シャーロック・ホームズの冒険*第9話「ギリシャ語通訳」あらすじ感想

海外ドラマ「シャーロック・ホームズの冒険」キャストあらすじ

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海外ドラマ「シャーロック・ホームズの冒険」第9話「ギリシャ語通訳」のあらすじと感想です。

あぁ~面白かった。ホームズの兄マイクロフト初登場の回。前半は原作そのままの流れ、終盤は原作にはない緊迫のシーンが追加されて、オリジナルのストーリー展開になっていました。

マイクロフトが立ち上げたという〈ディオゲネス・クラブ〉。わーいいな~と一瞬思ったけど、よく考えたら普通の図書館と一緒じゃない?これ。

第9話「ギリシャ語通訳」あらすじ

ある日、ワトソンはホームズから兄がいることを聞かされ驚く。シャーロックの7歳上の兄マイクロフト・ホームズは、弟以上の観察力と推理力の持ち主であるが、野心と行動力に欠けるため探偵業には就かず、政府機関で会計検査官をしていた。

ホームズとワトソンはマイクロフトに会うため、ロンドンでもっとも人付き合いが悪い連中が集まるという〈ディオゲネス・クラブ〉へ足を運ぶ。マイクロフトはクラブの会員であり、創立メンバーのひとりでもあった。

マイクロフトはホームズに会わせたいという友人メラスを呼び寄せ、紹介する。彼はギリシャ語通訳で生計を立てていたが、2日前の夜に恐ろしい体験をしたと話す。

ラティマーという男に「至急通訳を頼みたい」と懇願され、夜中に連れ出されたのだが、どこともわからない屋敷に到着するとギリシャ人の男が監禁されており、「書類に署名するようギリシャ語で伝えろ」と命じられたのだった。

ラティマーとケンプという2人組の悪党が犯罪を企て、ギリシャ人の男クラティーデスを拷問して書類にサインさせようとしていることを察したメラスだったが、彼を助け出すことはできず、他言しないよう2人組に脅されて帰されたのだった。

ラティマーはクラティーデスの妹ソフィーをたぶらかして結婚し、兄が管理する彼女の財産を手に入れようとしていたのだ。結婚を阻止しようとイギリスにやってきたクラティーデスだったが、2人組に捕まり監禁されたのだった。

マイクロフトは既に情報提供を求める新聞広告を出していたため、ラティマーとソフィーがベックナムのマートル荘に住んでいることが判明。だが同時に2人組にも知られ、メラスは拉致されてしまう。

警察の捜査令状を得てベックナムへ駆けつけるホームズとワトソン、マイクロフトだったが、2人組はソフィーを連れて逃げた後だった。クラティーデスは既に殺されていたが、かろうじてメラスの救出に間に合う。

3人がドーバー行きの列車に乗ったことを知ったホームズたちは、ハーンヒル駅で追いつき、列車に乗り込む。ホームズに追い詰められたラティマーは、走行中の列車から逃げ出そうとして対向列車に巻き込まれる。ケンプはマイクロフトの機転で取り押さえられ、逮捕される。

ソフィーは兄が殺されたことをホームズから聞かされるが、「それでも彼を愛していた」と告げる。

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海外ドラマ「シャーロック・ホームズの冒険」キャストあらすじ ネタバレ有「シャーロック・ホームズの冒険」各話あらすじ・感想・キャスト・原作比較・時代背景

第9話の感想(ネタバレ有)

ホームズの兄マイクロフト登場

天涯孤独だと思っていたホームズがある日突然兄のマイクロフトについて語り出し、仰天するワトソン。この冒頭の2人のおしゃべりも原作そのままでした。

頭脳は弟シャーロック以上なのに、「行動するエネルギーがない」というユニークな理由で探偵には向かないお兄さん。ホームズよりも愛嬌のある面白いキャラクターで、すぐ好きになりました。原作にはあまり登場しないのに、やたら人気が高いのも頷けます。

今回マイクロフトを演じたのはチャールズ・グレイ。1976年公開の映画「シャーロック・ホームズの素敵な挑戦」でもマイクロフト役を演じています。原作よりお茶目度アップ、年齢もアップ? 隠棲したおじいさんという感じでした。

原作には身長6フィート(180cm)のホームズよりもはるかに大柄で、でっぷり太っていて、薄い灰色の目に思慮深さをたたえている、と書かれています。職場は自宅近くにあって、彼が毎日夕方の時間を過ごす〈ディオゲネス・クラブ〉も自宅の真ん前にあり、マイクロフトがその2つの場所以外を歩き回ることはほぼありません。

今回は彼にとって大冒険だったでしょうね~。

奇妙なディオゲネス・クラブ

〈ディオゲネス・クラブ〉は、ロンドンで最も非社交的な人間の集まり。来客室以外での私語はいっさい禁じられていて、会員に興味を持つことも許されません。それらのルールを破ると除名処分になります。

ちなみに“ディオゲネス”は古代ギリシャの哲学者の名前。ソクラテスの孫弟子だそうです。因襲を無視して自由な生活を送ったと言われ、樽の中で生活していたとか、アレクサンドロス大王に「日陰になるからそこをどいてくれ」と言ったとか、残っている逸話がめちゃくちゃ面白い。かなりの変人と思われます。

ホームズは「いつ行っても落ち着ける快適なクラブだよ」と語っていて、私も一瞬いいな~と思ったけど、交流がないなら図書館やブックカフェと同じ? それだったら私は家にいるほうが落ち着くかも。人付き合い苦手だし騒がしいのも嫌だけど、人がいるのにまったく交流がないのも寂しいと思っちゃう。

原作との違い

ここからは駒月雅子さん訳の角川文庫版『シャーロック・ホームズの回想』に収録されている「ギリシャ語通訳」をもとに、ドラマと原作との違いを見ていきます。

原作は1893年に発表されました。短編の中では22番目の作品にあたります。

クラブに紛れ込んでいた男

なんとも物騒な事件でした。妹を助けるためにイギリスに渡ってきたギリシャ人男性が拉致監禁され、拷問の末に殺されるという結末も救いがなく、マイクロフト登場という盛り上がり要素がなければずーんと暗くなるところ。

前半のストーリーは原作どおりで、ホームズとワトソンが〈ディオゲネス・クラブ〉でマイクロフトと会い、彼の友人メラスを紹介され、彼の話を聞いたホームズが事件解決に乗り出すという流れ。

ドラマでは〈ディオゲネス・クラブ〉に悪党のひとりラティマーが紛れ込んでいて、会話を盗み聞きされてしまうというシーンが追加されていました。

絆創膏の理由

ギリシャ語通訳のメラスが連れて行かれた怪しい屋敷には、クラティーデスというギリシャ人男性が監禁され、拷問を受けていました。

ドラマでは言及されませんでしたが、彼の顔に貼られていた絆創膏は、万一ソフィーに見られても人相がわからないようにするためでした。

ドラマでは、ソフィーはホームズから真相を聞かされるまでラティマーを信じ切っていて、彼の正体に気づいていませんでした。しかし原作では、メラスが連行された夜に兄を見てすぐに気づき、その後彼女も囚われの身になってしまいます。

ドラマオリジナルの結末

ドラマの終盤はオリジナルのストーリーが用意されました。悪党たちがドーバー行きの列車に乗ったことを知り、ホームズ、ワトソン、マイクロフトの3人が追跡します。

途中の駅で列車に間に合い、発車ギリギリで乗り込む3人。そしてラティマーと一緒にいるソフィーを見つけ、彼の正体を暴いて兄が殺されたことを教えました。ソフィーはそれでも彼を愛していたと言い、ホームズは「同情のひとかけらも持てない冷酷な心の持ち主」と吐き捨てます。

列車の中で眠っていると思われたマイクロフトがひそかにもう一人の悪党ケンプを見つけ、まんまと彼を出し抜いて取り押さえる場面が痛快でした。

いっぽう原作は、ホームズとワトソン、マイクロフトがベックナムに駆けつけ、間一髪でメラスを救出する場面で終わっています。

ドラマと違い、悪党2人組は兄に署名させることはできませんでしたが、ソフィーをつれてまんまと国外逃亡を果たしています(ホームズたちの追跡はありません)。前述したとおり、ソフィーはこの時点で2人が悪党だと気づいていますから、無理やり連れて行かれたのでしょう。

後日談として、数か月後にブタペストから奇妙な新聞の切り抜きが届きます。それは、女性を連れて旅行中だった2人のイギリス人男性が悲惨な死を遂げたという記事でした。

ハンガリー警察は2人が喧嘩の末に刺しちがえたと見ていましたが、ホームズはソフィーが兄の恨みを晴らしたと今もって信じている…というワトソンの語りで終わっています。

わたしは復讐劇が大好物なので、原作のラストのほうが好きかな。