WOWOWの連続ドラマ「コールドケース2-真実の扉-」第7話“光と影”のあらすじと感想(ネタバレ有)です。
今回は2008年に小劇団で起こった殺人事件。
容疑者として浮上したのは、一癖も二癖もある劇団関係者たち。「劇団ってこんな恐ろしいとこなの?」って思ってしまいました。
もちろんドラマなので全部が全部じゃないだろうけど、特殊すぎる演劇の世界についていけず、犯人にも被害者にも感情移入できませんでした。
今回の元ネタは、アメリカ版「コールドケース」シーズン3第18話“Willkommen”です。
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第7話「光と影」のあらすじ
2008年に起きた殺人事件の凶器が偶然見つかる。殺されたのは小さな劇団で役者を志していた青年・神林イサム(井上芳雄)。凶器の包丁からは複数の指紋が検出され、百合(吉田羊)たちは劇団関係者を調べることに。
神林の婚約者・道広チエ子(村川絵梨)は、神林が劇団のオーディションを受けて入った新人で、先輩の曽根崎(深水元基)から脅されていたと語る。
だが曽根崎は、演出家の新屋(北村有起哉)が神林と言い争っていたと言い、包丁は新屋が持っていたものだと証言する。新屋は稽古の一環でやるテーブルゲームで本物の包丁を使っていたが、事件の直前に盗まれたと話す。
当時、劇団員の柊リン(飯豊まりえ)は相手役だった神林に告白し、演出助手の得地(山本圭祐)はそれを聞いて息巻いていたと言う。だが柊は野心家で、演技にリアリティを持たせるために神林を利用しているだけだった。
舞台の初日に大きな事務所の社長が見に来ると聞いた柊は、事件当日、曽根崎にある計画をもちかけていた。神林に怪我を負わせ、舞台に立てなくしようとしたのだった。計画は実行されなかったが、その会話を聞いていた得地が神林を襲った。
舞台に立つのが夢だった得地は、神林を降ろして代わりに自分が舞台に立とうとした。初めは足を怪我させるだけのつもりが、神林の「演技が下手すぎる」「演出助手はやることがない」という冗談に激昂し、刺してしまったと話す。
開演前、神林は自分の本当の居場所がここではないことに気づき、パンフレットにチエ子へのメッセージを残していた。チエ子は百合からパンフレットを渡され、神林が結婚を望んでいたことを知る。
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ネタバレ有「コールドケース2-真実の扉-」登場人物(キャスト)一覧・全話あらすじ感想第7話で使用された曲
- 「出会いのかけら」ケツメイシ
- 「HANABI」Mr.Children
- 「アイのうた」福井舞
- 「素直になれたら」JUJU feat. Spontania
- 「HOME」清水翔太
第7話の感想
正直で純粋すぎた男
被害者の神林イサムを演じた井上芳雄さんは、舞台で活躍されている方。「ミュージカル界のプリンス」と呼ばれているそうです。確かにちょっと纏っている空気が違います。
劇場近くのコンビニ「エコマート」で働く神林は、正直で純粋な心の持ち主。「あちら側の人間になりたい」とオーディションを受けて一発合格し、婚約者のチエ子をほったらかしにして芝居にのめりこんでいきます。
彼は華やかな舞台でスポットライトを浴びることだけを夢見ていたのかもしれないけれど、そこはプライドや嫉妬や見栄や虚勢がうずまく、一筋縄ではいかない世界でした。
曲者ぞろいの役者たち
今回の登場人物は「役者」ということもあって、全員クセモノばかりでしたねぇ。
飯豊まりえさん演じる女優・柊リンのえげつなさ。相手役の神林に告白してその気にさせ、裏では演出家の新屋に色仕掛けで迫り、あげくのはてには曽根崎に神林を襲わせる計画を立てるという恐ろしい女性でした。
北村有起哉さんが演じた演出家の新屋も、とんだ食わせ者。知り合いの事務所の社長が舞台を見に来ると大見得を切って俳優たちを喜ばせておいて、実は知り合いでもなんでもなかったというみじめなオチ。
山本圭祐さん演じる演出助手の得地は、自尊心と自己愛の塊。他人を蔑むことで、自分は人より優れているという危うい自己価値観を正当化しています。
「お前らのみみっちい世界が生んだ虚勢と、病的な野心と、不健康なプライドが、純粋にあの世界を夢見て飛び込んだ若者を殺したんだ」
立川さんが私の言いたいことを言ってくれてスッキリしました。
でも彼ら、10年経っても誰もスターになってないんですよね。小劇団で威張り散らしていた新屋の転落ぶりも哀れでした。
立川さんの「長靴をはいた猫」
芝居を毛嫌いする百合と、中学時代に「長靴をはいた猫」で主役を演じたことを今でも自慢げに語る立川さんのやりとりが面白かった。
賭けに負けた立川さんが、約束どおり被り物をして「長靴をはいた猫」を再現するラストシーンがほほえましくてよかったです。
役者であるみなさんが、劇中で演劇論を熱弁したり、芝居や役者に対してあーだこーだ言ったりするのにニンマリしてしまう回でした。
アメリカ版との違い
ここからは、元ネタとなったアメリカ版「コールドケース」シーズン3第18話“Willkommen”との違いについて説明します。
サブタイトルの“Willkommen”は、ドイツ語で「ようこそ」という意味。ドイツのベルリンを舞台にしたミュージカル「キャバレー」のオープニングナンバーのタイトルです。
アメリカ版では、被害者の男性は「キャバレー」のオーディションを受けてクリフ役に抜擢されたタクシー運転手のデニス。“Willkommen”は、彼がオーディションで歌った曲でした。
ストーリーや登場人物の役割はほぼ同じなのに、日本版のほうが陰湿な印象を受けるのは、この演目の違いによるところが大きいのではないかと思う。
ミュージカルなので、歌ったり踊ったりする稽古の風景を見ているだけでも楽しいんですよね。演出家も女優もやってることは日本版と同じだけど、どこかカラッとしてる。
でも、だからって日本版で明るいミュージカルをやるのもなんか違う気がする。やっぱりここは陰湿な小劇団の裏舞台をネチネチ見せるほうが日本らしいのかな。
日本版で演出助手だった彼は、アメリカ版では音楽監督という位置づけ。凶器も違っていて、演出家が役作りのために隠し持っていた本物の銃が殺害に使われました。
日本版で「秋葉原通り魔事件」の模倣犯のしわざと疑われていた件は、アメリカ版では当時頻発していた強盗犯になっていました。
立川さんの「長靴をはいた猫」にも元ネタがあって、アメリカ版では「俺が中学で主演した“グリース”を見せたかった。場内騒然だぜ」というセリフになっています。
「グリース」は、1978年にジョン・トラボルタ主演で映画化もされている有名な学園ミュージカルです。
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