シャーロック・ホームズの冒険*第18話「修道院屋敷」あらすじ感想

海外ドラマ「シャーロック・ホームズの冒険」キャストあらすじ

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海外ドラマ「シャーロック・ホームズの冒険」第18話「修道院屋敷」のあらすじと感想です。

修道院屋敷と呼ばれる豪邸で深夜に起きた殺人事件。急遽ホプキンズ警部に呼び出され、現場へ赴くホームズとワトソンでしたが、到着すると事件は解決したとのこと。でも何かおかしい…?

今回のヒロインを演じたのはアン・ルイーズ・ランバート。役の設定と同じく、彼女もオーストラリア出身です。ロケ地には、第6話「まだらの紐」でも使用されたチェシャー州のアドリントン・ホールなどが使われました。

第18話「修道院屋敷」あらすじ

ホームズとワトソンはホプキンズ警部に呼び出され、修道院屋敷と呼ばれる館に向かう。館の主人ユースタス・ブラッケンストールが強盗に襲われ死亡したのだが、夫人のメアリーの証言により、犯人は地方一帯を荒らしていたランダル親子と判明する。

ホームズが改めて話を聞くと、メアリーは昨夜遅く館に侵入してきた3人の男と鉢合わせ、殴られて気を失っている間に椅子に縛り付けられたという。そして目の前で強盗が夫のユースタスを殴り殺し、銀食器を奪って逃げるさまを目撃したと話す。

ホームズは現場に残された3つのワイングラスや、メアリーを縛るのに使われた呼び鈴の紐を気にしつつも、ホプキンズに後を任せて帰路に就く。だが途中でメアリーとメイドのテレサが真犯人をかばっていることに気づき、館へ引き返す。

実際に使われたワイングラスは2個だけで、飲み残したワインを3個目についで3人が飲んだように見せかけたことに気づいたのだった。

館の庭で無惨に破壊された愛犬の墓石が見つかり、池の底からは盗まれたはずの銀食器が見つかる。ホームズはメアリーが夫の暴力に怯えながら暮らしていたことや、ユースタスを殺した犯人が強靱で身軽なうえに頭の切れる男であることを導き出す。

ホームズはサザンクロス海軍の事務所へ行き、メアリーとテレサがオーストラリアからイギリスへ渡る際に乗ったジブラルタル・ロック号について調べる。すると、つい最近船長に昇進したというジャック・クロッカーという船員が浮上する。

ホームズはベイカー街にクロッカーを呼び出し、昨夜起こったことをすべて正直に話すよう告げる。クロッカーは後悔はしていないと言い、ユースタスを殺した経緯を打ち明ける。

クロッカーはジブラルタル・ロック号でメアリーと出会い、彼女に恋をした。だが彼女は船を降り、イギリスでユースタスと出会って結婚した。彼女の幸せを願っていたクロッカーだったが、つい最近メイドのテレサと偶然会い、メアリーが酷い目に遭っていることを知った。

夫のユースタスは酒に酔って暴力を振るい、彼女の犬を焼き殺し、彼女もそうしてやると脅したのだった。メアリーと再会したのも束の間、クロッカーは一週間後には出航することが決まり、彼女に別れを告げるため館を訪れたという。

気持ちを確かめ合った2人だったが、その現場を目撃したユースタスはメアリーを罵倒し殴りつけた。そしてクロッカーに襲いかかり、殺そうとした。もみ合いの末、クロッカーは火かき棒でユースタスを殴り殺したのだ。

ホームズは呼び鈴の紐に手が届くのは軽業師か船員だけだということ、椅子に縛りつけた紐の結び方が船員独特のものだったことから、クロッカーに辿り着いたことを明かす。

ホームズはワトソンに陪審員役を命じ、クロッカーに無罪を言い渡す。そして1年後にはメアリーのもとに戻り、自分たちの判決が正しかったことを2人で証明してほしいと告げる。

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海外ドラマ「シャーロック・ホームズの冒険」キャストあらすじ ネタバレ有「シャーロック・ホームズの冒険」各話あらすじ・感想・キャスト・原作比較・時代背景

第18話の感想(ネタバレ有)

撮影裏話

今回のお話、放送は第3シーズンの5話目にあたるのですが、撮影されたのは最初でした。つまり、ワトソン役がエドワード・ハードウィックに変わって初めて撮影されたエピソードなんです。

そのせいかワトソンのセリフも出番も控えめで、ちょっとぎこちない感じがします。ラストシーンの2人のやりとりにはほっこりさせられましたけどね。

そして物語の中盤。ホームズが呼び鈴の紐を調べるために壁によじのぼるシーンには、電気ケーブルと留め金がはっきり映ってしまうというミスが…! めちゃくちゃ目立つので、逆に気づかない人も多いかも。私も最初は気づかず、2度目に見たときに気づきました。

「ゲームが始まったぞ」

早朝、寝ているワトソンを叩き起こすホームズ。そのときホームズの名台詞として有名な「The game is afoot!」という言葉が出てくるのですが、今回のドラマでは文字通り「ゲームが始まったぞ」という翻訳になっていました。

しかしこのセリフ、もともとはシェイクスピアの『ヘンリー五世』に出てくるセリフなんですよね。ここでの「game」は猟鳥や猟獣を意味していて、「獲物が飛び出したぞ」という訳になっています。そのため、ホームズのセリフもそちらに合わせて訳されることが多いようです。

原作との違い

ここからは深町眞理子さん訳の創元推理文庫版『シャーロック・ホームズの復活』に収録されている「アビー荘園」をもとに、ドラマと原作との違いを見ていきます。

発表は1904年、短編の中では36番目の作品にあたります。

“修道院屋敷”の意味

サブタイトルの原題は「The Abbey Grange」。邦訳は「修道院屋敷」「アビー荘園」「僧坊荘園」などいろいろ。Abbeyは「修道院」、Grangeは「農場」「農園」のほか、「農場が付属した豪農の屋敷」「荘園や修道院に付属した農場」という意味もあるようです。

この作品に登場するブラッケンストールの館も、もとは“農園付きの修道院”だったようです。

夫と父親の飲酒癖

ドラマでは、メアリーは夫ユースタスの飲酒癖について「結婚生活を傷つけるほどでもない」とお茶を濁すような言い方をしていましたが、原作でははっきりと「夫婦仲がしっくりいかなかった最大の理由は、夫に救いがたい飲酒癖があったこと」だと最初に明言しています。

そして夫に縛り付けられて暮らす結婚生活が決して幸せではなかったことを、訴えるように語っています。

ユースタスの飲酒癖はホプキンズもよく知っていて、「いったん酔うと手がつけられない」「警察の厄介になったことも一度や二度じゃない」とホームズに教えています。

ドラマではホームズが庭で犬の墓石を見つけ、メアリーの飼い犬が殺されたことに気づく…という展開になっていましたが、原作ではホプキンズが早い段階で話し、「揉み消すのに苦労したらしい」と言っています。

また、ドラマではメアリーの父親にも飲酒癖があったという設定になっていて、「父の暴れる姿を見ていたので、主人の暴力にも耐えられるかと思った」とメアリーは語っていますが、こちらは原作にはありません。

ホームズの疑問点

いったんは帰路に就いたものの、やはり納得がいかず途中で引き返すホームズ。原作でも同様に、途中の駅で列車を降り、修道院屋敷に引き返しています。

ドラマではその理由として3つのグラスの謎について語っただけでしたが、原作では以下の疑問点を挙げています。

  • 荒稼ぎをしたばかりの盗賊なら、しばらくはその稼ぎで平穏な暮らしを楽しむはず
  • メアリーに見つかり、悲鳴をあげさせまいとして殴るのはおかしい
  • 人数で圧倒できるのに、わざわざ殺すのは解せない
  • 高価な物はほかにもあるのに、盗まれたのはわずかな銀食器だけ
  • 盗賊がワインをあけ、残っているボトルを置き捨てにしていくだろうか

そして館に戻ると、呼び鈴の紐が意図的に切られていることや、椅子の座部に血が付着している(メアリーが座っていたときに殺人が行われたのなら血は付かない)ことを発見し、メアリーとテレサが嘘の証言をしていると確信しました。

ホプキンズ警部に与えたヒント

ドラマでは省かれていましたが、ホームズはクロッカーを呼び出す前に、ベイカー街221Bでホプキンズ警部と会っています。

ホプキンズ警部は犯人が銀食器を池に捨てた理由について頭を抱えていましたが、ホームズに「隠し場所としてはうってつけだ」と言われ、納得します。

さらに、ランドル一味が逮捕され、昨夜の犯行について否定しているから、「まだ警察がつかんでいない新しい組織かもしれない」と言います。

ホームズは彼に求められて「目くらまし」というヒントを与えるのですが、ホプキンズ警部には何のことかさっぱりわかりません。

メアリーの抱擁

ホームズはクロッカー船長を呼び出し、事件の真相を聞き出しました。このクロッカー船長について、原作では「いままでこのドアをくぐった男のうちでも、とりわけてすばらしい男のなかの男」と表現しています。

メアリーとクロッカーの出会いと再会、そして事件に至った経緯については原作どおり。ただし、ベイカー街221Bにメアリーがやってくる場面は原作にはありません。

ドラマでは、クロッカーに無罪放免を言い渡し、殺人を見逃す決断を下したホームズに、メアリーが感極まって抱きつくシーンがありました。ものすごーくバツが悪そうにメアリーを引き離すホームズ…笑ってしまいました。

原作は、ホームズがクロッカーに「一年たったらあの女性のもとへ帰りたまえ」と言い、我々のくだした判決が正しかったことを示してほしい、と告げる場面で終わっています。ドラマにあったワトソンとの会話はありません。