シャーロック・ホームズの冒険*第27話「レディー・フランシスの失踪」あらすじ感想

海外ドラマ「シャーロック・ホームズの冒険」キャストあらすじ

この記事には広告を含む場合があります。

記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。

「シャーロック・ホームズの冒険」記事一覧

海外ドラマ「シャーロック・ホームズの冒険」第27話「レディー・フランシスの失踪」のあらすじと感想です。

休暇中のワトソンが滞在先のホテルで女性の失踪事件に遭遇し、駆けつけたホームズとともに追跡捜査をする話。原作と違っている部分が多く、ラストシーンの悲劇には少し重苦しい余韻が残りました。

前半に登場する美しい湖畔のホテルのロケ地には、ダーウェント湖のそばにあるアンダースカーマナー(Underscar Manor)が使用されました。

第27話「レディー・フランシスの失踪」あらすじ

休暇で湖水地方のホテルに滞在中のワトソンは、個性豊かな女性レディー・フランシスと出会う。彼女の行動が気になったワトソンは、謎の男が彼女をつけ回していることや、兄のラフトン伯爵が金の要求を拒んだことなどを、逐一ホームズに報告していた。

ある日、同じホテルに滞在中のシュレシンジャー少佐が寄付集めのための講演を行った直後、彼女は突然姿を消してしまう。彼女に危険が迫っていると察知したホームズはホテルに駆けつけ、ワトソンとともに彼女の行方を追うことに。

ラフトン伯爵によると、レディー・フランシスは貴重な宝石を相続し、ペルメルの銀行に預けているという。2人が銀行を訪ねると、そこに謎の男が現れる。彼こそレディー・フランシスを拐かした人物だと思い込んだワトソンはとっさに掴みかかるが、彼の正体はレディー・フランシスに想いを寄せるフィリップ・グリーン卿だった。

ホームズは見るからに人格高潔なシュレシンジャー少佐が、実は大胆不敵な詐欺師ヘンリー・ピーターズであることを突き止めていた。彼は財産を持った独身女性に近づき、宗教的感情に訴えて丸め込むのだという。

やがてホームズはレディー・フランシスの宝石が質入れされているのを見つけ、協力を申し出たグリーン卿を質店に張り込ませる。そこに現れたのは、ホテルでシュレシンジャーに付き添っていた看護婦ミス・コルダーだった。

グリーン卿はコルダーを尾行して家を突き止めるが、そこに新品の柩が運び込まれてくるのを見て一刻の猶予もないと焦る。それを聞いたホームズは令状を待たずにピーターズの家に乗り込み、柩を見つけ出すが、中に入れられていたのは小柄な老婆だった。

ピーターズとレディー・フランシスの失踪は無関係ではないか、と言うワトソン。納得がいかないホームズは一晩中考え続け、ついに柩の問題点に気付く。

翌朝早く、墓地へと馬車を走らせるホームズとワトソン。今まさに埋葬されようとしている柩を引き揚げさせると、中には小柄な老婆だけではなく、その下にクロロホルムで眠らされたフランシスが横たわっていた。

グリーン卿はクロロホルムの後遺症が残るレディー・フランシスを、彼女が少女時代を過ごした懐かしい地に連れて行く。

グリーン卿からの手紙には、彼女を救出したことに対するお礼が同封されていたが、ホームズは悲劇を防げなかったことを理由に「受け取れない」と拒む。

登場人物はこちら

海外ドラマ「シャーロック・ホームズの冒険」キャストあらすじ ネタバレ有「シャーロック・ホームズの冒険」各話あらすじ・感想・キャスト・原作比較・時代背景

第27話の感想(ネタバレ有)

魅力的なレディー・フランシス

ベーカー街221Bで、旅先から送られてきたワトソンの手紙を読むホームズ。

今回は珍しく、依頼人が登場しません(原作には存在します)。いつもとは異なるオープニングで、ホームズの推理を表すアイテムとしてチェスの駒が印象的に使われていました。

深刻な表情で手紙を読むホームズとは違い、ワトソンのほうは明るい光の降り注ぐ湖水地方での休暇を満喫しています。美しく個性豊かな女性レディー・フランシスに興味を引かれ、彼女から目を離せないワトソン。

原作にはほとんど登場せず、印象の薄いレディー・フランシスですが、ドラマでは「一風変わった性格の持ち主」という設定になっていて、シェリル・キャンベルが魅力的に演じていました。

スイスから湖水地方へ

原作では、ホテルのある場所はスイスのローザンヌという設定ですが、ドラマは予算の都合で湖水地方に変えられています。

ロケ地はダーウェント湖を見下ろす丘の上に建つカントリーハウス、アンダースカーマナー(Underscar Manor)。

アンダースカーマナー
ダーウェント湖

前半の湖水地方の映像は本当に素敵でしたね~。なんならもっと見せてほしかったです。

後半は舞台がロンドンに移り、いつもの色調に。前半が明るかっただけに、悲劇的なラストシーンが際立ちました。

原作との違い

ここからは深町眞理子さん訳の創元推理文庫版『シャーロック・ホームズの事件簿』に収録されている「レディー・フランシス・カーファクスの失踪」をもとに、ドラマと原作との違いを見ていきます。

発表は1911年、短編の中では42番目の作品にあたります。

依頼人

ドラマには依頼人が登場せず、休暇で湖水地方を訪れたワトソンが失踪事件に遭遇する…という設定に変えられていました。

原作ではすでにレディー・フランシスは失踪していて、彼女の身を案じた元家庭教師がホームズに捜索を依頼し、ロンドンを離れられないホームズの代わりに、ワトソンが追跡調査に出向く…という流れです。

そのため、湖畔のホテルでの彼女の登場シーンはほぼドラマオリジナル。

これ読んだときに思ったのですが、「バスカビル家の犬」と同じパターンなんですよね。ホームズがワトソンに内緒で現地に行って、途中から姿を現すくだりも一緒。だからドラマ版は変更したのかな?

シュレシンジャー少佐

ドラマのシュレシンジャーはボーア戦争の英雄で、戦争で足を負傷して車いすを使っていました。原作は少佐ではなく「博士」で、歴史研究家という設定。布教に打ち込むうちに疫病に感染し、療養中ということになっています。

原作では最初からシュレンジャー夫妻として登場するのですが、ドラマでは付き添い看護婦に変えられていましたね。後半になって彼女がシュレンジャーの妻であり、共犯者であることが明かされました。

また、ドラマではこの事件の前に、ヘレナという女性を殺していると思わせるシーンがありましたが、原作にはありません。彼らは悪党ですが殺人には手を染めておらず、そのためレディー・フランシスを殺すことに怖じ気づき、柩ごと埋めようとしたのではないか…とホームズは推理しています。

ラフトン伯爵

レディー・フランシスの兄ラフトン伯爵は、原作には登場しません。ホームズが彼女の家柄についてワトソンに説明する際、「伯爵家の財産を継いだのは男系のほうだった」と言うくだりがあるだけ。

彼がフィリップ・グリーン卿と妹の仲を引き裂いたという話も、原作にはありませんでした。

フィリップ・グリーン卿

彼がレディー・フランシスを追ってきたという設定は原作と同じです。

ドラマでは、ホームズと合流したワトソンが銀行で彼を見つけてつかみかかる…というシーンになっていましたが、原作ではワトソンがひとりで調査中に町で遭遇しています。

そして2人が路上でつかみ合いの喧嘩を始めたのを見て、フランス人の労働者になりすましていたホームズが止めに入り、ワトソンの前に姿を現す…という流れでした。

ロンドンに戻った後、彼が捜査に協力して質店を見張るところは原作どおりです。

特注品の柩

詐欺師ピーターズの家を突き止めるものの、レディー・フランシスの居場所を見つけ出すことができないホームズ。

一晩中悩んだ彼は、葬儀屋が語っていた「柩は特注品」という言葉を思い出し、特殊なサイズの柩の中に老婆の遺体とレディー・フランシスの2人が入っている、というトリックを見破りました。このトリックは原作と同じです。

ドラマでは墓地に柩が埋められる直前に駆けつけていましたが、原作は墓地ではなく、ピーターズの家の前。柩が霊柩車に乗せられ、墓地へ向かおうとする寸前でした。

逃げるピーターズをワトソンが撃つシーンも原作にはなく、レストレード警部が駆けつけて逃亡したピーターズを追う、という流れ。

シュレシンジャー夫妻がカムフラージュに使った老婆の遺体は、ドラマでは夫人の看護婦となっていましたが、原作は夫人の乳母で、施設から引き取った三日後に老衰で亡くなったということになっています。

レディー・フランシス

無事に救出されるものの、クロロホルムの後遺症で以前のような明るさを失ってしまったレディー・フランシス。

グリーン卿からの手紙をワトソンが読む場面も、ホームズが「これほどの失意は僕にとって初めての経験だ」と落ち込む場面も、原作にはありません。

グリーン卿がうつろな表情のレディー・フランシスに寄り添う場面も原作にはなく、このラストシーンによって作品の印象が原作とはずいぶん違っています。