シャーロック・ホームズの冒険*第10話「ノーウッドの建築業者」あらすじ感想

海外ドラマ「シャーロック・ホームズの冒険」キャストあらすじ

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海外ドラマ「シャーロック・ホームズの冒険」第10話「ノーウッドの建築業者」のあらすじと感想です。

コリン・ジェボンズ演じるレストレード警部が初登場し、珍しくホームズが弱気になる回。冒頭に登場するヴィクトリア朝時代の消防車も見どころでした。

原作とはトリックの仕掛けが大幅に変更されています。原作はちょっと無理があるような気がしたので、ドラマ版のほうが納得がいくかな。

第10話「ノーウッドの建築業者」あらすじ

若い弁護士マクファーレンがホームズのもとを訪ねてくる。彼は昨夜ノーウッドで起きた事件の容疑者だったが、無実を訴え、ホームズに助けを求めに来たのだった。

ホームズは彼を追ってきたロンドン警視庁のレストレード警部を説得し、ひとまずマクファーレンの話を聞くことに。

昨日の午後、マクファーレンが勤める事務所に建築業者のジョナス・オールデーカーが現れ、遺言状を作成してほしいと頼まれたという。その内容を見ると、全財産をマクファーレンに贈るとあった。

オールデーカーは昔マクファーレンの母に好意を持っていたことを打ち明け、3か月前に夫を亡くした彼女のことが心配になり、自分の気持ちも含めてこの遺書を作ったと話す。

マクファーレンはその夜9時半にオールデーカーの屋敷を訪れ、さまざまな書類に目を通し、夜遅くなったため近くのホテルに泊まった。そして翌朝、新聞でオールデーカーと思われる焼死体が発見され、屋敷にあったステッキから自分に疑いがかけられていることを知ったという。

マクファーレンは署に連行され、ホームズは彼の無実を証明するため捜査に乗り出す。やがてオールデーカーが腹黒く執念深い男であることや、コーネリアスという人物に多額の金を支払い、遺産が一文もないことが判明する。

ホームズは浮浪者に変装して聞き込みを行い、屋敷の周辺をうろついていた元船乗りの浮浪者が最近とつぜん姿を消した、という情報を得る。

しかし重要な決め手となるものは見つからず、逆に焼け跡からはオールデーカーのものと思われるズボンのボタンが見つかる。さらに屋敷の壁に血の付いたマクファーレンの指紋が発見される。

勝利を確信するレストレード警部に対し、ホームズは「昨日調べたときはなかった」と指摘。事件の鍵を握る証人をおびき出すため、2階の部屋で藁を燃やして煙を充満させ、「火事だ」と叫ぶ。

すると隠し部屋にいたオールデーカーが慌てて飛び出してくる。壁についた指紋は、マクファーレンが遺言状を作成したときの拇印を利用して細工したものだった。

オールデーカーは債権者から逃れるため、コーネリアスという架空の人物に金を振り込んで姿を消そうと計画。かつてマクファーレンの母親に婚約を破棄され、恨みを募らせていたことから、彼女の息子であるマクファーレンを殺人犯に仕立てようとしたのだった。

焼け跡から見つかった死体は、近所にいた元船乗りの浮浪者だった。家政婦のレキシントンと共謀して浮浪者を家に呼び、オールデーカーの古着を与えていたのだ。

ホームズに感謝の言葉を口にするレストレードだったが、ホームズは「報告書には僕の名前を出す必要はない」とレストレードに手柄を譲る。

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第10話の感想(ネタバレ有)

レストレード警部初登場

レストレード警部初登場の回。といってもホームズとは既によく知った仲のようで、容疑者を追ってベイカー街221Bにやってきたときも「30分だけ時間をもらえないか」というホームズの頼みをすんなり聞き入れてくれました。

原作におけるレストレード警部の容貌はそのときによってまちまち。初登場の「緋色の研究」では“痩せたネズミのような”、「ボスコム渓谷の惨劇」では“痩せたイタチのような”、「第二のしみ」では“ブルドッグのような”と描写されています。

コリン・ジェボンズ演じるドラマ版のレストレード警部は、ネズミまたはイタチ系ですね。目が大きくて特徴があるので、覚えやすい。彼はこの後もレストレード警部として何度かドラマに登場します。

弱音を吐くホームズ

今回、ホームズは依頼人マクファーレン青年の無実を確信し捜査に奔走しますが、決定的な証拠が見つかりません。

ドラマでは食事も喉を通らず、ボサボサ頭でボーッとしながら「この事件は、レストレード君が私の依頼人を縛り首にするという不名誉な結末になりそうだ」と弱音を吐く場面もありました。

これは原作にもあるセリフ。

「どうも今回の事件にかぎり、レストレードがわれわれの依頼人を絞首台に送り、スコットランドヤードの全面的勝利に終わるという、ぼくらにとって不面目な結果に終わりそうな気がしてならないよ」

ドラマ版は原作よりもホームズとワトソンの友情を重視しているところがあって、ワトソンがホームズを心配して食事をとるように優しく助言する場面がありましたが、原作にはありません(原作のワトソンは言ってもムダだとわかって言わなかった)。

原作との違い

ここからは深町眞理子さん訳の創元推理文庫版『シャーロック・ホームズの復活』に収録されている「ノーウッドの建築業者」をもとに、ドラマと原作との違いを見ていきます。

発表は1903年、短編の中では26番目の作品にあたります。

ロンドンはつまらなくなった

ドラマの冒頭、ホームズが「ロンドンは最近、やけに面白みが薄れているね」とワトソンにグチをこぼすシーンがありました。犯罪が減ってつまらない、と不満そうなホームズ。

このセリフ、原作では“つまらなくなった理由”まで語られています。

「かのモリアーティー教授が亡きひととなって以来、このロンドンという街も、まったくつまらない土地になってしまったよ」

原作における本作は、モリアーティー教授との対決「最後の事件」で死んだと思われたホームズが帰還した「空屋の冒険」の次に発表された作品。ホームズがロンドンに戻ってきてまだ数か月という設定なので、このようなセリフになったと思われます。

レストレード警部

ドラマでは今回が初登場でしたが、原作ではシリーズ第1作となる『緋色の研究』が初登場作品。ホームズと最も多く行動をともにしたと思われる警察官です。

当初はホームズをアマチュアと見下していましたが、徐々に能力を認めるようになっていきました。ホームズのほうも、彼の捜査力を絶賛こそしていませんが、敬意を払っています。

原作においても、『緋色の研究』の時点ですでに2人は知り合いでした(ワトソンとはこのときが初対面)。

ちなみにファーストネームは不明で、イニシャルが「G」であることだけが判明しています。

ワトソンの活躍

ドラマでは、ホームズとワトソンが一緒に行動し、ブラックヒースに住むマクファーレンの母親に会ったり、ノーウッドを訪れてオールデーカーの屋敷を調べたりしていました。

しかし原作では捜査はホームズがひとりで行っていて、ドラマでワトソンが担当した書類の調査もホームズがやっています。捜査の状況については、ホームズが帰宅してからワトソンに語って聞かせる、という流れ。

現在進行形にしてワトソンを捜査に参加させることで、ドラマらしい臨場感が出ていたように感じました。

秀逸な遺体のトリック

最も原作と違っていたのが、遺体のトリックです。ドラマではオールデーカーが家政婦と共謀し、近所に住み着いていた元船乗りの浮浪者に自分の服を与えて殺害、遺体を焼いて自分が死んだように見せかける…というものでした。

ホームズは船乗りが持つオオジロザメの歯を焼け跡から見つけ、さらに屋敷の表門の近くで浮浪者が仲間に残す暗号を発見、元船乗りの浮浪者が姿を消していることを知って、このトリックに気づきました。

一方原作はというと、遺体は「動物の死骸」ということになっています。

「きみが古着のボタンといっしょに材木の山にほうりこんだもの、あれはいったいなんだったんだ? 犬の死骸か、兎か、それとも? ほう、言いたくないか」

結局、ホームズは「兎二羽」ということで結論づけていますが、さすがに無理がありますよね。いくらなんでも人間とウサギの違いくらいわかるのでは、と思いますが…。

浮浪者に関しては、当初ホームズが事件の犯人を「通りがかりの浮浪者」だと考えるくだりが原作にありますが、捜査は行っていません。ホームズが浮浪者に変装して聞き込みを行うシーンは、ドラマオリジナルです。