シャーロック・ホームズの冒険*第16話「第二の血痕」あらすじ感想

海外ドラマ「シャーロック・ホームズの冒険」キャストあらすじ

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海外ドラマ「シャーロック・ホームズの冒険」第16話「第二の血痕」のあらすじと感想です。

今回は深刻な政治事件ということで、全体的に緊張感が漂います。劇伴も、いつもより重厚感があって少し怖かったです。依頼人はなんと英国の首相。聞けば「戦争にもなりかねない危険な状況」だと言います。

時折はさまれるユーモラスなシーンや、ホームズがめずらしく喜びを爆発させるシーン、そして気持ちのいい結末と、とにかく見どころが多い回。

事件の内容はもちろん、会話などの細かい部分までかなり原作に忠実に再現されていました。

第16話「第二の血痕」あらすじ

ベリンジャー首相とホープ外相が極秘裏にベイカー街を訪れる。ホープが自宅で保管していた重要文書を紛失し、いますぐ取り戻さなければヨーロッパ中に大混乱を引き起こすことになるというのだ。

それはさる外国の君主からの書簡で、英国の最近の植民地政策に立腹し、一時的な激情で書かれた私文書だった。
首相は文書を盗んだのが君主の敵方にあたる国で、英国と戦わせるために書簡を公表するつもりだろうと推測していた。

ホームズはもはや回収不可能だと判断するが、思い当たる3人のスパイのうちの一人エドワルド・ルーカスが昨夜自宅で殺されたことを知り、2つの事件が関連していると睨む。

首相と外相が去った後、入れ替わりにホープ外相の妻ヒルダが現れる。彼女は夫の身に起こった出来事を知りたいと言い、ホームズに真相を尋ねるが、ホームズは断固として断る。

やがてルーカスを殺した犯人が、彼のパリにおける妻だと判明。ルーカスは別名を名乗り、パリとロンドンで二重生活を送っていた。ホームズはなぜ未だに盗まれた文書が公表されないのか、不審に思う。

ルーカス事件を担当したレストレード警部に頼まれ、ホームズとワトソンは事件現場へ赴く。ルーカスが殺害された部屋の絨毯には彼の血が染み込んでいたが、絨毯の下の床にはついていなかった。誰かが絨毯を動かし、向きを変えていたのだ。

ホームズは警備を担当した警官を問い詰めるようレストレードに命じ、その間にすばやく絨毯をめくって床板を外してみるが、中は空っぽだった。警官によると、事件翌日に若い女性が現れて事件現場を見たとたん気絶し、パブに気付けのブランデーを取りに行っている間に姿を消したという。

ホームズとワトソンはホープ外相の家を訪ね、夫人と面会する。ホームズが盗んだ文書を返すよう要求すると、ヒルダは観念して文書を渡し、事件の真相を告白する。

ルーカスが殺された日、ヒルダは彼に呼び出されてゴドルフィン街の家を訪ねていた。ルーカスは彼女が若い頃に書いた恋文を手に入れ、それを使って脅迫してきたという。

政治に疎いヒルダは恋文を夫に見せたくない一心で、ルーカスに言われたとおり夫の文書箱の中から書簡を盗み出し、恋文と引き換えに彼に渡した。そこへ偶然ルーカスの妻が現れ、ヒルダを浮気相手と勘違いして逆上し、その場で彼を刺し殺したのだ。

翌日、ホームズに会ったヒルダは書簡が重要なものだと知った。そこでルーカスの家へ行き、警備の警官を騙して床下に隠してあった書簡を取り返したのだった。

ホープが首相を連れて帰宅し、ホームズはもう一度文書箱の中を確認するようホープに促す。しぶしぶホープが文書箱を開けるのを見て、ホームズは密かに書簡を戻し入れる。書簡を見つけたホープは驚愕するとともに喜ぶ。

ホームズとワトソンが帰ろうとすると、首相が「何か隠れた事情がありそうだが?」と聞く。ホームズは「我々にも外交上の秘密がありましてね」と答える。

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海外ドラマ「シャーロック・ホームズの冒険」キャストあらすじ ネタバレ有「シャーロック・ホームズの冒険」各話あらすじ・感想・キャスト・原作比較・時代背景

第16話の感想(ネタバレ有)

依頼人は英国首相

不安をあおる重苦しい音楽が印象的に使われていて、少しいつもと違う雰囲気に感じました。英国首相から、紛失した書簡を回収しなければ戦争に突入するかもしれない…という深刻な相談を受けたホームズ。

当時のヨーロッパの情勢は、それほど緊迫していたということでしょうか。ちなみにこの作品が発表されたのは1904年で、その10年後に第一次世界大戦が始まっています。

しかしホームズの態度はいつも通りで、書簡の内容を明かそうとしない首相に対して「お役には立ちかねますので、これ以上お話を続けるのも時間の無駄かと」とバッサリ。話を聞いた後も「戦争の準備をなさい」と辛辣な意見を述べます。

相手が誰だろうと一切忖度しない。気持ちいいったらないですね!

笑いを誘った名シーン

盗まれた書簡はなぜか公表されないまま時間が経過し、ホームズもお手上げ状態に。考えにふけってうっかり新聞を燃やしてしまい、ワトソンと2人であわてて火を消すシーンがありましたが、これは原作にはありません。一瞬のシーンでしたが、ほっこりしました。

あとは外出先でレストレード警部に見つかって、ホームズとワトソンがとっさに愛想笑いを浮かべるシーン。これも原作にはないシーンで、面白かったです。

ルーカスが殺害された部屋でのホームズ、ワトソン、レストレード警部のやりとりも最高でした。文書紛失事件については一切知らないレストレード警部の目を盗み、床の絨毯をはがして書簡の隠し場所を探るホームズ。床に這いつくばって必死になっているホームズの姿は必見です。

そのあとの、レストレード警部が戻ってきたときに平然とした顔で迎えるところも見事でした。このシーンは原作にもあって、このように描写されています。

はいってきた彼が目にしたのは、あいかわらずものうげにマントルピースに寄りかかり、しかたなくつきあってやっているとでも言いたげに、あくびを噛み殺しているホームズの姿だった。

ここは、読んでいて笑っちゃいましたね。

事件解決に歓喜するホームズ

夫人から書簡を取り戻したホームズは、ホープ外相に「文書箱の中をもういちど確認してみては?」と提案。そして彼が箱を開けて中の書類を確認している隙に、しれっと問題の書簡を紛れ込ませました。

「見落としていたなんて信じられない」と言いつつも、書簡が見つかったことを喜ぶホープ。それに対し首相のほうは、ホームズが真相を隠していることに気づきますが、ホームズは秘密を明かしませんでした。

一番の見どころは、やはりラストシーン。ホームズの機転で誰ひとり傷つくことなく事件は終結。ホープの家を出たホームズは、「大成功!」と両手を挙げて飛び上がり、喜びを露わにします。それを見ているワトソンも笑顔。

なんとも気持ちのいい終わり方!

ちなみに原作は、ホームズが首相に「外交上の秘密というものがありまして」と返すところで終わっています。

原作との違い

ここからは深町眞理子さん訳の創元推理文庫版『シャーロック・ホームズの復活』に収録されている「第二の血痕」をもとに、ドラマと原作との違いを見ていきます。

発表は1904年、短編の中では37番目の作品にあたります。

ホームズの隠居と最後の記録

ドラマにはありませんでしたが、原作では、物語の冒頭にワトソンが衝撃の告白をしています。

この記録を書いているとき、ホームズはすでに探偵業をやめ、ロンドンを離れてサセックス州で推理学研究と養蜂に明け暮れる隠遁生活を送っている、というのです。そして過去の活躍について公表されることを嫌うようになったと。

そこでワトソンは、かねて機が熟したら発表すると約束していたこの「第二の血痕」を、冒険譚の最後にすると宣言しています(が、その後も記録は続きます)。

原作では、この「第二の血痕」が 短編集『シャーロック・ホームズの復活(The Return of Sherlock Holmes)』 の最終話となっています。

著者のアーサー・コナン・ドイルは「最後の事件」でホームズを抹殺しようとしたものの、復活を熱望する読者の声に負けて10年後に生還させました。それでもやっぱりホームズを嫌い、今回で最後にしようと思っていたのでしょうか…。

文書を箱に戻す方法

ドラマでは、夫人は夫が持っている鍵を使って文書箱を開け、保管されていた書簡を盗み出していましたが、原作では鍵の型を取ってルーカスに渡し、ルーカスが合鍵を作って夫人に渡す、という方法でした。

そのため、ドラマでは夫人とルーカスが会ったのは事件当日ということでしたが、原作ではもっと前から会っていたのではないかと思います。

そして夫人から書簡を取り戻したホームズは、ドラマだと、ホープが文書箱を開けて中を調べているときに隙を見てさりげなく紛れ込ませるという神業をやってのけています(ちょっと無理があるような気もしますが)。

原作では、ホームズはホープが帰宅する前に夫人が持っていた合鍵を使って文書箱を開け、書簡を中に入れて寝室に戻していました。