シャーロック・ホームズの冒険*第2話「踊る人形」あらすじ感想

海外ドラマ「シャーロック・ホームズの冒険」キャストあらすじ

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海外ドラマ「シャーロック・ホームズの冒険」第2話「踊る人形」のあらすじと感想です。

不思議な暗号が登場し、ホームズが解読を依頼される話。

作者アーサー・コナン・ドイルがノーフォークを訪れたときに、宿屋の主人の息子が書いた落書きを見て着想を得たと言われています。

地名を除けば今回もほぼ原作どおりでした。

第2話「踊る人形」あらすじ

ホームズはダービーシャーのリドリング・ソープ荘に住む名士ヒルトン・キュービットから、不思議な“踊る人形”の絵の謎解きを依頼される。

子供が書いた落書きのようなその絵は、屋敷の庭のベンチに描かれていたといい、その絵を見た妻のエルシーはそれ以来怯えきっているという。

キュービットは3年前にロンドンの宿でアメリカ人のエルシーと出会い、結婚する条件として彼女の過去については何も聞かないと約束していた。

キュービットがホームズに解読を頼んで帰宅すると、自宅の扉にまたもや“踊る人形”が描かれていた。さらに数日後、庭のベンチにも“踊る人形”が書かれた紙が届く。深夜に目覚めたキュービットは、妻エルシーが図書室で男と言い争っているのを聞く。

キュービットから新たな手紙が届き、ホームズが解読すると「死ぬべき時だ」と書かれていることがわかる。ホームズとワトソンは急いでソープ荘へ向かうが、その途中でエルシーがキュービットを殺し、彼女自身も重傷だという噂を耳にする。

2人が屋敷に到着すると、ダービーシャー警察のマーチン警部が捜査にあたっていた。彼はエルシーがキュービットを撃ち、その後拳銃自殺を図ったと説明するが、ホームズは窓枠に撃ち込まれた弾を見つけ、第三者がいたことを指摘。窓の外にはその男が撃ったと思われる弾の薬莢が落ちていた。

キュービットと男は同時に発砲し、キュービットが撃った弾は外れて窓枠に当たり、男が撃った弾はキュービットの心臓を撃ち抜いたのだ。夫の死をまのあたりにしたエルシーは、絶望して自殺を図ったのだった。

ホームズはエルリッジ農場にいるエイブ・スレイニー宛に手紙を届けさせる。やがて何も知らないエイブが屋敷を訪れ、待ち構えていた警察に拘束される。彼はエルシーが重体だと聞かされると、激しく動揺する。

エルシーにかけられた夫殺しの容疑を晴らすようホームズに諭されたエイブは、エルシーを愛していたことを打ち明け、これまでの経緯を自供する。エルシーの父親はシカゴ暗黒街の大物で、暗号に使う“踊る人形”の絵文字を作った人物だった。エイブもまた犯罪者で、エルシーと結婚するはずだったという。

嫌がったエルシーがヨーロッパへ逃げ、キュービットと結婚したことを突き止めたエイブは、彼女を連れ戻すべくイギリスへやってきたのだ。そして“踊る人形”の暗号を使って彼女を脅し、昨夜ついにエルシーと面会した。そして2人が言い争っているところへキュービットが現れ、撃ち合いになったのだという。

ホームズが届けさせた手紙には、彼らしか知らない“踊る人形”の絵文字で「エルシーより すぐにここへ来い」と書かれていた。

その後、エイブは裁判で死刑の宣告を受けるが、キュービットが先に発砲したことが確実とみなされ、さらにほかの情状を酌量されて懲役に変更された。エルシーは完全に回復し、今もソープ荘で貧しい人への社会奉仕をして暮らしている。

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海外ドラマ「シャーロック・ホームズの冒険」キャストあらすじ ネタバレ有「シャーロック・ホームズの冒険」各話あらすじ・感想・キャスト・原作比較・時代背景

第2話の感想(ネタバレ有)

“踊る人形”の由来

やはり推理ものに暗号は欠かせませんね! 不気味な絵文字となるとなおさらワクワクします。

タイトルにもなっている「踊る人形」は、ホームズが解読を依頼された暗号のこと。子供が書いた落書きのような絵で、人が踊っているように見えます。

依頼人キュービックの妻エルシーは、その暗号が何を伝えているのか知っている様子ですが、キュービックは妻に真相を聞くことができません。なぜなら結婚前に「過去については何も聞かない」と約束してしまったから。

そこで彼はホームズに暗号解読を依頼したというわけ。しかしホームズが解読している間に事件が起きてしまい、最悪の結果に。キュービックは殺され、妻エルシーも自殺を図って重傷を負う。

事件の真相は、エルシーの元婚約者であるシカゴ暗黒街の凶悪犯罪者が彼女を追ってイギリスへやってきて、彼女の父親(シカゴ暗黒街の大物)が考案した暗号を使って脅していたという、現代で言うところのストーカー案件でした。

個人的には冒頭のホームズとワトソンのやりとり(南アフリカの金鉱株投資に関する推理)が好きです。ここもまるっと原作通り。ドラマでは当初削除される予定だったらしいのですが、ジェレミー・ブレッドの強い希望で挿入されたそうです。

原作との違い

ここからは深町眞理子さん訳の創元推理文庫版『シャーロック・ホームズの復活』に収録されている「踊る人形」をもとに、ドラマと原作との違いを見ていきます。

原作は1903年に発表された27番目の短編小説です。

ソープ荘の場所はノーフォーク

ドラマでは、キュービットの屋敷があるのは内陸のダービーシャーという設定で、撮影もそこで行われましたが、原作では東部海岸にあるノーフォークでした。

ワトソンはキュービットとの初対面について次のように語っています。

明るく澄んだ目も、血色のよい頬も、この人物の送っている生活が、霧のベイカー街のそれとは大きくへだたっていることを物語っている。ご入来と同時に、東部海岸特有の新鮮かつ爽快、ぴりっと身の引き締まる空気までが流れこんできたかのようだ。

ドラマでは、ノーフォークはロンドンに比較的近い場所なので田舎感が出ない…という理由から、ダービーシャーに変更されたようです。

口数の少ないホームズ

ドラマのホームズは、暗号にまつわる経緯を聞いてさっさとキュービットを帰してしまいましたが、原作では違います。

「近隣に見慣れない人物が徘徊していないかどうか、それとなくあたってみてください」などとその場でできる限りの助言をして、「情勢が切迫してきたらいつでもお屋敷に駆けつけます」という言葉まで添えています。

後半の暗号の謎解き部分についても、原作ではかなりのページ数を使って丁寧に説明しています。

ドラマは時間が限られているため、原作に比べるとホームズの口数が少なくなっていて、少し冷たい印象を受けますね(それはそれでよい)。

エルシーとの出会いは1年前

ドラマの中で、キュービットは妻エルシーとの出会いについて「3年前のロンドンで」と語っていました。女王の即位六十年祭を見にロンドンへやってきて、彼女と出会ったのです。

原作では、キュービットがエルシーと出会ったのは1年前という設定です。ドラマと同様、ヴィクトリア女王即位六十周年記念祝典に出席するためにロンドンに出てきて、下宿屋で出会いました。

ちなみに〈ヴィクトリア女王即位六十周年記念祝典〉 が行われたのは1897年。なのでドラマの時代設定はその3年後の1900年、原作は1898年という計算になりますね。

ホームズの暗号解読

ドラマでは、ベイカー街の部屋でホームズが暗号を解く様子が描かれていました。なので彼がワトソンとともにソープ荘を訪れる際には、ワトソンは既に暗号の解き方を知っていて、マーチン警部に解読方法を説明したのも彼でした。

しかし原作では、ホームズはワトソンに暗号解読の種明かしを一切していません。ソープ荘でマーチン警部に説明するのもホームズで、このときにワトソンは初めて暗号の解読方法を知らされます。

解読方法についても原作では詳しく書かれています。まず最初に、頻繁に登場するひとつのシンボルにアルファベットの「E」をあてはめます(Eはどんなに短いセンテンスにも含まれる、という理由)。

そこから「never」と思われる一つの単語を見つけ、「N」「V」「R」をあらわすシンボルを断定。さらに夫人の名前「Elsie」を表すと思われる単語を見つけ、「L」「S」「I」を断定…という感じで、順番にアルファベットをあてはめていき、残りは前後の文章から推測して解読していきました。

解読したメッセージは以下の通り。

  • AM HERE ABE SLANEY(きたぞ、エイブ・スレイニー)
  • AT ELRIGES(エルリッジ方)
  • COME ELSIE(来い、エルシー)
  • NEVER(イヤ)
  • ELSIE PREPARE TO MEET THY GOD(エルシー、神のもとへ行く用意をせよ)

暗号の中に「エイブ・スレイニー」という名前を見つけたホームズは、友人の警察官ウィルソン・ハーグレイブ(ドラマではシカゴ警察でしたが、原作ではニューヨーク市警)に電報を打ち、彼がシカゴ暗黒街の危険人物だと知るに至りました。