海外ドラマ「シャーロック・ホームズの冒険」第12話「赤髪連盟」のあらすじと感想です。
原作の「赤髪連盟」には登場しないモリアーティ教授が登場。ジョン・クレーの背後にいる黒幕をモリアーティ教授にすることで、次回「最後の事件」の伏線になるよう工夫されていました。
その点を除けばほぼ原作どおり。ホームズがワトソンを誘ってサラサーテの演奏会に行く(なんと羨ましい!)ところも原作にのっとっています。
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第12話「赤髪連盟」あらすじ
小さな質屋を営む赤毛の男ジェイベズ・ウィルソンがホームズを訪ねてくる。彼は2か月前に新聞広告で募集が出ていた〈赤髪連盟〉に応募し、担当者に気に入られて即採用されたと話す。
〈赤髪連盟〉は、ある大富豪が遺言状に「生まれ故郷ロンドンで自分と同じ赤毛の男性のために基金を使ってほしい」と残したことから設立された団体で、赤毛の男性であれば誰でも資格があり、簡単な仕事で週4ポンドの報酬がもらえるというものだった。
その日からウィルソンは毎日午前10時から午後2時まで〈赤髪連盟〉で大英百科事典を書き写す仕事を続けたが、今朝出勤するとドアに「赤髪連盟は本日をもって解散せり」という貼り紙があったという。
ウィルソンに〈赤髪連盟〉への応募を勧めたのは、3か月前に半分の給料で雇ったビンセント・スポールディングという若者だった。彼は趣味の写真を現像するため、しょっちゅう地下室に籠もる癖があった。
話を聞いたホームズはワトソンとともに質店を訪ね、店員のビンセントを観察する。店の前の歩道をステッキで叩いて音を確認したホームズは、「大規模な犯罪が計画されている」と確信する。
その夜、ホームズはロンドン警視庁のジョーンズ刑事と、銀行の責任者メリウェザーを呼び出し、銀行の地下金庫へ向かう。一同が息を潜めて待っていると、床の一部が壊れ、ビンセントが現れる。彼はジョン・クレーという名の有名な悪党だった。
クレーは銀行の近くにあるウィルソン質店に目をつけ、地下室からトンネルを掘るために店員となって潜り込み、〈赤髪連盟〉という架空の団体をでっちあげて邪魔なウィルソンを外出させていたのだった。クレーとその仲間アーチーは逮捕され、ホームズはメリウェザーからもらった報酬をウィルソンに渡す。
だがホームズは計画の背後にロンドンの犯罪組織を牛耳るモリアーティ教授の存在を嗅ぎ取っていた。その頃モリアーティ教授もまた、ホームズに計画を妨害された恨みを募らせ、報復を企んでいた。
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ネタバレ有「シャーロック・ホームズの冒険」各話あらすじ・感想・キャスト・原作比較・時代背景第12話の感想(ネタバレ有)
赤髪連盟の正体
〈赤髪連盟〉という一風変わった広告が印象深いエピソード。赤髪の男性なら誰でも応募資格があり、採用されると意味のない仕事(百科事典をひたすら書き写す)をして週4ポンドもらえるという、めちゃくちゃ怪しい団体。
しかし疑うことを知らない質店の店主ウィルソンは、「楽な仕事で金が稼げる」と大喜び。まんまと騙されてしまいます。
実は〈赤髪連盟〉はダミーで、犯人の目的はウィルソンを「外出させる」ことでした。彼が留守の間に、質店の地下室からトンネルを掘り、銀行の地下金庫に保管されているフランス金貨を盗むという計画だったのです。
首謀者のジョン・クレーは有名な悪党だったので、ホームズはその人相を聞いてすぐにピンと来た様子。さらに、その背後にいる宿敵モリアーティ教授の存在にも…。
黒幕はモリアーティ教授
ロンドンで起こった犯罪の半分、そして未解決事件の大部分は、モリアーティ教授が組織に命じて行ったものだというホームズ。
今回の計画にも彼が関わっているのではないかと疑い、逮捕されたクレーに確かめようとしますが、「その名は口に出さないことだ。でないと長生きできませんよ」と不吉な返事が返ってきます。
一方、モリアーティ教授もまた、ホームズに何度も計画を邪魔されて憤っていました。そしてホームズを始末しようと考えます。
モリアーティ教授を演じたエリック・ポーターが「イメージそのまんま」でしたね~。ラストシーンでホームズを見つめる不気味な顔には執念深さがうかがえて、次回の結末を予感させました。
原作との違い
ここからは深町眞理子さん訳の創元推理文庫版『シャーロック・ホームズの冒険』に収録されている「赤毛組合」をもとに、ドラマと原作との違いを見ていきます。
発表は1891年、短編の中では2番目の作品にあたります。
フランス金貨強奪計画
冒頭、ある男がウィルソン質店の向かいに立っていて、フランス金貨を積んだ馬車を尾行する場面がありました。そして馬車が落としていったフランス銀行の封書を、モリアーティ教授(この時点では手元しか映っていません)のもとへ届けます。
原作にはモリアーティ教授の登場シーンはないので、ここはもちろんドラマオリジナル。モリアーティ教授が今回の計画を思いつくきっかけが描かれていました。
ドラマでは次回「最後の事件」に繋がるエピソードとして、事件の黒幕はモリアーティ教授ということになっていましたが、原作には黒幕はいません。計画を立てたのはジョン・クレーです。
原作どおりのホームズの仕草
ジェレミー・ブレッド演じるホームズが、考えごとをするときにやる両手の指を合わせるポーズ。これは原作にも登場する有名なホームズの仕草のひとつですが、今回のホームズは少し違うポーズを取ります。
依頼人のウィルソン氏を帰した後、ワトソンに「50分ほど黙っていてくれたまえ」と言い、パイプをくわえて椅子の中で丸くなるホームズ。原作には、
椅子のなかで丸くなり、膝を鷹のような鼻に接する高さまでひきあげた彼は、目をとじ、黒いクレイパイプを怪鳥の嘴さながらに突き出させた姿勢で、動かなくなった。
とあり、ドラマはその通りに再現されていることがわかります。
「人間は無。仕事がすべて」
事件解決後、ホームズが「僕の人生は、ただひたすら平凡な存在から逃れる努力に費やされていると思う」と呟き、ワトソンが「君は人類の恩人だよ」と言う場面がありました。
ホームズはフローベールがジョルジュ・サンドに書き送った「人間は無。仕事がすべて」という言葉を口にします。
ギュスターヴ・フローベールは『ボヴァリー夫人』で知られるフランスの小説家。ジョルジュ・サンドも同じくフランスの小説家で、作曲家ショパンとの恋愛が有名。
このセリフは原作にもありますが、和訳が少し違っていました。 創元推理文庫版では、「ひとはむなしく――芸術こそすべてだ」となっています。
ちなみにフローベールが書いた原文は「L’homme n’est rein, L’œuvre tout,」です。彼は実利主義を否定し、精神的・芸術的な充足を求めたようなので、ここは「芸術」のほうが個人的にはしっくりくる気がしました。
- 登場人物
- 第1話「ボヘミアの醜聞」
- 第2話「踊る人形」
- 第3話「海軍条約事件」
- 第4話「美しき自転車乗り」
- 第5話「曲がった男」
- 第6話「まだらの紐」
- 第7話「青い紅玉」
- 第8話「ぶなの木屋敷の怪」
- 第9話「ギリシャ語通訳」
- 第10話「ノーウッドの建築業者」
- 第11話「入院患者」
- 第13話「最後の事件」
- 第14話「空き家の怪事件」
- 第15話「プライオリ・スクール」
- 第16話「第二の血痕」
- 第17話「マスグレーブ家の儀式書」
- 第18話「修道院屋敷」
- 第19話「もう一つの顔」
- 第20話「六つのナポレオン」
- 第21話「四人の署名」
- 第22話「銀星号事件」
- 第23話「悪魔の足」
- 第24話「ウィステリア荘」
- 第25話「ブルース・パーティントン設計書」
- 第26話「バスカビル家の犬」
- 第27話「レディー・フランシスの失踪」