シャーロック・ホームズの冒険*第1話「ボヘミアの醜聞」あらすじ感想

海外ドラマ「シャーロック・ホームズの冒険」キャストあらすじ

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海外ドラマ「シャーロック・ホームズの冒険」第1話「ボヘミアの醜聞」のあらすじと感想、原作との違いをまとめました。

第1話は、原作では3作目にあたる「ボヘミアの醜聞」。ボヘミア国王から依頼を受けたホームズが、ある女性が持っている“都合の悪い写真”を奪おうとする話です。

ストーリーはほぼ原作通りでしたが、ホームズにとって唯一人の特別な女性ということで、ドラマではよりロマンス要素が濃くなっていましたね。

第1話「ボヘミアの醜聞」あらすじ

地方の診療を終えたワトソンが数日ぶりに帰宅すると、私立探偵のホームズは鬱々としていた。友人であり仕事のパートナーでもある2人はベイカー街221Bで同居していたが、ホームズは一人になると塞ぎ込むことが多かった。

平穏な日々を嫌うホームズはコカインやモルヒネで退屈を紛らわせ、彼の類い希な推理力を発揮できる複雑で難解な事件の依頼が舞い込むのを待ちわびていたのだ。

ホームズのもとに謎めいた手紙が届き、まもなくボヘミアの貴族クラム伯爵と名乗る男が訪ねてくる。男は仮面をつけていたが、ホームズは一目でボヘミア国王その人であることを見抜く。

国王は10年前のワルシャワ滞在中に深い関係に陥ったエレーナ・アドラーという女性歌手から脅迫されていることを明かす。彼女は国王と一緒に写った写真を持っており、彼の結婚相手となるスカンジナビア国王の第二王女メニンゲン姫に証拠写真を送りつけるというのだ。

3日以内に写真を取り戻すと約束したホームズは、翌日、失業中の馬丁に変装してエレーナ・アドラーが住むブライオニー・ロッジの周辺に聞き込みに行った。彼女はゴッドフリー・ノートンという弁護士の訪問を頻繁に受けていることがわかり、その日もノートンが慌ただしくやってきたかと思うと、2人は別々の馬車でセントモニカ教会へ向かったのだった。

馬丁に扮したホームズが2人の後を追うと、教会では2人の結婚式が密やかに行われていた。見学しているホームズに、証人になってほしいと頼むノートン。帰り際、エレーナは「ありがとう。助かりました」とホームズに声を掛け、お礼として金貨を1枚手渡す。

その夜、ホームズは牧師に変装し、ワトソンを連れてエレーナの家に向かう。ホームズは彼女の家の前で一芝居うち、騒動に巻き込まれて卒倒したふりをする。エレーナの家の中に担ぎ込まれ、手当を受けるホームズ。ワトソンは手はず通りに窓から発煙筒を投げ入れ、火事騒ぎを起こす。

エレーナはとっさに写真の隠し場所に手を伸ばすが、火事がデマだとわかって思いとどまる。すべては写真の在りかを知るためにホームズが仕組んだことだった。

だが聡明なエレーナは違和感を覚え、牧師を尾行して彼がかの有名なシャーロック・ホームズであることを確認する。翌朝、ホームズが国王を伴ってエレーナの自宅を訪問すると、彼女は夫のノートンとともに既にイギリスを発った後だった。

例の隠し場所にはエレーナがひとりで写っている写真と、ホームズ宛の手紙が残されていた。手紙は彼女が結婚して愛情を得たこと、もう国王を困らせるつもりはないことを伝えていた。

満足したボヘミア国王は、謝礼として豪華な指輪を渡そうとするが、ホームズはそれを断り、エレーナが残した写真を希望する。

以後、ホームズは賢い女性を冷笑することがなくなり、エレーナ・アドラーを語るときにはある種の尊敬を込めて「あの人」と呼ぶようになった。彼はエレーナの写真を特別な引き出しに納め、鍵をかけている。

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海外ドラマ「シャーロック・ホームズの冒険」キャストあらすじ ネタバレ有「シャーロック・ホームズの冒険」各話あらすじ・感想・キャスト・原作比較・時代背景

第1話の感想(ネタバレ有)

ホームズお得意の変装

やっぱりホームズといえばジェレミー・ブレット。この音楽。オープニングを見ただけで、一気に懐しさがこみ上げてきました。いいわぁ。

原作のイメージに近く「史上最高」と高く評価されているジェレミーのホームズ。ちなみに原作に書かれているホームズの特徴は、身長180cmで痩身、髪は黒。瞳はグレーで眼光鋭く、鼻は鷲鼻。まさに原作通りですね。

そして40年近く前に作られたドラマなのに、今見ても目を見張る完成度。ホームズの変装メイクの出来映えがレベル高すぎてびっくり。制作費は40年前に既にこのレベルなんですね…。

一度目の馬丁、2度目の牧師ともに原作通りで、ワトソンが「三度も見直して、やっとそれがホームズ本人にまちがいないと確認できた」と言うくらいなので、あながち盛りすぎというわけでもなさそうです。

ホームズといえば…

シャーロック・ホームズといえば「鹿撃ち帽」に「インバネスコート」が定番ですが、このドラマではほとんど見られません。実はこの扮装は、雑誌掲載時の挿絵を担当していたイラストレーターのシドニー・パジェットが着せたものなんですね。

そのため本作ではあえてそれらを避け、トップハットにフロックコートという当時のロンドンの都会人の服装が用いられています。

もうひとつ有名なのが「パイプ」。ホームズは複数のパイプを所持していて、パジェットは挿絵に「ストレートパイプ」を描いていました。しかしその後、舞台でホームズ役を演じた俳優のウィリアム・ジレットが「くわえたままでも口元が隠れない」という理由でカーブのあるパイプを使い、そのイメージが定着したと言われています。

どんどん人気を得て一人歩きするホームズ像に、舌打ちする作者ドイルの顔が目に浮かぶよう(笑)ちなみにドラマでは、「カーブのあるパイプ」も使われています。

原作との違い

ここからは深町眞理子さん訳の創元推理文庫版『シャーロック・ホームズの冒険』に収録されている「ボヘミアの醜聞」をもとに、ドラマと原作との違いを見ていきます。

同居していないワトソン

既に書いたように、今回の「ボヘミアの醜聞」は、原作では「緋色の研究」「四つの署名」に続くシリーズ3作目にあたります。前2作は長編でしたが、 いずれも雑誌掲載時は評判になりませんでした。

ちょうどその頃、月刊誌の「ストランド・マガジン」が創刊されます。この雑誌に掲載されたのが初の短編「ボヘミアの醜聞」で、たちまち大評判となり、連載小説のごとく毎月掲載されることになりました。

今では珍しくありませんが、「一話完結のシリーズもの」というスタイルが当時は斬新で、全く新しい試みでした。

そういう背景もあって、物語冒頭の設定が原作とドラマとでは多少違っています。原作では、このときワトソンは「四つの署名」で知り合ったメアリーと結婚していて、ベイカー街の下宿を出ているんですよね。

ドラマでは同居中のワトソンが「地方の診療から数日ぶりに戻った」という設定に変えられていましたが、原作では、ワトソンがたまたまベイカー街を通り抜けようとして、結婚後疎遠になっていたホームズに無性に会いたくなってベルを鳴らした、という状況でした。

ターナー夫人って誰?

原作を読んだときに戸惑ったのが、下宿の家主の名前。ホームズが住むベイカー街221Bの家主はハドソン夫人なのに、この作品ではホームズが「ターナー夫人」と呼んでいるのです!

どういうこと?

調べたところ、これは長年ファンを悩ませる問題になっているそうです。
もちろんドラマでは「ハドソン夫人」でした。

女性の名前はアイリーン

ホームズが心を奪われる女性の名前は、原作ではアイリーン・アドラー。ワルシャワでボヘミア国王と深い関係になり、写真をネタに脅迫するというストーリーラインは同じです。

原作では冒頭でワトソンが「いまは亡きアイリーン・アドラー」と過去を振り返っているので、作品が発表された1891年時点では彼女は亡くなっているようです(旧姓とする解釈もあるようですが)。

ホームズが赤ら顔の馬丁に変装して馬車屋で情報を仕入れたり、なりゆきで彼女とノートンの結婚式の証人になったり、彼女からお礼の金貨をもらって「記念に時計の鎖につけておこう」と言ったりするところも原作どおり。

男装した彼女がホームズの家の前で「おやすみなさい、シャーロック・ホームズさん」と声をかけるシーンも、原作どおりです。このシーンはパジェットの挿絵があるのですが、ドラマで牧師に変装したホームズが挿絵とそっくりで笑ってしまいます。

この一件以降、ホームズが女性の知恵を揶揄しなくなったことや、ホームズが彼女のことにふれるとき、常に「あの女性」と呼ぶことも原作でワトソンが語っていることです。

ただドラマの中で「エレーナの写真を特別な引き出しに入れ、鍵をかけていた」と語っていた部分については、原作にはありませんでした(後に出てくるのかもしれませんが)。