「アンという名の少女」シーズン1第1話ネタバレ感想|原作とは違うシリアスタッチの大人向けドラマ

アンという名の少女【シーズン1】

記事内に広告を含みます

海外ドラマ「アンという名の少女」シーズン1第1話のあらすじと感想(ネタバレ有)です。

全編ユーモアにあふれ、明るい少女小説として知られる『赤毛のアン』の暗部をすくい上げた、シリアスタッチの大人向けドラマでした。

登場人物たちの繊細な心理描写は、原作を知る者には時に鬱々とした印象を与えますが、プリンス・エドワード島の美しい風景と心和む音楽が癒やしてくれる。

第1話はラストの展開が大きく原作と異なりますが、それ以外はほぼ原作通りの内容でした。

▼登場人物はこちら

アンという名の少女【シーズン1】 徹底解説「アンという名の少女」登場人物(キャスト)一覧・全話ネタバレ感想・物語の舞台

第1話「運命は自分で決める」あらすじ

グリーン・ゲイブルズに住む未婚の兄妹マシューとマリラは、ノヴァスコシアの孤児院から男の子の孤児を養子に迎えることを決める。マシューはブライト・リヴァー駅まで迎えに行くが、待っていたのは男の子ではなく女の子のアン・シャーリーだった。

置き去りにするわけにもいかず、アンを馬車に乗せて連れて帰るマシュー。道すがらアンの愉快なおしゃべりに魅了されるマシューだったが、アンを見たマリラは「男の子ではないから孤児院に返す」と言い張る。

自分が望まれていないと知って、泣きじゃくるアン。マリラはアンを2階の切妻屋根の部屋に寝かせるが、泣きやまないアンを見て心を痛める。アンを送り返すのは可哀想だと言うマシューに、マリラは「あんな子は役に立たない」と反論。マシューは「私らが役に立つかも」と呟く。

翌朝、アンは窓の外に咲く桜の花に心を奪われ、明るさを取り戻す。マシューは収穫期にフランス人を雇うことにしたと話し、アンはなんとかカスバート家に置いてもらおうと自分を売り込むが、マリラは「血のつながりがない人間と家族になるのは無理だ」と言う。ハモンド夫人に血の繋がらない子は要らないと言われ、孤児院に戻されたことを思い出すアン。

マリラはアンを連れてスペンサー夫人の家へ向かう。道中、アンは生まれてすぐに両親を熱病で亡くし、その後トーマス家とハドソン家で子守をしていたが、ハドソン氏が亡くなったため孤児院に戻されたと話す。

マリラはスペンサー夫人に間違いがあったことを告げ、アンを孤児院に送り返したいことを伝える。スペンサー夫人は近所のブルエット夫人が女の子を子守に欲しがっていると言い、3人はブルエット夫人に会いに行く。

子どもが多いブルエット夫人は、アンを引き取って子守として働かせたいという。良心の呵責に苛まれたマリラは「一旦連れて帰って兄と相談する」と言い、アンを連れて帰ることに。アンが戻ってきたのを見て喜ぶマシュー。

マリラは試しにアンを5日間うちに置いて、様子を見ることにする。お祈りをしたことがないというアンにお祈りを教え、茶色の生地で新しい服を作るマリラ。

そこへ、孤児を養子にすることに反対していたレイチェル・リンド夫人が訪ねてくる。リンド夫人はアンを見るなり「痩せすぎで器量がよくない」「そばかすだらけの顔にニンジンみたいな赤毛」とこきおろし、激怒したアンはリンド夫人を罵倒して家を飛び出す。

マリラはリンド夫人に謝るようアンを諭すが、アンは断固として聞き入れない。謝るまで部屋から出さないというマリラ。マシューはこっそりアンの部屋を訪ねて説得し、アンはマリラとマシューのために謝ることを決意する。

翌日、リンド夫人を訪ねたアンは大げさな言葉と演技で謝罪し、リンド夫人から許しを得る。カスバート家に置いてもらえるよう、家事だけじゃなく農場の手伝いも頑張ると張り切るアン。

だが農場の仕事はフランス人の少年ジェリー・ベイナードが既に手伝っており、アンはジェリーに対抗心を燃やす。マシューはマリラを手伝ってあげてほしいとアンに告げる。

近所に住むウィリアム・バリーがやってきて、マリラとアンを家に招待したいと申し出る。バリー家には2人の娘がいて、長女ダイアナはアンと同じ年頃だった。「うちの子と親しくなる前に、私と家内でその子を見極めたい」というウィリアム。

マリラは急いでアンの服を仕上げ、アンとともにバリー家に出かける。アンは孤児院で同じ年頃の女の子たちから「うるさい」といじめられていたことを思い出し、食事の席では黙りこくっていた。

だがダイアナと2人きりになると、とたんに話がはずんで2人は意気投合する。友達の誓いを立て、一生の友達でいることを約束するアンとダイアナ。

マリラはその日つけていた母の形見のアメジストのブローチがなくなっていることに気づき、アンを問い詰める。アンはブローチのついたショールをまとったことを告白するが、ちゃんともとに戻したという。

アンが取ったと思い込み、アンを責めるマリラ。正直に言わないと孤児院に送り返すと言われ、アンは「ブローチをつけて外に出て、井戸に落とした」と嘘をつく。マリラは「もうあなたのことは信用できない」と言い、アンに出ていくよう告げる。

翌朝、アンはグリーン・ゲイブルズを出ていく。静まりかえった家の中で、マリラは椅子のクッションの間にブローチが挟まっているのを見つける。マシューは駅へ馬を走らせるが、アンを乗せた汽車はすでに発った後だった。

第1話の感想と解説

グリーン・ゲイブルズのアン

1800人以上の中から選ばれたというエイミーベス・マクナルティが原作のアンのイメージそのままで驚く。

やせっぽちで、赤毛で、そばかすだらけ。あと個人的には額が広いところも(これはアニメのイメージ)。

原作ではこのときのアンの年齢は11歳なのですが、ドラマは彼女の年齢(14歳)に近い13歳という設定です。

そのため、原作よりも大人っぽいアンになっていますね。

アンがプリンス・エドワード島のアヴォンリー村にあるグリーン・ゲイブルズにやってくる冒頭のシーンは、何度見てもワクワクさせられます。

“アヴォンリー”という名前は原作者モンゴメリの創作で、モデルはモンゴメリが育った海辺の農村“キャベンディッシュ”。

同様に、アンがマシューを待っていた“ブライト・リヴァー駅”は、ハンター・リヴァー駅がモデルだと言われています。

マシューの馬車に乗せられたアンは、春真っ盛り(6月)の島の美しさに感動し、林檎の花が咲く並木道を〈喜びの白い道〉と呼び、バリー家の池に〈輝きの湖〉と名付けます。

わたしがアニメを見ていたのは小学3年生くらいだったので、思いっきりアンに影響を受けて、当時仲の良かった友達といろんな場所にロマンチックな名前をつけたものでした。

それはさておき、アンが向かったマシューとマリラが住む家は、“グリーン・ゲイブルズ”と呼ばれています。

「ゲイブル」は切妻という意味で、三角屋根の家の三角形状の外壁を指すらしい。そこが緑色に塗られているので、“グリーン・ゲイブルズ”という屋号がつきました。

そしてアンに与えられたのは、ちょうどその切妻部分にあたる部屋。

生まれて間もなく両親を亡くし、家族を持たないひとりぼっちのアンにとって、グリーン・ゲイブルズは初めての“自分の家”であり、“居場所”でもありました。

「グリーン・ゲイブルズのアン」と名乗れることが、彼女にとってどれほどうれしく、誇らしいことだったか…アンの気持ちを想像するだけでグッときます。

「女の子は男の子より有能だわ」

ですが、アンの夢はあっというまに絶望へと変わってしまいます。

自分を養子にしてくれると思っていたカスバート家では、「農場の仕事ができる男の子」が欲しいのであって「女の子」は要らない、と言われてしまいます。

「女に農場の仕事が無理なんてヘンよ。女の子は男の子より有能だわ。あなたも自分が無能だと思わないでしょ?」

マリラを説得しようと「女の子でもできる」ことを必死にアピールするアン。

いきなりジェンダーの問題に切り込んできましたね。ここは原作にはないシーンで、現代的なセリフだなぁと思いました。

『赤毛のアン』の時代背景は1880年~1890年代前半と考えられていますが、今回のドラマは1896年という設定になっています。

まだ女性の地位は低く、参政権もありませんし、結婚すれば家庭を守るのが当たり前と考えられていました。

しかし電気もガスも水道もない環境で一切の家事をこなすのだから、主婦業だってかなりの重労働だったはず。当時の女性たちは当たり前にこなしていたのでしょうが、すごいことですよね。

もうひとつ、原作にはないのが、たびたび挟まれるアンの過去のフラッシュバック(回想)。

原作では落ち込むことはあっても引きずらないカラッとした性格のアンですが、このドラマではアンが過去の辛い経験にとらわれている様子が何度も描かれます。

原作との違い

ここからは松本侑子さん訳の文春文庫版『赤毛のアン』をもとに、ドラマと原作との違いを見ていきます。

赤い道

マシューの馬車に乗ってグリーン・ゲイブルズへ向かう途中、アンは美しい景色に心を弾ませます。

ドラマにはありませんでしたが、原作にはアンが島の道が赤いことに疑問を持ち、マシューに尋ねるも「わからなんな」と言われて「いつかわかることの一つね」と答える場面があります。

プリンス・エドワード島の土が赤いのは、二酸化鉄が多く含まれているため。

カスバート家が栽培しているジャガイモは島の特産品で、鉄分を含んだ赤土に適していました。

コーデリア

マリラに名前を聞かれたアンは、「コーデリアと呼んで」「ペネロペでもいい」と言います。

原作ではペネロペという名前は口にしていません。「小さい頃は(自分の名前は)ジェラルディンだと想像していたけど、今はコーデリアが好き」と説明しています。

“コーデリア”はシェイクスピアの悲劇「リア王」に登場する第三王女の名前として有名。

リア王は腹黒い長女と次女の口車に乗って2人に領地を与え、無口で誠実な末娘コーデリアを追放してしまいます。

おしゃべりなアンが無口なコーデリアを名乗るところに、作者のユーモアが感じられます。

ちなみにドラマに出てきた「ペネロペ」は、ギリシャ神話に登場するオデュッセウスの妻の名前。

トロイア戦争に出征したまま音信の絶えた夫を待ち続け、20年後に再会を果たしたことから、“思慮深く貞淑な女性”というイメージが持たれています。

マリラ

ドラマではにこりともしない頑固で厳格なマリラ。

意地っ張りで感情表現が下手な彼女は、内心ではアンに同情していても、優しく接することができません。

原作のマリラも厳しい態度を取るのですが、アンのおしゃべりに思わず笑い出しそうになり、必死にこらえるシーンが何度も出てきます。

マリラもマシュー同様、早い段階でアンに魅了されていることがわかります。

お試し期間

ブルエット夫人宅から戻ったマリラは、試しに5日間アンを家に置いてみて、引き取るかどうか様子を見る、と言います。

原作では「お試し期間」はありません。

ブルエット夫人の家から帰ってきた時点で、マリラは「あの子を引き取ってもいい」とマシューに告げています(アンの養育をマリラに任せ、口出ししないことを条件に)。

そして翌日の午後には、アンにもその旨を伝えています。

ジェリー・ベイナード

マシューは農場の仕事を手伝わせるために、フランス人の少年ジェリーを雇います。ジェリーに対抗心を燃やすアンは、農作業中の彼に食ってかかります。

ドラマでは「大家族で町に住んでいる」と語っていましたが、原作ではザ・クリークと呼ばれるフランス系の漁村に住んでいます。

たまにマシューやマリラの会話にのぼるだけで、彼がアンと直接会話する場面はありません。

作中では「フランス人小僧」「うすのろの半人前」などと呼ばれ、食事においても粗末なものを与えられ、明らかに差別的な描かれ方をしています。

背景には、フランスが七年戦争(1756~1763)で英国に敗れ、カナダの領土を奪われた敗戦国であることや、プロテスタント(英)とカトリック(仏)の宗教対立などが絡んでいます。

戦争後、プリンス・エドワード島にいたフランス人の多くが島を出ていき、残った人々は差別的な扱いを受けていたと思われます。

リンド夫人の訪問

ドラマでは、お試し期間中にリンド夫人がグリーン・ゲイブルズを訪ねてきますが、原作ではアンが来てから2週間たった後です。

原作では既にアンは養子になることが決まっているので、マリラはアンの教育のために思案して「リンド夫人に謝らせる」ことを選びます。

ダイアナとバリー家

アンとマリラはダイアナの父親に招待され、近所のバリー家を訪ねます。

原作では、マリラがダイアナの母親にスカートの型紙を借りに行くついでにアンを紹介するので、ダイアナの父親は登場しませんし、アンを品定めするという狙いもありません。

ドラマのアンは孤児院でいじめられたことがトラウマになっていて、友達ができるという喜びよりも、嫌われることを恐れてガチガチになっていました。

原作のアンはダイアナと友達になりたいという純粋な思いに溢れ、期待に胸を膨らませてバリー家を訪れています。

アンの友達

バリー家のダイアナとは同じ年頃だから友達になれる、というマリラの言葉を聞いたアンは、不安な面持ちになります。

「友達」と聞いてアンが真っ先に思い浮かべたのは、孤児院にいた女の子たち。

アンのおしゃべりと空想が気に入らない彼女たちは、罠にかかって死んだネズミをアンの顔につけて「黙れ」と言いました。

アンにとって「友達」は恐怖の対象になっていたんですね。

原作には、孤児院でいじめられていたという描写はありません。アンがマリラに語った「友達」は、以前いたトーマス家の本棚のガラス窓に映る自分です。

アンはガラスに映る自分に「ケイティ」と名付け、本棚の中に住んでいる女の子だと想像して、何時間もおしゃべりしていたと言います。

新しい服

突然バリー家に招待され、マリラは急いでアンの服を仕立てます。

アンは膨らんだ袖(パフスリーブ)やレースの飾りがついた明るい色の服をリクエストしますが、マリラが作ったのは飾りのない茶色の生地の機能的な服。

アンはガッカリしていたけど、充分可愛いと思う!

原作では、マリラはアンのために「かぎ煙草色のギンガム」と「白黒チェックのサテン」と「けばけばしい青色のごわごわしたプリント」の生地で、3着作りました。

アンはどの服も可愛くないことにがっかりします。最初に新しい服を着て出かけた先はバリー家ではなく、日曜学校でした。

ちなみにこの時代の女性(子ども含む)は、①よそいきの服(1~2着)、②2番目にいい服(1~2着)、③普段着(数着)を持っていて、古くなった服はぞうきんやキルトに再利用し、ボロボロになるまで使いました。

水道が引かれていないので洗濯も毎日はできず、服を汚さないようにエプロンをつけました。

エプロンにも家事用とお出かけ用の2種類があり、お出かけ用のエプロンにはフリルやレースの飾りを施しました。

アメジストのブローチ

マリラは大切なアメジストのブローチをつけてバリー家へ行き、帰宅後にブローチがなくなったのをアンのせいにします。

孤児院に返されるのを恐れたアンは「井戸に落とした」と嘘をつき、マリラはアンを追い出してしまいます。

原作では、マリラは教会へ行くときにブローチをつけ、帰ってきてからブローチがないことに気付きます。

そしてアンが持ち出したと思い込み、「白状するまで部屋から出さない」と言います。

このままでは楽しみにしていたピクニックに行けないと焦ったアンは、「湖に落とした」と嘘をついて部屋から出してもらおうとしますが、マリラは許しません。

原作では既にアンを引き取って教育している段階なので、マリラが苦心しているのは「アンをどう躾ければいいか」であって、アンを孤児院へ送り返そうなどという気持ちは全くありません。

その後、ブローチが見つかり、マリラはアンに謝ってピクニックに行かせます。

原作における“ブローチ騒動”はマリラにとってもアンにとっても笑い話ですんでいるので、ドラマのような深刻な展開にはなっていません。

関連記事一覧