海外ドラマ「シャーロック・ホームズの冒険」第5話「曲がった男」のあらすじと感想です。
今回は原作と異なる部分が多かったですね。予算の関係でやむをえない部分もあったのだけど、原作を愛する主演のジェレミー・ブレットは、改変に怒り心頭だったとか…。
個人的にはそんなにイヤな改変ではなく、原作よりも動きがあって面白かったと思います。“曲がった男”の切ない心情がグッと心に迫りました。
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第5話「曲がった男」あらすじ
ワトソンはかつて軍医としてインドに駐留していた縁で、マローズ連隊の副司令官・マーフィー少佐に助けを求められる。司令官のバークレー大佐が自宅で変死し、妻のナンシーに殺人の嫌疑がかかっているという。
ナンシーはその夜ボランティアの手伝いに出かけたが、帰宅すると居間で大佐と口論を始めた。居間のドアに鍵がかかっていたため使用人が庭の窓から部屋に入ると、大佐は既に事切れ、ナンシーは卒倒して意識を失っていたという。
マーフィー少佐の話では、2人はインドに駐留していた1858年に結婚。その後バークレー大佐はトントン拍子に出世し、5年前に帰国して司令官となっていた。
バークレー大佐の家を調べたホームズは、部屋の鍵が見つかっていないことや、庭の窓の周辺に何者かの足跡が残されていたことから、第3者の存在を確信。さらに、正体不明の獣の足跡も見つかる。
事件の夜、ナンシーとともに貧民街のホールでボランティアをしていたモリソン嬢は、当日ナンシーが昔の知り合いだという“背中の曲がった男”と話していたことを明かす。
ホームズとワトソンは、軍人が集まる居酒屋でマングースを使った手品を披露する“背中の曲がった男”ヘンリー・ウッドを見つけ出す。彼はかつてバークレー大佐と同じ連隊に所属し、ナンシーと結婚するはずだったことを打ち明ける。
現地の反乱軍に包囲され孤立した連隊を救うため、ヘンリーは危険な任務に志願した。だがバークレーの裏切りによって反乱軍に捕まり、長い年月彼らの奴隷としてこきつかわれたという。拷問と虐待によって体中の骨が変形し、このような姿になってしまったと涙ながらに語るヘンリー。
帰国したヘンリーは事件の夜に偶然ナンシーと再会し、何があったかを話した。真実を知ったナンシーは帰宅すると激しく夫を罵り、ヘンリーが生きていることを教えた。そこへ彼女をつけてきたヘンリーが姿を現し、驚愕したバークリー大佐はショックで卒中を起こして死亡したのだ。
ヘンリーは自分に容疑がかかることを恐れ、とっさに鍵をポケットに入れてその場から逃走。現場に落ちていたこん棒は凶器ではなく、彼が使っていたステッキだった。
ナンシーが口にした「デービッド」の意味は、旧約聖書のサムエル記に登場するダビデ王のことだった。彼は妻バテシバを奪おうと、ヘテ人ウリヤを前線に送り出したのだ。
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ネタバレ有「シャーロック・ホームズの冒険」各話あらすじ・感想・キャスト・原作比較・時代背景第5話の感想(ネタバレ有)
セポイの乱を再現
有名女優の若かりし日の姿、1800年代のインドやセポイの乱の見事な再現など、見どころの多い回でした。
まずはナンシーの友人モリソン嬢を演じたフィオナ・ショウ。映画「ハリー・ポッター」シリーズや、ドラマ「キリング・イヴ」などに出演してます。なんかどこかで見たことあるような…と思ったら彼女だったんですね。若すぎて気づかなかったです。
年齢を重ねて、良い意味で「得体の知れない」女優さんになったなぁ…という感じ。
回想シーンで描かれた「セポイの乱」は、1857年にインドで起こった英国に対する反乱。「インド大反乱」とも呼ばれます。セポイ(sepoy)は、当時インドを支配していた英国東インド会社のインド人傭兵をさす言葉。最初に武装蜂起したのが彼らでした。
農民らも合流して大乱に拡大しましたが、翌年にはほぼ鎮圧されました。その後、英国は東インド会社を解散。インド帝国を樹立して直接支配に切り替えました。
ドラマの映像はインドではなく、チェシャー州で撮影されたそうです。ナンシーとヘンリーが仲睦まじく歩くインドのバザールも、グラナダTVの倉庫の地下に作られたセットだとか…すごい再現力。
本当に曲がっていたのは…
物語は、いかにも怪しい“背中の曲がった男”がいったい何者なのか、という点が鍵を握っていました。バークレー大佐を殺した犯人だろう、というのがあらかたの読みだと思いますが、本当にねじくれていたのは地位も名誉もある大佐のほうでした。
特に心を打たれたのが、ヘンリーの告白シーンです。
なかでも「バークレーの裏切りは話すべきではなかったのかもしれない」と、愛するナンシーを苦しめてしまったことを後悔するセリフ。これは原作にはありませんでした。
今でも変わらない、ヘンリーの彼女に対するまっすぐな愛情が伝わってきます。
原作との違い
ここからは駒月雅子さん訳の角川文庫版『シャーロック・ホームズの回想』に収録されている「背中の曲がった男」をもとに、ドラマと原作との違いを見ていきます。
原作は1893年に発表され、短編の中では20番目にあたります。
依頼を受けたのはホームズ
ドラマでは連隊に縁のあるワトソンがマーフィー少佐から助けを求められ、嫌がるホームズを伴って連隊を訪ねる場面から始まりますが、原作は違います。
彼から依頼を受けたのはホームズで、ワトソンとマーフィー少佐は繋がってません。さらに、このときワトソンは結婚してベイカー街には住んでいなかったため、事件については何も知りませんでした。
物語はホームズがワトソンの家を訪ねるところから始まり、ホームズが事件の概要とこれまでの捜査内容をワトソンに話して聞かせるという展開になっています。そのためほとんどの捜査はホームズがひとりで行い、ワトソンは同行していません。
ホームズは最後に“背中の曲がった男”に会って真相を確かめると言い、立会人になってほしいとワトソンに頼みます。翌日、2人は男が住むハドスン街へ向かいます。
バークレー夫妻の仲
ドラマでは、マーフィー少佐がバークレー夫妻の不仲を証言するシーンや、バークレー大佐がナンシーに高圧的な態度を取る場面がありましたが、原作にはありません。
2人は仲のよい夫婦ということになっていて、バークレー大佐もたまに粗暴にはなるものの、それが夫人に向けられることはなく、今回の悲劇を予感させるものは全くありませんでした。
ナンシーとヘンリーが再会した場所
事件当日の夜、ナンシーはボランティア活動のため教会へ行き、思わぬ人と再会します。30年前に戦死したと思っていたかつての恋人ヘンリーです。
原作では、ナンシーがヘンリーと遭遇するのは教会からの帰り道です。人気のないひっそりとした道をモリソン嬢と2人で歩いていたとき、街灯の下ですれ違った“背中の曲がった男”に「ナンシーじゃないか!」と声を掛けられます。
この場面に関しては、ドラマのほうがしっくりきました。教会に古着をもらいにきたヘンリーに、ナンシーのほうから声を掛けるという流れのほうが、自然な感じがします。ヘンリーは今の姿を見られたくなかったはずだから。
ヘンリーの受難
ヘンリーがインドの地で経験したことはほぼ原作どおりでしたが、原作ではさらに詳しく書かれています。
反乱軍に捕まったヘンリーは退却する彼らとともにネパールへ連れて行かれ、ダージリンを通って北上。そこで反乱軍の残党は山岳地の住民に殺され、今度は彼らの捕虜になります。
その後脱走に成功し、アフガニスタンの国境を越え、何年も放浪したあとパンジャブへ戻り、現地人に混じって暮らしました。
ドラマではナンシーとロケットを交換する場面がありましたが、これは原作にはありません。
バークレー大佐の死因
ドラマでは、バークレー大佐の死因について正確な診断は行われていません。ヘンリーの話を聞いたワトソンが「卒中だろう」と語る場面があっただけでした。
原作では、ヘンリーから話を聞いた後、ホームズたちがマーフィー少佐を訪ねる場面があります。そこでマーフィー少佐から「医師の診断によって、死因は卒中とわかったんですよ」と聞かされます。
そのためホームズたちは彼に真相を語ることなく、そのまま立ち去っています。
- 登場人物
- 第1話「ボヘミアの醜聞」
- 第2話「踊る人形」
- 第3話「海軍条約事件」
- 第4話「美しき自転車乗り」
- 第6話「まだらの紐」
- 第7話「青い紅玉」
- 第8話「ぶなの木屋敷の怪」
- 第9話「ギリシャ語通訳」
- 第10話「ノーウッドの建築業者」
- 第11話「入院患者」
- 第12話「赤髪連盟」
- 第13話「最後の事件」
- 第14話「空き家の怪事件」
- 第15話「プライオリ・スクール」
- 第16話「第二の血痕」
- 第17話「マスグレーブ家の儀式書」
- 第18話「修道院屋敷」
- 第19話「もう一つの顔」
- 第20話「六つのナポレオン」
- 第21話「四人の署名」
- 第22話「銀星号事件」
- 第23話「悪魔の足」
- 第24話「ウィステリア荘」
- 第25話「ブルース・パーティントン設計書」
- 第26話「バスカビル家の犬」
- 第27話「レディー・フランシスの失踪」