイ・インスティテュート〉のセラピスト。
エリック・チャールズ・ギッドビー(ロバート・ハンズ)
〈ヘビサイド・スタジオ〉のスタッフ。人形使い。横柄な態度のドレイク教授を嫌っていた。3年前に妻パトリシアを交通事故で亡くしている。
マリリン・ギッドビー(テレニア・エドワーズ)
エリックの再婚相手。〈ヘビサイド・スタジオ〉のスタッフ。
パトリシア・ギッドビー
エリックの前妻。3年前にひき逃げ事故で亡くなった。犯人は見つかっていない。
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ネタバレ有「刑事モース」シーズン6(Case24~27)全話あらすじ・感想・キャストCase25「月の裏庭」の感想(ネタバレ有)
ボックス警部と対立するモース
ストレンジの計らいで、刑事に復活したモース。
とはいえ上司はあのボックス警部なので、前途多難です。
まず、モースに与えられたデスクは、半地下の窓のない資料部屋。重要な捜査には加えてもらえず、“証拠取扱責任者”を命じられてしまいました。
それはサーズデイ警部補も同じで、強盗犯を追う現場では足手まといだと判断され(結果的に犯人を取り逃がしたこともあって)、デスクワークに回されます。
モースとサーズデイ警部補が捜査していた交通事故の案件が複雑な事件だとわかったとたん、自分が担当すると主張して奪い取るボックス警部。
モースが真相を突き止めたときも、自分が上司に報告すると言ってあからさまに手柄を横取り。嫌な上司の見本のような人ですねぇ。
でも、ボックス警部のそういう態度は、裏を返せば自分に自信がないからとも言えます。実はモースを恐れているんじゃないの~?
モースはモースで「新天地でうまくやろう」なんて考え方は1ミリもなく、上司であるボックスの面子を潰すような発言を堂々としちゃうんですよね。それが当たっているだけに、どんどんボックスの機嫌を損ねてしまう。
変わってないわね、モース。
わかりづらい乱交パーティー
今回もいろいろな要素が絡み合う重層構造になっていましたが、あの怪しいセラピーが誰にどんな影響を与えていたのか(いなかったのか)いまいちハッキリせず、若干消化不良でした。
事件を整理すると、
- イソベルに嫉妬したヒルディが車に細工して殺害を計画
- ドレイクとクリスティーンが乱交パーティーに参加
- セラピストのヴァン・ホーンがパーティーでクリスティーンを得る
- クリスティーンが転落死、ヴァン・ホーンがタクシーで逃げ帰る
- ドレイクがハンボルトの車を借りて、クリスティーンの遺体を運ぶ
- ドレイクが交通事故を起こして死亡する
という流れになるかと思います。
乱交パーティーでは、参加者の車のキーの中からどれかひとつを選び、その車の持ち主が連れてきた女性と寝るというルールになっていたようなのですが、このあたりも説明不足で少々わかりにくい。
ヴァン・ホーンがドレイクのキーを選んだのは故意だったのか、知らずに引き当てたのか。ドレイクはなぜヴァン・ホーンの車のキーを持っていたのか(交換したの?)。
モースとジョアンの喧嘩
ジョアンは福祉部の仕事で、問題を起こしたハンボルトの娘フローラを担当。フローラは両親が不仲なことに心を痛めていたのですが、母親のイソベルは「わがままな娘」だと彼女の気持ちを思いやろうともしない。
モースは事件の真相を突き止めるため、フローラについてジョアンから聞き出そうとしますが、ジョアンは「守秘義務がある」と拒否。喧嘩になってしまう2人。
子どもの喧嘩みたいで、ちょっと微笑ましかったです。これまでのモースならジョアンに対して言いたいことがあっても口に出せず、遠慮がちにモジモジしているだけだったのに、今シーズンはやけにはっきり言いますね。いい兆候かも。
フローラと弟のマシューは保護施設に預けられることに。幼いマシューに「新しいパパとママになって」と言われ、気まずそうな表情で顔を見合わせるモースとジョアン。
一方、サーズデイとウィンの関係は未だ修復されず。ウィンはサンドイッチどころか夕飯さえも作らなくなってしまう。2人とも「このままじゃいけない」と思ってるとは思うんだけどね…。
エディ・ネロの影
Case23で死んだエディ・ネロ。彼が残した影は未だ町から消えておらず、ファンシーを殺した犯人とともに不気味な存在。
ドレイクが事故を起こした車は、3年前にエリックの妻パトリシアを轢いた車であることが判明。ひき逃げ時の車の持ち主は、エディ・ネロの仲間でした。
ストレンジはファンシー殺害事件の真相を突き止めるため、ヘロイン中毒死について密かに調べているらしい。モースに「気をつけろ」と忠告されていましたが、ストレンジはモースにも協力してほしいと思っている様子。
それぞれの所属先も立場も変わり、バラバラになってしまったカウリー署のメンバーですが、ところどころで精神的な繋がりが垣間見れてホッとします。
ペリカンと共演したことで物笑いの種にされているブライト警視正が、「ペリカンは私の一生の汚点だ」とサーズデイ警部補に吐露するシーンが切なかった。
「あなたのキャンペーンで何人の命が救われたかわかりません」と気遣うサーズデイ警部補に、「きみはいつも信頼できる」と答えるブライト警視正。いい関係ですね。
カウリー署のメンバーが、再び生き生きと職務に就ける日が来るといいのだけど…。
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