シャーロック・ホームズの冒険*第24話「ウィステリア荘」ネタバレ感想

海外ドラマ「シャーロック・ホームズの冒険」キャストあらすじ

「シャーロック・ホームズの冒険」記事一覧

海外ドラマ「シャーロック・ホームズの冒険」第24話「ウィステリア荘」のあらすじと感想です。

〈ウィステリア荘〉の住人が一夜にして忽然と消え、のちに主が殺されていたことが判明。ホームズと地元警察のベインズ警部が捜査に乗り出します。

原作は2部構成で長めの作品。ドラマでは省略されている部分が多く、少しわかりにくい。でもベインズ警部は原作以上に魅力的な人物になっていて(俳優さんが適役!)、ホームズとのやりとりがとても面白かったです。

第24話「ウィステリア荘」あらすじ

退屈を持て余すホームズのもとに「奇怪な経験をした」という電報が届き、スコット・エクルズなる人物が訪ねてくる。彼は古地図の研究という共通の趣味を持つ友人ガルシアに招かれ、彼の自宅である〈ウィステリア荘〉で一晩を過ごしたが、翌朝目が覚めると主も使用人も忽然と姿を消していたという。

興味を持ったホームズはワトソンとともに〈ウィステリア荘〉へ赴き、調査を開始。すると地元サリー州警察のベインズ警部が現れ、ガルシアは殺されたと告げる。昨夜、ガルシアのもとに届いた手紙は暖炉の中で燃えずに残っており、そこには謎めいた暗号が記されていた。

ベインズはホームズの力を借りず、独力で事件の謎を解明すると宣言。互いに信じる道を行こう、と約束して別行動を取ることに。

ホームズは周辺の館を調べ、〈ハイゲーブル荘〉が怪しいと推測。ワトソンはホームズの留守中に〈ハイゲーブル荘〉へ向かい、女性が幽閉されているのを目撃する。館の子供たちに見つかって中に連れ込まれたワトソンは、そこでホームズと遭遇。

ホームズは地理学者だと偽り、館の主であるヘンダスンと面会する。鋭い眼光を放つヘンダスンは、尊大な態度で2人を追い返す。

ホームズは〈ハイゲーブル荘〉を解雇された元使用人から話を聞き、ミス・バーネットというイギリス人家庭教師がいることを突き止めていたが、事件の夜から姿を消しているという。ワトソンは幽閉されていた女性こそ彼女だと確信する。

〈ウィステリア荘〉に雇われていた外国人コックが逮捕される。ホームズは本筋から外れているとベインズ警部に忠告するが、彼は自分の信じる道を行くと主張するばかり。

ホームズとワトソンは幽閉されているミス・バーネットを救出すべく、〈ハイゲーブル荘〉に向かう。するとヘンダスンが彼女とともに馬車に乗り、駅へ向かうところだった。ホームズたちは馬車を追い、列車が発車する直前にミス・バーネットを救出する。

ベインズは初めからヘンダスンに狙いをつけていたことを明かし、コックを逮捕したのは彼を油断させるためだったと告白。ヘンダスンの正体は、「サンペドロの虎」と恐れられた独裁者ドン・ムリロだった。5年前の反乱勃発時、反乱軍に追われたムリロは腹心の秘書と2人の娘、財宝とともに姿を消していた。

ミス・バーネットはサンペドロのロンドン公使だったデュランドの妻で、ムリロに銃殺された夫の恨みを晴らすため、ガルシアや同志たちとともにムリロの行方を追っていたという。そして1年前、ヘンダスンと名乗って〈ハイゲーブル荘〉に身を隠していることを知り、敵の館に家庭教師として潜入し暗殺の機会をうかがっていた。

だが事件当夜、ガルシア宛てに暗殺決行を知らせる手紙を書いた直後に正体が露呈し、ムリロに拘束されてしまった。ムリロはガルシアに夫人の手紙を送っておびきよせ、道中で殺害したのだ。

ガルシアの死は正当防衛になりかねない、と懸念するホームズとベインズ警部に対し、ワトソンは「殺害を目的としておびき出した以上、立派な謀殺だ」と言い、裁判で正義が行われることを確信する。

列車で逃亡したドン・ムリロは、車中で暗殺される。

登場人物はこちら

海外ドラマ「シャーロック・ホームズの冒険」キャストあらすじドラマ「シャーロック・ホームズの冒険」各話ネタバレ感想・登場人物/キャスト・原作比較・時代背景

第25話の感想(ネタバレ有)

ホームズを騙すベインズ警部

今回の見どころはなんといってもベインズ警部でしたね~。あのホームズが騙されるほどの巧者で、ホームズシリーズではめずらしい“切れ者”の警部でした。最後のホームズとのやりとりもすごくよかった。

「君には祝辞を述べねばなるまい。しかし君の秀でた能力に対して、それを発揮する機会はあまりにも少ない」
「仰せの通りなんですよ。なんせのんびりした土地ですから。こんな事件はまたとないチャンスなんです」

ホームズシリーズに登場する警部って、たいてい的外れな捜査をしてホームズの“引き立て役”になる人が多いので、ここまでの腕利き警部はかなり珍しい。でもベインズ警部が登場するのはこのエピソードのみ…残念です。

原作との違い

ここからは深町眞理子さん訳の創元推理文庫版『シャーロック・ホームズ最後の挨拶』に収録されている「〈ウィステリア荘〉」をもとに、ドラマと原作との違いを見ていきます。

発表は1908年、短編の中では38番目の作品にあたります。

ワトソンの勘違い?

原作では、この事件が起きたのは「1892年の3月も終わりに近い、ある冷えびえとした、風の強い日」だとワトソンが記しています。

ところがこの時期は、ホームズが「最後の事件」で死んだと思われていた“空白の3年間”にあたるため、ワトソンの書き間違いか、意図的に改変したものではないかと言われています。

ベインズ警部とグレグスン警部

ドラマでは、ベインズ警部は〈ウィステリア荘〉でホームズたちと会っていますが、原作ではロンドン警視庁のグレグスン警部と一緒にベイカー街を訪ねています。2人は協力して捜査にあたっているところでした。

ちょうどホームズがエクルズ氏から話を聞こうとしたときだったので、2人も加わって一緒に聞いています。

ホームズの推理

ドラマのホームズはエクルズ氏から話を聞いてすぐに〈ウィステリア荘〉へ向かっていますが、原作ではその前に不動産屋に電報を打ち、その結果をもとにいろいろと推理しています。

  • スコット・エクルズが招待された理由
    ガルシアは彼をアリバイ証人にするため、意図的に接触し、交友関係を結んで事件当夜に自宅に招きました。エクルズは伝統的なイギリス人らしい貫禄を持つ人物で、証人にふさわしいと考えたのです。
  • 午前1時のからくり
    エクルズが〈ウィステリア荘〉に泊まった夜、ガルシアはわざわざ彼の部屋へ行って「いま1時だ」と告げています。これは嘘で、実際は12時前だとホームズは推測しています。つまりガルシアはその嘘によって生じた空白の1時間にムリロ暗殺を決行し、午前1時までに帰宅するという計画を立てていたのです。
  • ガルシアに届いた手紙
    事件の夜、ガルシアが受け取った手紙には、「表階段、最初の廊下。右へ7つ目」と密会場所が指定されていました。この“7つ目”という部分で、ホームズは相当に大きな邸宅だと推理し、遺体発見現場付近にある大きな邸宅のリストを不動産屋から取り寄せています。

目撃したのはワトソンではなく…

ホームズたちが〈ウィステリア荘〉を調べていたとき、ワトソンは窓の外に怪しい人物がいることに気付きます。

彼はのちに〈ウィステリア荘〉に雇われていたコックだと判明しますが、原作では目撃したのはワトソンではなく、警備についていたウォルターズ巡査でした。

〈ウィステリア荘〉の使用人とコックは、実はガルシアの忠実な同志で、彼とともにムリロ暗殺計画に加わっていました。ドラマでは説明が省かれていましたが、万が一ガルシアが戻ってこなかった場合は隠れ家へ逃げ込むよう、あらかじめ手はずができていたのです。

コックが戻ってきた理由

コックはなぜ、わざわざ〈ウィステリア荘〉へ戻ってきたのか? これはドラマでは「時代にそぐわない」としてまるっと削除された部分で、彼の信仰に関わってきます。

ブードゥー教徒だった彼は、暗殺計画を実行する前、伝統に従ってキッチンで“儀式”を行っていました。〈ウィステリア荘〉のキッチンでは、ミイラのようなもの、鶏の残骸、大量の血が入ったバケツ、焼け焦げた骨の小片などが見つかっています。

これらのものをどうしても放っておけず、偵察に戻ったのです。抜け目のないベインズ警部は、彼が戻ってくることを見越してそれらをそのままキッチンに放置し、罠を張ったのでした。

ミス・バーネットの救出

ドラマでは、駅でミス・バーネットを救出したのはホームズとワトソンでしたが、原作では〈ハイゲーブル荘〉の元庭師ワーナーです。〈ハイゲーブル荘〉をクビになった彼は、ホームズに協力して情報を提供し、さらにヘンダスンを見張る役割を担っていました。

ヘンダスンが馬車で逃げ出すのを見たワーナーは駅まで追いかけ、ミス・バーネットが列車から飛び降りるのを見て加勢し、彼女を馬車に乗せてホームズが宿泊している宿に連れてきたのです。

ベインズ警部もヘンダスンを見張っていて、逃亡を阻むため私服の刑事を駅に張り込ませていました。そのため、ミス・バーネットが逃げ出してワーナーに助けられ、ホームズのもとへ連れてこられたことを知ったのです。

ヘンダスンの正体

ドラマのホームズはヘンダスンの正体がドン・ムリロだと気付いていましたが、原作ではこの時点でも気付いておらず、ベインズ警部に「いったい何者なんだね?」と聞いています。

ヘンダスンが「サンペドロの虎」と呼ばれる独裁者であることも、ガルシア宛の手紙に書かれていた「緑と白」がサンペドロの国旗の色だということも、ホームズはベインズ警部から聞かされて知ることになります。

法律を信じるのはベインズ

ドラマでは、ムリロが正当防衛で罪を逃れるのでは…と懸念するホームズとベインズ警部に対し、ワトソンが「私は法を信じているよ」と反論していましたが、原作では、このセリフを語るのはワトソンではなくベインズ警部でした。

ワトソンはホームズと同じく、「弁のたつ弁護士ならば、あれは正当防衛だったと言いのがれることもできるだろう」と言っています。

ドン・ムリロの最期

ドラマでは、駅でムリロを取り逃がしてしまったホームズが、列車を見送る際に暗殺者が乗り込んでいることに気付き、にやりとする場面が加えられていました。その後、ムリロが列車内で銃殺されたと思われるシーンも。

これは原作にはありません。原作ではムリロと仲間たちはまんまと追っ手を振り切って逃亡し、消息を絶ちます。6か月後、マドリードのホテルで侯爵と秘書を名乗る2人組の男が惨殺体で発見されます。犯人は捕まりませんでした。

ベインズ警部はその2人の人相風体を記した手配書を持って、ベイカー街を訪れます。それを見たホームズは、正義の鉄槌がくだされたことを確信します。

グロテスクの意味

ドラマの冒頭、ホームズとワトソンが「奇怪」という言葉について語り合う場面がありました。これ、原作では「グロテスク(grotesque)」なのです。

ワトソンは「グロテスク」の定義を「怪奇な、異様な」と表現し、ホームズはそれ以外に「悲劇的な、まがまがしいもの」という意味合いがあるような気がする、と語っています。

日本で「グロテスク」というと、生々しさや気持ち悪さといった残忍なイメージを思い浮かべますが、英語の「グロテスク」は「得体の知れないもの」に近いのかな、と思いました。ハロウィンの衣装なども「グロテスク」と形容するらしいです。

原作では、〈ウィステリア荘〉のキッチンにあった血や骨について、ホームズが最後に種明かしをしています。そして「怪奇(グロテスク)から身の毛もよだつ(ホリブル)までは、ほんのひとまたぎにすぎないのさ」と締めくくっています。