海外ドラマ「シャーロック・ホームズの冒険」第4話「美しき自転車乗り」のあらすじと感想です。
今回の依頼人は美しい女性バイオレット。自転車に乗って職場である屋敷に通う彼女は、何者かに尾行されて怯えていました。第2話と同じストーカー案件かと思いきや、尾行者の正体は…。
調査中にホームズが得意なボクシングを披露するシーンも。
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第4話「美しき自転車乗り」あらすじ
ホームズはバイオレット・スミスという女性の訪問を受ける。彼女は音楽を教えながら母親と2人で細々と暮らしていた。ある日、南アフリカへ渡ったきり消息不明の叔父ラルフの友人だという男性2人が現れ、叔父の死を告げられたという。
男性のうちの一人カラザースは破格の報酬でバイオレットを雇い、娘の音楽教師として屋敷に住まわせる。カラザースは親切で申し分ない雇い主だったが、もうひとりのウッドレーという男はバイオレットに結婚を申し込み、強引に迫ってきた。
怒ったカラザースは彼を屋敷から遠ざけ、二度とこんな目には遭わせないと約束する。だがバイオレットが週末ロンドンへ帰ろうと自転車で駅へ向かっていると、チャーリントン・ホールという別荘の前の道で自転車に乗った怪しげな男に尾行されるようになった。
ワトソンが調べたところ、チャーリントン・ホールの持ち主はウィリアムソンという紳士だった。後日バイオレットから手紙が届き、カラザースからも結婚を申し込まれたという。だがバイオレットには婚約者がいた。
ホームズは居酒屋で聞き込みを行い、ウィリアムソンが資格を取り上げられた元牧師だということや、週末になると別荘に怪しい客が集まってくるという話を聞く。
バイオレットはカラザースの屋敷を辞めることになり、土曜日の朝、馬車で駅へ向かう。ホームズとワトソンは先回りして別荘の前の道で待ち伏せようと計画するが、彼女の乗った馬車が2人よりも早く別荘の前を通ってしまう。
バイオレットはウッドレーに拉致され、ウィリアムソンによって強引に結婚式を挙げさせられる。ホームズとワトソンがバイオレットを捜していると、自転車で彼女を尾行していた謎の男が合流。男の正体は変装したカラザースだった。
バイオレットを見つけ出したカラザースはウッドレーを撃つが、死には至らなかった。ウィリアムソンに結婚を司る資格はなく、2人の結婚は成立しないと告げるホームズ。
経緯を聞かれたカラザースは、ラルフの遺産を手に入れるためにウッドレーと帰国し、彼の姪であるバイオレットを捜し出したと明かす。
ウッドレーが彼女と結婚して遺産の分け前をもらう計画だったが、カラザースは本気でバイオレットを愛してしまい、ウッドレーと決裂したのだった。そしてウッドレーから彼女を守るために、自転車で後をつけて見張っていたという。
カラザース、ウッドレー、ウィリアムソンの3人は逮捕され、やがて事件の判決が出る。ウッドレーは10年、ウィリアムソンは7年、カラザースはホームズの弁論のおかげで6か月という刑を言い渡された。
バイオレットは婚約者のモートンと結婚し、叔父の遺産を相続。カラザースの入獄中、娘のセアラを引き取り、幸せに暮らしているという知らせが届く。
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ネタバレ有「シャーロック・ホームズの冒険」各話あらすじ・感想・キャスト・原作比較・時代背景第4話の感想(ネタバレ有)
怪しい自転車乗りの正体
怪しい自転車乗りの正体は、バイオレットを狙うストーカーではなく、彼女を守ろうとしていたカラザースでした。
いやでもあれは怖いよ。バイオレット、よく立ち向かっていけたなぁ。若い女性のみなさんは絶対やっちゃダメだからね。全力で逃げてね。
ホームズの代わりに調査に出かけたワトソンが、「へまをやったな」とホームズにダメ出しされるシーンが面白かった。原作のホームズの台詞はもっと長くて辛辣で、ワトソンがムッとして言い返したりもするのですが、ドラマのやりとりはユーモラスでほっこり。
その後のシーンで、ワトソンが独り言で嫌味を言ってホームズに聞かれてしまう場面もよかったです(ここは原作にはないシーン)。
ホームズが自慢のボクシングを披露してウッドリーを打ち負かす場面は、原作どおり。ただし「くちびるはざっくり切れているわ、ひたいには青黒く変色した瘤ができているわのていたらく」と、原作のほうが酷い目にあってますね。
原作との違い
ここからは深町眞理子さん訳の創元推理文庫版『シャーロック・ホームズの復活』に収録されている「ひとりきりの自転車乗り」をもとに、ドラマと原作との違いを見ていきます。
原作は1904年に発表され、短編の中では28番目にあたります。
原題と邦題の違い
原作の原題は「The Adventure of the Solitary Cyclist」、ドラマの原題は 「The Solitary Cyclist」 。いずれも性別がわからないタイトルになっていて、バイオレットと謎の尾行者、どちらにもあてはまります。
原作の邦題は「孤独な自転車乗り」「あやしい自転車乗り」など本によっていろいろなのですが、このドラマではバイオレットを表す「美しき自転車乗り」というタイトルが採用されています。
1895年4月23日は何曜日?
ドラマでは言及されていませんでしたが、原作における時代設定は1895年です。
原作の中でワトソンは、1895年のノートを見返しながら「私たちがはじめてヴァイオレット・スミス嬢と会ったのは、同年四月二十三日の土曜日」と語っています。
しかし現実には、1895年4月23日は火曜日。ワトソンが書き間違えたのでは?と言われているらしい。
1895年、英国ではサイクリング熱が頂点に達していました。ファッショナブルな人たちの間では「自転車に乗らないほうが異常」と考えられるほどの過熱ぶりだったそうです。
特に女性たちにもたらした影響は大きく、女性の社会的解放に大きな役割を果たしたと言われています。
叔父の遺言
南アフリカからやってきた、叔父の友人だという怪しい2人組。ドラマでは省略されていましたが、原作では、彼らはバイオレットの叔父ラルフの遺言に従って帰国した、と語っています。
叔父のラルフが死ぬ間際、「どうか自分の死後は身寄りのものを探しだして、もし困っているようなら面倒をみてやってほしい」と頼んだと。もちろんウソです。2人が南アフリカを発つ時点では、ラルフはまだ死んでませんから。
バイオレットは「叔父は生前わたしたちのことなど気にもかけなかったのに」と奇異に感じますが、2人にうまくまるめこまれ、信じてしまいます。
カラザースの娘
ドラマでは罪を暴かれたカラザースが幼い娘セアラのことを心配し、ホームズたちに託す場面が描かれていました。その後、セアラはバイオレットに引き取られ、カラザースが出所するまで一緒に暮らしていることがわかります。
これは原作にはないシーンです。セアラという名前も出てこないし、カラザースが彼女のことを心配するくだりも、バイオレットが引き取るくだりもありません。
- 登場人物
- 第1話「ボヘミアの醜聞」
- 第2話「踊る人形」
- 第3話「海軍条約事件」
- 第5話「曲がった男」
- 第6話「まだらの紐」
- 第7話「青い紅玉」
- 第8話「ぶなの木屋敷の怪」
- 第9話「ギリシャ語通訳」
- 第10話「ノーウッドの建築業者」
- 第11話「入院患者」
- 第12話「赤髪連盟」
- 第13話「最後の事件」
- 第14話「空き家の怪事件」
- 第15話「プライオリ・スクール」
- 第16話「第二の血痕」
- 第17話「マスグレーブ家の儀式書」
- 第18話「修道院屋敷」
- 第19話「もう一つの顔」
- 第20話「六つのナポレオン」
- 第21話「四人の署名」
- 第22話「銀星号事件」
- 第23話「悪魔の足」
- 第24話「ウィステリア荘」
- 第25話「ブルース・パーティントン設計書」
- 第26話「バスカビル家の犬」
- 第27話「レディー・フランシスの失踪」